「はっ、はっ」
息切れ。
しかし、笑っていた。
鼻からぽたりと赤いものが垂れ、地面にぴちゃりと跳ねる。
背後の蒼い瞳のシンボルと共に、領域が消失した。
(まだだ。まだ
体中に呪力を巡らせる。
その瞬間、五条悟はその場から消えた。
五条悟は全身に呪力をみなぎらせ、駆ける。
最奥の間へと。
「あ」
一瞬だけゼンゼのいる場所を通って。
扉を開け放ち、最奥の間へ。
そこにはフリーレンがいる。最早満身創痍、動くことすらままならない体で。
ただ、宝物庫への扉を閉じる魔法を辛うじて保っていた。
フリーレンは、残った力で防御術式を展開しようとする。
「こっちも楽しかったよ」
既にそれを展開する前に、五条悟はフリーレンに辿り着いていた。
五条悟は敬意とともに右手を振るい、生命にとって最も重要な部位を跳ねた。
そしてすぐに意識を奥へ蒼の展開。
扉が開かれた。
その奥にある姿が目にすることが出来た。
ダイヤ型の紫色の魔物。
まるで装飾品のような神々しい見た目。
それ自体に脅威となる防衛機構はない。
「破壊するのが惜しいね」
しかし、それへの敬意を五条悟は払う。
そんな全力で戦った相手へするべきこと。
「また会えるといいな」
五条悟の呪力の籠った拳が、そこにめり込んだ。
ガラスが割れるような高い音。
シュピーゲルの欠片が空に散る。
それは間もなく魔力の粒子と化して、跡形もなく消え去った。
五条悟は地面に着地する。
零落の王墓から全ての複製体の気配が消え去ったのを、五条悟は感じた。
最強の呪術師五条悟。
今この瞬間、零落の王墓を攻略した。
「はあ……………………」
五条悟は息をつく。
その場にすとんと腰を落ち着けた。
金銀財宝の積もる宝物庫の中。
五条悟は、ただ戦いの余韻に浸っていた。
「楽しかったな……」
その拳を、ぐっと握りしめる。
それから、目と鼻に垂れる赤い血をゆっくりとぬぐった。
(三秒無量空処喰らってからの領域展開は、さすがに負荷がデカかったか)
「ま、いっか」
そう言って、五条悟は、満足げに微笑みを浮かべた。
✕
「はっ、はっ、はっ…………!」
(消えっ、消えた……!? 複製体、いなくなった……!?)
「めっ、メトーデさんっ、これって」
「ええ。どうやら、サトルさんがやってくれたようですね」
「よ、よかったぁ………………!!」
ぺたりと、ヘルファは地面にへたり込んだ。
「い、生きて帰れないかと思ったっ」
「ともかく、最深部へと向かいましょう。それが第二次試験の合格条件です」
「は、はい」
「あれ? ヘルファ大丈夫?」
「ぎゃあっ!?」
急遽やって来た声に、ヘルファは大きく飛び上がった。
「さ、サトルさん」
それにメトーデは声をかけた。
急に姿を現したのは五条悟だった。
「おー、メトーデだっけ。おつかれ」
「さ、サトル……っ!」
「大丈夫? フリーレンとか、みんな無事?」
びっくりしているヘルファに五条悟は聞く。
「ふ、フリーレン以外は、無事、だけどっ」
「フリーレン以外は?」
「あ、あそこで、自分に封印をかけてて」
「なるほどね」
そちらに一瞬目を向けて、にやりと五条悟は笑った。
「イカれてるね」
「え、ええ……?」
(死にかけの人に対して……?)
ヘルファはドン引きした。
「まあ、みんな無事みたいでよかったよ。フリーレンたちは僕が担ぐ。最深部で封印解除してもらえればいけるでしょ」
「封印の解除なら、私は少し覚えがあります」
メトーデがそういった。
「そ。じゃ、行こっか。ヘルファ、立てる?」
「こ、腰抜けちゃって…………」
す、と五条悟は手を差し出す。
「あ、ありがとう…………」
その手を取って、ヘルファは顔を上げた。
そんな五条悟の青い目を、ヘルファは見る。
「っ…………」
とても綺麗な目。
どこまでも透き通ってどこまでも見透かして来るような、そんな目。
あの複製体の目とは、似ても似つかない。
しかし、頭の中で、ちらりとあの目がよぎってきてしまう。
「…………」
ヘルファは目を逸らしてしまった。
「ほら、何してんの」
「わっ」
そんなヘルファの手を、五条悟はぐいっと引っ張った。
「行くよ」
「う、うん…………」
「合格したいんでしょ」
「そう、だけど…………」
「じゃあ行くよ」
「………………」
歯切れの悪い顔をしながらも、ヘルファは五条悟と共に、最深部へと歩を進めていった。
✕
「これにて第二次試験を終了とする。約束通り、この場にいる全員を、第二次試験の合格者としよう」
ゼンゼの凛とした声が場に響いた。
辺りには目に眩しいほどの金銀財宝。
零落の王墓の最深部の宝物庫だった。
「…………約一名、固まって動かねぇのがいるみたいなんだが」
そう言うのは、ヴィアベルだった。
「すみません、封印が予想外に強力で、てこずっていまして」
地面に横たわっているフリーレンの体。
その側でメトーデは魔法の杖を構えながら、封印解除に勤しんでいた。
「ほえー。この封印術式見たことないな。やっぱり呪術とは理論構築が違うか」
そして、五条悟はその側で封印を興味深げに見ている。
ゼンゼが口を開いた。
「…………ともかく、命を落とすもの無く試験を終えられたのは幸いだった。各自、三次試験に備えて休むといい。それでは解散」
「うわっ封印解けたから出血がすっごい」
「サトルさん治癒の魔法使えると聞いたのですが」
「いやアレは自分だけしか直せないやつだから」
「仕方ありません、聖典でなんとか……」
「あっ、私も聖典持ってます」
「ああっフリーレンさまの顔色がどんどん悪く」
フリーレンに群がっている五条悟、メトーデ、ヘルファ、フェルン。
メトーデとヘルファが聖典を取り出して、二人がかりでフリーレンの傷を塞いでいる。
「………………これ、帰ってもいいんだよな?」
「…………一応」
ヴィアベルの質問に、ゼンゼが呆れたように答えた。
長めのあとがき(かなり長いし自分語りも入っているので読み飛ばしてもらって構いません)
ここまで読んでいただきありがとうございます。
作者として当初から描きたかったものは、これで以上になります。
今年のはじめから書きたくなって衝動で書いた二次創作で、そのため色々粗いところもあったと思います。
それにも関わらず、付き合ってくれた皆様方、本当にありがとうございました。
今まで書いた二次創作の中で、一番多くの方に読んでいただけました。本当にありがとうございます。
はじめはただフリーレンと五条悟の魔法呪術の巨大なバトルが書きたくて、この二次創作をはじめました。
そこで五条悟というキャラクターをフリーレン世界のどこで活かせるかと考えて、出てきたのが零落の王墓でした。
フリーレンという作中トップのキャラクターと五条悟が合法的に全力でやりあえる場所、といえば……という感じに。
なので、物語開始して場面は一気に転換して、一級魔法使い試験編から始まっています。
また、フリーレンと五条悟のバトルの中で、五条悟の強さに関するフラストレーションが溜まってしまった方もいらっしゃるかと思います。
個人的には五条悟の強さはフリーレン世界に合わせてちょっとずつ段階的に出し、しかし最後には必ず書き切るつもりでいました。
そこはもう少し、この二次創作の中での五条悟の戦闘のやり方というか、スタンスのようなものを最初に書ければよかったのかなと思っています。
でも、最終的には、零落の王墓で五条悟が全力を出し、成長し、最強として新しい段階に至れた、という話を書くことができてよかったと思います。
作者的に、本編でのあの結末になった五条悟を完全燃焼で勝たせたい、という思いがあって書いた二次創作でした。
ひとまず書きたいところを書けて安心しました。
途中で投稿期間が空いた時もありますが、それにも関わらず読んでくださった方々、ありがとうございます。
これからは数話ほどあとのお話が続いて、ひとまず終わりになるかと思います。
そこから続くかはわかりません。書きたいシーンは沢山あるのですが、読んでもらえて満足してもらえる完成度になっているかは分からず……もしかしたらすぐに書くかもしれませんし、書かないかもしれません。
応援の感想、評価などくださった方々、本当にありがとうございます。この作品を書く中で大変励みになり、おかげさまでここまで書くことができました。
最後までお付き合いいただければ幸いです。
もし続きを書くとしたらどちらがいい?(2026/02/15より)
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五条悟が全てをねじ伏せバトルしまくる
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フリーレンぽく人の心を知りながら旅をする
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上二つをいい感じにバランス取った話
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好きにやっていいよ
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そんなことよりプリン食べたい