日本フットボール連合オフィス前
某日
「ここが強化指定選手の集合場所か。ここでサッカーをやるのかのう?」
《日本フットボール連合》と入り口に書かれた建物を前に1人つぶやく朱紗丸。
物心ついた時に前世の記憶を持ったまま男として生まれ変わったと気づいた時ほど驚いたことはなかった。それでも大正時代に鬼として暴れていた時代から100年もたっているのだ。文明や技術の発展以外にも驚くことばかりだった。
そんな朱紗丸が何故サッカーの強化選手に選ばれたのか。前世では血鬼術で鞠を産み出しては敵に投げたり蹴ったりして敵を殺していたのだが、生まれ変わった今世ではボールを相手のゴールに蹴り込むサッカーをやっていた。
最初はキーパーに向かってボールを蹴り込む事が多かったが、高校生にまでなると流石にその回数も減った。
建物に入りそれっぽい扉を開けると、ざっと見ただけでも200人以上の男子高校生がいた。
(こ奴ら全員強化指定選手か。ずっしりした奴、身長の高い奴・・・いろんな奴がおるのう。)
朱紗丸は有名な選手の顔や名前はほとんど覚えていなかった。実際に試合をして強いと感じた相手選手の特徴を覚えても、試合が終わればすぐに忘れてしまうほどである。
その後、絵心甚八とか言う人間のスピーチが始まった。
「おめでとう才能の原石どもよ。お前らは俺の独断と偏見で選ばれた優秀な18歳以下のストライカー、300名です。」
朱紗丸は絵心の小難しい話をなんとか理解しようとした。どうやら日本サッカーを世界一にするために、ここにいる300人を競わせて世界一のストライカーを創るらしい。
(ブルー:青? ロック:鍵・・・いや、なんじゃろう?まるで意味がわからんぞ!)
・・・決して朱紗丸の頭が悪いわけではない。一般人が《ブルーロック》と言われて実在するかも分からない《青い監獄》と誰が思い浮かべようか。
朱紗丸を含む300人ほとんどが困惑するなか、1人の強化指定選手が絵心と言い合っている。絵心がそいつに「ファックオフ」と言ったため、朱紗丸は携帯で意味を調べようとしてやめた。絵心が重要なことを言っているように感じたからだ。
「革命的なエゴイスト達は皆!稀代のエゴイストなんだ。」
この言葉に朱紗丸は衝撃を受けた。鬼舞辻無惨や鬼達の中でも強い鬼達《十二鬼月》は皆、エゴイストだったからだ。
(いや、彼等だけではないのう。わしら鬼と戦い続けた鬼殺隊の柱達。いや、いつの時代のどの分野の猛者達も皆そうではなかろうか。それが例え善であれ悪であれ・・・。)
扉が開く。
(こんなの・・・無惨様は教えてくれなかった・・・。)
いや、許してはくれなかった。
「己のゴールを何よりも喜びとし、その瞬間のためだけに生きろ。」
前世の自分と今の自分
「それが、エゴイストだろ?」
開いた扉へ次々となだれ込むエゴイスト達。わしもゆっくりと扉へ向かって歩き出す。
「スポーツを始めてから勝っても負けても何か物足りなさを感じていたのじゃ。この先にその答えがあるような気がするのう。」
すれ違う絵心は何も言ってこない。別に返事を期待してなどいなかった。
バックから鞠を取り出す。
ブルーロック(ここ)でならもっとみんなと遊べるかもしれない。
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朱紗丸達300人はバスに乗って寮へと向かっていた。それ以外のことは何も聞かされないまま、同意書とやらにサインをさせられこうしてバスに揺られている。道中暇だった朱紗丸は携帯をいじっていた。
(ファックオフ・・・ファックオフ・・・。あぁ、「帰れ」とか「消え失せろ」という意味じゃったか。あまり使われない汚い言葉のようじゃな。それにしても・・・)
まじまじと自分の携帯を見つめる。
(本当に便利じゃのう、この【携帯】というものは!調べもの・電話・メールにゲーム!他にもいろんなことがこれ1つで出来てしまうとは、文明の利器とは凄いものじゃ!)
前世に携帯があったら、どうなっていただろうかと阿呆なことを考え始める朱紗丸だったが、青い監獄(ブルーロック)に到着すると携帯を含む全ての荷物を取り上げられそうになった。
「頼む!携帯はよいから鞠はもっていかせてくれんか!?」
「鞠!?なんでそんなもの持ってるんですか?とにかくだめです。規則ですから!」
そんなやり取りを入口にいた女性と朱紗丸がやり取りすること数分。ユニフォームを渡され強引に建物に押し込められた。袖を見ると番号がついていた。
「"300"に"Z"?なんじゃこれは・・・。あぁ、ここかのぅ。Zの部屋は。」
中に入ると11人の選手がいた。
「お前で最後みたいだな。空いてるロッカーはここだけだ。早く着替えた方がいいぞ。」
「おぉ、ありがとのう。」
がっしりした金髪の奴にお礼をいい、ユニフォームに着替える朱紗丸。中性的な見た目だからか、何人かが着替えをジロジロ見ているようなのを無視しながら、さっさと着替えた。
(何年たってもやはり慣れんのう、前世では女じゃったのだから。)
その後、部屋にあるモニターに絵心が映し出される。
「お前らの能力は俺の独断と偏見で数値化されランキングされている。ユニフォームに示される数字がそれだ。300人中何位かが一目で分かるようになっている。」
(わし300位!?最下位じゃと・・・。いや、逆に考えるんじゃ。これは寧ろ凄いことなのでは・・・。)
朱紗丸は前向きに考えようとしてやめた。前世で鬼舞辻無惨に血を与えられ、《十二鬼月》入りしたかと思えば直後に敗北、呪いによって死亡。地獄で《十二鬼月》になどなっていなかったことを知った。
(与えられた地位や評価に惑わされるな!わしはわしじゃ。!)
「今からその素質を測るための入寮テストを行う。」
「さぁ″鬼ごっこ″の時間だ。」
・・・は?
今此奴はなんと言った?
「制限時間は136秒。ボールに当たったやつがオニとなり、タイムアップの瞬間に"オニ"だったやつがファックオフ(帰る)野郎です。後、"ハンド"禁止ね〜。」
ボールが天井から落ちてくる。
モニターにわしの名前が表示された。
・・・ハハハ。
わしが″オニ″か!!
「″鬼ごっこ″はプロもウォーミングアップで行うトレーニングだが、これはストライカーの本質を見極めるために俺が「ハハハハハハハハハ!!」っ!?」
突然笑い出した朱紗丸に、朱紗丸以外の11人も、モニター越しに喋っていた絵心も驚く。
「よもやよもやというやつか!まさかわしが″鬼ごっこ″の鬼をやることになるとはのう!手を使わずにボールをぶつければよいのじゃな、絵心よ!」
呆気にとられる皆を置いてけぼりに絵心に同意を求める朱紗丸。
「・・・そうだ。」
「了解じゃ!覚悟せい、お前達全員にぶち当ててやろうぞ!!!」
「はぁ!?」とか、「何言ってんだお前!」とか周りが叫んでいるが、今の朱紗丸には聞こえない。
(世界一とかエゴとか何もかもどうでもよい!今だけはあの時のわしの本能に委ねる!)
血鬼術どころか鬼としてのスペックもない。それでも確かに今ここに、朱紗丸という″鬼″が再誕した。
「おい、何かやべーぞこいつ!」
「駄目だ、自動ドア開かなくなってる!」
モニターに表示されたタイマーが動き出す。
サッカー人生?を懸けた、″鬼ごっこ″開始《キックオフ》!!
「さあ遊び続けよう!」
「朝が来るまで!命尽きるまで!」
細かい矛盾点等は本作設定ということでご了承ください。
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