大陸魔法協会宮殿、玉座の間。
そこに、数多の魔法使いたちが集まっていた。
既存の一級魔法使いと、そこに新たに加わる魔法使いたち。
「お前はどんな魔法を望む?」
「姉貴が見つかる魔法で」
ゼーリエが魔法を発動すると、開いた手の上に魔導書が厳かに出現した。
「これを読めば、お前はどんな魔法でも瞬時に習得することができる。例え習得に1000年かかる魔法でもだ」
「そ。ありがと」
合格者の一人、ユーベルは魔導書を手に取ると、あっさりと玉座から離れた。
「あ、フェルン」
続いて、フェルンが玉座へ歩く番だった。
隣に立っている五条悟に、ヘルファは小声で話しかける。
「どんな魔法望むんだろうね」
「さあ。あの子結構強そうだし、そういう感じの魔法じゃない?」
すると、ゼーリエの前に立ったフェルンは言った。
「お洗濯の魔法ください」
「お前正気か?」
嫌そうな顔をしながらも、ゼーリエは手に魔導書を出現させる。
「ありがとうございます」
嬉しそうに受け取ったフェルンは、玉座から離れると、ヘルファのほうに駆け寄った。
「ヘルファさん、あとで試してみませんか」
ヘルファは目を点にした。
「え、そんな魔法でいいの……?」
「旅のお供には必須の伝説級の魔法ですよ。ヘルファさんも合格したら貰ってみてください」
「ど、どうかな……」
はぐらかすようにヘルファは笑った。
「ゴジョウサトル」
そして、その名前が呼ばれた。
ヘルファは見上げる。
「サトル……」
「行ってくる」
「う、うん」
緊張の面持ちで、ヘルファは送り出した。
「ねえ、フェルン。あの人、どんな魔法願うんだろ」
「皆目見当もつきませんね。世界を破壊し尽くす魔法とか……」
「ありえな……くはないのが怖いな」
ヘルファは呆れたように口にした。
そう言っているうちに、五条悟がゼーリエの前に立った。
全く遠慮なく不遜に佇む五条悟。
周りの一級魔法使いに緊張感が走った。
「どんな魔法でも良いんだっけ?」
軽い調子で口にする。
ゼーリエはにやりと笑った。
「私はこれまでに書かれた魔導書のほぼすべてを読み、習得してきた。どのような魔法でも望むすべてをやろう。人生をかけて追い求めてきたものをな。一級魔法使いにはその価値がある」
「そ」
五条悟は掌印を構えた。
「「!!」」
場にいる一級魔法使いたちが身構える。
合格者たちにも波及して空気が一気に張り詰めた。
しかし、攻撃のようなものは起こらなかった。
ただ、無音の中で、五条悟が口を動かしただけだった。
ゼーリエが不服そうな顔をし、五条悟は掌印を解く。
「やはり、読めんな。なんのためだ?」
「人生をかけて追い求めるって言ったらね。大魔法使いゼーリエ様には難しい注文だったかな?」
いつも通りに、五条悟は軽快に笑う。
「愚問を。しかしお前のことだ。支離滅裂に見えて何か必ず考えがある」
ゼーリエは右手を出し、そこに魔法を発動した。
――――
込められた魔力と共に、空中に厳かな装丁の本が出現する。
ゼーリエの創り出した魔導書を、五条悟は手にした。
「聞くけど、これ魔法使いじゃなくても習得できるんだっけ?」
「後で稽古をつけてやる。お前ならすぐに魔力に目覚めるだろう。あとは勝手にしろ」
「どーも」
五条悟は踵を返し、魔導書に目を向けた。
(構築術式じゃないのか。読んだら効力を失うか消える感じかな?)
そんな五条悟に声がかけられた。
「ね、ねえ。何願ったの? 何も聞こえなかったけど」
「秘密」
「秘密? なんで?」
ヘルファは不服そうに眉を吊り上げる。
「男には秘密の百や二百あるもんだよ」
「……そう」
(世界を滅ぼすような魔法ではないのかな……?)
ヘルファは心配そうに首を傾げる。
「ねえ、サトルって世界に恨みとかってある?」
「…………僕をなんだと思ってるの?」
五条悟は眉を寄せた。
✕
宵の鐘が鳴る。
暗くなった道のなかで、ヘルファとフェルン、五条悟は帰路へ歩いた。
五条悟の手のなかにある魔導書を、ヘルファはちらりと見る。
それを察したかのように、五条悟は口を開いた。
「やっぱ気になる?」
「いや、まあ、そりゃ」
すると、五条悟は口にした。
「僕って、最強だよね?」
ヘルファは眉を寄せた。
「……ついに自分で言うだけじゃなくて、確かめに来たか」
ヘルファは息をつき、隣に歩くフェルンに目配せをする。
友人は曖昧に首を傾げて苦笑するだけだった。
ヘルファは仕方なさそうに答えた。
「最強だと思うよ」
「だよね」
手のなかのそれを、五条悟は見つめた。
「最強が求めるものってさ、なんだと思う?」
いきなりの質問に、ヘルファはまた首を傾げた。
再びフェルンを見るも、首を振られる。
「……さあ。わかんない」
「じゃ、当ててみてよ」
「え……最強の気持ちを分かれってこと?」
「そういうこと」
「いや、無理っしょ……」
「悲しいなぁ」
五条悟は思い浮かべる。
嘗ての世界の記憶。
――――僕においてかれないくらい、強くなってよ
終に、自分が死ぬまでに、その境地に辿り着けるものはいなかった。
その後、自分が居なくなったのち、同じ境地に至れたものは居たのだろうか。
もちろん才能の原石はいくらでもいた。
彼らはまだ若く、嘗ての同じ年齢の自らと比べても遜色はない。
しかし、その成長の果て。
自身は、それを見れていない。
――――強者故の――――
「これは『賭け』だ」
五条悟は口にする。
「生憎魔法がなかった世界で生まれたから、僕の望むものは魔法じゃない。これは、それを実現できるかの『賭け』だ」
「……?」
「この世界にそれを至らしめることができるかの、『賭け』、だよ」
ヘルファはさらに首をひねった。
「フェルン、分かる?」
「さあ。フリーレンさまもたまによく分からないことを言いますし……」
「人って強くなると変になるのかな?」
「まあもしかしたら……」
そういう二人の前を、五条悟は歩いていく。
最強の靴の音が、夜の空の下に小さく響いた。
「この魔法を使わなくてもいいくらい強いやつが、この世界にまだいることを望むよ」
独りごちるように、五条悟は静かに呟いた。
もし続きを書くとしたらどちらがいい?(2026/02/15より)
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五条悟が全てをねじ伏せバトルしまくる
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フリーレンぽく人の心を知りながら旅をする
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上二つをいい感じにバランス取った話
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好きにやっていいよ
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そんなことよりプリン食べたい