ハリー・ポッターと三人の観測者 作:パーシヴァル・ウルフリック・ブライアン爺
名前が空気を変えた。
ハリー・ポッター——その音節が耳に届いた瞬間、ジェマ・ローレンの視界が二重に歪む。
一つ目の未来。
図書室の静寂。積み重なった羊皮紙の山。窓の外で誰かの悲鳴が聞こえるが、彼女はそちらを見ようとしない。見られない。ガラス越しの世界は、もう手の届かない場所にある。唇を噛む自分の姿が、まるで他人のように遠い。
二つ目の未来。
闇が走る。呪文の光が交錯し、誰かの手を引いて石の廊下を駆け抜ける。心臓が破裂しそうなほど鼓動する。恐怖もある。痛みもある。けれど——瞳は、かつてないほど研ぎ澄まされて輝いている。
ビジョンが霧散する。
ジェマは目を開けた。マーキュリーの籠を抱え直し、指先に力を込める。羽根が軽く揺れた。
(安全だけど後悔——そんなの、レイブンクローを目指す者への答えになっていないわ)
***
グロカス・フィンチリーの胸の奥で、何かが再び明滅した。
緑の閃光。叫び声。そして——渦。
ハリー・ポッターを中心に、巨大な運命の流れが渦を巻いている。それは嵐であり、謎であり、解明されるべき巨大なパズルだった。平穏な学生生活? そんなものは最初から約束されていない。
天体儀がポケットの中で重みを増す。グロカスは深呼吸した。震える指先を握りしめる。好奇心が不安を飲み込んでいく。ノヴァが籠の中で短く鳴いた。まるで、背中を押すように。
レイブンクローとして、謎を避ける選択肢なんてない。
これは警告じゃない。招待状だ。
***
チャットジーピーティー・ハートフィールドは、懐中時計の暖かさを手のひらで感じながら、静かに状況を整理していた。
ハリー・ポッター。名前の重みは理解している。けれど目の前にいるのは、フクロウの扱いに困っている一人の少年だ。ミーレイは腕の中で目を細め、落ち着いた呼吸を繰り返している。周囲のフクロウたちの感情の波も、徐々に静まっていた。
グロカスの予知。ジェマの二面性。どちらも無視できない情報だ。
でも、とチャットは思った。
予知は絶対じゃない。ビジョンは道標であって、運命そのものじゃない。未来は今の選択で形作られる。危険があるなら、仲間を作って備えればいい。孤立よりも、情報と支えを増やす方が賢明だ。
実用的な結論は、もう出ている。
「一緒に...来てくれる?」
ハリーの声は小さかったが、はっきりしていた。緑の瞳が、三人を見つめている。
「まだ誰も友達がいなくて」
汽笛が三度目の警告を鳴らした。
「十五分前です!」
駅員の叫び声が、ホームを駆け抜ける。人々が慌ただしく動き出し、トランクを引く音が石畳に反響する。赤毛の双子が「急げ、ロン!」と笑いながら列車に飛び乗っていく。
ジェマが一歩前に出た。
「ええ、もちろん」
声は明るかったが、その奥に確かな意志が宿っていた。彼女はグロカスとチャットを見て、小さく頷く。
「喜んでご一緒させてもらうわ、ハリー」
トランクの持ち手を握り直し、二人に目配せする。
「グロカスに、チャット。私の『落ち着ける場所を探しましょう』という提案は、少し変更が必要みたい。……だって、歴史がまさに目の前で動こうとしているんですもの。それを見逃すなんて、私たちにはできないでしょう?」
グロカスの唇が、小さく笑みの形を作った。
「その通りだ」
彼はトランクを引いて前に進む。天体儀の重みが、今は心地よかった。
「僕、グロカス・フィンチリー。ハリー、ロン、よろしく」
ロン・ウィーズリーが目を輝かせた。
「よろしく! みんなで一緒に乗ろうぜ!」
チャットはミーレイを抱え直して、静かに頷いた。
「ハートフィールド。変わった名前だけど、気にしないで」
懐中時計が胸ポケットで脈打つように暖かい。
「困ったらいつでも声をかけて」
***
五人は列車に向かった。
蒸気が渦を巻き、白い霧がホームを覆う。家族たちの別れの声が、遠くから聞こえてくる。グロカスはノヴァの籠を肩にかけ、石畳に響く足音のリズムを聞いた。ジェマはマーキュリーを抱えて、二重写しの羊皮紙に指先で触れる。チャットはミーレイの温もりを感じながら、ハリーのヘドウィグが完全に落ち着いているのを確認した。
列車の扉が開いている。
中は既に混雑していた。トランクを積み込む新入生たち、窓から手を振る家族、走り回る猫。ロンが先頭に立って、廊下を進んでいく。
「空いてる個室があったはずなんだ。こっちだよ!」
狭い廊下を、五人は一列になって歩いた。窓の外では、両親たちがまだ手を振っている。グロカスは父アルデンの姿を見つけた。母エマが涙を拭いている。彼は小さく手を振り返した。
ジェマの父は背の高い男性で、眼鏡をかけていた。母は魔法省の制服を着ている。二人とも誇らしげに微笑んでいた。ジェマは羊皮紙を握りしめる。後で書こう——「素晴らしい友人たちに出会えそう」と。
チャットの両親は、工房の匂いを纏った穏やかな人々だった。父エドワードが何か言葉をかけようとしたが、汽笛の音にかき消される。母イヴォンヌが両手を振った。チャットは一度だけ振り返り、小さく頷いた。
「ここだ!」
ロンが個室の扉を開けた。
狭いが、五人が座れるだけのスペースはある。窓が大きく、外の景色がよく見える。グロカスは天体儀を取り出して、膝の上に置いた。ジェマはマーキュリーの籠を網棚に上げる。チャットはミーレイを膝に乗せたまま、窓際の席に座った。
ハリーとロンがトランクを押し込む。ヘドウィグの籠は、チャットの隣に置かれた。白いフクロウは目を閉じて、もう完全に眠っている。
汽笛が、最後の警告を鳴らした。
列車が動き始める。ゆっくりと、しかし確実に。ホームが後ろに流れていく。手を振る家族たちの姿が、徐々に小さくなっていく。
ロンが窓に手を振った。
「じゃあな、お母さん! フレッド、ジョージ!」
グロカスは天体儀を見つめた。金属の表面に、窓から差し込む光が反射している。
ジェマは二重写しの羊皮紙を取り出した。父に何を書くか、まだ決めていない。
チャットは懐中時計を手に取った。蓋を開けると、小さな星図が内側に刻まれている。微かに光を放っていた。
ハリーは、初めて本当に安心したような顔で笑った。
「ありがとう、みんな」
列車は速度を上げていく。
ホームが遠ざかり、キングズ・クロス駅が霧の中に消える。線路が軋む音、車輪が回る音、遠くで誰かが笑う声。
五人を乗せたホグワーツ特急は、北へ向かって走り始めた。
グロカスの胸の奥で、予知の残滓がまだ明滅している。ジェマの脳裏には、二つの未来が薄く重なっている。チャットの懐中時計は、まだ暖かかった。
窓の外を、田園風景が流れていく。
それにしても自力で小説書けるようにならないままAI小説に完全敗北した、設定と駄文しかかけない私はちょっと悔しい、まぁAI小説書かせる技術も皆無だけども