魔法科高校の劣等生 達也の相棒   作:コウカワ

14 / 16
今回ちょっと長いっす。


入学編13話

「よし、それではルールを説明する。直接攻撃、間接攻撃を問わず相手を死に至らしめる術式は禁止。回復不能な障害を与える術式、相手の肉体を直接損壊させる術式も禁止だ。相手に捻挫以上の負傷を与えない直接攻撃は許可する。このルールに従えないのならその時点で負けとする。」

副会長と達也、双方が渡辺先輩の言葉に同意して頷き5m離れた開始線に沿って立つ。

どちらも真剣な面持ちであるが、副会長の表情には余裕が見られる。まあとうぜんだろう。

普通にこの距離ならば肉弾戦を仕掛けるよりも魔法のほうが早い。

魔法のほうが有利に設定されている。

一科生と二科生。さらに生徒会の副会長を務める人だ。おそらく魔法の展開速度は並みの一科生よりも早いだろうから普通なら副会長の勝利する確率の方が早いだろう。

まあ、普通ならの話だが。

達也が特化型の銃型のCAD、服部が汎用型のCADを構える。

渡辺先輩がフライングをしていないか、再度確認する。

「始め!」

渡辺先輩の宣言により試合の火蓋が切って落とされた。

副会長がCADを素早く操作する。

恐らくは単一工程の相手を吹き飛ばすもの。展開速度に物を言わせすぐに決着をつけるつもりだ。

副会長は一瞬で発動の態勢に入った。しかし深雪と俺以外の全員が驚愕する、達也はすでにその場にはいなかった。一瞬、そう副会長が起動式を展開するその一瞬の隙を突いて達也は副会長の背後を取ったのだ。

そして、副会長は達也の魔法を受け倒れた。

「……勝者、司波達也」

宣誓、そういうにはあまりにも小さな渡辺先輩の声で達也の勝利が決まった。

 

 

その後、倒れた副会長を寝かせる。

試合、というには結末はあっけないもので、俺と深雪以外の面々は何が起こったか理解できてはいないだろう。

「まったく、早いな。」

俺はつい思ったことを口に出した。

「待て。今のは自己加速術式を予め展開していたのか?」と渡辺先輩が達也に聞く。

「そんなわけがないのは、先輩が一番良くお分かりだとおもいます。あれは身体的な技能です。」

移動に際しては達也は魔法を使っていない。

まあ、実力者と言ってもやはり一介の高校生。俺たちのような年で純粋な体術のみでこれだけのスピードを出す人物と遭遇する機会はないだろう。

「私も証言します。兄や真琴さんは忍術使い・九重八雲先生の指導を受けているのです。」

「あの九重先生の!?」

だが深雪のこの言葉により、その疑問も吹き飛んだようだ。

九重八雲、俺たちの師匠は対人戦術の世界において知らないものは居ないとされるほどの有名人だから驚くのは当然か。

七草会長や市原先輩たちは古流の奥深さに驚いていたが、渡辺先輩は九重八雲の名前に驚いている。

「あの攻撃も忍術ですか?私にはサイオンの波動そのものを放ったようにしか見えなかったのですが」

続いて達也が使った魔法についての疑問を投げかける。

「お察しの通り、基礎振動系の単一魔法でサイオン波を作りだしたんですよ」

「じゃあ、どうしてはんぞーくんは倒れたの?」

「酔ったんですよ」

「酔った?何に?」

なおも達也と七草会長の応酬は続く。

まあにわかには信じられないよな。

「サイオン波の合成、達也はサイオン波で相手を揺さぶって船酔いのような状態にしたんですよ。

 それも、サイオン波単体では効果が薄いから波を合成し対象の位置で振動が増幅するように調整した。そうだろ?達也。」皆のために俺が補足をする。

「まあ、そんな感じだな。」

しかし、みんなは満足してはいないようだ。

「しかし、波を作る魔法を三連続での展開。自分と相手の相対距離、すべての波のスピード・振動数の調節。

 正直、これを動きながらできるなら普通に一科生にいると思うんだが。」

渡辺先輩から疑問が出される。

「あの、司波くんのCAD、『シルバー・ホーン』じゃありませんか?」

シルバー・ホーン、FLT専属のCADエンジニアである「トーラス・シルバー」がフルカスタマイズしたモデル。

トーラス・シルバーはここ数年で現れた人物であり、素性、年齢その一切が伏せられている。

そんなシルバーの主な実績としてはループキャストが挙げられるだろう。この発見により同一魔法の連続展開が可能になった。

同様の説明が現在中条先輩の口からされる。

シルバー・ホーンはそれこそ軍や警察などでも扱われるが、その性能からプレミアが付くほどの値が張る。

まあ、一回の男子高校生が持っているようなものではないだろう。

その後も中条先輩による語りは七種会長の静止が入るまで続いた。

「でもリンちゃん、それっておかしくない?」

「はい、ループキャストはあくまで同一の魔法を連続で展開するもの。

 座標、強度、持続時間に振動数……まさかこれらの変数化を実行しているのですか!」

「多変数化は、実技試験におけるどの評価にも当てはまりませんから。」

醒めたような口調で達也は言うがやってることは十分異常だ。

一瞬で変数処理を行う頭脳など、普通に持てるスキルではないため評価のしようがない。

最悪の場合、「できる」「できない」の二極化で評価するしか無いだろう。

「なるほど……テストが本当の能力を示していないとはこういうことか……」渡辺先輩のつぶやきが入る。

そんな中、体を壁に預けながらも副会長が復活した。

「うう~~。」

「はんぞー君、大丈夫?」

「はい、大丈夫です会長。」

そう言うとよろけながらも副会長が深雪の前に立つ。

「深雪さんすみませんでした。冷静に周りが見えていなかったのは俺の方でした。」

そうして頭を下げる。

「それと御坂、お前の親友を馬鹿にして、すまなかった。」

「いえ、こちらこそ。そのさっきはいきなり突っかかったり睨みつけてすいませんでした。」

俺も謝り、服部先輩は演習室を後にした。

「服部先輩大丈夫かな?」と俺が心配していると、

「そういえばどうして真琴くんは達也君の使った魔法がわかったの?」と七草会長が聞いてくる。

「そりゃ、達也から模擬戦で今の魔法をくらったことがあるからですけど?初めて食らったときわやばかったな~あれ。」

「そ、そうなんだ。」

ちょっと引き気味に七草会長が答える。

(あんな魔法が普通に達也君との模擬戦で使われてるの?達也君もあんなスピードで動けるしどんな模擬戦になるのかしら?)

「あ~やっぱ心配だ。みんな、俺服部先輩の様子みてくる。」

「ちょっと真琴さん。」深雪が入ってくるが、

「医務室まで送り届けたらすぐもどるから。」

俺はそう言って、演習室を出た。

 

 

Side 服部

服部は今演習室を出て医務室まで壁に寄りかかりながら向かっていた。

(う~、相手の強さを見間違えていたのは俺か。手痛いしっぺ返しを食らってしまった。自分の落ち度とは言え誰かに補助に来てもらったほうが良かったか?)考えに耽っていた服部は壁が途切れているのに気づかなかった。(やばい、倒れる。)なんとか態勢を立て直そうとするが間に合わない。しかし倒れると思ったとき誰かに支えられていた。

(誰だ?って、御坂じゃないか。)

「あちゃ~、誰かに補助してくれって頼めばよかったのに。」

「どうして・・」

「ハイ?」

「どうして俺を手助けするんだ。俺はさっきまでお前の親友の司波や深雪さんを馬鹿にしていたんだぞ。それなのに。」

「あ~そのことですか。俺もう気にしてませんよ。」

「あれだけ怒っていたのに何故?」

「だって先輩は深雪に謝ってくれたじゃないですか。俺にも謝罪してくれたしそれでもうチャラですよ。」そうして俺の腕を肩に回す。まったく、これではどちらが先輩なんだか。俺今すごく情けないな。

「どうしたんですか先輩?ガックリ肩落として?」

「いや、何でもない。」

「医務室までもう少しですからファイトです先輩。」

「あ、ああ。」

俺はそうして御坂の肩を借りて医務室に向かった。

 

Side 服部 out

 

Side 達也

 

俺がCADを持って深雪たちの所に戻るといつの間にか真琴がいなくなっていた。

「ん?深雪、真琴はどうした?」

「あ、お兄様。真琴さんは服部先輩を医務室に送っているところです。」

「そうか。」相変わらずお人好しだな。まあ、そこが真琴の良いところではあるのだが。

「というわけでおめでとう達也君、これで晴れて君も風紀委員会のメンバーだ。」

はあ、やはり逃れられんか。

「いまから辞た「お兄様。」いえ、何でもありません。」

深雪にそんな悲しそうな顔をされては断るものも断れない。

「うむ。まあ、達也君の代わりに真琴君を入れ「渡辺先輩?」ようとはしたのだがあいにくと断られてしまってな。」深雪あまり怒るんじゃない冷気が漏れているぞ。

「まあ、仕方ありませんね。風紀委員会に入らせて頂きます。」

俺がそう言うと深雪は満面の笑みを浮かべる。

「よ~し生徒会室に戻ったあと風紀委員会本部に案内しよう。あ、CADは事務の方に返してきてくれよ。」

「はい、分かりました。」

「お兄様、私もお供します。」

「ああ。」

こうして俺と深雪は事務室へと向かう。あ、先に生徒会室に行ってると真琴に連絡しないとな。

Side 達也 out

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告