「これにて第一次試験を終了とする。合格パーティは七パーティ、全二一名。それでは、解散」
試験官ゲナウの号令により、第一次試験が終了した。
五条悟はあたりを見回す。
(あの白い魔法使い、紫髪の女の子……あ、最初に襲ってきた奴もいる。見知った奴は全員合格してるのか)
どうやら、五条悟が最初に実力があると見込んだものはおおかた合格しているらしかった。
ぞろぞろとそれぞれが帰路につく中で、五条悟は、あっと気がついたように口にした。
「……あ。宿取ってないじゃん」
「「えっ!?」」
ヘルファが慌てふためいて口を開く。
「そ、そうだった、ここ来てからすぐ一次試験だったからやるの忘れてた……!」
「おいサトル、何やってるんだ! 今は繁忙期でどこの宿もいっぱいだぞ!」
「まずったなぁ……いつも出先は日帰りだったから忘れてた」
ヘルファは顔を真っ青にする。
「ど、どうするの……!?」
「しゃーない。もうちょっとだけ野宿だ」
「年頃の乙女の尊厳……!!」
その横からヒルフトが口を挟んだ。
「いや、良かったら俺の宿に来い。広めの宿を取っておいたから行けるはずだ」
「ほっ、ほんとですかっ!?」
途端にヘルファが色めき立つ。
その横から五条悟は冗談めかして言った。
「乙女の尊厳は守られたー」
「なっ!?」
ヘルファはカッとなって五条悟に噛みつく。
「そもそも尊厳が危機にさらされたのはサトルのせいでしょ!?」
「でも気づかなかったヘルファも悪くない?」
「それはそうだけど、でも男ならサトルの方が率先して」
「うわ〜〜〜男女差別だ〜〜〜ヘルファいけないんだぁ〜〜〜〜」
「なにそれ意味わかんない!!」
二人はわちゃわちゃとその場で喧嘩を始めてしまった。
「おい二人とも!! 行くなら早く行くぞ!!」
相変わらずの苦労人、ヒルフトのため息が空に溶けた。
✕
「――――それでは、第二次試験をこれより始める。わたしが今回の試験官、ゼンゼだ」
目の前に、四つの門が開いた巨大な神殿の入り口があった。
切り立つ崖の中に作られたそれは、まるで獲物を誘い込む捕食者のよう。
その前に立つ、小さな試験官の影がある。
「第二次試験はダンジョン攻略だ。これより諸君らには、この零落の王墓の攻略をしてもらう」
綺麗なプラチナブロンドの髪の毛は、彼女自身の視界を幾分が遮るほどに長く多かった。
しかしその髪は風に吹かれてもピクリとも動かない。
その代わり、まるで一本一本が意思を持って生きているかのように動き始めた。
「私は平和主義者でね。無駄な争いは好まない。故に、このダンジョンの最深部にたどり着いたものは全員合格とする」
そんな彼女に向けて声を上げるものがいた。
「ここは多くの冒険者を亡き者にした前人未到の不落のダンジョンだぞ。今年も合格者を出さないつもりか?」
すると試験官ゼンゼは表情を全く動かさず答える。
「お前たちの目指す一級魔法使いとは魔法使いの頂点に立つものだ。未到破だろうが前人未到だろうが、ねじ伏せて攻略してみせるんだ」
淡々と答える彼女に、また別の受験生が聞く。
「最深部に到達したことを、どう証明すれば良いのですか?」
「証明の必要はない。私も共にダンジョンに潜る。無論、手は貸さんがな」
すると、ゼンゼの髪の毛がぐにゃりと胎動した。それが全員のほうへ動き始める。
その先端には、円錐型の瓶が握られていた。
「それと、全員にこの瓶を渡しておく。一級魔法使いレルネンの開発したものだ。この瓶を割ると中のゴーレムが姿を現し、安全に入り口まで連れて行ってくれる。使うと不合格扱いになるが、命の危険を感じたなら迷わず使うんだ」
それを受け取った一人、五条悟。
彼は瓶を目のところまで持ってきて、その中の術式構造を覗き込んだ。
(物理的に刻み込まれた魔法術式は呪力がなくても読み取りやすいね。このゼンゼって人の言ってることに間違いはなさそうだ)
「それでは試験開始だ」
かくして、二次試験が始まった。
暫くの間、場は仲間づくりや入り口選びにざわざわとする。
「それでサトル、どこから行こっか」
その横からヘルファが語りかけてきた。隣にはヒルフトも立っている。
「どうしよっかな」
零落の王墓の四つの入口。
五条悟は六眼を包帯越しに向ける。
もうすでに数人はそこに入ってしまっているようだった。
「さっき、あのデンケンが言ったように、全員で協力するという手だてもあるが…………」
伺うように聞くのはヒルフト。
うーん、と五条悟は考え込む。
「実際どれも一応奥にはつながってるみたいだね。そのなかで一番無難そうなのは……」
ぴっ、と五条悟は指を指す。
「「あ」」
と、声が重なった。
向こうに、同じ様に指を差した者がもう一人いた。
「…………」
「…………」
白い魔法使い。そして黒い呪術師。
「…………ども」
「…………どうも」
五条悟が会釈をすると、フリーレンもし返した。
そしてそのままフリーレンは歩き出す。
「いくよ、フェルン」
「あ、はい」
と、そのまま歩いて行った。
そして五条悟が歩き出す。
「じゃ僕たちも行こうか」
「「いやいやいやいや!!」」
ヘルファとヒルフトが全力で首を振った。
「え何?」
「だってあの白い魔法使いフリーレンだよ!?」
「そうだぞサトル!」
ヒルフトも声を大にする。
「しかも紫髪の魔法使いにも試験で会っただろ! 敵の可能性もあるんだぞ!?」
「同じ道選べるわけないでしょ!?」
「同じ道選べるわけないだろ!?」
二人の声が重なった。
「えーなんで?」
二人の怒号をまるで無視して、きょとんと五条悟は首をかしげる。
そのままスタスタとフリーレンへ向けて口を開いた。
「えっちょサトルなにして―――」
「あのー、フリーレンさんでしたっけ? ご一緒してもいいですかー?」
ピシリとヘルファとヒルフトは固まった。
するとフェルンが真っ先に振り返る。
その目は警戒に満ちていた。
「ちょサトル、めっちゃ警戒されて――――」
「別に気にしないけど」
当のフリーレンは、素っ気なく言った。
「ほら行こ二人とも」
「「え……ええ…………??」」
ドン引きした二人の声が重なる。
第二次試験開始です