もしも五条悟がフリーレン世界に転生したら   作:ケンタ〜

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初の魔族戦②

(やっと見つけた)

 

 蒼による瞬間移動で五条悟は姿を表した。

 

 視線の先にあるのは首謀者の根城。

 あの魔族たちがやって来た場所。禍々しい魔力がこびりついた場所を、五条悟は目にしていた。

 

 そこに感じる魔力は、あの魔族の体に埋め込まれたものと同じ。

 そこは丸い屋根をした造船所だった。禍々しいほどの強烈な魔力をそこから感じる。

 扉を無下限呪術で開け、蒼の瞬間移動で侵入する。

 

(……いない)

 

 魔力の残りはある。しかし、そこに姿は見当たらなかった。

 空気がチリッと張り詰める感覚が五条悟の鋭い勘に触れる。

 五条悟は瞬時に無限を建物を覆いつくすまでに広げた。

 

 爆薬だった。

 床の下に、数キロもの爆薬が設置されていた。そしてそれはすでに点火している。

 六眼はそれを察知し、無下限呪術でそれを封じ込めた。

 

(どこまでも姑息だな。嫌になる)

 

 ぎゅっと手を握って、地中で起こりかけた爆風を完全に封じ込める。

 

 呪力探知、魔力感応、六眼を駆使して、改造された造船所の周りをぐるりと眺め回した。

 

 大量の本棚。地面にも積まれている本。天井から吊り下げられているサメとシャチの骨格標本。そのほかにも、あらゆる生物の標本たち。

 魔法についての覚え書き、複雑な魔法陣の描写、魔法についてのありとあらゆる知識本。

 

 学者が静かな研究のために改造したかのような造船所。それ一つ見ただけでは、何の違和感もない。

 真に重要なものは巧妙に隠されていることを、五条悟は察知していた。

 

 今、自分が踏んでいる床の下。

 

 そこから、どす黒いほどの呪力がにじみ出ていることを、五条悟は感じていた。

 

 術式を行使し、木の床を無理やりこじ開ける。

 その下には階段があった。

 

(呪霊?)

 

 歩を進めると、まるでそれと見まがうほどのものだった。

 ありとあらゆる人間の、『解剖』。

 人間をあけ(・・)、研究し、皮を剝ぎ、骨を分解する。

 

 そして、それを組み合わせている(・・・・・・・・)

 

 改造人間。そうと言っていいほどの代物が、その部屋の中心に据えられていた。

 

 分解した骨の中で都合のいいものを組み合わせ、肉をつぎ足し、一つの生物を作り出している。

 

 爆風が吹き飛ばそうとしているものはこれだった、と直感した。部屋の一部が黒く焼けつき、奇妙な匂いが漂っている。

 

(この真ん中の改造人間は、もう死んでるか)

 

 その改造人間も、部屋の中に転がっている部位も、全て攫われた年齢層と一致していた。

 若い青年と、少女。

 

 目算で十体以上。

 

あの呪霊(真人)の術式じゃない。これは実験だ。人間を改造するために、試行錯誤をしている。行方不明の原因はこのせいか)

 

 何かを、企んでいる。

 

 聞くところによると魔族は個人主義。かなりの力の差か、よほどの利害の一致でもなければ群れることはしない。

 ましてや、魔王という圧倒的統治者の存在の死後は、魔族はほぼ完全に小さなコミュニティに分裂したと聞く。

 

(その状況で人数が必要な事をしたいなら、こういう事になるか)

 

 自らの手で、言うことを聞く軍勢を創り出す。

 

(早急にゼーリエに報告する必要がある。もしかしなくてもとても不味いことが起こってる気がする)

 

 地下室から出、扉に手をかけた途端、動きを止めた。

 

(いるな)

 

 コツンと扉を指で弾く。

 

 その瞬間数多の魔力の気配が爆ぜた。

 四筋の魔法が放たれ、建物に直撃。それらすべてを巻き込むような爆風が広がる。

 

「やったか?」

 

 外の魔族の一人が声をかける。

 

「呪力探知には――――」

 

 ほかの魔族が口を開こうとした途端、その首が断絶された。

 

 造船所の周囲にいた四体の魔族。わずか三秒で、五条悟は一体を除くすべての首を落としていた。

 

 ぼとん、と砂浜に三つの首が落とされる。その後に、どしゃりと一体の魔族が地に組み伏せられた。

 それは男性の頭に角をはやした魔族だった。無限を広げ、その動きを完全に拘束する。

 

「オマエ、誰に言われてここに来た」

「ッ……!?」

 

 魔族は目を見開き息を詰まらせる。

 

「いや。人間としての自我はあんのか? 名前は?」

 

 魔族は答えず、体に魔力をみなぎらせる。

 五条悟は魔族の右脚の腱を切断した。

 

「ぐ――――ッ」

「名前は?」

 

 さらに語気を強めて五条悟は質問をする。

 

「ッ、し、しら、ない!」

「記憶がないのか?」

「なんの話だ、知らないっ、そんな、ことはっ、はあっ」

 

(嘘をついているかも分からない。体に聞く)

 

 魔族の精神構造は人間のそれとは異なるらしい。嘘をつくことに抵抗が全くない可能性がある。

 六眼を凝視し、魔族の体に目と魔力感応を凝らす。

 

(こいつに魔法がぶち込まれた痕跡はない……二度証拠は与えないってワケか?)

 

「ねぇ君。死にたい?」

「たっ、助けてくれっ。た、助けてくれたら、俺は何もしないッ」

「ほんと? なんでもしてくれる?」

「す、するっ。だ、だから……!」

「少しでも逃げようとすれば殺す」

「わ、分かったっ……!」

 

 魔族の体の拘束を解く。

 すると、魔族は五条悟の顔色を窺うようにゆっくりと立ち上がった。疑問の顔で、五条悟を見つめる。

 

(本当に歯向かってこない。力社会というのは本当か)

 

 魔族が口を開く。

 

「お前は……戦士なのか」

「いーや。魔法使い。ああ、魔力ね。今はワケあって隠蔽してるだけだから。本当はもっと沢山あるよ」

 

(ま、嘘なんだけど)

 

「…………」

 

 納得できない、というような顔をしつつも、魔族はそれ以上口を開くことはしなかった。

 

「で。誰に言われてここに来た?」

「だ、誰にも言われていない」

「一番魔力が高いのは君だよね。指揮系統のトップじゃないの?」

「知らない。分からない……ただ、人間の気配がしたから、襲おうとしただけだ」

「ほんとに? 見たところほかの魔族と君は、魔力じゃ圧倒的な差があるわけでもない。だとしたらなんであんな数で群れて、ちょうどいいタイミングで僕を襲った連携までしたの?」

「だから、俺は」

 

 ピタリ、と魔族の首元に五条悟は手刀を添えた。

 

「……ん? 続けてよ」

「………」

 

 魔族は目を大きく見開いて、五条悟の手を震えんばかりに見つめる。

 五条悟は、なんの動揺もなく口にした。

 

「嘘じゃなければ、首をはねることはしないよ。ほら、続けて?」

「お、俺は……」

 

 ごくり、と魔族は唾液を飲む。

 

「し、知らないんだ。本当に。だから、た、助けてくれ……」

「…………」

 

 その表情を、五条悟は見た。

 

 言葉では嘘をつこうとも、そうでなかったとしても、顔に浮かび上がる汗の玉や心臓の鼓動は嘘をつかない。

 その情報から総合して、五条悟はその魔族が本当に嘘をついていないと判断した。

 

 今度は、その魔族の体内の魔力と呪力の巡りに目をやる。

 魔力はともかく、呪力の巡りに違和感がある。生物としての呪力の巡りに、この魔族はよどみがあった。さらに脳にもいじられている痕跡がある。

 

「約束通り、君は助けてあげる」

「え」

 

 トン、とその頭に手をやった。魔族は意識を失い地に倒れ伏す。

 

「はあ。これだけ情報をやって、僕に辿れないとでも思ったのかな」

 

 荒い感情の籠った呪力をみなぎらせて、五条悟は再び掌印を結んだ。

 

 

 

 

 

 

 千本の魔力の針が宙に出現する。

 それは一斉にヒルフトへと狙いを定めて襲いかかった。

 それだけではない。

 前から横から、さらには後ろに回り込んで、長身の針がヒルフトを貫こうとする。

 

 防御魔法を全面展開する。

 

 針は容赦なく突き刺さり、防御魔法に先端を貫通させた。

 

「…………!!」

 

 防御魔法の全面展開は数十秒もしていられない。そもそも質量攻撃には弱い。

 しかし更に針は突き刺さってくる。

 

(このままでは防御魔法そのものを破壊される)

 

 今度は魔法陣を全面に展開し、一気に針を貫通魔法(ゾルトラーク)で薙ぎ払った。

 魔族がそれを回避するのに合わせ、ヒルフトは弓矢を放つ。

 

「ッ」

 

 魔族の脇腹を矢が貫く。

 

(この人間の魔法、魔力の変動がないだけに探知しにくい。でも、それだけかな)

 

 自らの魔法に、魔力を注ぎ込んだ。針の魔法が空間に大量に出現する。

 最大限の『魔力の剣山を飛ばす魔法(ナデルベルグ)』が、発動された。

 

 幾重にも分岐した魚の群れのような。圧倒的な剣山の弾幕が背後から姿を現す。

 

(手数では圧倒的に、こっちのほうが上)

 

 魔族はほくそ笑んだ。

 ヒルフトは眉をしかめる。

 

(防いでも防いでもキリなく湧いてくるか)

 

 問答無用の全体攻撃を実現する魔法。それだけで消費の多い防御魔法の全面展開を強いられる。

 もし魔力が切れてしまえば、その瞬間で死が確定する。

 

「腹を括る必要がありそうだ」

 

 頬に汗を垂らし、戦斧の握りを強く握りしめた。

 

 両腕に渾身の力を込め、振り上げる。

 魔族は身構えた。その眼前に戦斧の刃が迫る。

 

 強烈な金属音。束になった剣山がそれを受け止めた。

 

(投擲!?)

 

 しかし飛来したのは斧だけ。

 

 直後、ヒルフトが肉薄する。

 

「ごっ――――」

 

 蹴りが魔族の腹に炸裂した。

 

(素手――――!?)

 

 魔族は目に見えて動揺する。

 

「ふっ」

 

 ヒルフトは小さく息を吐き、斧を回収する。

 

 それを再び魔族向けて振りぬいた。

 ガキインッと高い音が響く。

 斧は剣山によって受け止められていた。

 

「魔法使いのくせに素手でやってくるなんて、面白いね」

 

 魔力の針たちが、ヒルフトの背部向けて襲い掛かる。しかし肉薄をすれば、やってくるのは後ろからだけ。

 後方に展開した防御魔法により、針は阻まれた。

 

 しかし、魔族の手に一本の長い針が握られる。

 ヒルフトは腕に渾身の魔力を込めて、魔族の顎を殴った。

 

 両者ともに苦悶の声を上げた。

 ヒルフトの脇腹を針は貫き、魔族の脳が揺れる。

 

 そしてより意識が明瞭だったのは、ヒルフトの方だった。

 

 その一瞬の隙に斧を手にし形を変える。それが成したのは、短刀の形だった。

 

 魔族の首に、それを突き刺す。

 

「がっ」

 

 ヒルフトの腕を、魔族が握った。

 魔力の剣山たちが一斉にヒルフトを向き、胎動する。

 

「ふッ」

 

 ヒルフトは息を吐いた。

 肉を切り裂く音。

 刃が動かされ、鎖骨、胸部、腹部に至るまでが切り裂かれる。

 

 ぐらりと剣山の魔法が揺れた。

 もうこれだけの数を保つほどの余力はない。

 

 しかし、ヒルフトの背を、数十の魔力の針が突き刺していた。

 

「ッ……!!」

 

 全身を発火するような痛みが包む。

 しかし、意識を保つ。魔力を込め強化した腕を動かし、もう一度、今度は心臓へ。

 

「がっ……!!」

 

 その腕を、新たに出現した針が突き刺していた。

 

(クソッ……!)

 

「あははっ、面白い魔法だったわ。まるで戦士みたいな戦い方」

 

 魔族は狂ったように、目を見開いて笑った。

 

(この、人間ではありえないほどの身体強度。これが魔族)

 

 ヒルフトは苦悶に眉をひそめた。

 魔族の首から腋にかけてボタボタと血が流れている。しかし魔力操作によって、深いところは止血されていた。

 

 再び、数十の針が出現した。

 ヒルフトの四肢のあらゆるところを、剣山が貫く。

 

「ッ……!!」

「襲撃にきてよかったわ。質のいい肉が楽しめそう」

 

 魔族は口に手をやって笑う。

 

「それにしてもあなた、狂ってるわね。人間は魔族より、痛みに敏感と聞いていたのだけれど」

「家庭の事情でな。ほかの人間よりは苦痛に強いと自負している」

 

 苦痛の中で、ヒルフトは口角を上げた。

 

「それで、針を使う私に生身で肉薄までしてきたの?」

「残念ながら、生身とは言っていない」

「なに?」

 

 ヒルフトの全身に、魔力が満ちた。

 

「!?」

 

 それを察知し、魔族はとっさに距離を取ろうとする。

 

 しかし、ヒルフトはその腕を手にしていた。

 ヒルフトの全身に発動されたのは、『魔力を武器の形にする魔法(フォームハフト)』。

 

 それはヒルフトそのものを媒介にした魔法。

 魔法は巨大な剣山(・・)を形成した。

 

「あっ……!!」

 

 鋭く成形された魔力が、魔族の全身を貫いた。

 頭部、心臓、下半身、全てに至るまで。

 

「おかげで新しい武器のイメージができた」

 

 苦痛の中でありながらも、ヒルフトは不敵な笑みを作った。

 魔族の心臓が最後に一度だけ大きく胎動し、停止する。

 

「やっぱり、くるってる、わ」

 

 呆けたような顔をしながら魔族は言う。

 その魔族の体から、だらりと力が抜けた。

 

 ヒルフトが魔法を解除すると、そのままずるりと地面へと落ちていく。

 

「はあっ、はあっ、げほっ」

 

 ヒルフトは地面へ着地した。吐いた咳には血が混じる。

 

 全身を突き刺さしている魔力の針は、魔族が死んでもなお形を残していた。

 

(俺の魔力を吸って形を保っているのか……)

 

「ぐっ……」

 

 苦悶の顔で、何とか体に刺さっている針を、一本一本抜いていく。

 それごとに傷を魔力で抑え、止血。

 

 痛みに薄れる意識を瀬戸際で保ちながら、目の前の魔族に意識をやった。

 

「……?」

 

 ヒルフトは違和感を覚えた。

 

(体が崩壊しない……?)

 

 魔族の体からは粒子が漂っていた。しかし、体がほどけていない。

 その胸に、手をやる。

 しかし、鼓動は感じなかった。

 

(魔力が離散している。心臓も停止している。確かに死んでいる。しかし、なぜ体が消えない……?)

 

 魔力探知の端で、ヘルファの魔力が爆ぜていた。目の前の魔族よりも、そちらを優先する。

 

(助太刀を……)

 

 しかし、どさりとヒルフトは膝をついてしまった。

 

(思ったより重要器官を貫かれている……)

 

 思った通りに、体が動かない。

 体中に魔力を巡らせる。動かない筋肉を無理やり刺激し、立ち上がる。

 

 杖を斧の形に成形して、ヒルフトは引きずるようにヘルファの方へと歩いて行った。

 

 

 

 

もし続きを書くとしたらどちらがいい?(2026/02/15より)

  • 五条悟が全てをねじ伏せバトルしまくる
  • フリーレンぽく人の心を知りながら旅をする
  • 上二つをいい感じにバランス取った話
  • 好きにやっていいよ
  • そんなことよりプリン食べたい
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