「悪い。そこ通らせろ」
「「「!?」」」
場の全員が振り返った。
零落の王墓最後の扉、その直前の部屋。
そこに座っていた全員が、一斉に立ち上がった。
入り口に来た、一人の存在に対して。
「誰だ!?」
叫ぶリヒター。
「あなたは……」
動揺するメトーデ。
「いいから、そこどいてくれ」
しかし、五条悟はただそう言い放つ。
「待て。わけを言え」
そう言って、立ち上がったのはデンケンだった。
宮廷魔法使いの風格が、五条悟の前に立つ。
しかし五条悟は変わらない。
「その先に用があんだよ」
「落ち着け。この先には、魔王を討伐した魔法使いであるフリーレンの複製体が」
五条悟は、その説明には耳もくれなかった。
「そいつと戦るために、ここに来たんだ」
「…………!」
「これは……」
五条悟が立ち上らせる呪力のオーラ。
その強大さに、デンケンとメトーデだけが反応した。
「…………勝てるのか?」
尋ねるデンケンのその声は、とても低い。
しかし五条悟はすぐには答えなかった。
部屋の中を、ただその歩みと共に突っ切って。
最後の扉に手をかけた。
――――この先の扉に、いるな。
フリーレンの気配を感じる。
呪力はほんの少ない。おそらく制限をしている。
もし自分に魔力が感じられればもう少し多く見えるのだろうが、しかし自分では魔力に付随する呪力を捉えることができるのみ。
五条悟は口にする。
「ジイさん。ここに来たとき何人かの複製体がリポップしてたぜ」
「なんだと?」
急な助言にデンケンは目を見開く。
「通りすがりに祓えるやつは祓ってきた。あとはご自身でどうにかどうぞ」
「………………!」
沈黙、しかし驚愕の顔のまま、デンケンはただ立ち尽くしていた。
「…………お前は、何者なんだ」
それはデンケンの心底からの疑問。
そして、この場にいる全員の魔法使いからの疑問でもあった。
五条悟は答える。
その身に、遥かなる高みの力をみなぎらせて。
「五条悟。最強」
ただ小さく振り返って、そう言う。
そして。
さらなる高みへの扉を、解錠した。
✕
場は静謐そのものだった。
耳を澄ませば、心臓の鼓動しか聞こえない。
相対するフリーレン、その複製体。
中空に浮かび、杖を手にしていた。
そして五条悟。
彼は地に足を付け、フリーレンを見ている。
(同じだ。さっき見たフリーレンと何も変わらない)
そして、奥の扉へも。
(閉じられている。命懸けの縛りのかわりに封印をする魔法。そんなところか)
つまり、このフリーレンを殺さなければ、終わりはない。
(望むところ)
ニッ、と五条悟は笑った。
その瞬間、フリーレンは反射的に防御魔法を放った。
五条悟は
万物を停止させる呪術。
(出力最大――――)
それが空間を埋め尽くした。
ピタリ。
フリーレンは動きをとめた。
防御魔法は意味を成さず、全ては停止する。
(止まった)
拍子抜け。そんな言葉が五条悟をよぎる。
しかし油断はしない。
全身に術式を巡らせ、次の攻撃へと備える。
「あのババア、これで弱かったら許さねぇからな」
(そん時は、
そんな事を考える。
しかしそれは杞憂だった。
――――
杖を動かさぬフリーレンの魔法が動いた。
バツン
そんな音が耳にできるほどに。
空間を固定していた強制力の大半が、弾き飛ばされた。
(――――無限を?)
引き剥がされた。
フリーレンを中心にして、青色のシンボルのような物が出現していた。
原子核の構造のような。青い恒星の対公転のような。
巨大な輝点のようなものがフリーレンを中心に、回転し、空間の手綱を均一化している。
またそれは空間の光を散らし、散りばめられたガラス片のような模様を作り出していた。
五条悟は無限を押し広げる。
手を大きく広げ、六眼に映る呪力を構築し、術式にて現実化した無限を、前へ前へと押し出す。
無色の無限と輝く空間が、接合した。
(――――!)
五条悟は笑った。
ゴリゴリゴリゴリ――――――
「ッ――――!」
とんでもないほどの術式規模。
空間全てを握り潰さんとする威力。
それが生み出す術式行使の負荷。
力比べではない。
術式同士の高め合い。
千年生きた大魔法使い、そして数百年ぶりの大天才。両名による押し合い。
フリーレンは魔力を解放する。
先ほど本体が五条悟に見せたのと同じ、莫大な呪力が放出された。
(これだけデカい技を使っても殆ど消耗なしか!)
ただ、感嘆する。
そして、互角。
千年にわたって鍛え上げてきたその技量と。
生まれ持ってきた莫大なものを努力のもとに、数十年、鮮烈に研ぎ澄ましてきた才能。
両者、奇しくも釣り合う。
そして、また奇しくも同時。
五条悟が無限を解除したのと、フリーレンが「
無音の魔法を、口にする。
――――
空間に散る石材が、まるで意思を持ったかのようにフリーレンへ向けて集まった。
そしてそれは魔力によって成形され、形を成す。
(傀儡操術?)
五条悟の思考。
しかし、違う。
この世界オリジナルの、それでしか実現できない魔法。
見上げるほどの巨大な石の巨人が、空間に形成された。
それが着地した瞬間、強烈な地揺れと土埃が舞う。
「ハハッ、えげつな」
五条悟の知る傀儡操術とはまるで違う。
質量と暴力の化身。
性質も目的も、何もかも。
ゴーレムは五条悟へ向かい、石の拳を振り上げる。
ガラリと音を立てながら、空を切る。
ピタッ
フリーレンの試み。
圧倒的な質量を以って不可侵を破ること。
「でも残念。そういう単純な術式じゃないんだよね」
石造の腕はびくともしなかった。
無限は石像の腕から広がり、一気に石像全体を包み込んだ。
そして。五条悟は空間を制御する。
石像を取り囲む無限を使って、それを折り曲げるように。
バギンッ
石が破断する音。
フリーレンは石像へ退避命令を出す。
しかしそれはびくともしなかった。
ゴーレムは身をよじられ、破断され、壊れていく。
「お返し」
五条悟は腕を前へ振った。
超質量を持った石礫の返球が、空を切りフリーレンへと向かっていく。
その口が動いた。
――――
灼熱の災禍が空間を埋め尽くした。
空間を息をすることも許されない極限の空間。
石はほんの一瞬のみ姿を保つことを許され、しかし液化することもなく、一気に気体、さらにその先へと化す。
だか五条悟の無限は、それらを阻み、露ほども寄せ付けなかった。
しかし五条悟は知っている。
――――
空間を削り取る音。
業火の中より飛び出す奔流を。
蒼にて回避する。
それは無限を貫き僅かに腕のみを掠めた。
この程度ならば反転術式を回すまでもない。
――――目眩まし。膨大な魔力のなかに隠された、命を刈り取る魔法。
(やはり早い。でも。避けられないほどじゃない)
地獄の業火がばっと晴れる。
場を美しい閃光が散った。
それは存在することを許されず、昇華した石像の
それに一瞬も目をやらず、これが通らぬと理解したフリーレンは即座に次の手段に移った。
しかし五条悟、その一瞬の攻守交代の隙を見逃さない。
接近。
蒼を以ってゼロ距離に近づける。
五条悟の主観から、フリーレンの姿が一瞬に巨大化する。
(!!)
足りない。
想定していたよりわずかに手前。
五条悟の体が停止する。
そこで、五条悟は自らの術式の異変を悟った。
(中断された?)
フリーレンにほぼゼロ距離まで近づいた瞬間に。
(術式構造が乱された――――)
フリーレンは、防御魔法を構築していた。
それが、空間を圧縮しようとした蒼を乱している。
六眼がそう告げていた。
身にまとっていた無限もいくらか制御を乱されている。
しかし、拳が届く距離。
(――――殴る)
五条悟は、遠慮なく全力で殴った。
ガラスが砕け散るような音。
防御魔法が音を立てて弾ける。
手に纏った蒼は散らされた。が、しかしそのものの防御性能は、全力の呪力を込めた拳ならば、容易にはいかないが破壊できる程度。
――――
(これ以上は接近できねぇな)
即座に後方に蒼を行使する。
ゾルトラークは空を切り、両者は距離を取った。
五条悟は地面へ着地。
続けて術式を展開した。
(ゾルトラークだけじゃねえ。無下限メタがもう一つあんのか)
脳裏にチラつくかつての記憶。数年前に黒い縄を持つ術師と戦った経験。
フリーレンが言っていた勝つ算段が、もしかしたら現実味を帯びてくる。
「蒼」
五条悟の周りに膨れ上がる十つの無限の虚空があった。
空気も光も、万物はそこへ向けて吸い込まれる。
(じゃあこれはどうだ)
フリーレンへと向かう十つの星。
対して生成されるのは、五つの防御魔法。
三つは防御障壁に衝突し、術式効果を散らされ消失した。
(やはり乱される。術式に同調して効果を分散する仕組みか)
残り七つ。
それらは向きを変えフリーレンへと向かう。
フリーレンは高度を上げた。
そして飛行魔法の速度を上げ、回避行動をする。
それを追う蒼の球。
そして。
「追いかけっこ俺も入れてくれよ!」
複製体の鼓膜を震わせる。
フリーレンの後方に迫る五条悟。
最強の拳が追ってくる。
――防御魔法の全面展開。
瞬時の判断のその直後、拳が直撃した。
蒼が散らされる。
しかし呪力のこもった拳は、ガラスの割れるような音を生じさせた。
五条悟の拳は無遠慮にめり込み、防御魔法の表面を引っ剥がす。
(――――二層!)
貫通できていない。
防御魔法は重ねられていた。
蒼を散らされた拳を、強固に束ねられた二層目の防御魔法が受け止めている。
その瞬間、十二門の魔法陣が張り巡らされた。
花びらのような紋様。
そこに込められた術式効果を、六眼は瞬時に悟る。
反射的な離脱。その直後、
複製体を囲むように展開された、幾多の魔法陣からの全体攻撃。
八つの蒼は瞬時に飲み込まれる。
そして、消滅した。
(――――?)
違和感。
今、五条悟の目に映った現象。
(蒼が――――)
しかしその思考の隙を、フリーレンも見逃さなかった。
十二門のゾルトラークの魔法陣は保ったまま、十二筋の破滅の魔力が、五条悟へと放たれる。
(もうそれは慣れた。避けられる)
蒼の加速により、ゾルトラークは五条悟の遥か後ろに着弾した。
――
フリーレンのもう一斉射。
――
三射目も、着弾するまでもなく避けられる。
――
しかしフリーレンはさらに続ける。
――――
避ける間もなく新しい奔流の追加。
魔力が空間の密度を増していく。
――
――
――
――
まるで流星の舞う星空のように。青い魔力の筋が空間を埋め尽くした
しかしその実体は、死のみを残す殺人の星。
五条悟の主観からは、自らの周りを追尾する即死の弾丸が乱舞していた。
飽和攻撃。
まるで死に包みこまれているような。
五条悟の纏っている無限の表面がチリついた。
迫ってくる
奔流の流れを読み、それに沿っていくように回避を行う。
フリーレンは更にゾルトラークを追加し続けた。
五条悟の眼の前にそれが迫る。
原子レベルの六眼による蒼の制御。それによる回避。
それはゾルトラークの筋にほぼ体を沿わせるように、五条悟自身を操った。
ほぼゼロ距離。五条悟の目の前に、
六眼は、それをかつてないほどの距離で注視した。
死の魔力だった。
しかしどこまでも美しいのは、その術式構造。
顔付近の無下限を、いとも容易く吹き飛ばしてくるその術式効果。
――――これを作った者は、果たしてどれだけの研鑽を積んだのか。
――――この無下限を容易く貫く魔法を創り出すなんて、冗談じゃない。宿儺でもヒントがあって、あんだけかかったんだ。
――――おそらく、人間のその命のなかでは、到底かなわない所業。
しかし、ニッと五条悟は笑った。
「でも当たんなきゃどうってこたねぇんだよ」
果てしなく続く絶え間のない攻撃の連鎖の中、五条悟は、蒼による確実な回避を実現しつつあった。
致命打にもならない、ただ呪力を少しずつ削るだけの消耗戦。
五条悟は思考していた。
(これだけ見ればもうわかる。この魔法は、もう僕を捕らえられるほどの速さも密度もない)
そして少しずつ五条悟の動きから無駄が消えていく。
間もなく慣れることができる。
そして、五条悟は気づいていた。
(隙があんな)
何度も放たれたゾルトラーク。その術式行使のその瞬間だけに、フリーレンにほんの小数点以下の隙が生じる。
自らの体を包み睨めつけ監視するような感触が、その瞬間だけなくなるような。
複製体も、同時にこの攻撃の無駄を悟る。
人を殺す奔流は、一気に晴れた。
青みがかった流星は姿を消し、両者は再び互いの姿を
――――速攻戦。
全力を持って、この目の前の
でなければ、勝てない。
こいつは、自分の弱点に気づいている。
「いいね。楽しくなってきた」
五条悟は、口を吊り上げた。
フリーレンは右手に莫大な魔力を集中させる。
五条悟の障壁を確実に貫くための、単純明快な方法。
――――
漆黒の虚空が、その場に形成された。
もし続きを書くとしたらどちらがいい?(2026/02/15より)
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五条悟が全てをねじ伏せバトルしまくる
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フリーレンぽく人の心を知りながら旅をする
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上二つをいい感じにバランス取った話
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好きにやっていいよ
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そんなことよりプリン食べたい