もしも五条悟がフリーレン世界に転生したら   作:ケンタ〜

43 / 46
寸刻の空

「マハトの記憶の解析まで……あと二か月かな……」

 

 フリーレンと五条悟一行は、デンケンと合流していた。

 すでにマハトから読み取った記憶の譲渡を行い、解析を開始しているところだった。

 当のデンケンは端の方で夕餉の用意をしている。

 五条は口を開いた。

 

「待つしかないか。結局首謀者は見つからなかった」

「そう…………だね…………」

 

 フリーレンは記憶の解析中にだった。

 そのため、半分ほど寝ている状態である。なので、ゆっくりと口を動かして答えた。

 

「あとは……警戒とか……任せたからね……」

「了解」

 

 周りにはフェルンやシュタルク、デンケン、ヘルファとヒルフトがいる。その人数で今後の護衛と、結界や帳の守衛を行う必要があった。

 

「まあ、早速何回か町が襲われて張り直してるんだけど」

 

 この場所に到達してから数日が経過していた。

 なのに、フリーレンと共に張っていた結界に損害があった。

 確認できる限り、それを行ったのはどれも人造の魔族。

 北部高原の魔族探知網も、相変わらずの反応ぶりだった。

 

「ハードな三ヶ月になりそうだ」

「ある程度の結界の修復ならば儂らができる」

 

 そういうのはデンケンだった。

 

「だが、移動に関しては任せた」

「分かってるよ」

 

 五条悟は頷く。

 

「それで、マハトってのはどうだった?」

 

 五条悟はそれに興味をそそられていた。

 最期の七崩賢、黄金郷のマハト。

 あのフリーレンが、数百年前にマハトにより敗北を喫していたという。

 大陸魔法協会をして、封じ込める選択を取らざるを得なかった存在。

 おそらく、魔族の中でも別格。

 

 そんな黄金郷のマハトに、フリーレンたちは先刻接触していた。

 大結界の中に入っていたのである。

 しかし、当の五条悟は同行を許可されなかったのだ。主にヘルファとフェルンによって。

 理由は過剰な戦力すぎる、ということであった。

 

「一回見ておきたかったんだけどね。どんなヤツか」

 

 その横からヘルファが口を挟んだ。

 

「いや、自分の戦力見誤りすぎでしょ。爆弾を背負って『はい、偵察でーす』って言える? どう見ても殺りに来てるじゃん」

「多大な評価痛み入るね」

 

 五条悟はカラカラと笑った。

 そうは言っても、五条悟にはマハトの事は六眼で見えていた。

 

(向こうもすでにこっちのことは察知してるだろうし)

 

 くっくっく、と五条悟は笑った。

 

「何笑ってるの?」

 

 白い目をヘルファは向けた。

 

「相手、七崩賢だよ。確か最後の。あの人類最強の南の勇者ですら討ち取られたっていう」

「いいじゃん」

「え、何が」

 

 ヘルファは心底分からないと言った顔で聞いた。

 

「僕の名前も一緒に魔王討伐の一ページに入るかもよ? 最後の七崩賢を討伐した男として」

「………………勝つ前提でお話か……」

 

 その戦闘狂め……という顔で、ヘルファは五条悟を見ていた。

 

「その自信の根拠は?」

「最強だから」

「知ってた……」

 

 ヘルファは呆れと、少しの信頼が混じったため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ざわざわと風が起きていた。

 木々はさざめき、道に生える草は波を描くように揺れている。

 天気は快晴。

 風は少し強め。

 絶好の、散歩日和。

 

魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)

 

 そんな大地を、青い砲弾が貫いた。

 えぐられた土が飛び散り、ぼとぼとと緑に茶色を彩る。

 形作られた大きなクレーター。

 その直上にいるのは、三名。

 

自律する糸を操る魔法(バルファーデン)!」

 

 小さな角を頭上に生やした魔族。身に纏うのは糸を撚り束ねたような衣服。

 その魔族が、髪の毛より細く透明な糸を空にばらまいた。

 意思を持ったかのように、否、実際に持って、上空へと伸びていく。

 そこには、紫髪の少女の姿があった。

 

 全面に防御魔法を展開する。

 それに糸は纏わりつくように巻き付いた。

 ギシギシと、万力のような圧力が防御魔法にかかった。

 

「っ……!」

「フェルンっ!」

 

 ヘルファが横方向から青い一撃を放つ。

 魔族は飛行してそれを躱した。

 

「ありがとうございますっ」

 

 その一瞬の隙、縛られた防御魔法を解き、全体を魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)で一掃する。

 

「……!」

 

 魔族は更に多くの糸を繰り出した。

 体中から、キラキラと光る糸の魔力が噴き出す。

 腕から脚から、全身から、とめどなく、全体へ一斉に。

 空気を貪り食い、光に反射されキラリと光る糸は、あらゆるものを飲み込まんと膨張していく。

 

 ヘルファは人を殺す魔法(ゾルトラーク)を打った。

 しかし、焼け石に水。

 糸を生成する速度のほうが幾倍も速かった。

 自らの方に、糸の槍が飛びてくる。

 

「まずっ……!」

 

 撃ち落としながら、後方へ退避しようとする。

 しかし、予想以上に生成速度は上だった。

 

「っ、やばっ……」

魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)

 

 その穂先を青い断魔の光が吹き飛ばした。

 一級魔法使いフェルン。

 魔族を殺す魔法が、二〇門展開される。

 天から注がれる破壊の矢。

 広大な糸に、幾重もの穿孔があいた。

 

「なっ……!?」

 

 魔族は見上げる。

 雨のしずくに打たれる紙のように。

 糸は穴を作られ、破られ、一瞬の押止めすらできずにほどかれようとしている。

 

「っ……! ぐっ……!?」

 

 更に糸を生成しようとする魔族。

 しかし、焼け石に水。

 淡い糸はしゅるしゅると空に溶け消え、とめどない殺魔の槍に敗れる。

 それはとうとう、糸の心臓部を轟音とともに貫いた。

 

「がっ……!」

 

 目を空けたまま、体が地面に落ち、魔力が空に漏れ出ていく

 しかし、到達するまで、終ぞ体が崩壊することはない。

 そのそばに、二人は着地した。

 がくん、とヘルファは肩を落とす。

 

「はあ、はあ、倒した……」

 

 その横に立つフェルンは、一つだけ息をつく。

 

「また、強力な魔族でしたね」

「うん、しかも、また体が崩壊しないし……」

「そうですね……もう三回目です」

 

 フェルンは後ろを振り返った。

 そこにはなんとか壊されずに済んだ結界と、守られている街がある。

 あれから一ヶ月余りが経過していた。既に、何十もの場所が被害にあっている。

 今回も、フェルンたちが駆けつけて対処を行っているところだった。

 

「更に日に日に増えていきますね……」

「しかも早朝にたたき起こされて……」

 

 はあ、とヘルファは息をついた。

 連日の戦いで疲労と生傷が増えていく日々だった。

 それらは治癒魔法で治るのだが、問題は年頃の乙女としての尊厳だった。

 日によっては寝る用意もできず戦いに駆り出され、暗闇のなかでの戦闘を強いられることもあった。

 日々戦いの毎日では、心も荒み、落ち着いた休息も取れなくなっていく。

 そんな二人の側の時空が歪み、一人の男が姿を現した。

 目隠しに白髮の長身、五条悟だった。

 

「二人とも終わった?」

 

 その声を聞くと、ヘルファは目に見えて顔を輝かせて口を開く。

 

「あ、サトル! そっちはもう大丈夫なの?」

「あっちはデンケンが何とかしたよ」

「大変だね、サトル。ずっと稼働しっぱなしでしょ」

 

 ヘルファは五条悟に駆け寄って、聖典を取り出し、回復の魔法をかけようとする。

 

「大丈夫。怪我とかないから」

「そっか」

 

 そう言うも、この件においてもっとも負担が大きかったのは五条悟だった。

 この防衛作戦をささえる瞬間移動が手切るのは彼しかいない。

 魔族の襲い方は巧妙だった。

 休息を邪魔するような見計らったタイミングで街を襲い、その度に五条悟は駆り出され、術式を行使する羽目になっている。

 

「サトル、今日だって五時間も寝てないでしょ。大丈夫なの?」

 

 不安げに言うヘルファ。

 五条悟は笑う。

 

「以前の倍は寝てるよ。大丈夫。もっとキツかった時もあるから。ヘルファもたまに夜に起きて祈ってる時あるじゃん」

「あれは前々からだし……」

「僕も同じようなもんだよ」

 

 五条悟は手をヘルファの肩にのせた。

 強張っていた彼女の表情が緩む。

 

「そっか」

「じゃ、二人とも帰るよ」

 

 フェルンをもう片手にして、五条悟は術式を行使した。

 三人の姿が一斉にかき消え、あとには呪力の残穢だけが残った。

 

 

 

 

 

 

 三人が帰還した所には、デンケンがいた。

 拠点は結界近くの掘っ立て小屋から移され、近隣の街になっている。

 取ってある広めの宿中で彼らは再会した。

 

「帰ってきたか」

 

 デンケンの手にはパンがあった。指さす先の机の籠にも、いろんな種類のパンがのっている。

 

「魔族との戦いで疲れただろう。ゆっくり食べなさい」

「ああ……デンケンおじいちゃんの優しさ、染みる……」

「いただきます」

 

 崩れ込むようにヘルファは机にしがみつき、パンを一つ強奪した。続くフェルンも迷いなく食事に着手する。

 二人はベッドに腰掛け、話をしながらおやつの時間を始めた。

 

「それで、どうだった?」

 

 入り口近くで立っている五条悟に、デンケンは聞く。

 

「お前の目は儂よりも優れている。今回の敵はどう見えた?」

「そうだね」

 

 うーんと唸ってから五条悟は答えた。

 

「実力は普通。ただ完成度はやっぱノーマル魔族と見分けがつかないレベルだね。僕の目は呪力なら完全に見分けれるけど魔力は別だ。あの魔族、呪力の多寡だとほぼ一般人レベルだし」

「そうか……進展はなしか」

 

 デンケンは考え込むように視線を落とした。

 

「うざったいね」

 

 ふう、と五条悟は息をつく。

 

 ここ一ヶ月、デンケンの言うように進展はほぼない。

 北部高原の端の方で、たまたま探知網に引っかかった、人造でない魔族の相手もした。しかし、呪力にも差はなく、魔力についても五条悟が判別できるほどの差はなかった。

 

 実際に魔族との戦闘経験が豊富なフェルンにも差が分からなかったところから、探知精度の問題ではなく、恐らくは人造魔族の完成度が高いことによるものだろうと思われた。

 

 しかし、あれから人造魔族出現以外の何も起きていない。

 

「そう言えばフリーレンは?」

 

 五条悟は話題を転換した。

 結局のところ、いつもデンケンと交わしていた同じテーマの話題だった。

 

「先程シュタルクとヒルフト共々日用品を買いに出かけた」

「なんでフリーレンも?」

「フェルンがフリーレンを外に出したほうがいいと言ったのでな。シュタルクが仕方なく引っ張っていった」

「犬の世話かな?」

 

 五条悟はツッコミを入れた。

 ごねたフリーレンを、『俺が怒られるんだよ〜』と半泣きで引っ張っていくシュタルクの姿が目に浮かぶようだった。

 

「それで、記憶の解析はあとどんぐらいなんだっけ?」

「あと二週間ほどだそうだ。それだけあれば、黄金郷をあのようにした原因が分かる」

「ふーん、そっか。じゃ、僕もパンを――――」

 

 その時、ピタリと手が止まった。

 

「? フェルン、どうし――――」

 

 フェルンの話し声も止まる。

 そして、ヘルファ以外の全員が、身構えて立ち上がった。

 この視線が全て同じ方向に向く。

 一瞬遅れたヘルファは、自分の魔力探知に潜む異物にようやく気がついた。

 

「えっ、この魔力って――――!?」

 

 違和感。

 先程まで意識の片隅に存在していた圧倒的な存在感。

 黄金郷の大結界。それ自体が大きな魔力を放出していたはずのもの。

 

「け、結界が……?」

 

 信じられないというふうに、ヘルファは声をあげる。

 巨大な結界の砕け散った姿が、魔力探知の中にあった。

 

「バカな。あの結界を、いつから……!」

 

 流石にデンケンも動揺を隠せなかった。

 今に至るまで、そこにはなんの痕跡もなかったはずだった。

 

 結界の解析を始めた時に起きるであろうの魔力の漏出もなく、結界を解析した。それに、フリーレンもフェルンもデンケンも、五条悟も気が付かなかったという事実。

 

 ありえない、という言葉が頭を埋め尽くす。

 

 しかし、頭に出た諸々の思考を全て押し込んで、デンケンは自らを律するという偉業を成し、即座にやるべきことを口にした。

 

「フェルン! フリーレンたちと合流しろ!」

「は、はいっ」

「ヘルファは街の人々の避難誘導へ」

「わ、わかりましたっ!」

「サトルは――――」

 

 彼が振り返ったところに、最強の姿はもうなかった。

 

「流石だ」

 

 思わずデンケンは感嘆した。

 しかし、すぐに眉に皺が寄る。

 

 魔力探知の中、黄金郷の直上に五条悟が見える。既に、何かしらの攻撃を用意している様子だった。

 しかし、黄金郷の端の方から、また別の魔力が迫り来ていた。

 黄金郷の内部に見えるものと合計して、四つ。

 マハトのものであるはずの魔力。

 この結界を解析した者の魔力。

 そして、この場に存在するはずのない、残り二つの魔力。

 

「この、魔力は……」

 

 手元に魔法杖を召喚する。

 長すぎる年月のなかで幾度も経験した緊張。

 そのなかでも一際つよいものが、体を覆っていた。

もし続きを書くとしたらどちらがいい?(2026/02/15より)

  • 五条悟が全てをねじ伏せバトルしまくる
  • フリーレンぽく人の心を知りながら旅をする
  • 上二つをいい感じにバランス取った話
  • 好きにやっていいよ
  • そんなことよりプリン食べたい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。