もしも五条悟がフリーレン世界に転生したら   作:ケンタ〜

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五条悟vs五条悟

 今、四度の黒閃を経て、かつてないほど呪力の核心に近づいている。

 

 最早機会は今しかない。

 

 自らそのものを超える機会。

 自らが自らよりも速く成長し、超える時。

 

(しかし、なんだ)

 

 五条悟は思う。

 

 これまで自らを教える者は皆自らより弱かった。

 

 もちろん彼ら(先生たち)から学ばなかったことがなかったということは決してない。

 しかし超越者の領域において、自らを教えた者は存在しなかった。

 

 本来人間ならば成長する際に誰もが持つ目指すべき『手本』。

 

 五条悟にはそれがない。

 

 何故ならば、自らが最も高いところにいたのだから。

 

(僕の、先は)

 

 自らより強かった存在。

 

 寝ても覚めても一つしか思いつかない。

 

『両面宿儺』

 

(癪だ)

 

 五条悟は笑う。

 

 自らを屠った存在。

 

 自ら(現代最強)をして全てを出し切らせることはできなかった存在。

 

 しかし、確実に自らを超える存在。

 

 最早それしかない。

 

 今、現代最強五条悟は史上最強に倣う。

 

(アレは、どうやるんだ?)

 

 自分が知らない呪術の極致。

 

 領域を超えるさらなる領域。

 

 自らの体という領域を拡張し結界に投影するのが、本来の領域。

 

 しかし両面宿儺はそれをしない。

 

(どうやって?)

 

 恐らくまだ足りない。

 呪術師としての至りが。

 まだ掴めていない呪力の核心が。

 

 両面宿儺に届くには。

 今の自らでは。

 

 術式順転『蒼』。

 

 自らの末端より術式を行使し物質を収縮させる蒼の虚空。

 しかし閉じない領域のように空間そのものに直接作用しているわけではなく、飽くまで自らの手先の延長線上として発動する。

 

 術式反転『赫』。

 

 これも同じ。自らの中で術式を行使し、それを現実へ持ってきているのみ。

 

 世界そのものに投影した閉じない領域とは、何かが違う。

 

 『術式』である限り、現実の物体の影響を受け、防がれ、防御魔法には術式に散らされる。

 

 しかし閉じない領域は。

 領域を結界で囲み、完全に密閉したとしても、宿儺の領域の効果は外部にまで及んだ。

 

 あらゆるものを無視し強制する究極の領域。

 

(何かが足りない)

 

 その何かを掴まなければならない。

 世界そのものを、外から塗り替える何かを。

 

 つぅ、と鼻から赤いものが垂れる。

 それを拭って、五条悟は掌印を結んだ。

 

「領域展開」

 

 ただ何度も泥臭く。

 五条悟、四度目の領域展開。

 脳の限界が来るまで、残り一回。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 零落の王墓、その途中、巨大な円形の空間の中。

 濃密な呪力の残穢が立ち昇る空間。

 そこに足を踏み入れるものがいた。

 

「これは…………」

 

 二級魔法使いメトーデ。

 デンケンたちとの作戦に則りフェルンの複製体を捜索している中、形成された巨大空間を見つけていた。

 

「暴力的なまでに濃密な、魔力のような……」

 

 恐らく並の魔法使いや魔物ならば、それだけで絶対に近づくのをやめるほどの密度。

 大暴れした五条悟と複製体、そしてフリーレンの濃すぎる力の残り。

 

 それだけで魔力探知がいっぱいになる。

 その中にメトーデは幾つかの魔力を見つけた。

 

「フェルンさん、ヘルファさん……ヒルフトさん」

 

 メトーデは円形の中心部に接近する。

 そこには倒れているフェルンとヒルフトがいた。

 

「大丈夫ですか」

 

 二人の中心にはヘルファがうずくまっていた。

 傍にやってきたメトーデに反応しない。

 

(外傷はない……)

 

 それはヘルファだけでなく、周りに倒れているヒルフトやフェルンもそうだった。

 

(これは……)

 

 メトーデはヘルファに向かって言った。

 

「ヘルファさんが治療したのですか」

「………………」

 

 ヘルファは、うずくまったままに、何も答えなかった。

 

 メトーデの目には、人の身体に強烈な呪力の残穢がこびりついているのが見えた。

 それを呪力とは認識せずとも、強い力による攻撃の残り香と理解する。

 しかしそれにもかかわらず、傷が残っていなかった。

 

「聖典を持っていたのですね」

「………………」

 

 メトーデの語りかけに、ヘルファは何の反応も示さなかった。

 

「…………フリーレンさんは?」

 

 ぴくりとヘルファの体は動く。

 その指がほんの小さくだけ動いて、後ろの方を指さした。

 

「……ありがとうございます」

 

 そちらの方へメトーデは歩く。

 

(魔力探知にフリーレンさんの魔力が感じられない……)

 

 先程までの戦いが嘘だったかのように。

 

(魔力切れ……? もしかすると、サトルさんの複製体に……)

 

 しかしその理由はすぐに知ることができた。

 

 そこに、倒れているフリーレンの姿があった。

 

 その様子がおかしい。

 

 まるで灰色に固められたかのように、フリーレンの身体は硬直した状態で横になっていた。

 

「自らに封印を…………」

 

 その腹部には見てわかるほどの風穴が開通していた。

 魔王を倒した大魔法であるフリーレンをこれほどまでに追い詰めた実力者。

 

「サトルさんの複製体は、一体どれほどの実力を……」

 

 場に残る膨大な暴力の気配の中でメトーデは独りごちる。

 

「…………」

 

 この暴力的なまでの残穢。

 ヘルファがなぜ攻撃すらされなかったのか。

 メトーデはその理由を察した。

 

 そして、再びヘルファのところへと歩を進める。

 

「ヘルファさん、どうしますか」

「…………」

 

 ヘルファは全く動かなかった。

 じっとうずくまって、少しの反応も示さない。

 メトーデは囁くように言う。

 

「瓶を持っていないのなら、私の分を差し上げます」

「………………」

 

 これだけ自信を粉々にされて、なおも逃げていない理由。

 それを知りながら、メトーデは口にする。

 

「それでも合格をあきらめたくないのなら、私たちの作戦に加わって欲しいのです」

 

 ヘルファは、ほんの小さくつぶやいた。

 

「なんと?」

 

 しゃがみ込んで、メトーデは耳を傾ける。

 

「…………」

「ヘルファさん?」

「……………………ください」

 

 もう、消え入ってしまいそうな声。

 

「ヘルファさん」

「もう、いいんです」

 

 メトーデが説得を試みるまでもなく、ヘルファは決断していた。

 

「…………そうですか」

 

 胸もとに手を入れ、脱出ゴーレムの入った瓶を指にする。

 

「ヘルファさん、手を」

「ありがとうございます」

 

 ほんの僅かにだけ目を上げて、ヘルファはその瓶を受け取った。

 

「ヘルファさん」

「…………はい」

 

 真っ赤になった目。

 心の底まで自信を破壊し尽くされて、誰も見ていない場所で、ずっと泣きじゃくっていた目。

 

「作戦に必要です。一番戦いたくない相手を、教えてくれませんか」

「……………サトル」

「それは………………」

 

 メトーデは面食らう。

 

「…………誰も勝てません」

「…………分かってます。ほかに一番戦いたくないのは、ラオフェンさんです」

「その複製体はもう討伐済みです。他の――――」

 

 しかしその瞬間、メトーデは動きを止めた。

 直後、メトーデの展開した防御魔法に攻撃魔法が爆ぜる。

 

「……! ヘルファさん、複製体の魔力が……!」

 

 魔力探知に三人の魔法使いの複製体が現れた。

 

(ラオフェンさん、ヒルフトさん、ヘルファさんの複製体……復活したのですか。ラオフェンさんの複製体は、私も戦いたくない相手ですね……)

 

「ヘルファさん、瓶を割るのを待っていただけますか。私一人で倒れているお二人を守りながら戦うのは少し厳しいです」

「…………っ」

 

 ヘルファの瓶を握った手が小さく震える。

 その様子を、メトーデは真剣に見ていた。

 

「お願いします」

「…………わかり、ましたっ」

 

 ヘルファはその瓶を、自分の腰のポーチに入れた。

 体を起こし、魔法杖を召喚する。

 

「ありがとうございます。私は攻撃に専念しますので、ヘルファさんはお二人の防御、そしてできれば援護をお願いします」

「っ…………」

 

 ヘルファは、震える魔法の杖を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失敗!」

 

 四度目の領域展開。爆ぜる呪力。

 

 閉じない領域は成らなかった。

 

 五条悟は思考する。

 

(どう頑張っても結界がないとできねえ! そもそも領域ってのが術式を結界に付与するもの、付与する対象がなきゃ領域としてそもそも成立しねえ!)

 

 五条悟は術式を構築しながら辺りを見回す。

 

(さすがにフリーレンは領域の外か。僕はフリーレンを入れるように展開したけど、向こうに近かったからそっちが優先されたか)

 

 五条悟は片手を前に出した。

 五本指の先に、赫い虚空が一斉に構築される。

 

 五つ、全てが複製体に向けて放たれた。

 

 それは縦横無尽に駆け回り、防御術式の展開を掻い潜りながら複製体へと迫る。

 

 炸裂。

 

 複製体が噴煙に包まれる。

 

 その噴煙から、超速で反転術式を回した複製体が飛び出てきた。

 その身体には漲るばかりの赫の虚空。

 

 複製体の赫の拳を五条悟は受け止める。

 その身に蒼の呪力を纏いながら。

 

「もっかい!」

 

 蒼と赫が混ざり、局所の茈色の質量が爆ぜる。

 またたく間に、茈色は空間を破壊した。

 

 領域が崩壊する。

 

 再び、二人は通常空間に躍り出た。

 

(フリーレンは)

 

 その直前。

 五条悟が反射的にその姿を探そうとした途端、三半規管が揺れた。

 

「うおっ!」

 

 術式が焼き切れる直前に行使された術式。

 五条悟の身体は、扉へと叩きつけられた。

 

「っと!」

 

 最奥の間の外に引き出され、着地する。

 

フリーレン(複製体)が相当限界に近いっぽいな。もうこの戦いの流れ弾にすら対処できないほどのダメージか)

 

 もしフリーレン(複製体)が万一にも倒れれば、最奥の間の向こうのシュピーゲルのいる空間への扉が開き、零落の王墓は危機にさらされる。

 

 そうなれば、五条悟は五条悟(複製体)を無視してそちらを破壊しに向かえる。

 

「いいよ。ノッてあげる」

 

 五条悟、全身に反転術式を巡らせ組織の再生にかかる。

 

 複製体が一瞬遅れ、最奥の前の部屋にやってきた。

 

「あ」

「あ」

 

 五条悟、そしてもう一人が声を上げた。

 試験官、ゼンゼがそこにちょこんと座っていた。

 一瞬の意識の逸れ。五条悟の頬に拳が入る。

 

「いってぇっ!? なんでいんの!?」

「私は――――――」

 

 しかしそんな問答の暇はなかった。

 

 複製体の二段目の拳を受け止める。

 

「ッ!」

 

 展延での防御。しかし受けた右腕が軋む。

 身体は出口の方へと飛ばされた。

 

 複製体は、再び肉薄をして来た。

 

「ごっこだな」

 

 五条悟は呪力を研ぎ澄ます。

 その意識の矢印を自らの後方に向けた。

 

「追いかけっこしようぜ」

 

 五条悟は駆け出した。

 身体を呪力で強化し複製体は追う。

 

 最強と最強、史上最速の走り合い。

 

 目算一〇〇メートル、ダンジョンの長道。

 

 そこへ、二人は二秒でたどり着く。

 

 呪力で体を強化しながら曲路を曲がり、両者は拳を交える。

 五条悟が右拳を繰り出す腕を、複製体はガッチリと掴んだ。

 

「おっ」

 

 背負い投げ。

 

 五条悟の背が壁面にドゴンとめり込む。

 

「悪手だろ」

 

 呪力で強化した右脚、複製体の顔を蹴り上げる。

 

 瞬時に体を起こし。腹部へ一発。最強同士の呪力が爆ぜる。

 

「ノッてきたね」

 

 これより三秒後、複製体の術式は回復する。

 

 領域の押し合いに備え、複製体は呪力を高ぶらせた。

 

 それに対する本体五条悟。

 

 術式の回復を(・・・・・・)行っていなかった(・・・・・・・・)

 

 複製体が掌印を結ぶ。

 莫大な呪力が爆ぜ、領域は展開された。

 

 五条悟は何もしなかった。

 

 邪魔をするものは何もない。

 

 五条悟は、完全に領域に引き込まれる。

 

 簡易領域の展開もしない。展延も発動しない。

 

 剥き出しの五条悟に、無量空処が叩き込まれる。

 

「……………………!!」

 

 脳が引き裂かれたかのように悲鳴を上げた。

 一秒ごとに流れ込む数年分の情報量。

 

 五条悟は、ただ。

 大きく目をあけて、無量空処を()ていた。

 

 全てをうつす智慧の瞳(六眼)は『自ら』の領域を視る。

 

 大量の情報を受けながら六眼による情報処理を用い、情報を捌く。

 しかしそれでも、五条悟の脳にははち切れんばかりの情報が流れ込んでいた。

 

 ――――――――?

 

 なぜ、受ける?

 

 複製体は疑問を持つがしかしすぐに振り払う。

 まずは何よりも最大の敵である自分を殺す。それが何よりも優先すべき事項。

 

 しかし領域を展開して三秒。複製体の領域は必中効果を消失した。

 

 ――!?

 

 予想外。無量空処を精査する。

 

「あー、頭痛ぇ」

 

 最強(五条悟)のセリフ。複製体はそちらを向いた。

 パキパキと、首を回す五条悟。

 

「宿儺はよくこれで戦えたもんだ」

 

 五条悟への必中効果がオフになっている。

 しかし五条悟の周りには何も展開されていない。

 それにも関わらず領域は自らの言うことを聞かない。

 

 術式命令が、出すまでもなく散らされている。

 

 複製体はようやく理解する。

 

 自らの領域結界に潜り込ませるように、異物が入り込んでいた。

 

 五条悟本人による呪力。

 防御術式が、領域の結界をぐるりと取り囲むように展開されている。

 

 結界としての性能そのものを散らす術式。領域の制御ができない。

 

「赫」

 

 不安定になった領域に、最後の一押し。

 

 床面に赫は爆ぜ、脆くなった領域に内側から穴を作った。

 

「使い勝手いいね、この防御術式。呪力はゴリゴリ削れるけど」

 

 その穴に五条悟は飛び込む。

 

「虚式」

 

 それと同時に指を構えた。

 

「茈」

 

 飛び出た外からの一押し。

 

 複製体の領域が、粉砕される。

 

 ――――――!!

 

 複製体は目を見開いた。

 

 膨大な防御術式を展開した五条悟の呪力が、終に複製体のそれを下回る。

 

 しかし、今、五条悟は領域展開の機会を得た。

 

 ――――嘗ての記憶。

 

(僕の無量空処は、『魂』にまで作用した)

 

 閉じない領域を展開した両面宿儺との差。

 

 それは魂の知覚。受肉体であり同じ肉体に魂が複数個あったことによる魂の知覚。

 

 五条悟はそれを、『自ら』による魂への訪問(無量空処)から、真に理解した。

 

 五条悟は知る。

 

 魂と、世界との作用を。

 

 両面宿儺と羂索がたどり着いた場所を。

 

 魂を理解している者とそうでない者との差を。

 

(まだ、領域は展開しない)

 

 五条悟、掌印を結ばない。

 

「蒼」

 

 接近。

 

 攻める。

 

 無下限呪術を以ってして、術式の焼き切れた自分(複製体)を攻める。

 

(まだ足りない)

 

 魂の知覚に至った。

 しかし両面宿儺と同じ領域へ至るにはまだ。

 何かが足りない。世界の理解へ。

 

「シッ」

 

 複製体を地面へ叩きつける。

 小さなクレーター。反撃を試みる複製体。

 

「出力最大」

 

 満身の呪力。

 

「――――――――蒼!!」

 

 ダンジョンの中に、一直線に巨大なトンネルが形成された。

 

 複製体は呪力を纏って耐える。

 五条悟はすぐにそれを解除した。

 

(蒼じゃ、生身の僕でも殺しきれない)

 

 それは、自らがやってみせたこと。

 

位相(いそう)波羅蜜(はらみつ)光の柱(ひかりのはしら)

 

 五条悟の指先に、赫い虚空が迸る。

 

 出力全開。

 

「赫」

 

 複製体へ向かって、一直線へ。

 

 青い障壁の展開。

 炸裂。

 赫い虚空が爆ぜる。

 

 最大の出力の赫は、たった一枚の薄い青い壁を打ち破る。

 それと同時に、五条悟は複製体に接近していた。

 

(コイツに勝つ方法)

 

 圧縮された体感時間の中、最強は思考する。

 

(蒼じゃ勝てない。赫じゃ防がれる。肉弾戦も決定打にならない。領域ですらも)

 

 自らに勝つ方法。

 

(術式は纏わない。呪力だけ。全力で制御。ブチかます)

 

 防御術式の残骸がキラキラと散る。

 

 打撃との誤差0.000001秒以内。

 

 その時間内に呪力が衝突した時にのみ生じる『空間の歪み』。

 

 自らの呪力を制御しただけでは決定とならないもの。

 

 相手の体に纏う呪力も関わってくるもの。

 

 故に、黒閃を狙って出せる術師は存在しない。

 

 五条悟でさえも。

 

 しかし。

 

 しかし理解し尽くしている。

 

 五条悟は、『自ら(・・)の呪力の性質を(・・・・・・・)

 

(掴む)

 

 彼は、黒い火花を、支配する。

 

 今この瞬間のみ、狙って出せる男へ。

 

 五条悟。

 

 拳を突き出す。

 黒い火花は、微笑んだ。

 

 

 

 ――――――――黒閃!!!

 

 

 

 複製体の身体に黒い火花が散り一直線に吹き飛ぶ。

 

 ギュンと五条悟の体に呪力が巡る。

 

 ドクン、と。

 

 五条悟の、心臓が跳ねた。

 

 五度の黒閃。

 

 人生史上最高潮。

 

 何かをつかんだ感触。呪力の、核心。

 

(行ける)

 

 彼は確信する。

 

 かつてないほどの自信と共に掌印を結ぶ。

 

 背後に、智慧の瞳が開く。

 

 全てを理解する、智慧のシンボルが。

 

(あの戦い以降、何度も考えた)

 

 この世界に来てから三ヶ月。思い出さぬ日は無かった。

 

 両面宿儺との再戦。寝ても覚めても。それを思い浮かべ、幾度も。

 試し、至らず、なお試し、なお失敗し。

 

 しかし今。

 

 今。

 

 目の前に、自らがいる。

 自らに自らが、その未至を教えてくれた。

 

 五条悟。

 

領域(りょういき)

 

 終に至る。

 

展開(てんかい)

 

 史上三人目の。

 

無量空処(むりょうくうしょ)

 

 閉じない領域へ。

 

 魂を、世界を、全てを知覚した智慧の瞳が開き、無量の宇宙が展開する。

 

 結界を伴わず、この世界そのものに展開し、あらゆるものを無差別に、あらゆるものに強制する。

 

 『逃げられる』という縛り。

 

 五条悟の技量、術式効果範囲は三〇〇メートルにまで到達する。

 

「――――――――ハハッ」

 

 五条悟は笑った。

 

「ありがとね、僕」

 

 掴んだ。その感覚。

 

「気持ちいいな」

 

 天上天下、唯我独尊。

 

 無量の瞳。

 それを中心として爆ぜるように宇宙模様が広がっていく。

 

 術式効果範囲。五条悟はそれを30メートルにまで縮めた。

 

 ――――――――!!

 

 〈無量空処〉

 

 結界を用いた無量空処をも圧倒する情報量が、複製体に流れ込む。

 

「ああ……」

 

 超えた。

 

 五条悟は自らを超えた。

 

 六眼による情報処理すら間に合わぬ情報量の中、複製体はただ、立ち尽くしていた。

 

「本当に、楽しかったよ」

 

 五条悟は、拳を構える。

 

九網(くこう)偏光(へんこう)(からす)声明(しょうみょう)表裏(ひょうり)狭間(はざま)

 

 全力で。自らを成長させてくれた自らへ、敬意を示すために。

 

「虚式」

 

 盛大な花火を、打ち上げる。

 

「茈」

 

 領域の中、120パーセントの茈。

 

 鮮烈な茈色。

 

 発生の瞬間、複製体は巻き込まれる。

 

 極大の茈は上へ、千年前からのダンジョンをいとも簡単に削りながらゆく。

 

 奥に、さらに奥に。

 天井を掘り進んでゆく。

 

 巨大な穿洞が形作られていき、凝縮された完全詠唱の茈により、複製体の意識が消滅する。

 

 茈はなおもその残穢まで掠め取り、その粒子に至るまで、すべてをすり潰して。

 

 あらゆる物を飲み込んで、あらゆるものを取り壊して、茈色の暴力の化身は、地上へ顔を出した。

 

 煌々と胎動する、茈色の恒星。

 すべてのものは、その存在を認識した。

 

「なんだあれは…………!?」

 

 地上に出ていた受験生の面々が、驚愕に声を上げる。

 

 そして茈は、空で爆ぜた。

 圧倒的な呪力の残穢をそこに残して。

 巨大すぎる破壊の閃光をその世に散らして。

 

 五条悟の戦績が、未来永劫に至るまで、零落の王墓に鮮烈に刻まれる、

 

 五条悟(本人)五条悟(複製体)

 

 その勝者、真の五条悟(最強)

 

もし続きを書くとしたらどちらがいい?(2026/02/15より)

  • 五条悟が全てをねじ伏せバトルしまくる
  • フリーレンぽく人の心を知りながら旅をする
  • 上二つをいい感じにバランス取った話
  • 好きにやっていいよ
  • そんなことよりプリン食べたい
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