「すいませんでした」
「いやあのもう良いからじっとしてて、また血が出てるから!」
審判鳥の所に押し掛けた後、気になって記録を見たらあらびっくり。
何ということでしょう、雁夜が不動の構えで罰鳥につつかれているではないですか!
慌てて私室に戻ったら頭からの出血で全身血塗れになった雁夜が五体投地で土下座してきたので大急ぎで手当てした結果、取り敢えず命に別状はなかったものの何度ソファーに寝かせても起き上がって謝罪モードに入ろうとする雁夜を宥めることはや二桁回である。
せっかく手当てしたのに、動こうとするせいで包帯貫通して血が滲み出し始めてるからいい加減大人しくして欲しい。
「ぬ"ぉ!?」
「ほらぁ!ちゃんと大人しくしないから血が吹き出しちゃったじゃないか!」
『キュッ!(意訳:やり過ぎた!)』
「罰鳥ちゃんは後でお説教!」
『キューッ!?(意訳:お歌タイム無しだけはご勘弁を!)』
※罰鳥はこの後かつてないスピードで収容室に飛び去りました。
「ん~、よし!」
コツコツと小気味良い足音を立てながら歩み寄ると、雁夜は少しビクッとしたけどすぐに顔を上げてこちらを見た。
酷い顔だった。
まるでこの世の終わりみたい、そんなに落ち込んでたの?
「今回のことは先に聞かれたくないことを伝えておかなかった僕も悪いし、もう気にしなくて良いよ...それでね!今から君には僕が持ちうる手札の中で開示出来るものを全て教えようと思うんだ」
「良いのか?」
「ん~?」
「あんな失言をしてあんたを傷つけた俺に、そんの大事な情報を知る資格なんてあるのだろうか」
「当事者の僕がOKしてるんだから別に大丈夫なんじゃないかな、それに君がずっとその調子だと僕もやり辛いんだよね~ だ か ら !君にはきっちりみっちり僕の元で働いていくうえで大事なことを覚えて貰います!」
とはいえそこまで多くはないんだけどね、僕が再現出来たのはあくまでもこの世界へ生まれ落ちる前に見た技術だけ、それ以外は今のところ詳細がわからないせいで再現出来ないし。
「それじゃまずうちの傘下企業及び提携先からだね、後そこで使ってる所謂〝特異点〝」
「特異点?」
「今のところうちの以外の現代技術をもってして再現出来ない頭のおかしい技術のこと」
「あんたらそんなもんまで持ってるのか」
「んじゃ説明始めるよ~」
ホワイトボードさん再登場である。
「まず1つ目R社、うちが抱える民間軍事会社で主に海外への派遣がメイン、大体内戦とか対テロなんかで依頼が来るよ。
最大の特徴はうちの職員製造技術を流用して作られた特異点による無限兵力、例え隊員が死んでも死んだ側から全くの同一個体が再生成されるから。
敵からしたらさっき殺したはずの相手が目の前にいて殺しに来るっていう恐怖を味わうことになるね」
「あれあんたの所の傘下企業なのかよ」
「見たことあるの?」
「昔ルポライターの仕事の出先でテロが起きてね、それを鎮圧するためって名目でR社のウサギ部隊が送られて来てさ...」
「あっ...御愁傷様」
あの子たち優秀なんだけどやり方が過激過ぎて人権派の団体とか一部の国際条約にうるさい方々から熱烈なラブコール(苦情)が来るからなぁ。
「気を取り直して次、えぇこれぶっちゃけ開示して良いのか迷うけどW社」
「一部の金持ちと魔術協会及び聖堂教会両方の御用達で有名なあの?」
「あっうん...ナンデシッテルノヨ」
「前に取材したモナコの富豪からちょっとね」
「モナコ?うげぇあいつかぁ、まぁそれは置いといてW社の特異点は次元屈折及び現状復旧技術だよ」
この会社あんまり説明したくないんだよなぁ、だってグロいんだもん。
後モナコのアイツに関してはノーコメント!
「どんな技術なんだ?」
「すんご~く簡単に言うと廉価版5億年ボタン、この世界とは違う次元に列車を飛ばして現実では10秒くらいしか経ってないけど別次元に入っちゃった列車のほうでは数千年の時が経ってるって感じ。
初期の頃は酷かったんだよ~、中の乗客が発狂して殺し合ったせいでぐちゃぐちゃの肉塊になったり、そこからお団子クリーチャーが発生したりね。
今ではコールドスリープ技術を利用して目的地に着くまで乗客を保護出来るようになったからましになったけど、未だに聖堂教会なんかはコールドスリープ無しの一般車両に乗りたがるんだもん」
「聖堂教会御用達というのは知っていたが、理由はいったい何なんだ?わざわざそんな悍ましいを利用する理由はないと思うんだが」
「修行のためなんだって~、正直後処理するのがすんごい面倒だからやめて欲しいんだけどなぁ、聖堂教会が僕の会社を攻めないようにする協定の中に条件としてW社のワープ列車一般車両乗車権利が盛り込まれてるせいで断れないのよ」
なんであいつら代行者鍛えるのにうちの列車使うのよ、現実世界での数千年分の修行を実質10秒に短縮出来るからお得?頭おかしいんじゃないの?
あっ、うちの会社も人のこと言えないや。
「とにかくめちゃくちゃヤバい会社だから雁夜はあんまり関わっちゃダメだよ、乗るにしても僕がファーストクラスを用意するから前もって申請するように!」
「アッハイ」
この反応、さてはこいつ既に乗ったことがあるな?
「まぁ良いや、次はK社」
「製薬会社かなんかだったような」
良かった、K社はあんまり知らないみたい。
「その通り、一応国内でも有数の大手製薬会社...というのは表向きで、実際には人体復元も崩壊もお手のもの、使用特異点にグロさしかないまじのゲボキショ企業だよ」
「ボロクソに言うな、自分の会社だろうに」
「あれ僕が意図的に作ったんじゃなくて、あんまし使う気起きなくて封印してたものをアトラス院の末端に属するバカが勝手に持ち出して弄くった結果生まれた想定外の特異点が源流なのよ。
だからアトラス院が所有権主張してくるわ魔術協会が漁夫の利狙いしてくるわで鬱陶しかったし何にも良いことなかったの!
な の で ! 原因になったバカは林檎のご飯にして魔術協会とアトラス院にはそれぞれO-06-20とO-03-89をぶちこんでおきました!!!」
荒れてるなぁ、よほど思い出したくない記憶だったのか。
「とにかく、今のところはこの辺を覚えとけば問題ないよ、他の会社については必要になったら順次説明するから気になったら申請してね、ただし僕の能力については開示出来ない」
「わかってる、もう二度と身勝手に踏み込んだりはしない」
「はいはい謝罪モードに入らない大人しく寝る!それじゃ僕はお仕事を片付けてくるからここで大人しく寝ててね!」
「わかった」
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...暇だ、CEOに言われた通りにソファーで横になっているが物凄く暇だ。
しかし、動けばまたCEOに迷惑をかけてしまう、どうしたものか。
ん?ようやく眠気が来始めたぞ、これなら何とかなりそうだな。
だが、この眠気なんかおかしくないか?まるで此処ではない何処かに引っ張られているような...
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『人格追想開始、これよりあなた方が目撃するのはあり得たかもしれない可能性、その残滓にして末路、1人の男が辿った苦痛に満ちた人生の物語です』
【人格頁:『独りよがりの昆虫学者』開巻】
型月世界で別世界の自分の人格被るなんて無茶して何事もないわけがなく...はい、雁夜君には地獄を見ていただきます。
ですが、その地獄の果てに得られるものが確かにあると思うのです。
雁夜、君は結構キーパーソンだから強くなって貰わないと困るんだ...なので原作以上に地獄を見て貰います!
どれが好き?
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黒蟲
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虫籠
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昆虫学者