「それで、そのシュティレはどんな鳥なの?」
「あ、ああ」
少しあっけにとられていたヒルフトは、戸惑いながらも説明をした。
「
「へえ。それって強いの?」
くるりと、五条悟はあたりを見回した。
「ここらへんにいるとは思えないけど」
「いや、サイズはそれほどでもない。渡されたかごに、ちょうど収まるくらいだ。そして、強いと言えば強いが、魔力はほとんど持っていない。だから魔力探知で見つけることは困難だ」
「へえ。詳しいね」
五条悟は純粋に賞賛した。
「そりゃあ二級魔法使いだからな」
気恥ずかしそうに顔をそらしながら、ヒルフトは返す。
「それで、そのシュティレは、どんな見た――――」
その瞬間、轟音がした。
「きゃぁっ!?」
ドゴゥッ、と空をつんざく衝撃の音。
ヘルファは頭を抱え、その場にかがみ込んでしまった。
「っ、
それは、頭上を
空気の壁を超えた
「なるほど。あれか」
ははっ、と五条悟は笑った。
「確かに隕石鳥だ。ありゃ、音速超えてるね」
「っ、ということだ、隕石鳥は、あんなバケモンなんだ。俺も見るのははじめてだ」
「あ、あんなの捕獲できるの……!?」
頭にした魔法使いのハットをぎゅっと握って、ヘルファは細い声を出した。
「と、鳥を捕まえる魔法は使えるけど、あんなの無理だよ……!」
「なるほどね……あれ、捕獲すればいいんだよね、ヒルフト?」
「そ、そうだが。しかし、あんなもの簡単にはいかない。まずは綿密に策を練ってから…………」
五条悟は術式を行使した。
その瞬間、自らの身体が空へと浮かぶ。
『蒼』による空間の圧縮。
五条悟の頬に、ふわりと涼しい空気が撫でつけた。
その目を、先ほどシュティレがとんで行った方に向ける。
(いた)
音速を超えたシュティレ。
それが次第に速度を緩め、地面のある方向へと向かっている。
それを、五条悟の六眼はしっかりと捉えた。
(確かに、呪力も微量だ。今じゃなきゃ、僕でも見つけられなかっただろうな)
そして、そこへ向けて五条悟は右手を伸ばす。
それと同時に。
シュティレへ向けて、空間を圧縮した。
「ピッ」
シュティレの鳴き声。
五条悟の手の中に、その橙色の鳥が握られていた。
「さすがに音速でも、瞬間移動は点と点だからね」
そう言って、今度はまた別の方へと向けて。五条悟は空間を動かす。
「わっ!」
びくっ、と驚きの声を上げるヘルファ。
「サトル!? どこへ消えてたんだ!? 幻影魔法か!?」
そして、目を見開くヒルフトがいた。
五条悟はにやりと口端を上げる。
そんな彼らに向けて、手にしたものを向けてみせた。
橙色の可愛らしい小鳥が、行き場所を求めてピッピと鳴いている。
「しゅ、シュティレ……!?」
ヒルフトが目を見開く。
「す、すごい……! サトル、いったいどんな魔法を……!?」
「ちょちょいと空間をいじる魔法だよ。ま、ともかくこれで、あとは試験が終わるまで待つだけだね。ほい、ヘルファ。カゴにしまっといて」
「あ、うん」
ヘルファは五条悟の手からシュティレを貰うと、それを自分の腰につけていたカゴに入れた。
それを確認して、ヒルフトがこくりと頷く。
「それじゃあ、すぐにこの場を離れるぞ」
「え、なんで?」
五条悟が疑問を呈す。
ヒルフトは焦ったような口調で言った。
「サトル、お前はそんな簡単にシュティレを手に入れたが、実際はそうもいかないはずなんだ。場所も分からず、見つけたとしても捕獲できるかわからない。だから、もしほかのパーティが手に入れたと分かったら――――」
「あっ、奪いに来る……!?」
察したヘルファは顔を真っ青にして言った。
「そうだ、だからできる限りこの場を離れよう。そしてできるだけ、魔力の制限を―――――」
その瞬間、五条悟は術式を行使した。
全身に厚い無下限の層を構成し、そして両側にいる二人を地に押し付ける。
「なっ――――」
ヘルファが言葉を発そうとした瞬間。
ズッ、と空を削る魔力の音がした。
五条悟は顔を動かし回避をする。
頬からビッと鈍い血が飛ぶ。
合計三発。三人の頭上、五条悟の無下限をも空間ごと貫通する魔法の奔流が通過した。
「えっ――――!?」
悲鳴のようなヘルファの声。
「ゾルトラーク……!?」
それと同時、ヘルファは辺り一帯に見慣れぬ三つの魔力反応があることを自覚した。
「襲撃……!?」
「なんか胡散臭い匂いがするね」
五条悟はニヤリと笑った。
そして、辺りに見える呪力の反応を目にする。
「第三パーティだな?」
見つけるまでもなく。
その呪力の持ち主が、声を上げた。
「まさかこんなに早くシュティレを手に入れる者がいるとは思わなかった。悪いが、それを置いていってもらう」
「こっちも、こんなに早く横取りするやつらが現れるとは思わなかったな」
そう言い、五条悟は目元の白い包帯に手をかけた。
「さっ、サトルっ! や、やばいよ、どうするの!?」
「くそっ、第一パーティか!」
立ち上がった二人は、それぞれに魔法で手元に魔法杖を召喚した。
敵は三人だった。
一人は若い男の魔法使い、先ほど話しかけてきたものだ。
もう二人は、どちらとも女の魔法使いだった。
一人は、子供のように若い魔法使い。
もう一人は、大人の女性といったような魔法使いだった。
その魔法使いは、少し憂うような表情で五条悟を見つめている。
その女魔法使いが口を開いた。
「トーン、あんまりこのようなマネはしたくないのですが」
「言っている場合か、メトーデ。シュティレの入手の困難さはよく分かっているだろう」
「ですが、この目隠しの魔法使いは…………」
五条悟は、包帯を外した。
「格が、違うような」
しゅる、と包帯は地面に落ちる。
そして、鮮烈な青色の瞳が、空に触れた。
その右腕が、前に向けられる。
「少し、乱暴しようか」
その右腕に、蒼い呪力が込められた。