「結局もう一人増えてない……?」
フリーレン、フェルン、五条悟、ヘルファ、ヒルフト。
そんな中に、もう一人、ゼンゼの姿があった。
殿についた彼女は、ヘルファに向かって無表情で口を開いた。
「私は何もしない。だからいないものと思ってくれていい」
「はぁ」
ヘルファは訝しげな顔をした。
場には気まずい空気が漂っていた。
フリーレンもフェルンも五条悟も、それぞれ声を発そうとはしない。
ヒルフトとヘルファも、こんな状況で声を出す勇気がなく、二人の間でひそひそと会話をしていた。
「なぁヘルファ、サトルってずっとこんな人なのか?」
こくり、とヘルファは頷く。
「うん、目はいいくせに、ずっと空気読まないよ」
「……そのフシは、ヘルファ、お前にも乗り移ってる気がするが」
「う……それはそう」
ヘルファは嫌そうに顔を歪めた。
「おーい、きこえてるぞー」
そんな二人を咎める五条悟の声は随分と楽しげだった。
前人未到の零落の王墓。統一帝国依頼一度も踏破されたことのないその場所で、まるでピクニックでもするかのようだった。
コツン、コツンという足音が回廊に響く。
先頭にはフリーレンが付いていた。
突き当りにつくと、フリーレンは悩んだ末右側を選んだ。
「ん? こっちじゃない?」
フェルンがばっと振り返った。
そこでは五条悟が呑気に反対側を指差していた。
フェルンはその指に対して懐疑的な視線を向ける。
(随分な警戒のしようだ。まあ正しいけれども)
そんなことを考えながらも呑気にフェルンの警戒から目をそらしていた。
「分かるの?」
そして、フリーレンが問いかけた。
「あー…………」
五条悟は言い淀むと、その瞬間に適当な言い訳を構築した。
「魔力探知が得意でさ。なんとなくこっちが正解の道だと思うんだよね」
「そっか。でも私たちはこっち行くから」
「えー?」
フリーレンは一瞥もせず右へと歩いていく。
五条悟は眉をひそめた。
「なんでそっちなの?」
「これが私たちのダンジョンの潜り方なんだよ」
「……んー?」
五条悟は興味をそそられたように、口の端を小さくあげた。
「その潜り方はどっから?」
五条悟は一つ思い当たっていた。
かつて遊んだゲームの数々。
モンハンドラクエ、その他諸々、その攻略方法を。
未踏の命がけのダンジョンでそのやり方をするには危険が伴うはずだが、しかし魔王を倒した大魔法使いなら、あるいはダンジョン攻略そのものを楽しむことすらあるのかもしれない。
「……私のことを知っているの?」
フリーレンは唐突に聞いた。
「うん。フリーレンでしょ? 魔王を討伐して人類に平和をもたらした、っていうパーティの魔法使い」
「そっか。そのパーティは史上最も多くのダンジョンを攻略したパーティだ」
「そうなんだ」
「だからこれが私たちの……パーティのやり方なんだよ」
そう言うと、フリーレンはそのまま歩いて行く。
暫く五条悟は動かない。
少しして口を開き二人に声をかけた。
「じゃあ二人ともこっちだ」
「えっついてくの?」
ヘルファが驚嘆する。
(性格的に絶対人に合わせない人だと思ってたけど……)
言われもない思考をよそに、五条悟はフリーレンについていく。
「ついてくるんだ」
「まあどうせなら楽しもうと思ってね」
「そう」
フリーレンは無頓着に答えて先を進んだ。
五条悟はその背中をじっと見ていた。
(魔王を倒した魔法使い。どんだけ強い?)
その心中には、隠しもしない欲望がだだ漏れになっていた。
✕
「このダンジョンは入り組んでいるね。迷わないようにマッピングしながら進もうか」
フリーレンが手を広げると、目の前に青く半透明の板が出現した。
そこに通った道や情報を刻み込んでいく。
「へぇ、魔法って便利だね」
ほー、と五条悟は感心する。
それをすぐに察知したフェルンが、五条悟を睨むように見上げた。
「あなたも魔法使いじゃないんですか?」
そういうフェルンの声は心底不快そうだった。
(なんかずっと警戒されちゃってるなぁ)
心のなかで小さく笑って、五条悟は言葉を返す。
「いやー魔法使いだけどね。生まれてこの方戦うことしか知らなくてさ」
「…………そうですか」
不機嫌そうに答えて、フェルンはまたマッピング作業に戻った。
嘘ではない。
呪術師はそういう職業だ。
この世界では生活のための手段という節すらあるし、市井に魔法使いという職業が溶け込んでいる。
だが五条悟の世界では、呪術師は内外ともに闇の職業だ。
「世間一般」など、生まれた瞬間から足を踏み外している。
再び一行は脚を進め、ダンジョンの奥へと向かう。
「「あ」」
その中で、フリーレンと五条悟は同時に声をあげた。
同時に、後ろを振り返って。
「そこ罠じゃない? 気をつけたほうがいいよ」
最終的に声を上げたのは五条悟だった。
その目の先には脚をぴたりと止めたゼンゼがいた。
五条悟の六眼には、その床がほかの何処かへとつながっているのを鮮明に捉えている。
「………………」
フリーレンは五条悟を見上げた。
「ダンジョンは潜り慣れてるの?」
五条悟はなんともないように答えた。
「魔力探知が得意って言ったじゃん? それで分かったんだよ」
「魔力はほとんど感じないんだけども」
「え、そうなの?」
(やっべ、やらかしたな)
五条悟は軽口を叩きながら思考した。
(濃い呪力を感じたけど、魔力はないのか)
この場所にべっとりと絡みつくような不快な呪力。五条悟にはそれが分かった。
恐らくそれは、この罠にかかった人の残した、死に際の残穢。
おそらく感受性の高い人ならば、呪術師でなくともわかるレベルの。
しかし、魔力探知の基準からすれば、これは「何も感じない」らしい。
「…………」
フリーレンは更に不審げな眼差しを向ける。
しかしそのまま何も言わずに踵を返して歩き始めた。
「…………」
五条悟はほんの小さな息をついた。
六眼はこの世界の理そのものである魔力をうまく捉えてくれない。
強い魔法使いの使う魔法からは、それだけ強い呪力を感じる。それが込める攻撃にもそれなりの呪力が見える。
しかしどうも、それは魔力とは根本的に違うようだった。
魔法のなかに込められる呪力もただの副産物らしく、強くとも四級呪霊ならまあ祓えるかという程度の量。
魔力を感じるの生まれつきの才能なのか、それとも鍛錬でどうにかなるのか。
それすらも検討がつかない。
五条悟は内心でほくそ笑む。
(おかしいのは僕の方か)
この世界で呪力を感じられる自分のほうがおかしいのだ。
ゾルトラークといい、ほかのあらゆる魔力といい。
かつてすべてをいのままにはねのけて払ってきた自分すら、簡単に殺せる魔法がある。
まるで世界に拒絶されているかのように。
あらゆるものが、未知であり、意のままにすることができない。
かつて五条悟は世界を理解しきってしまった。
しかしこの世界は、まだ。どうしようもなく未知だ。
(楽しくてしょうがないね)
このあらゆるものを見通してきた
なのに全力で楽しむことしか、五条悟の頭にはなかった。
(じゃあ、一番の未知は君だ)
そしてそんな『最強』の目は、おそらく最も高い実力を有するフリーレンへと向けられていた。
もし続きを書くとしたらどちらがいい?(2026/02/15より)
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五条悟が全てをねじ伏せバトルしまくる
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フリーレンぽく人の心を知りながら旅をする
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上二つをいい感じにバランス取った話
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好きにやっていいよ
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そんなことよりプリン食べたい