実験体MM   作:柳月&独鴉

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1.実験体

 AFOと協力関係にある博士にとって、他者の命は非常に軽い。そして金銭と権力を持つ故に、金で個性を持つ子供を売り渡す事に躊躇しない者達は当時多かった。

 そんな中の一人、炎熱の個性を持つ女の子は3歳で売り渡され、4歳になり個性が発露してからは個性重複の実験台にされていた。

 

「個体番号MK09、炎熱系を3重の成功、想定通り上手くいきましたな」

 

 当初は小さな灯火しか出せなかったが、3個の炎熱系を与えたところ拒絶反応もほとんどなく家一軒を焼き尽くすほど強力な炎を生み出す事が出来た。

 

「博士、これは新たな発見だよ。 個性は原則一人一つ、それを覆す事が出来た」

 

 個性は一人一つ、もしくは複合化した個性を一つが原則であり、いままでAFOが色々実験を繰り返しても失敗ばかり。しかし同タイプかつ同性から抜き出した個性であるならば、他人であろうとも少ない拒絶反応で与える事が出来た。

 

「計算上では類型的に上昇せず、7~8で頭打ちになるはずです。 炎熱系個性に余剰はありますかな?」

 

「ふふ、まだまだ炎熱系はあるよ。 珍しい個性ではないからね」

 

 それからさらに実験が繰り返されたが、4個目ではほとんど増加せず、5個では増加などしなかった。予定以上に早い個性因子の増加限界、6個目でAFOの感覚でも与えようとしたところで強い拒絶反応を感じた事から中止される。

 

「これは個体差というべきか、まだ6歳であるためにキャパシティが小さい可能性もありますかな」

 

「仕方ないさ。 他の実験に移ろうか」

 

 それからさらに他のタイプの個性である、接続の個性を入れ拒絶反応を起こすが、他の個体よりも反応は弱い。さらに再生の個性を入れるが人格が非常に希薄となり合計8個の個性をもつ時点で失敗と判断された。

 普通であればいくらでも補充が効く子供など捨てるのだが、他の子供で実験してみれば他の個体でも同タイプかつ同性から集めた個性も受け入れられず、希少な個体であるとして成長を見ると判断された。

 孤児院に送られ7歳に成長したとき、人格を取り戻した。それは偶発的な事なのか、それとも成長によってリンクや再生の個性を受け入れられるだけキャパシティが増大したのかはわからない。

 

「逃げ……なきゃ」

 

 孤児院は表向きまともな施設であり、TVもあれば一般孤児も居り遊戯や勉強もある。そんな中でMK09は一人抜け出し、裸足のまま街中を彷徨っている最中、それは幸運なのか運命なのか。

 

「私が、来たっ!」

 

 大きな交通事故に偶然居合わせたオールマイトが駆け付け、救助作業を15秒足らずで終え帰還しようとしていた。その時、裸足で孤児院を逃げ出したMK09はオールマイトに走って近付く。

 

「助け…て、も、う実験は…‥嫌」

 

 オールマイトの足を掴み実験は嫌だという幼い子供、それだけで異常性と非常事態を予感させ即座にオールマイトは保護を実行した。

 急ぎ少女を連れて事務所に戻り、医者やカウンセラーが少女を調べれば、複数の注射痕、拙いながらも説明された内容、調べても出てこない戸籍。

 急ぎ孤児院を調べれば子供の引き取り先の不明瞭及びその後の行方不明、真っ黒な組織でありAFOの痕跡もあることから孤児院の警察による立ち入りと子供の保護が行われた。

 

「公安で子供を預かる事は……」

「他の子供達は、空のある院に分けてうつされます」

 

「まぁそうなるだろうな」

 

 説明を受けているオールマイトと親しい警察の人間やヒーロー達。しかしまだ10歳にも満たない深紅の髪の女の子、それは弱く余りにも悲惨な体の状態、それでも公安が提示するのは確実に保証された養護院のみ、しかし個性事件や事故による被害者が多発している中、養護院も孤児院も常にいっぱいであり怪しい個人経営が出来る状況では、まともな対応というのは難しい。

 

「怖い…嫌…」

 

 オールマイトに縋りつきながら他者への恐怖で震えている子供に、養護院や孤児院に送るなどという選択を出来るほど、オールマイトは強くもなく厳しくもなれなかった。

 

「私が、引き取ろう」

 

「それは難しい。 君は職務を止められず養育などまず無理だ」

 

 オールマイトの引き取るという言葉に、友人の警官は難しいと言い切る。

 未婚者で孤児を引き取るのは難しく、そして本能的に誰かを助ける為にオールマイトは24時間ほぼ全ての時間を捧げている。心身共に傷を負った子供を養育する時間をとれるわけがない。

 

「しかし、放っておくことはできない。 睡眠時間をさらに削ればなんとか」

 

 余りの言葉に仕方ないと警官の友人や仲間が達が色々と考え、オールマイトという立場と信頼性を使うように伝え、信頼できる引退したヒーロー達に協力を求めた。

 普段は引退ヒーロー達が面倒を見つつ養育し、オールマイトは様子を見ながら共に暮らして安心させる。心理的に安心できる存在となる、それまではなんとか養育をするという形であった。

 そしてMk09のままでは悲しいことだと、オールマイトは舞華と名を与えた。

 

 

 不安定ながら数年養育をしていく中、オールマイトはAFOとの戦いによって重傷を負った。

 胃は体内でそのほとんどが破裂し、炎が吹き荒れる戦闘環境によって呼吸器が半壊するほどの重症、運び込まれ英雄の重症に悲鳴の上がる病院、治癒の個性を持つ希少なヒーローが集まり必死の治療と、そして引退ヒーロー達と共に病院に来ていたMK09は、周りが止める間もなくAFOより無理やり与えられ自らの治癒能力と体力を使用し、接続した相手を治癒する複合化した連接再生を使用した。

 集中治療室前から繋がる薄く白く光る線に何が起きているか他のヒーロー達は分からず、舞華の深紅の髪が白髪が混じりフラフラと立てなくなりながらも個性を使用し続けたのち意識を失い、5日間もの間ずっと意識不明になることを代償にオールマイトは全快した。

 胃と呼吸系だけとはいえ、9歳の子供にオールマイトという大男を治すにはそれだけの負担が掛かってしまった。

 

「オール マイ ト  は?」

 

 目が覚め意識が朦朧としながらもオールマイトを探す舞華。ベッドのすぐ横の椅子に座っていたオールマイトは助かったというお礼と共に、二度と自らを犠牲にしてこのような事を二度としてはだめだと悲しそうに伝えた。

 

 

 

 一方でAFOも顔面の崩壊骨折に呼吸器系のほぼ半壊、両眼の眼球喪失に手足の複雑骨折など生存は絶望的と言えるだけの重症を負っている。捕縛は失敗したが誰の眼にも遅かれ早かれ死亡するだろうという状態での逃亡にほぼ死亡判定を受けていた。

 現在自らの信望者でもある博士の献身的治療を受けており、自らが保有する再生や摂生の個性と合わせなんとか生命を繋げることが出来ている状態であった。

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