「わざわざオレに頼らなくても」
悪役には手を貸したくなくて、そう言外に突き放す。担当者の監督を任された編集者見習いとしては掟破りな行動だが、それよりもクロエがこの男に囚われている方がよくないと思った。
「あ!」
オレの言葉にシェイクスピアは意表を突かれた顔をした。まるで、世界が思っていたより広かったと、今さら思い出したみたいに。
クロエへの振る舞いはどうあれ、シェイクスピアが荒んでいるのは間違いないのだと実感した。
どんな生活をしていたのか聞きたくなったが、今はそういう状況じゃなさそうだ。
「では、失礼いたします!」
「ああ~逃げるとは卑怯な~」
オレに形ばかりの挨拶をして、シェイクスピアはドアに向かって一目散に走り去る。
一応建前として声を掛けて引き留めるポーズをした。ただ見送っただけだと体裁が悪い。最低限の努力はしたという実績作りは大事だ。
追いかけたという体裁も必要なので、オレは徒歩で後を追いかけた。
だのに、何故だろうか。駆け抜けたはずのシェイクスピアは扉を開けずに部屋の中に留まっていた。
牛歩以下。亀ですらない
童話とは違い、休憩という筈はない。であれば生存本能の欠如だ。
そう易々とシェイクスピアは死を受け入れないはずだ。
「開けないの?」
質問をする。どうしてここから逃げないのかと。
シェイクスピアは返事をしなかった。代わりに握っていたドアノブから震える手を徐に離して、狂ったように部屋の中を漁り始めた。
疑問に思いながら、オレは持ち手が不在になったドアノブを回した。
しかし、途中で止まり上手く回らない。
鍵がかかっているようだ。
であれば──と、鍵を開けようとして、この扉には鍵穴しかないことに気付いた。
だからシェイクスピアは部屋中を漁り始めたのか。
この部屋は現状密室で、出るには
何故ここは外鍵なのだろう。
人が住まう部屋とは、本来内側からかけるものだ。
外鍵と言って簡単に思いつくのは物置だ。理由は様々だが、主に大切なものをしまっておくため、あるいは危険物を遠ざけるため。どちらにせよ不用意な立ち入りを禁じるもの。
鍵とは人を遠ざける為の封印。その目的は居住に非ず。
もし仮に、人が住むとして想定するのなら、中身は同じく大切にされている人物か、あるいはその反対の危険人物。
どちらにせよ、中に入れられた人物にとっては牢獄に過ぎない。
この部屋は書斎だ。きっと貴重な書物を所蔵する目的だと納得することにした。
黙って突っ立っているのもなんだ。オレも鍵を探し始める。
シェイクスピアは部屋中の引き出しという引き出しを漁っている。どこを探しても重複しそうだ。オレは彼が探していなさそうな床を探しだす。
予想していたが、特に何の成果も得られない。そもそも鍵は床に置くものじゃない。脱出ゲームでもあるまいし。
もしもここが脱出ゲームの舞台なら、そうだ、意外と扉の近くに関連アイテムが落ちているんじゃないだろうか。
扉の近くを探し始める。アイテムは
手早く引き抜いて、裏を捲ると文字が書いてあるのに気づく。
『念のため外から施錠しておきました。書き上がるまでは、この部屋が貴方の世界です。
この
AIに文章を批評して貰ったら、「もう少し人を信じろ、色々細かく書きすぎだ」と返ってきました。
ほんの少し信じてみましたが、何か言い損じている気がして少し怖くなりました。