もしも五条悟がフリーレン世界に転生したら   作:ケンタ〜

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孤高の先

 顕現する、最強の最高。

 

 煌々と映し出される無量の光。

 

 二十余年間、最強の極致。

 

 空間の外殻を全て引き込むように領域を展開した。

 侵入も、脱出もそう簡単にできないように。

 

 フリーレン、その複製体。

 

 その脳に、果てない濁流が流れ込んでいた。

 

 ――――――!!

 

 情報の洪水。

 

 複製体の精神防御が全力で稼働する。

 

 しかしあまりにも強大。あまりにも無謀。

 

 五条悟の心象風景に投影される無限の情報量を覗き見るには、あまりにも心もとない守り。

 

 中にある精神防御網が、その端からまるで紙くずのように流されていく。

 

 千年間の精神防御の結晶。

 

 しかしそれはその領域の前に、あと五秒も持たないほどに追い詰められていた。

 ただ単純な、圧倒的な物量によって。

 

「術式反転」

 

 しかしもう一秒もなく、五条悟は決着をつけようとしていた。

 

 ――――――――――

 

 フリーレンの思考が押しつぶされる。

 

 無量の波の処理。強制される無限回の知覚と伝達。

 腕一つを動かすこともままならない。

 

 精密に模倣された心の働きに焦燥感が走る。

 

 自らに何が起きたのかも理解するヒマがない。

 

 対処法を考える隙もない。

 

 それ以上に、最早意識というものが爆ぜそうになる。

 

 ――――赫

 

 赫い虚空が無慈悲に放たれる。

 人体に直撃すれば、一撃で形を保ってはいられない。

 ましてや、防御も回避もままならないフリーレンにとっては。

 

 六眼はフリーレンの魂の核に注視していた。

 そこに生まれるはずの力の起こり。

 しかしなにもない。最早防御魔法の展開どころか、魔力の集中による防御もない。

 

(――――終わりか)

 

 圧縮された時間。

 

 五条悟の中に、深い落胆の色が広がった。

 

 ――想像を超える戦いではなかった。

 

 超越者同士の良い戦闘ではあったが。

 

 やはり、あの最期の戦い(・・・・・)と比べてしまえば。

 

(――――でも、楽しくはあったよ)

 

 それは認める。良い戦いだった。あの戦いを除けば、これまでにない戦いだった。

 圧倒的な技術量と多種多様な魔法。

 摩虚羅より確実な無下限の突破とそのヒリつき。

 圧倒的な手数による攻めの応酬。

 

 しかし結局。自分よりは。

 その『孤高』を満たし、並ぶことができるほどでは、無かった。

 

(………………)

 

 五条悟は静かに複製体を見つめる。

 赫が爆ぜ、その肉体が散る所を確認するために。

 

「――――じゃあね」

 

 圧縮された体感時間の中で五条悟はそう言った。

 

 赫が、ゆっくりと複製体に近づいていって。

 そして。

 

 更に、減速する。

 

 フリーレンの、その目の前で。

 

 五条悟は違和感を覚える。

 

(――――?)

 

 赫の術式の反応に。

 

(なんだ? それに僕はすでに発散の術式命令を出してる)

 

 赫が反応しない。

 

 体感時間のせいではない。

 

 赫が炸裂しない。

 

(止まっている?)

 

 フリーレンの前で、赫が停止していた。

 

 六眼がそれを凝視する。

 

 それは抑え込まれているかのように、空中で震えながら停止していた。

 

 五条悟は瞬時に領域の中を精査する。自らの領域の中、何か違和感があればすぐに分かる。

 

 しかし、何もない。異常はなにもない。

 

 自らの領域のなかで、赫はより精度を増し、確実にフリーレン(複製体)を討つはずだった。

 しかし、動かない。炸裂しない。

 

 原因が特定できない。

 

(魔法? だったら、なんのだ。呪力を感じない)

 

 浮かび上がる、一つの可能性。

 

(魔法でも、呪術でも、ない?)

 

 この六眼をもってしても、その異質なものを確認できない。

 

 もしくは。

 

 自分はこれを、呪術と(・・・・・・)認識できていない(・・・・・・・・)

 

(ありえない。ここは僕の領域の中――――)

 

 意識が寸断される。

 

 五条悟の視界が横転する。

 身体が浮遊感を覚える。

 

 衝撃。

 身体が叩きつけられた。

 

(――――領域の外殻……)

 

 自分の領域の最も外側に叩きつけられた。

 

 しかしダメージはない。たたきつけられたのは自分の領域。無限の防御もある。

 

 しかし。

 

(っ、これは……)

 

 動かせなかった。

 

 全身が、抑えつけられているような。

 尋常じゃない強制力。

 叩きつけられてなお全身が軋む。

 

 呪力を腕に込めて強化して、更に力を込める。

 そうして辛うじて、体を動かせるほどの圧力だった。

 

 ならば、と蒼を展開して行動を取ろうとする。

 

 しかしその時、領域全体が軋んだ。

 

「まさか……」

 

 フリーレンのその奥義。

 それは五条悟の領域を包み込むように展開していた。

 外から、圧力を加え、それごと押しつぶさんとするように。

 

(領域は、外からの攻撃に弱い…………)

 

 五条悟の身体に熱いものが走る。

 

(まだ、先があるのか)

 

 追い打ちのように、フリーレンの周囲に十門近くの魔法陣が展開された。

 

 ――――人を殺す魔法(ゾルトラーク)

 

 白い刃が突き刺さった。

 

 地に、壁面に、領域の天井に。

 

 バリバリと、術式そのものを焼き尽くして。

 史上初めての貫通魔法。それは領域の硬度すら無視しきって、それを中から焼き尽くす。

 

(これほどとは――)

 

 領域に白い線を引き、着実に、破壊へと。

 

 領域の外殻に、致命的なヒビが入った。

 

「――――蒼」

 

 これより一秒後、領域は崩壊する。

 

 そして、術式の使用が困難になってしまう。

 

 外からの光が、領域の中に差す。

 

(――――出力全開)

 

 領域が崩れ、脳の一部分が熱くなり、焼き切れる

 

 ――――その直前。

 

 五条悟は、複製体の前に到達した。

 

 今度こそゼロ距離。

 構える右腕、込める渾身の力。

 

(殴る!!)

 

 拳を、腹に叩き込む。

 

 黒い稲妻が起こった。

 理を爆ぜる威力。

 刹那よりも速い呪力の衝突。

 

 紙くずのように。

 フリーレン(複製体)の身体は崩壊する領域の内殻を貫いて、壁面へと衝突した。

 

 ――――領域の崩壊。

 

 フリーレン。その身体強度で喰らった全力の蒼と黒閃。

 その腹部には、致命的なダメージが入っていた。

 

 対する五条悟。

 最強の無下限呪術の焼き切れ。

 フリーレンの、あらゆる魔法に対する対抗を失う。

 

 しかし、黒閃により、そのボルテージは数段上がっていた。

 

(――今殺す!)

 

 全速力、五条悟は地面を蹴る。

 

(まだ無量空処のダメージがある。腹も貫かれて満足に動けないだろ。心臓を――いや首を跳ねる! その後奥の扉の発生源を破壊する!)

 

 壁にめり込み、動けぬフリーレン。

 

 無量空処を受けた時間は、ほんの数秒。

 

 そしてその処理装置()には、千年生きた脳をしても、処理に時のかかる情報量が流れているはずだった。

 

 しかし。

 

(――――!?)

 

 その背後に繋がる気配を五条悟は感じた。

 

 ピクリとフリーレンの指が動く。

 

 経験がある。五条悟はその事象を思い出す。

 両面宿儺と戦闘した、その時の経験。

 

 自らの無量空処を、他の魂(ほかのだれか)が肩代わりしていた事実――――

 

 ――――複製体を出現させる魔物(シュピーゲル)の気配。

 

(外付けの演算装置――――?)

 

 五条悟の六眼にはそう映る。

 

 生きた演算装置であるそれ(・・)は即座に決断を下していた。

 自らと他の複製体十数体に無量空処の情報を全て移す代償(縛り)を。そしてその代わりに、フリーレン(複製体)の脳に明瞭な思考を与えることを。

 

 複製体(フリーレン)の右手が、天へと動く。

 

(マジか)

 

 ――――事象の地平線を創る魔法(ジングラリテート)

 

 天井下の空間がぐにゃりと歪んだ。

 崩壊した領域の破片が螺旋を描いて吸い込まれる。

 それは瞬時に黒色を帯び、黒い虚空を形成した。

 

 五条悟は足場を失った。

 

 それの生み出す質量は、地面から意味を奪う魔法。

 

 内臓はふわりと浮き、平衡感覚は消滅する。

 

 頭上に展開された黒い虚空は、まるで意趣返しのように。

 五条悟の体を、吸い込んでいく。

 

 ――――六眼が、嫌でも伝えてくる。

 

 あれは、入ったら終わりのものだと。

 

 全ての物理法則が通用しない。

 無限の収縮に、自分が囚われると。

 

(――――上等だよ)

 

 五条悟は笑う。

 

 その鮮烈に蒼い瞳と共に、黒い虚空へと吸い込まれていった。

もし続きを書くとしたらどちらがいい?(2026/02/15より)

  • 五条悟が全てをねじ伏せバトルしまくる
  • フリーレンぽく人の心を知りながら旅をする
  • 上二つをいい感じにバランス取った話
  • 好きにやっていいよ
  • そんなことよりプリン食べたい
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