もしも五条悟がフリーレン世界に転生したら   作:ケンタ〜

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次なる事案

「――――ってことで。以上、報告終わり」

「なるほど。ご苦労」

 

 ゼーリエはほくそ笑んだ。

 

「お前の瞬間移動は便利なものだな。北部高原から一気に飛んでこれたのか」

「そうだよ」

 

 よっと、と声を出して、五条悟は立ち上がった。

 会談の場所はオイサーストの玉座の間だった。

 五条悟が報告したのは、人間の形をした魔族についてだった。

 満足したようにゼーリエは頷く。

 

「人間が魔族に変えられていたとはな。生物という複雑なものを組み替えることができるのは、長い知識と経験がある者だけだろう」

「そういうアンタはどうなの? エルフでしょ」

「私は人間の改造などと言う野蛮な趣味には興味がない」

 

 ゼーリエは不機嫌そうに手を振った。

 

「だから十中八九、これは魔族か趣味の悪い人間の仕業だろうな。だが、見つからんのだろう」

「うん。北部高原全域で探しているんだけど、成果ないんだよね」

「単に移動していないというだけの可能性がある。操れる手駒がいるんだろう」

「似たことするやついたな、昔」

 

 五条悟は頭を掻く。

 脳裏に思い出される、袈裟を着た姿。

 

(あの呪力が発されれば……僕なら北部高原でも北側諸国でもどこにいてもすぐに分かる)

 

「そういえば、サトル」

 

 思考を遮るようにゼーリエは言った。

 

「ん、なに?」

「ちょうどフリーレンたちが北部高原に入ってしばらく経つ。ついでだ。合流して調査を進めろ」

「急だね。なんで?」

「人数は多いほうがいい。メトーデとゲナウが怪しい魔力を探知したとも報告している。北部高原にはまだ何かがあるかもしれない」

「他には?」

「ない。好きにしろ」

「了解」

 

 パタパタと手を振って、五条悟は玉座の間から退出した。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

「流石に少し想定外ね」

 

 少女のようにかわいらしく、しかし人のものとは思えない深みが込められた声で、誰かが言った。

 

「あれだけの魔力の感応性とは思わなかった。これだけ実力があるだなんて」

 

 その存在は、今、完璧に魔力を隠蔽している。

 彼女がいまどこにいるか、誰も察知できる者はいなかった。

 

あの人間(・・・・)が設置した、魔法ではない未知の原理によって作動する結界の範囲はおおむね割り出した。後は……」

 

 ほんの小さな魔法陣を用いて、事前に組み込んでいた魔法術式を動かす。

 

「うまくいくことを祈るばかりね」

 

 小さな笑みと共に、そう言った。

 

 

 

×

 

 

 

「ゼーリエさま。北部高原の件ですが……」

「分かっている。もううんざりするほど聞いた」

 

 部屋に入って来たゼンゼに、ゼーリエは真剣な表情で言った。

 

「北部高原で魔族が大量発生しているという件だろう」

「はい。そもそも一級と現地暮らしの魔法使い以外立ち入りを禁じられている場所です。そのため対処が遅れています」

「立ち入り禁止が逆に遅れを生んだか」

 

 顎に手を当て、ふむとゼーリエは考える。

 

「とはいえほかの魔法使いをおいそれと派遣するわけにはいかない。並みの魔法使いでは魔物の餌食になって仕舞いだ」

「それでは、一級魔法使いを早急に……」

「いや。一級魔法使いのやるべきことは北部高原だけではない。それにすでに現地には三名もの一級魔法使いがいる」

「………フェルン、デンケンと……サトル、ですか」

「ああ」

 

 ゼーリエはうなずいた。

 

「しかしゼーリエさま。北部高原では、今日の時点ですでに十体もの魔族の出現が確認されています。実力ではなく、手数が……」

「分かっている」

「…………」

 

 そっけなく返すゼーリエを、ゼンゼは訝しげに見つめていた。

 

「……ゼーリエさま」

「なんだ」

「なぜ………」

 

 そこで、言葉を留める。

 

「どうした」

「いえ、なんでもありません」

 

 ゼーリエに気取られないように、少しだけゼンゼは奥歯を噛んだ。

 

「……当分の間は、三人の一級魔法使いに任せる、ということで」

「ああ」

 

 ゼーリエはうなずいた。

 

「北部高原の問題は、ゴジョウサトル、デンケン、フェルンたちが必ず解決する」

「…………わかりました」

「不服か?」

 

 ゼンゼは顔にこそ出さなかったが、ふっと顔を上げた。

 

「なぜ……」

「お前が望むのなら。すぐに馬車を手配してもいいが。どうする?」

 

 試すような笑みをゼンゼは向けた。

 

「…………」

 

 ゼンゼは静かに口を開いた。

 

 

 

×

 

 

 

「闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え」

 

 呪符を刻み込んだ釘を地面に深く打ち込んだ。

 天から黒い幕が下ろされ、街をすべて取り囲むように展開する。

 

「これで良し」

「サトル、何が変わったの?」

 

 きょろきょろとヘルファはあたりを見回した。

 

「帳を下ろしたんだよ。と言っても、たぶん僕以外には見えていないけど」

「私には空がかなり薄暗くなったように見えるね」

 

 そばに立つフリーレンが口にすると、ヘルファは意外そうにそちらを見る。

 

「見えるんですか?」

「なんとなくね」

 

 場には、五条悟一行とフリーレン一行が集まっていた。

 五条悟が言う。

 

「フリーレンは感受性が高いみたいだね。僕には空が全部なくなるレベルで真っ暗に見えるけど」

「これが魔族が入れないようにする結界? 原理が全く分からない」

 

 フリーレンがそう言った。

 彼女にとって、それは呪いであり、まったく原理の解明できない存在だった。

 

「うん。人間も魔法使いも通すけど、魔物や魔族は通さない結界(とばり)

「強度は保証されているの? それに、あの魔族は人間を改造して作られている。その点は?」

「もちろん大丈夫。僕直々に調節した嘱託式の結界だ。その点はうまくできている」

「なるほど。フェルン」

「はい」

 

 フェルンが魔法陣を展開し、帳に向かって打ち込んだ。

 煙が晴れた後の帳には綻び一つない。

 

「ゾルトラーク対策の術式も組み込んであるからね」

 

 それを聞いてフリーレンは頷いた。

 

「確かにこれなら信頼できる強度がありそうだ。これでようやく、私が張り巡らせたものを合わせて主要な街への防護処理が終わったね」

「やっとですね」

 

 そう言うフェルンは疲れた様子を見せていた。

 

 魔族の大量発生が確認されてから二週間。

 五条悟とフリーレン一行は集合してからしばらく、大陸魔法協会からの伝達をもとに超特急で結界を張る活動を行っていた。

 

 大量発生が確認されてから一週間。

 その間、十以上の村落が壊滅する被害が起きている。

 フリーレンは口を開く。

 

「小さな村落の避難もつい昨日終わったし、これ以上の魔族の被害が出ることはないだろうけど。結界についての懸念点がある」

「なに?」

「突貫工事で張った結界たちだから、大魔族に相当する実力者に襲われたら保証はできない」

「こっちも呪力の問題がある。帳は僕が込めただけの呪力で動いていて制限時間がある。この世界の人達には呪力がないからね」

「その点はあとで私が解析して魔力で代用しようか」

 

 五条悟は口笛を吹いた。

 

「僕並みに有能だね」

「代わりにその時の移動はお願いね。これ以上飛行魔法を出しっぱなしで飛ぶのはフェルンが不機嫌になる」

 

 そばで、頬を膨れ上がらせてフェルンがむすーと怒っていた。

 

「分かった。それで、もう一つ気になることだけど」

「なに?」

 

 五条悟の口調は真剣なものになった。

 

「やっぱり、この一件の首謀者を見つけられない。うまくすり抜けられている」

「……なるほど」

 

 フリーレンは目を細めた。

 

「北部高原の探知網は?」

「それがね。ずーっと反応しっぱで使い物にならない。本来一人二人の魔族を探知するために作ったやつだから、設計思想を逆手に取られてる。首謀者はかなり考えながら撹乱してるみたいだ」

「サトルも、これが攪乱だと思うんだ」

 

 シュタルクの動揺の声が広がった。

 

「これが撹乱って、マジかよ。十以上の村落を滅ぼしてるって話だぜ」

 

 五条悟は目を向けた。

 

「あれだけの肉団子魔族を作る奴が、これだけバラまいて終わりってそりゃないでしょ」

「私もそう思うね」

「そう言うフリーレンは何か心当たりでもあるの?」

「ない」

「ないんだ」

「ない。でも、これだけの大規模なことをやる奴は、大魔族に相当する実力者だ」

「大魔族……」

 

 フェルンがそれに反応した。

 

「無名の大魔族…………」

「なにそれ?」

 

 五条悟は首を傾げた。

 

「何も人類は魔族のすべてを網羅しているわけじゃないんだよ」

「……なるほどね」

「あまり考えたくないことだけれども、この一件には、無名の大魔族がかかわっている可能性がある」

「大魔族なのに無名ってあんのかよ?」

 

 シュタルクが聞いた。

 

「あるよ。今まで出会ったすべての人間を逃さず殺してきた存在。奴らは大抵とても臆病でとても残虐だ」

「臆病で残虐……」

 

 シュタルクが息を呑んだ。

 

「これだけ大規模なことをする奴が、臆病……」

「そう。事実、私たちに足跡の一つもつかませていない」

「確かに……」

「でも、『しなくてはいられない』という残虐性がある。それだけ臆病なのに、やらずにはいられないという知的好奇心みたいなものが」

「似たような奴には心当たりあるね」

 

 五条悟はうんざりしたように言った。

 

「でも、実際にはどんなことをしようとしているんだろうね……村を十つも滅ぼす以上に」

 

 フェルンが同意をする。

 

「そうですよね。人間を組み合わせて魔族を作ってこれ以上にすることなんて……」

「………ああ」

 

 五条悟は大きく息をついた。皆の視線がそこに集まる。

 

「なるほどね」

「何かわかったの?」

 

 フリーレンが聞いた。

 

「憶測だよ」

 

 五条悟は言う。

 

「人類への大きな知的好奇心って点でね。嫌になるほどそっくりだ。千年くらいは生きてるんじゃないかなそいつ」

「どういうこと?」

「そいつの向かう先に心当たりがある」

 

 五条悟は言った。

 

「『人類の叡智を組み合わせた』ものに心当たりがある。北部高原の城塞都市だ」

 

 

 

 

 

 

「どうやら気が付かれたみたいね。膨大な魔力がこっちにやってくる。フリーレンと……一級魔法使いが数名かしら」

 

 右手を前にしながら、その存在は口にした。

 

「でも二週間と少しは稼げた。結界の解析開始時の魔力の発生も隠匿できたし。成果としては上々」

 

 その存在は楽しそうに笑う。

 

「解析完了まで、一ヶ月と一週間ってところかな」

 

 手の先にある巨大な解析魔法陣は、眈々と人類の叡智に目を向けていた。








お久し振りです
また出し始めます。

もし続きを書くとしたらどちらがいい?(2026/02/15より)

  • 五条悟が全てをねじ伏せバトルしまくる
  • フリーレンぽく人の心を知りながら旅をする
  • 上二つをいい感じにバランス取った話
  • 好きにやっていいよ
  • そんなことよりプリン食べたい
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