もしも五条悟がフリーレン世界に転生したら   作:ケンタ〜

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五条悟の調査

 薄暗い朝焼けの中で、フクロウが風に乗って飛んでいく。

 

「魔族か」

 

 五条悟はほくそ笑んだ。

 

「ゼーリエ、面白い案件持ってきたじゃん」

「北部高原は広い。どこから調べる?」

 

 ヒルフトが言う。

 五条悟は、二人の胴をガシッと掴んだ。

 

「えっ!? なにっ!?」

 

 ヘルファは顔を真っ赤にして叫んだ。

 

「虱潰しに」

 

 三人の姿が、一瞬にしてかき消えた。

 

 

 

✕

 

 

 

「だはあッ!?」

 

 どしゃりとヘルファの体が地面にくずおれた。

 

「なッ!? 何今のッ!? ってかここどこ!? なに寒ッ!?」

 

 所変わって、まだ雪が溶け切らない高地。そこに、三人は移動していた。

 ヒルフトは驚愕する。

 

「驚いた。空間を操る術式とは、ここまでか」

「ふう、長距離移動は久々だけどうまくいったね」

「えなに移動したの!? どこ!?」

 

 ヘルファはブンブンと首を振り回して辺りを見た。

 五条悟は地図を掲げてみせる。

 

「ここ。ヴィッセン山脈。ふもとあたりの場所だね」

「ええ!? 北部高原北部!? どれだけ離れてると思ってんの!?」

「そういう術式なの。落ち着いて」

 

 暴れるヘルファの手を取って立たせると、五条悟は辺りを見回す。

 

「若干街からはズレたか。ちょっと飛ぶ」

 

 掌印を結び、五条悟の姿は再び消える。

 数秒して、すぐに戻ってきた。

 

「ほんとにどういう魔法なの……!? もうなんでもありじゃん!?」

「いろいろ細々とした条件はあるよ。街はあっち側。もっかい飛ぶか歩くか、どっちがいい?」

「あ、歩くっ!」

 

 ばっと立ち上がってヘルファはひとりでに歩いていく。

 

「…………」

 

 すたすたと歩いていくその背中を、ヒルフトは同情のまなざしで見る。

 

「それでサトル、どう調べるんだ?」

「アテはある。元々諜報討伐は呪術師のお家芸だ」

「ならいいが……しかし、魔族というのはなかなか狡猾だぞ」

「ヒルフトは戦ったことあるの?」

「あるが…………」

 

 顔を伏せて、ヒルフトは答える。

 

「戦っていて気持ちのいいものじゃない」

「やっぱ、人の顔してるから?」

「それもあるが……気持ち悪い相手だったんだ。うまく言い表せないが」

「ふーん。ま、喋る戦い相手はこっちも経験済みだ。なんとかなるっしょ」

 

 軽くそう言って、五条悟は歩きだした。

 

 

 

✕

 

 

 

 一級魔法使五条悟による調査隊は、三手に分けられた。

 

 聞き込み担当、三級魔法使いヘルファ。

 物腰の柔らかさと人当たりの良さを買われ、彼女に任された。

 

 街中捜索担当、二級魔法使いヒルフト。

 魔法使いとしての基礎力の高さと体力を買われ、魔力探知と目視での調査を任命される。

 

 そして五条悟、裏工作担当。

 

「よしっ」

 

 しゃがみから立ち上がった五条悟は、パンパンと手を叩いた。

 彼のいる場所は街からかなり離れた場所だった。足元には、不思議な形をした模様がずらりと描かれている。

 

「魔法っぽいことできるのは魔法だけじゃないですよっと」

 

 全員が動き始めてから数時間ずっと行っていた作業は今終わった。

 鼻歌を鳴らしながら街の方へと歩を進める。

 中心部の広場へ突くと、ヘルファの姿を発見した。

 

「あ、サトル。終わった?」

「万事順調。ヒルフトは?」

「まだみたい。ちょっと待ってね」

 

 ヘルファは目をつむり、魔力探知に意識を研ぎ澄ませる。

 

「あ、来てる」

 

 ちょうど、すぐの向こうから急ぎ足でヒルフトが歩いてくるところだった。

 

「すまん。遅くなった。どうだ、二人とも?」

「じゃあまずはヘルファから」

 

 譲るように、五条悟は掌をむける。

 

「あ、うん」

 

 ヘルファは頷いた。

 

「行方不明になった人の家に言ってお話を聞かせてもらったんだけど、ちょっと手がかりっぽいのがあったよ」

「おっ、いいね。どうだった」

「うん」

 

 ヘルファは懐から紙を取り出してそれに目を通す。

 

「行方不明になったのは、街の外の畑を耕してる農家の娘さん。昼のうちに森に出かけて、そのまま行方不明になったって」

「なるほど」

 

 五条悟は顎に指を当てた。

 

「捜索はされたの?」

「うん。村の人やギルドや魔法使いの人も集まって十数人で探したんだけど、どこにも痕跡は見当たらなかったって」

 

 ヘルファは少し声の調子を落とす。

 横からヒルフトが口を開いた。

 

「なぜ森に一人で出かけるなんてことをしたんだ? 家族が知っているというのなら、止めたりしなかったのか?」

「それなんだけどね」

 

 うーん、とヘルファは鼻を鳴らした。

 

「もともと前から山のなかで山菜とかを採ってたみたいで。その日もちょうどそういう日だったんだって。ちょっと早く家を出た以外は、変なことはなかったみたいだし」

 

 横から五条悟は指摘する。

 

「さらに森の中で痕跡はなし。向こうの世界でもよくあることだ。魔族とかが関わってる可能性は大いにある」

「それで、一つ気になってることがあるんだけど」

「なに?」

「新しい友達ができた、って」

「どういうこと?」

 

 五条悟は顔を寄せた。

 

「行方不明になった娘さんが。ちょっと前から、親御さんに、嬉しそうに『新しい友達ができた』、って。そういってたんだって」

 

 そういうヘルファの視線は、低いところを向いていた。

 

「もしかしたら、関係ある……かも、しれない」

「まさか」

 

 ヒルフトが目を見開いた。

 

「魔族に騙されて連れ去られたのか?」

「山姥みたいな事するね魔族って」

「っ……」

 

 ヘルファは顔をゆがめて顔を背ける。

 それをちらと見て、ヒルフトは言葉をつづけた。

 

「だがしかし不可解だな。魔族なら、そんな小細工は牢す必要もないはず。子供の魔族でも大人を倒せるほどに、かなり強力だ。普通の行方不明という線も……」

「まあ、僕の世界にいた呪霊ってのも何するかわかんなかったからね。もちろん行方不明ならそれはそれで問題だけど」

「…………」

 

 ふーむ、と五条悟は唸る。

 

「でも何か意味があるのだとしたら、信頼関係を築いてからさらう理由があったことになる。痕跡が全く残っていないところを見ると、目先の食人とかではないのかな」

 

 そういって、五条悟は地図を取り出した。

 

「確認されているだけで犯行は北部高原全域に及んでいる。計画的な犯行にも見えるし。ねえ、魔族の知能ってどれくらいなの?」

「人間とほぼ変わらないか、それ以上だと聞く。実際、一世紀近く前の魔族との戦争では、人類は奴らの策略によって大きく削られたらしい。それに人間よりもはるかに長い寿命を有しているから、個体によってはその知識量も膨大だろう」

「なるほどね。呪術師としてお誂向きの案件だ」

 

 五条悟は地図を懐にしまう。

 

「とりあえず暫くは付近の森を捜索しよう。人が食われてるのなら、呪力の残穢の一つや二つ見つかるはずだ」

「ああ」

「……分かった」

 

 ヒルフトが力強く返事をし、ヘルファは小さく頷いた。

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 五条悟らによる魔族探索開示より、一ヶ月経過。

 三人は北部高原に見られた行方不明の集落たちの全てを調査し終わっていた。

 

「何も見つからないな」

 

 行方不明となった集落は八つ。

 合計の行方不明者数は二十人程度。

 

 街の小さな少女から、町役場の青年まで。

 

 一度に一名から多ければ三名、比較的若い人間が被害になっていることが分かった。

 

「でも痕跡は何もないね。血も魔力の残りも……」

 

 ヘルファの声が夕方の空の下に響き渡る。

 

「行方不明者はみんな、出かけたときか誰かに誘われて外出。どの場合も直接的な実行はされていないし」

「巧妙に隠されてる感じだね」

 

 地面に置かれた覚え書きを見て、五条悟は口にした。

 

「加えて、事件のそれぞれは、行方不明と気がつくまでの時間を加味しても、全て一ヶ月以内に行われている。ものすごい速度だ」

 

 そこに、ヒルフトが付け加えた。 

 

「魔族は飛行魔法が使える。十分な魔力があれば、障害物を無視しての高速移動は容易い」

「なるほど。まあ僕も飛べるし、同じことか」

 

 五条悟は淡白に頷いた。

 

「ほかにも、一度発生した行方不明場所では二度同じことは起こっていない。明らかにバレることを警戒して、犯行しているね」

 

 五条悟は地図の上の赤丸を指さした。それを、ゆっくりと直線上に次の丸へと動かしていく。

 最終的に、それはデタラメな図形を形作った。

 

「それに、適当な順番。言い換えれば、次の被害場所を予測させないような犯行ルート。これが一人の魔族の犯行だとしたら、相当な食わせものだ」

「うーん……」

 

 ヘルファは首元に手を当てて喉を唸らせた。

 

「これじゃ、どうしようもないね。北部高原だけでも人間のいる集落は五十を超えるし。次どこに起きるかの予測は……」

「そこでもうすでに予防線を張った」

 

 五条悟はピッとヘルファに指を指した。

 

「どうやって?」

「最初の五つの街や集落に、魔力を探知する呪術の探知結界を構築した」

 

 五条悟は手元に見えるかたちで術式を浮かび上がらせた。

 

「魔力を探知するところは防御術式の応用だね」

 

 それに、ヘルファは首をひねる。

 

「でも、その魔族って一回来た集落には来ないんでしょ?」

「うん。それに行動は恐らくランダム」

「それじゃ意味が……」

「それを逆手に取る」

 

 五条悟は地図を指さした。

 

「この五つの被害地の時系列上の位置関係はバラバラだけども、全体で見れば北部高原を斜めに横切るような形になっている」

「あ、確かに」

 

 ヘルファは地図をのぞき込んだ。

 

「だから僕はそれぞれの探知結界を引き伸ばして繋げて、一つの大きな線状の結界にした」

「なるほど」

 

 ヒルフトが手を打つ。

 

「その上のどこかを横切ればすぐに分かるようにしたのか」

「その通り。もしランダムに動いているのだとしたらどこかでこれに引っかかる。さもなければ、最後に被害があった街の側の領域にいる可能性が高い。そうしたらもっと範囲を絞って、より範囲の小さいほかの探知結界を敷く」

 

「でもそれって、向こうに探知されないの? もし相手が呪力を探知できたら……」

 

 ヘルファが首をかしげる。

 

「結界があるって知られれば、それを経由して、より北部か南部から行かれそうだけど」

「問題ない。全部、受動センサー式の結界だ。呪力を発するのは僕たちに通ったことを知らせるときだけ」

「せんさー……?」

「未来の話。とりあえずは、このまま結界を拡張しながら待とう」

 

 そう言って、五条悟は立ち上がった。

 

「もう日も暮れてきた。地面での話はあとにして、今日は休もうか。みんなここ一ヶ月頑張ったからね」

「うん、分かった」

 

 ヘルファが頷く。

 

 そこは一番近くの集落から少し離れたところにある平地だった。

 三人は立ち上がり、間借りしている物見小屋へと向かう。

 

「二人とも先に行ってて。僕はちょっと甘いもの買ってくるから」

「あはは。相変わらずだね」

「早く帰ってこいよ」

 

 二人が物見小屋へと歩いて行った。その前で五条悟は踵を返し、集落の方へと歩いていく。

 ヘルファやヒルフトの魔力探知から十分に離れたことを確認してから、五条悟は掌印を結んだ。

 

 その姿が音もなくかき消えた。

 

 

 

もし続きを書くとしたらどちらがいい?(2026/02/15より)

  • 五条悟が全てをねじ伏せバトルしまくる
  • フリーレンぽく人の心を知りながら旅をする
  • 上二つをいい感じにバランス取った話
  • 好きにやっていいよ
  • そんなことよりプリン食べたい
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