輝きたる君、その世界で何を思う?   作:シュトレンベルク

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本日投稿二本目です。
一本目がまだの方は前話を先にお読みください。


その男、祭りに参加する

 ヘスティアが神の宴に参加してから数日、ヘスティアは拠点に帰ってこなかった。大体どういう事をしているのか察していたモルディアはいずれ帰ってくるだろう、とベルとエリスに告げた。その数日の間は店を開かずに拠点で待機しており、二人がいない間は机に向かって本を書いていた。

 

 そして、朝食の半刻前と戻ってきてからの半刻をベルの鍛錬に充てた。エリスも参加してきたので、エリスには魔法の制御技術の向上をやらせることにした。ベルには自身の魔力で強化した一撃を放てる状態を維持しつつ、模擬戦を行った。エリスは最初羨ましがっていたが、初日で引いていた。

 それも当然の話で、魔力強化が途切れる度にベルは地面を舐めさせられるような一撃を食らっていたからだ。言っておくが、自身の魔力を認識して一箇所に集めつつ戦闘するのは相当に難しい。少なくとも冒険者になって半月も経たないような新米にやらせる難易度ではない。しかも質が悪いのが負傷してもモルディアの手で全回復させられているので、半刻後には負傷どころか疲労すら残らない点である。

 

「だんだん物事を同時に処理できるようになってきたな。あと視野が広くなった。それは良い傾向だぞ」

 

「が、はっ……あり、がとう、ござ……います……」

 

【汝、傷ありし者よ。

 汝、病持ちし者よ。

 我が杖がその一切を払拭しよう。

 さすれば汝よ、今一度再起せよ】

 

 モルディアの手元に緑色の魔法陣が現れ、地面に顔をうずめたまま立ち上がることも出来ないベルに向けられる。つい数分ほど前にも同じような状態になっており、エリスはベルを不憫に思っていた。ベルとしてはかなりきついが耐えられない訳ではなく、さりとて軽傷ではなく寧ろ重傷というか致命傷にすら感じられたが気絶できないという絶妙な痛さを前に何も言う余裕がなかった。礼を言ったのはただの根性である。

 

医師神の錫杖(パイエオン・ケリュケイオン)

 

 魔法が発動すると同時に先ほどまで感じていた苦痛は露のように消えた。どころか体力も完全回復しており、ベルが地ペロさせられていた物証は、埃まみれの服ぐらいのものだった。それほどまでに強力な回復効果を持つ魔法を、モルディアは一回の鍛錬に少なくとも十回以上は使用していた。本来は対複数回復魔法(・・・・・・・)をベル相手に何度も、である。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「まぁ、俺が地面に伏せさせてるからな。これぐらいは当然だろう。それでさっきも言ったが、お前は間違いなく成長しているよ、ベル。だから、焦る必要はないんだぞ?」

 

「そうは言っても……」

 

「前にも言ったが、すぐにできる技能じゃないんだよ。いや、才能というかセンスの方かな?それがある奴はなんだかんだ習得できるだろうけどな。俺だってこの技術を習得するのに一月はかかったぐらいだし」

 

「モルディアさんでそれぐらいかかったんですか?じゃあ、僕じゃあ……」

 

「俺はそういうセンスなかったからな。ほぼ独学で一からやってたし。俺が師匠から教わったのは武器での戦い方や魔術……魔法の使い方とかがメインだったし。魔力の扱いなんかは全部俺が一から積み上げたんだ。そら時間もかかるさ。失敗なんかしてた時間も混みだから、ベルはもうちょっと早く習得できるぞ」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「ああ。習得するだけならな。極めるとなればさらに時間と経験がいるから、そこは保証しないけどな」

 

「例えば、どんなのですか?」

 

「今は部位の強化をしてるだろう?でも、これってとある閾値から頭打ちになるんだよな」

 

「えっと、どうしてですか?」

 

「部位の強化だからさ。レベル1の耐久力でレベル5のパワーを受け止められると思うか?」

 

「む、無理です」

 

「そう、無理なんだよ。だから、体の方が持たなくなってくる。となれば、肉体の骨や筋肉なんかの強化も必要になってくる。だが、普通の人間は自分の肉体がどうなっているのかが分からない。骨はどうにかなっても、筋肉とか血管、それに神経系の強化はどうあがいても無理だしな」

 

「じゃあ、どうしてるんですか?」

 

「失敗して肉体壊しながらやった。俺の技能の鍛え方っていうのは基本失敗からだからな。魔力を纏うやり方から魔力を浸透させるやり方へ、ってな。まぁ、これを語るのはまだ早い。今覚えなきゃいけないのは強化を集中するやり方、そしてそのスイッチの入れ方だ」

 

「スイッチの入れ方?」

 

「別に常時強化しろとは言わない。攻撃する瞬間、相手の肉体に触れる瞬間に魔力を固め、殴る。それ以外は魔力を使わなくてもいい。常時強化でもいいけど、その場合は余分な魔力を使うって意味だからな。今はそれ以外のやり方を覚えた方が良い。コストパフォーマンスの面でな」

 

「いっぱい魔力があったら気にしなくていいんですか?」

 

「気にしなくても良いが……余裕を持ちたいなら止めた方が良い。窮地に陥った際に必要なのは効率であり、効率を高めるのはリソースの余裕だ。高位冒険者ほど、ソレをよく理解している。深層に行きつく前にどこかで派手に経験しておいた方が良いだろうな」

 

 モルディアはカカカと笑っていたが、事実としてそうだと思っている。モルディアは長らく配下はおれど仲間を持ったことがない。モルディアにいたのは自分よりも強い敵と自分よりも弱い利用するしか使い道のない相手、そしてモルディアが目的のために契約した最強だけだった。

 つまり、モルディアには信任できる配下しかなく、信用も信頼もむける相手はいなかった。彼は常に一人だった。とある時に心の余裕ができるまで常に裏切られる可能性を胸に刻んでいた。孤軍奮闘が常である以上、彼はリソースの余裕を意識した効率化を絶対のものとしていた。どのような窮地でも常に余裕を持って行動する。それ故に彼は余人を近づかせない努力を積んできた。

 

 失敗と自身の手による肉体改造。それらを積み重ね、外部原因による最強の陥落とソレを齎した外部原因の排除をなした彼は世界から最強と認識されるに至った。その星の絶対たる存在を落とし、余人には近づけようのない絶対の領域へ彼は足を踏み入れたのだ。

 最強へと至る定義は幾つかある。才能の限界突破をすること。純粋な技量を極めること。多様な可能性を修めること。自身が至れないのなら、至れる道具を創ること。他にも様々あるだろうが、モルディアから言わせれば甘いと言わざるを得ない。

 

――――何故、どれか一つしか選ばない?総取りしなければ、最強などと名乗れるはずがない。

 

 総ての分野で最高を目指す。一つの突出した存在は別の突出した存在に潰される。そんな輩の事を誰が最強などと呼ぶだろうか?最強とは誰をも寄せ付けぬ存在でなくてはならない。センスが優れているだの、才能があるだの、生まれながらに最高のスペックを持っているだの、そんなのは陳腐な言い訳だ。

 

 生まれながらに持っていないからなんだ?生まれながらにないのなら、人体改造でも何でもやってそのスペックを追い越す努力をすればいい。脳から手足の先に至るまで、生まれ持っただけの凡夫など影も踏ませない域へ至ればいいだけだ。

 

 余人を圧倒するような才能がないからなんだ?才能など努力によって呑み込んでしまえばいい。天才の歩む大きな一歩に凡人の小さな一歩が劣ると誰が決めた。どこまでも果てなく行くと決めたら、どこまでも地面を踏みしめて行けばいい。

 

 優れたセンスを持っていないからなんだ?センスなど切っ掛けでしかない。結局はどこまでその先を押し進めることが出来るのかでしかない。自分がその最果てを見るのだと決めて進み続ければ、それだけで事足りる話でしかない。

 

 努力の鬼。いや、努力の鬼神とすら呼ぶべき存在であり、すべての才能は努力で凌駕できると言って憚らない。何故なら、自分がそうだから。高い技術力も身体能力も自分の力でどうにか道を切り開いてきただけに、才能があるのに諦めるというのが理解できないタイプであったりする。今はまぁ、そういう奴もいるか程度で受け流すが。

 

 できるならやれ。できなくともやれるようになりたいならやれ。やらなければならないならやれ。とにかくそういうタイプ。失敗をどれだけ積み重ねようと、最後にできるようになればそれでいい。センスも才能も必要なく、ただ努力を重ねれば強くなれる。そういう積み上げ方を本人がしてきたが故に。

 

「まぁ、なんにしてもだ。今は手札を増やし、ソレを磨くことに執心するべきだ。俺の推測だが、ためこんだ経験値(エクセリア)は相当なものだと思うぞ?」

 

「そ、そうですか?」

 

「お前、この数日間にどれだけボコボコにされたと思ってるんだ?それに加えてダンジョン探索も行っているんだ。それだけ成長しているとみて間違いないだろう」

 

 そして、何度かベルの攻撃を受け止めた時に威力が上がっているのを感じていた。それはベルの魔力の集中密度が上がっていることを示していた。ただでさえそんなに多くない魔力を散らさずに拳に集める。それはベルの集中力の向上をも感じさせた。あえて言うなら、ベルが悔しいと思うのは比較対象が悪いだけである。

 モルディアは集中せずとも全神経・全骨格・全筋肉を魔力で浸して強化。さらに全血管に魔力の塊を往復させることで遠心力で延々と加速させ続けるように、魔力が体全体を凄まじい勢いで駆け巡らせているので、ベートが殴られた際はその衝撃は一般人が鉄塊で殴られる以上の衝撃を受けていた。そりゃあ、気絶も必然である。

 

「そ、そうですかね?えへへ……」

 

「……モルディアさん、私はどうですか!?」

 

「ん、エリスも大分技能が伸びているな。魔法の同時発動もこなれてきているし、この分なら魔法の拡大解釈も目前だろうな」

 

「そうですよね!?私も成長してますよね!」

 

「ああ、もちろん。じゃあ、そろそろお手本を見せておくか」

 

 そう言ってモルディアは懐から一本の杖を取り出した。30C(セルチ)ほどの長さで枝のような銀色の模様が特徴の杖だった。更に懐から木片を取り出して投げ、その木片が空中にある間に杖を振ると、その軌道に十個以上の魔法を展開される。

 

鎮魂(レクイエム)――――終局十重奏(コムニオ・デクトゥス)

 

 同じ魔法であるにも関わらず違う周波数が木片を襲う。一発目の魔法で粉々に砕けた木片だったが、他の魔法を受けた部分はそのまま砕けたり燃えたり凍ったりetc.…同じ魔法であるにも関わらず、様々な事象が同時に発生していた。

 

「と、まぁ、こんな感じかな」

 

「……あの、モルディアさん。一体何をしたんですか……?」

 

「エリスの持っている魔法【ノウム・ヴァニア】は音、即ち振動を操る魔法だ。これを付着させ、対象物の振動数を上げるか下げるかしただけだよ。物体が持つ熱というのはその物体が持つ振動数に影響する。ほら寒い時に体が震えるだろう?アレは体を揺らすことで振動数を増やして熱を生み出そうとしているんだよ」

 

「そうなんですか?」

 

「そうなんだよ。というわけで、はい」

 

「へ?」

 

 モルディアは今使っていた杖をエリスに渡した。エリスはその杖とモルディアの顔を何度も往復して見ていた。その姿がおかしくてついクスッと笑ってしまうモルディア。そんなモルディアの笑みに顔を赤らめるエリスとそんなエリスを見て羨ましそうにするベル。

 

「その杖は魔導士の魔力制御と魔法制御を向上させる力を持っている。それであればエリスの実力は間違いなく伸びる。俺がソレを保証しよう」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「ああ。だけど、鍛錬は怠らないことだ。その木材は使用者の魔力に馴染むように、金属はそれを補助するようにできている。つまり、使えば使うほどにエリスの魔力に馴染んでいく。お前専用の杖になるんだ、それが」

 

「これが、私だけの杖に……?」

 

「ベル、そんな羨ましそうな顔をするな。お前に渡したバングルは持っているか?」

 

「はい、持ってますけど……というか、身に着けてます」

 

「そうか。じゃあ、ソレに魔力を流してみろ。拳に魔力を集めたように、次はそのバングルがある場所に魔力を流すんだ。そうすれば勝手に魔力を吸い上げてくれる」

 

 ベルがモルディアの言われた通りに魔力を流すと、バングルに埋め込まれた赤い宝石が深紅に染まり光を放つ。次の瞬間、ベルの手には柄に深紅色の宝石が埋め込まれた小剣があった。

 

「これは……」

 

「魔力剣ルベルライト。装着者の魔力を糧に行動できる魔道具だ。本来は魔法と一緒に運用する予定だったんだが、魔力の使い方を覚えたなら教えてやってもいいだろう。今はただの魔道具だが、その剣は保持者の持つ魔法を装填する事で魔法を付与された剣になるんだ」

 

「それって私が使っても、ですか?」

 

「ああ。とはいえ、ベルが使ってるのにはベルの固有生体波動を登録してあるから、ベルにしか使えないけどな。エリスのはそのネックレスだ。だけど、エリスは魔法以外の武器が分からなかったから今は魔力使用の補助機能しかついてないんだよな」

 

「ええ~、そんなぁ……じゃ、じゃあ、槍の使い方とか教えてもらえませんか?」

 

「槍の?ふむ、まぁ、良いか。じゃあ、近い内に準備しておくよ。とりあえず今は朝食を食べて街に繰り出そう」

 

「何かあるんですか?」

 

「今日は祭り(ハレ)の日――――怪物祭(モンスター・フィリア)の開催日だからな。今日ぐらいはダンジョン探索も休みにして楽しもうじゃないか」

 

 モルディアの言葉にベルとエリスは顔を見合わせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 【ヘスティア・ファミリア】が暮らしている拠点は、住宅街や繁華街からは少し離れた場所にある。更に住民たちがようやく起き始めるぐらいの時間帯だったので分からなかったが、朝食が終わって街に繰り出すとそれは大層賑わっていた。普段よりも大勢いる人々に圧倒される二人とソレを見て微笑ましそうにしているモルディア。

 

 怪物祭(モンスター・フィリア)――――それは年に一度、大衆の神が率いるファミリア【ガネーシャ・ファミリア】が主導で開催する祭り。分かりやすく説明すると、オラリオの三大祭りの一つで闘技場と呼ばれる場所でテイムをする様を見ることが出来るというイベントだ。ちなみにモルディアは見に行ったことはない。

 

 何故なら、モルディアが近づくと本能で身の危険を感じてモンスターが暴れ始めるからだ。知性を持っている相手ならば問題ないが、本能的な動物たちはモルディアの危険性を肌で感じる。絶対の脅威に対して動物が一斉に逃げようとするのと同じように、モンスターたちもモルディアの気配を感じて全力で逃げようと暴れ出すという流れである。

 

「あ、白髪頭、ちょど良いところに来たニャ!」

 

「えっ、僕ですか?」

 

 ちょうど『豊穣の女主人』の前を通りがかった頃、ベルが店員であるアーニャに話しかけられた。なんでも休みを取っているシルが財布を忘れたので届けてほしい、という内容だった。モルディアは別に問題ないと思ったので、ベルにどちらでも良いと告げるとベルは引き受けた。

 

「お~い、ベル君!エリス君にモルディア君も!」

 

「ん?おお、ヘスティアか。おかえり」

 

「ただいま。今戻ったよ。ところで、今は祭りを堪能しているところかな?」

 

「ついでに忘れ物をした人探し、といったところだな。まぁ、こんだけ広いし人も多いんだし、見つかるかも分からんだろうがな。祭りを楽しむついでに見つかれば御の字といったところだな」

 

「そうかい。じゃあ、僕もご一緒しようかな!」

 

 ヘスティアを引き連れて祭りを楽しむ中、流石にこのまま固まって探しても効率が悪いとエリスが告げた。そしてベル・ヘスティアペアとエリス・モルディアペアに分かれ、シルを探すことになった。財布はベルが預かり、もしもモルディアたちが最初に見つけた場合はモルディアが一度立て替えて精算する流れになった。

 モルディアと二人きりになったエリスはとんでもなく上機嫌だった。頬には赤が差し、ニコニコと笑顔が絶えなかった。今なら大概の事は許してやろうと思えてしまうぐらいには上機嫌だった。そんなエリスを見て楽しそうだな、と思うモルディアだったが、いくらか歩いた後に足を止めて視線を下に向けた。

 

「モルディアさん……?何かあったんですか?」

 

「何かが、来る?これは……」

 

 モルディアの瞳が輝く。本来の意味での千里眼が発動し、地面を通り越してその下つまりダンジョンを覗く。そこには蛇のような植物のような何かと、赤い髪の女性のような何かが見えた。ダンジョンの壁ごと地面をぶち破りながら登ってくるソレ等を見た瞬間、女性のような何かは唐突に笑みを浮かべた。かなり狂気的なその表情に眉を顰めつつも、動く唇を見た。

 

『見 ツ ケ タ』

 

 それと同時に千里眼を切ると、モンスター脱走の報が走る。次から次へと発生する問題に眉を抑え数秒ぐりぐりとすると、エリスに視線を向ける。

 

「エリス、別件が出来たから俺はここで別れる。お前は廃教会まで戻るか、ベルたちと合流しろ。今のベルの実力ならそうそう負けることはないだろうが、ヘスティアを守りながらとなれば分が悪いだろうからな。何か嫌な予感がするし」

 

「モルディアさんも一緒に行きましょうよ。別件ってそんなに急ぎなんですか?」

 

「急ぎ、と言うよりは他に解決できそうな面子が他にいないからな。任せられるような問題でもないし、エリスは急いで」

 

 避難しろと言う寸前、地面に亀裂が奔る。それを見た瞬間にエリスを抱きしめて後ろに跳躍するのと同時、地面を破壊して緑色の蔦が現れる。モルディアに向けて伸ばされるソレを殴り飛ばす。空気が破裂するような音と共に蔦が弾き飛ばされ、反対の方向にモルディアが着地する。そしてエリスを背後に回す。

 

「エリス、これ以上は言わん。さっさと逃げろ。お前がついてきてもアレには勝てないだろうからな。無駄に命を散らせるような話でもないんだから、安全な場所まで下がっていろ」

 

「モルディアさ……っ!」

 

 エリスの言葉を聞き終わる前にモルディアは駆け出した。その手元にはいつの間にか一本の長剣が握られており、進行方向上に現れた蔦を全て(・・)両断した。そして、地面に罅が入るほどの強烈な踏み込みをした後に姿が消えたかと思うほどの速度で跳躍した。

 

「本体は……あそこか」

 

 モルディアが視線を向けた先では【ロキ・ファミリア】の四人娘――――アイズとティオナ、それにティオネとレフィーヤが蔦相手に戦っていた。それを視認した瞬間、モルディアの足元に魔法陣が現れる。それを足で踏み砕きながら、矢の如く現場に向かう。

 モルディアが現場に向かっている間にも事態は動く。モンスターに対して有効打が打てないティオナとティオネの代わりに魔法を使おうとするレフィーヤ。魔力に惹かれるというモンスターの性質を知らなかったが故の行動。しかし、その知らなかったのが命取り。レフィーヤに殺到する蔦、否触手の群れに身動きが取れなくなるレフィーヤだったが、その眼前に地面を破砕しながらモルディアが降り立ち、一息の間に触手群の総てを切り伏せる。

 

「さて、何と言うべきか……そうだな。ここは私が来た、かな?」

 

『クヒッ』

 

 モルディアの登場にその場にいた全員が驚く中、どこからか誰かが笑ったかのような声が聞こえるのだった。




感想、高評価をお待ちしております。
明日も二話投稿予定ですのでお待ちください。
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