*** 20**年5月18日 活動記録
ママへ
いつも心配かけちゃってごめんなさい。
しばらく帰れなくなってしまいそうだから、ここでの活動記録をわたしの魔法で送信しようと思います。
昨日の戦いでヴェナリータを追ってポータルに飛び込んだんだけど、飛び込んだポータルの先ですっかり見失っちゃったんだ。
それでも、ヴェナリータが言っていたことが気掛かりでポータルの中を探し回ってたら、誰かが放った魔力の明かりを見つけたの。
その明かりからはとっても強い気配を感じるのに、戸惑いと、誰かを心配する強い気持ちがたくさん伝わってきたんだ。
それでつい、ガマン出来なくなっちゃって
その、とっても遠い所まで来ちゃったみたいです。
うぅ……こんなことじゃ、ママを心配させちゃダメだよって、きっとパパたちにも叱られちゃうよね……。
……でも、ママが持ってる『お守り』が居場所を報せてくれるから、充分な魔力さえチャージ出来れば、帰りのポータルもちゃんと作れるよ――だから、私は大丈夫。
ヴァーツさんもわたしが居なくなったことには気付いていると思うから、いざとなったら頼ってね。
――本当に、いつも心配掛けてごめんね。愛してます。
***
「今日こそ逃がさないから……!『ヴェナリータ』!」
翻る白とピンクの衣装に身を包み、ツインテールに結った薄桃色の長髪が背後に流れる。
固有魔法『チャージ&ファイア』により『
「あいかわらず器用だね 『カーテンコール』
でも 今ボクの興味は別のところにあってね
キミにだけは邪魔される訳にいかないのさ」
対するヴェナリータは生み出した魔物を肉盾として進路妨害を行い、ヒラリヒラリとカーテンコールの手をすり抜けた。
黒と桃色の軌跡を描きながら夜天を疾る魔法少女とヴェナリータ。
振り下ろした魔法のステッキがついにヴェナリータを捉えかけたとき、ヴェナリータは自身の前後にポータルを開くと背後のポータルへ滑り込んだ。
「……!」
カーテンコールは身を翻してトラップを回避するが、その間にもヴェナリータの姿は亜空の暗がりへと溶け込んで行く。
「ウフフ 残念だったねカーテンコール
キミに捕まるつもりはないけれど
その気があるなら追ってきなよ
――面白いものを見せてあげる」
「――っ!」
嘲笑うようなヴェナリータの声が、閉じゆくポータルの向こうで微かに響く。
カーテンコールはステッキを背後へ投げ捨てると、後ろ手に構えた両手からも魔力を噴出させ、閉じかけた空間の裂け目へと迷わず飛び込んだ。
カッ…カッ……!
魔力で編み出した床に2つの靴音が響く。
――飛び込んだ裂け目の先に広がっていたのは、どこまでも続く黒い霧に覆われた奇妙な回廊。
そこには『魔物』の気配も罠もなく、ただ静けさだけが満ちていた。
『ヴァーツさん、聞こえますか?』
「……ダメかぁ。テレパシーが繋がらないってことは、相当遠いところへ飛ばされちゃったのかな」
すでに閉じ切ったポータルへ向き直り、まだ少し幼さの残る声で呼び掛けるが、返ってくるのは自分の吐息だけ。
――ママのお守りに込めた魔力はまだ追えそう
目を閉じ意識を集中させ、家族の元へ残したお守りとのパスが途切れていないことを確認すると、再び背後の暗闇へ目を向ける。
「『面白いもの』……って言ってたよね」
ヴェナリータがそんな言い方をするってことは、この先にはわたしを釘付けにできるだけの何かがあるってこと?
私のことをよく知るあの子がそんな言い方をするってことは……。
「……多分、そういうことだよね。
――だったらその誘い、乗ってあげる!」
彼女は小柄な体をしゃんと伸ばすと、薄桃色の長髪と魔法少女に共通する衣装のスカートを靡かせて、暗闇が広がる回廊へ迷いなく歩み出す。
魔力で編み出した道を踏み鳴らす靴音だけが響くこの不思議な空間を進み続ける彼女の目には、もう一筋の曇りも浮かんでいなかった。
5時間?10時間?景色が変わることのないこの空間では、徐々に時間感覚が狂わされていく。
進み始めてどれくらいの時間が経ったのか
――不意に、暗闇の先で一筋の光が射し込んだ。
「見つけた。あそこが出口なのかな?」
それは暗闇に刺す針の穴を縫うような、細い、けれど驚くほど澄んだ魔力の光。
彼女がその身に宿した魔法は、差し出した手の平に受けた光を咀嚼すると、その光に積もった想いを微かに拾い上げた。
それは……とてつもなく大きくて温かいけれど、『戸惑い』と、胸が苦しくなるほどに重たい『覚悟』が絡まった魔力の残光。
目を閉じて感じ入る。
「……とっても強い感情が伝わってくる。
でも、この感じ……1人だけの気持ちじゃない気がするような?」
「うーん……
これだけじゃ何にも分からない、けど……ヴェナリータが言っていたのはきっとこれのことなんだよね」
「だったら……――放ってなんておけないよね!」
カーテンコールは抱きしめていた手を光に翳して微笑むと、光の指す方へ足を踏み出した。
――力になりたい。この想いを抱える誰かを今すぐ抱きしめてあげたい。そんな願いに従って、一歩ずつ。
瞬間、世界が裏返るような感覚に襲われて、彼女は反射的に目を閉じた。
……始め、彼女の耳に届いたのは、都会の喧騒と、潮風の香る柔らかな風の音だった。
目を開けた彼女が立っていたのは、見慣れぬ街の歩道、そこへ等間隔に植えられた街路樹の木陰の中。
――ぱちくり。
都心と見紛うほど整然と立ち並ぶ摩天楼。
白く美しい街並みは緑に彩られ、車道を挟んだ先に広がる街道には盛んに人が行き交っている。
けれど、ここは彼女の知るどの街とも何かが違う。
……いや、こんなのぜったいおかしいよ。
ちょっと都市開発進み過ぎだと思うんだけど。
「エヘヘヘ、まるで未来都市みたいだなぁ。……はぁ」
その街は、世界中を飛び回っていた彼女の知るどの都市の景観ともかけ離れている上に、街中を見回せば当たり前に目に入るはずの魔法少女たちの痕跡が影も形も見当たらない。
穏やかに過ごす人々の空気感は、まるで平和が何かに脅かされるだなんて思ってもみないようだ。
「ヴァーツさんも……ヴェナリータも、いないよねぇ」
……でも、あの魔力は確かにここから溢れ出ていたんだ。
だったらきっと――。
彼女は目を閉じて意識を集中させた。
この広い街に自身の知覚を行き渡らせて、魔力の波動を捉えるための
それは
――ざらり。
闇に潜むものたちを暴き出す。
……それは、覚えがある感触だった。
何時もと違う街、違う人、多分……違う時間軸。
それなのに、この街には何時もと変わらず平和を脅かす何かが潜んでいる。
それでも、街の人たちが安心して暮らせているということは――みんなを陰ながら守ってくれている、『魔法少女』がこの街にもきっと居るんだ。
その子たちの力になるためにも、この街のこと、ここの魔法少女のことをちゃんと知らないといけないよね。
「――すぅ……そうと決まれば!
まず第一にママへの報告!
その後は……今日泊まれる場所を探さないとね」
目を開いたカーテンコールは街路樹の裏へと身を隠すと、こっそりと左手で車道を指差した。
その先には、道路へ飛び出した黒猫と、一台の車――。
「ヒトサラエ、――『 』」
キキィー……!
その『魔法』を受けた車は僅かな停止距離で急激に減速すると、緩やかに黒猫の目と鼻の先で停止した。
「みゃう!?」
「あっ……だ、大丈夫!?エイミー!」
飼い主らしき女の子が猫の元へと走り込んできたのを見届けると『魔法少女カーテンコール』は小さく微笑んで、見知らぬ街へと姿を消した――。
ついに念願の初投稿……
したし、書き溜めなんて出来ていないので、書き切れるかどうか……
締め方も朧気にしか定まっていませんし、
さやかちゃんの扱いとか考えないといけませんねぇ……。