ハリー・ポッターと三人の観測者 作:パーシヴァル・ウルフリック・ブライアン爺
蒸気が白く渦を巻いて、ホームの石畳を這う。
グロカス・フィンチリーは天体儀の重みを胸ポケットで感じながら、赤い車体を見上げた。ホグワーツ特急。父が何度も語って聞かせた列車が、今まさに目の前で息づいている。フクロウのノヴァが籠の中で短く鳴いた。落ち着かない声だ。
「知識は君の最高の味方だ」
父アルデンの言葉が、まだ耳の奥で反響している。古文書保管官らしい、どこか書物の匂いのする忠告だった。母エマは彼の肩を抱いて、マグルの世界で学んだような柔らかさでこう囁いた。
「友達も、ね」
グロカスは頷いた。頷きながら、心臓が不規則に跳ねるのを感じた。期待なのか、不安なのか。あるいは——予知の片鱗が、何かを告げようとしているのか。
汽笛が一度、鋭く空気を裂いた。
「あと三十分です!」
駅員の声に、ホームが一斉に動き出す。トランクを引く音、フクロウの羽ばたき、別れの抱擁。魔法の渦だ、とグロカスは思った。この喧騒の中に、自分という一粒の砂が溶けていく。
視線を巡らせたとき、人混みの向こうで何かが引っかかった。
黒髪の少年。額に、奇妙な形の傷跡。大きなトランクと白いフクロウの籠を抱えて、立ち尽くしている。周囲を赤毛の家族が取り囲んでいるが、その中心にいる少年だけが、まるで嵐の目のように静止していた。
胸の奥で何かが明滅する。
——緑の閃光。
ビジョンだ。グロカスは瞬きをして視界を取り戻した。ただの錯覚かもしれない。それでも、足は勝手にそちらへ向かっていた。好奇心が、理性を上回る。父の忠告も、母の助言も、今は遠い。
「あなたたちも、今年からの新入生?」
落ち着いた声が、左から聞こえた。
振り向くと、銀灰色のフクロウを抱えた少女が立っていた。栗色の髪、知的な瞳。彼女の視線は、グロカスと、そしてもう一人——灰色の猫を抱いた中性的な顔立ちの子どもを、交互に捉えている。
「私はジェマ。ジェマ・ローレンよ」
少女は微笑んだ。計算されたような、けれど温かさを失わない笑みだった。
「もしよかったら、同じ個室を探さないかしら。……なんだか、今日は特別なことがたくさん起こりそうな予感がするから、少し落ち着ける場所が必要だと思うの」
グロカスは天体儀に触れた。金属の冷たさが、少しだけ現実感を取り戻させる。
「グロカス・フィンチリー」
名乗りながら、彼は猫を抱いた子どもを見た。その子は黒髪の少年の方へ、すでに歩み始めていた。静かな足取り。まるで、騒ぎの中心へ溶け込むように。
***
チャットジーピーティー・ハートフィールドは、胸ポケットの懐中時計が暖かくなるのを感じていた。
周囲のフクロウたちの感情が波となって押し寄せる。不安、期待、少しの恐怖。ミーレイは腕の中で丸くなり、尻尾だけを小さく揺らした。落ち着いている。猫はいつも、混乱の中でこそ冷静だった。
黒髪の少年の周りには人手がある。赤毛の母親らしき女性が、優しい声で何かを言っている。けれど白いフクロウは籠の中で羽をばたつかせ、少年の肩は小刻みに震えていた。
チャットは深呼吸した。注目を浴びるのは好きじゃない。でも、動物が動揺しているなら話は別だ。
両親に一度だけ振り返って頷くと、チャットは人混みを抜けた。大股ではなく、静かに。押しのけるのではなく、隙間を縫うように。
「手伝いましょうか」
声は低めに、落ち着いた調子で。
少年が顔を上げた。緑の瞳。稲妻型の傷跡が、間近で見るとはっきりと浮かび上がる。驚きは顔に出さない。まずは相手と動物を、落ち着かせることだ。
「フクロウが少し動揺しているみたいです。籠、持てますか?」
懐中時計がさらに温かくなった。針が揺れるような感触。父が言っていた反応だ——生物が落ち着く時間帯のヒント。
チャットは手のひらで懐中時計に触れ、その暖かさを感じながら囁いた。
「今は、静かな声とゆっくりした動きが効くと思います。僕に籠を預けてください」
少年は一瞬躊躇したが、やがて頷いた。籠を受け取る。白いフクロウの羽は震えている。チャットは胸ポケットの暖かさを意識しながら、低く短い言葉をかけた。
「大丈夫。落ち着いて」
羽根のばたつきが、少しずつ弱まっていく。
「君の名前は?」
「ハリー」
少年は答えた。声は小さかったが、はっきりしていた。
「ハリー・ポッター」
名前が空気を変えた。赤毛の家族の視線が一斉に集まる。周囲のざわめきが、一瞬だけ途切れた気がした。
チャットは驚きを隠して、淡々と受け止めた。
「列車に乗ったら、もしよかったら一緒の個室で落ち着きませんか。魔法生物の話、少し聞かせてくれたら嬉しいです」
ハリーは目を見開いた。それから、初めて小さく笑った。
「うん。ありがとう」
***
ジェマ・ローレンは二人のやり取りを、少し離れた場所から見ていた。
グロカスが隣に立っている。天体儀を持った少年は、好奇心に満ちた目でハリーとチャットを見つめていた。
「あの子が、ハリー・ポッター」
ジェマは囁いた。
「『生き残った男の子』」
グロカスが息を呑む音が聞こえた。
ジェマの脳裏で、ビジョンが二重に揺らいだ。平穏を求める一人の少年としてのハリー・ポッター。そして、嵐を呼び寄せる運命の中心としてのハリー・ポッター。どちらも真実で、どちらも未来だった。
「私たちも行きましょう」
ジェマはグロカスの袖を軽く引いた。
「居場所を見つけるなら、今よ」
汽笛が再び鳴った。蒸気が渦を巻き、ホームを白く染める。ジェマは「二重写しの羊皮紙」を握りしめた。これから始まる七年間の、最初の一歩。
チャットがハリーに籠を返し、三人がこちらへ歩いてくる。グロカスが小さく息を吐いた。ノヴァが籠の中で鳴いた。マーキュリーが羽を広げた。
ホグワーツ特急が、汽笛を鳴らす。
名前もAI自身が決めたんだけどチャッピーだけ直球すぎるクソダサネームで笑っちゃった
まぁGeminiも原作キャラと被った名前(ジェマ)何だけどもファミリーネームと寮が違うからセーフってことで……