「ねぇ、フリーレンさん」
「なに? ていうか、誰?」
「あ、ヘルファっていうんですけど。今、お時間大丈夫ですかね……?」
「いいよ。それで、なに?」
「あの……このダンジョン、零落の王墓って、難攻不落って言われてるじゃないですか」
「そうだね。統一王朝時代の産物。つまり、千年以上、誰も攻略できていないということになる。それで、それについて何が聞きたいの?」
「あのですね、なんで難攻不落って言われてるのかなって、気になりまして」
「わかんない」
「へえ、そうなん…………え、わかんないんですか?」
「わかんない。来たことないから」
「あ、そうなんですか…………」
そそそっ、とヘルファは後ろへ歩いた。
「分かんないって」
「いや、なんで俺に報告するんだよ」
何故か結果を耳打ちされて、困惑するヒルフト。
「ねえヒルフト、ヒルフトは何か知らない?」
「いや、流石の俺も知らないぞ……。だから難攻不落なんだろ。ていうか、なんでそんなに聞きたがるんだ? さっきゼンゼにも聞いて『私は何もしないといっただろう』って言われたばっかりだろ」
すると、ヘルファはう〜んと唸った。
「うーん、なんか、今まで何もなさすぎてさ……罠とかガーゴイルとかはあったけど、他は特に危機もないし……」
「まあ、確かに……難攻不落と言うには、ちょっと拍子抜けかもな。フリーレンとサトルがいるにしろ……」
うーむ、とヒルフトは考え込む。
「サトルは何かわかるか?」
と、前を歩く五条悟に話しかけた。
「え? まあ、妙なじゅ……魔力を感じるけどもね」
「何……?」
ぴっ、と五条悟は下の方を指差す。
「あそこに魔力のプールのような、たまり場を感じるよ。何か、とんでもないものがいるのかもね」
そう言って、五条悟は思考する。
(それとも、人が大量に死んだか。もしくは、その両方)
「フリーレン様、感じますか?」
フェルンがフリーレンに問いた。
「うん。魔力探知の結果とは一致するね。私も、最深部に何かいると思ってる。多分、それがこのダンジョンが難攻不落たる所以だろうね」
「何が出るんだろうね。ワクワクするな」
にやり、と五条悟は笑う。
「鬼が出るか、蛇が出るか」
「あのなあサトル」
すると、ヒルフトが口を開いた。
「ここは仮にも難攻不落の最難関のダンジョンなんだぞ。いくらお前が強いと言っても、少しは緊張感を持ったほうがいい」
「そういうヒルフトは緊張しすぎじゃない?」
「いや、そもそも――――」
ヒルフトは、口を止めた。
ず、と。
彼の腹の奥に、何が重く黒いものがのしかかった。
(なんだ――――)
その瞬間、全ての魔法使いは同じ方向を向いた。
真っ先に反応したのはフェルン。
「フリーレンさま」
次いでフリーレン。
「まずい」
そして、五条悟は。
もうすでに、その場にいなかった。
✕
全速力の蒼を身に纏う。
道行く迷宮を全て突っ切り、最短経路で目標へ向かう。
五条悟は六眼を凝らす。
――――二人。まずい。間に合わない。
おそらく瓶を割る暇もない。
その瞬間になれば、瞬きもなく首が飛ぶ。
五条悟は、包帯を取った。
そして。
「虚式――――」
全身に、破滅の呪力が込められる。
半身には蒼が。
もう半身には、赫色が。
それは伸ばした手の先に、そしてさらにその先に凝縮されて。
「茈」
五条悟は指を弾いた。
仮想の質量を放つ呪術。
それが放たれた。
全てを貫き破壊する術式。
壁面へ触れた瞬間。
全てを飲み込み、反発し、取り潰す。
それは人の身長ほどもある、巨大な風穴を開ける。
そして、奥へ、奥へと。
それに継ぎ、五条悟は
最短経路。
一直線に。
五条悟、その
「『
再び。
最強が、炸裂する。
――――同時だった。
五条悟が顔を出した瞬間。
しかしすぐに意識を他へ向ける。
(――――二人、少女、白と橙髪の――――)
五条悟は、『無限』を全開にした。
六眼が、茈色に染められた。
✕
「ラヴィーネ、何が――――」
「カンネ逃げるぞ!」
硬直してしまっている腕を、警告の籠った声で握る。
「何もなかったのに、いきなり爆発が」
「何もなかった!? ものすごい魔力があっただろ!」
「えっ……!?」
走るカンネ、ラヴィーネ。
「零落の王墓が作り出す複製体が来たんだ。それに私たちの手じゃ負えないやつが……!」
「だ、誰の!?」
「知るかっ! まずは逃げるぞ! 魔力隠せ!」
逃走する二人。
その、少しばかり後ろでは。
世界の理を破壊しかねない、戦いが始まっていた。
✕
半径数百メートル。
二つの虚式茈の衝突により、ダンジョン内部は全てを飲み込まれ破壊、されるはずだった。
しかし五条悟、自らの『無限』を最大限に増幅。
そして蒼による空間の操作も併用し、概念的に数キロもの『架空の距離』を作り出し。
その被害半径は、ほんの数十メートルに収まっていた。
「それにしても、まさかね。こんなところでお会いできるとは、僕」
五条悟の、その正面には。
煌々と呪力を立ち上らせる、『自ら』がいた。
「君は、どこまで『僕』なのかな?」
六眼が告げる。
ごく僅かな心体機能を除いて、全て『自ら』。
そのごく僅かな心体機能も、会話機能と精神機能。
体構造、記憶もおそらく全て合わせて、『自ら』と同じ。
土煙が去った後に、両名は直接対峙した。
包帯を外し六眼を表にする、
しかしその六眼は青く輝いておらず、鈍く塗りつぶされていた。
体表面も、身につける衣服も、髪の毛も。
全て土色に塗りつぶされていた。
「お会いできて光栄だ」
しかし、五条悟は予感する。
おそらく、この戦いは――――
複製体が、術式を発動した。
蒼、そして拳。
同時に五条悟も動く。
二つの拳が交差する。
そして五条悟は、頬へ来るそれを腕でガードした。
ガガッ
――――
自らの攻撃だけでなく、向こうへの攻撃もが。
無限を貫通して。
両名は更に攻撃を繰り出す。
頭部、頸部、胸部へと。
複製体も、全く同じ攻撃パターンだった。
そのたびに防御、そして攻撃が繰り出される。
それは、最強同士の小手調べ。
全て防ぎ防がれる。
上段蹴りが交差した。
呪力が爆ぜ、甲高い音が響く。
そして二人は、距離をとった。
(やっぱり――――
無限を最大限に広げる。
空気を止め、舞う土ぼこりが止まり、その場にすべてが停止した空間を作り出す。
それも同時。
あちらからも、広がる無限が。
向こうの無限の外縁が、こちらに到達する。
しかし、動きは全く制限されなかった。
(常時身にまとっている蒼によって、これも意味がない。ていうか僕近辺に来た『無限』は、こちら側の術式制御に主導権が移ってこれまた意味がない)
次の行動。
複製体の口が動く。
それは声を発さぬ呪符の詠唱。
それを、五条悟も同時に行っていた。
複製体の代わりのように、五条悟は口にする。
「『
術式、順転、出力最大――――
「蒼」
極大の虚空。
二人ごと飲み込まんばかりの引力。
五条悟は後ろ向きに引力を相殺する蒼を展開し、その場に留まった。そうしなければならないほどの、絶大な引力。
煌々と、青く輝く蒼き水晶が二つ。
そして、主導権の奪い合いが始まった。
近接した虚空はより巨大な虚空になろうと、互いを飲み込もうとする。
奪い合う虚空は、まるで互いの周りを回るように。
互いの呪力を飲み込もうとするように。
まるで公転し合う恒星のごとく、廻りはじめる。
放出される重力波。
空間のねじれ。
ダンジョンの壁面が剥がれ落ち、飲み込まれる。
それでも止まらず、更に。
自らの足場まで飲み込まれ、その背面の壁までひっぺがされ、半径数十メートルが空と化す。
しかし、両名だけは空中にとどまっていた。
両の腕を突出し、蒼の制御権を奪い合う。
形成されている円形の虚空。
空気さえ希薄な極空間。
時間のねじれさえも、引き伸ばされて――――
「ハハッ」
自覚する、自らの術式の難解さ。その精度。
どれだけ奪おうとしても奪いきれない。
片側を飲み込もうとすればこちらがいくらか侵食され、それを押し戻すので手一杯。
向こうもそれ以上は侵食してこれない。
処理すべき情報量の多さに目が脳がチクチクする。
互いを公転していた蒼。
少しずつ完全な融合へと向かい、そして、終に。
完全に接する。
自らの術式同士が噛み合う。
主導権が、融合する。
その瞬間、蒼は弾けた。
今までに飲み込んだ全てを解放して。
放出された爆風、瓦礫。
それは五条悟たち周囲の無限に阻まれ、それより外の内壁へクレーターを残す。
轟音のなかで、五条悟は右腕を上げた。
「術式反転、赫」
ドドウッ
二つの赫が互いに放たれた。
衝突するギリギリで示し合わせたように、
そして、互いの敵へと向かう。
腕を上げる。
片腕に無限、片腕に呪力と展延を纏って。
互いに、それを避けずに受ける。
無限の発散が、炸裂した。
身体が吹き飛ばされ、ほんの一瞬、五条悟の意識は白飛びする。
「痛ってて」
手をつくと、ぐじゅりという音がした。
無限のみを纏った腕は、見るも無惨にグズグズに崩壊していた。
瞬時に反転術式を回し、修復にかかる。
呪力と展延を纏った腕はまだマシ。少しの反転術式のみを回しゆっくりと治す。
立ち上がる五条悟。
そして、複製体。
(面白いくらい、行動原理がおんなじだ)
空中で目を交わし、見つめ合った。
最強は、思考する。
(赫の無限の発散も、無限を貫いて到達する。てゆーかそもそも僕の
数秒、五条悟の腕の再生が終わった。
そして、五条悟は結論づける。
(――――僕と僕は、圧倒的に相性が悪い)
五条悟は息をつく。
(こうなると始まるのは赫と拳での殴り合い。もし実力もノリも同じなら、勝ち負けはほぼ運だね)
五条悟はちらと目を足元の方へと向ける。
そこの向こうに、先ほども感じた呪力があった。
(あそこに『僕』の発生源がいる。おそらくあれを叩かないと、『僕』は倒しても再出現する。そういう術式になってるな。性格のいいやり方だ。僕は僕を留めるためにここから離れられず、そこへと向かえない)
ならば、やり方はたった一つ。
右に全力の蒼、左に全力の赫を込めて。
(楽しくなってきたね)
地を踏みしめ、前へ跳ぶ。
その行動も、同じだった。
互いが互いに交差する、ほんの直前、左手を横へ同時に繰り出す。
そして、赫を放った。
赫は急激なカーブを描く。
そして横から、
互いの拳が交差するのと同時に、炸裂した。
衝撃。呪力の爆ぜ。無限の発散。
威力は蒼の姿勢制御の限界を超える。
身体が吹き飛び。壁面へと衝突する。
顔面の片側と、防御に使った腕が吹き飛んだのが分かった。だから、無感情に反射的にそこに反転術式を回す。
そして、地から立ち上がった。
全身を支配する
感知する『死』の一文字。
しかし、
目をあけ、口を吊り上げ、大きく微笑んだ。
(――――だからただ、全力で、
再び呪力をみなぎらせ、術式で全身を覆う。
目に見えて蒼い虚空が、五条悟の体を支配する。
自らの動きを強化し、その威力を極限まで高めるために。
(無限なし、呪力と蒼のみ、ヒマがあれば赫。当たりどころが悪ければ、余裕で死ぬかな)
命がけの戦い。
(こんなに早く、またやるとはね)
最強が、交差する。
もし続きを書くとしたらどちらがいい?(2026/02/15より)
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五条悟が全てをねじ伏せバトルしまくる
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フリーレンぽく人の心を知りながら旅をする
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上二つをいい感じにバランス取った話
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好きにやっていいよ
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そんなことよりプリン食べたい