選定少女ノ救済裁判 作:野生の魔女
私の稚拙な創作に高評価していただきありがとうございます。
5件のお気に入りも大変感謝でございます。
それはそれとして、筆も遅けりゃ展開も爆遅なので、気長にしてくれると幸いでございます。
ひとり牢屋敷を歩く。歩くといっても、速歩きだが。
今日は牢屋敷生活初日というのもあって、早起きしようと思っていたのだが、昨日は思ったよりも私は疲れていたらしい。寝過ごしてしまった。
スマホで地図を見ながら【食堂】へと向かう。寝過ごしたせいで時間も余裕がなく、このままだと朝食が食べられない。
急ぎ足で駆け、食堂にたどり着いた。
「間に合ったか?」
「ギリギリですがね。」
レイナが食事……食事だよな?食事にしてはこう……黒い、タール?のようで……
そうだな、仮称:【存在X】としておこう。を持ってきてくれていた。
「ありがとう。……それはそれとして、これは?」
「この場所での食事は、これしかないみたいです。くっ、厨房に入れさえすれば私めが料理致しましたのに……!」
『料理ができるのか?』
『厨房借りられるか聞いてみようか?』
どちらにしようかな神様の言う通り、鉄砲打ってバンバンバン……よし、上の選択肢にしようか。
「料理ができるのか?」
レイナは私のその問いに、胸を張って答えた。
「料理の腕につきましては、とびきり自信があります。これはひそかな自慢なのですが、海外の五つ星シェフに弟子入りしていた時期もありました。」
「それと、食事以外でも、基本的な家事全般は子供の頃から徹底教育されていたので、そこらのホテルよりかは快適な環境を提供できます。
これからお嬢様方がこの屋敷で快適に過ごせるように、尽力致しますね。」
確かに、そういえばここに来る途中の廊下も、昨日よりも断然に綺麗になっていた。
この部屋にも汚れひとつない、清潔な空間となっている。
「すごいな。尊敬するよ。」
私は家事ができないからな。
「ふふっ、お褒めに預かり光栄です。」
そのまま会話をしながら席に座る。
「いただきます。」
さて、【存在X】の味はいかがなものかと咀嚼してみれば……
「………………うん。」
まずい。
なんだろう。今まで食べたことないタイプの味だこれ。渋みと酸味と苦味がエグみを形成しながら喉奥まで汚染していく。逆に何をどうしたらこんなのが作れるのか?
他の少女たちも、皆顰めっ面で。これは……ひどいな。
「……ごちそうさまでした。」
少女たちがその味に悪戦苦闘する中、真っ先に食事を終えたのはシグレだった。驚くべきことに【存在X】を完食している様子だ。
シグレは食器を片付けると、そのままさっさと食堂を出ていってしまった。
何かをする予定でもあるのだろうか?と考えを逡巡させていると、
「あーー!?」
突如、カイルが大声を上げた。
「突然どうしたんだい?カイル君。」
ライネがそう問うと、カイルが答えた。
「せっかくの牢屋敷初のご飯なのに、ご飯の【写真】撮り忘れちゃいました!」
「【写真】?」
それがどうした。とでも言いたげにライネが首を傾げる。
それにカイルは熱弁を放った。
「だって人生での【体験】って全部貴重じゃないですか。【思い出】に残したいじゃないですかー!」
「皆さんとの【集合写真】も撮りたいのに、シグレさんもう行っちゃいましたし!」
【集合写真】か……。確かに、ゴクチョーの言う通りならいずれ【殺人事件】が起こってしまう。
なら、一度全員が揃った写真は、撮っておきたいかもしれないな。
「そうだな。後でシグレに協力してもらえるよう言っておくよ。」
「あぁ、そういえばイアラさんはシグレさんと同室でしたね!お願いしてもいいですか?」
「任せてくれ。」
話しているうちにもひとり、またひとりと食事を終えていく。あまりの味の酷さに耐えられなかったのか、残飯の量も多い。
そんな中、ひとりだけ【存在X】を【おかわり】している少女がいた。
「ユウはすごいな。これを【おかわり】できるのか。」
「確かに味は酷いものですけど、【食べないとお腹が空いてしまいます】もの。」
大食いタレントでもあるユウは、普段から【大食い】していることもあって、普段から大量に食べなければ空腹になってしまうのだろう。
「大変ですね。なにかお手伝いできることはありますでしょうか?」
「レイナさん。気持ちは嬉しいですけれども、わたくしは孤食派ですの。遠慮させていただきますわ。」
「これは、失礼いたしました。」
……上位階級のやり取りだ。所作のひとつひとつに目が惹かれる。
「レイナさんもユウさんも顔面がいいので、絵になりますよね〜!被写体としていい感じです!」
勝手に彼女たちを撮ろうとするカイルを静止する。
「いったい!何も叩くことないじゃないですか!?」
「あぁ、すまない。つい。」
パーで叩きやすい頭をしていたものだから……。
「君たちよくそんな元気でいられるねぇ。」
未だ食事を食べ終えていないライネが口を開く。そして、【存在X】を一欠片口に放り込んだ。
「ぼかぁ(モグモグ)ね、思うんだよ。一応ね?(モグモグ)ぼくらは【誘拐】かつ【監禁】されてるわけだしさ(モグモグ)。もうちょっと(モグモグ)危機感というものを(モグモグ)ね?」
ライネはそれを言い終えてから、ようやく【存在X】を嚥下した。
「食べるの遅いですね!」
失礼だぞ。と意味を込めて、もう一叩きしておく。
「二度もぶちました!」
ワーワー抗議するカイルを無視して、話が進む。
「ぼかぁ一口が小さいんだ。仕方ないだろう。」
ライネの食事を見ているとあれだな……あれを思い出す。
「あぁ、小動物の動画を見ているような気分だ。」
「イアラさんも大概失礼ですよね。」
そ、そうか?褒めているつもりだったのだが……。
「よく言われ慣れてるからね、気にしちゃあいないよ。気にしちゃあ……うん、うん……小動物……かぁ……。」
口ではそう言っているが、スプーンを口に運ぶ手が遅くなっているし、そもそも表情が某電気ネズミの探偵の様な、くしゃくしゃ顔になっている。
動揺していることは明らかであった。
「す、すまない。貶すつもりではなかったのだが。」
「気にしないでくれ……。」
そんな中でも空気を読まず、【選択肢】は出現する。
『話を続ける。』
『話題を転換する。』
この空気でこの話を続けられるわけないだろう?!もちろん下の選択肢を選んだ。
話題……話題かぁ。こう、もうちょっと具体性が欲しい。何の会話をすれば……あっ、そういえば
「そういえば、君たちの【魔法】はなんだ?」
「あー、そういえばここにいるみんな【魔法】が使えるんでしたね!」
「万が一のために知っておいた方がいいだろうし、共有しておくことには賛成だねぇ。」
「んー、誰から発表します?自己紹介の時の様に、イアラさんから?」
それでもいいが、そうだな。
「【じゃんけん】で決めよう。負けた人から順番に発表していくということで、いいかな?」
「いいですよ!」
「ああ、構わない。」
レイナとユウにも聞こうとしたが、既に食堂からいなくなっていた。
なら、この三人でか。よし……
「「「最初はグー、じゃんけん……」」」
『グー』
『チョキ』
『パー』
こんな時でも、【選択肢】があるなら【魔法】は発動する。
そして、選択肢が発生するこの瞬間は周囲の時間が止まるため、周囲の状況をゆっくりと確認できるのだ。
カイルは人差し指と中指が開きかけている。ここから出せる手はチョキかパーだけ。
ライネは五本指全てが緩んでいるため、パーを出すだろう。よって
「「「ぽん!」」」
チョキを出す。カイルも同じく。ライネだけが、パー。
「ぼかぁからか。」
ライネはゆっくりと立ち上がって、りんごを一つ持ってきた。
「ぼかぁの魔法は、【言霊】。【プログラム】とも言っていいかもしれない。」
「このりんごに……『浮かべ』と言えば……」
ライネがりんごから手を離しても、りんごはそのまま宙に浮かび、静止している。
「すっごーい!なんでもできちゃうじゃないですか!」
「いや、一応制限はあってねぇ。」
と話を続ける。
「まずは、【行動を自分で決められる物】には使えないこと。【生物】は勿論、AIとかもだ。」
「後は、【操れるサイズに限りがある】こと。最大値はスイカぐらいで、最低値はビー玉ぐらいだね。」
「【命令にも限度がある】こともだ。【光速で飛べ】だとか、あまりにもぶっ飛んだ内容のは無理だった。後は細かすぎる内容もね。」
「ぼかぁの【魔法】はこれぐらいかな。それじゃあ、君たちの魔法を聞かせてよ。」
「そうですね。それじゃ、「じゃんけん」」
カイルの手は……全部閉まっている。グーの可能性が高いが、他の手も可能性としては考えられる。
運次第だな……。
「「しょい!」」
私は……グー。カイルは……チョキ。
「ぎゃー!負けちゃいましたー!」
演技っぽくカイルが崩れ落ちる。だから私はあえて調子に乗って、グーの手のまま手を天に掲げて……
「私の……勝ちだ!」
勝ち誇った。
「……ぼかぁ一体何を見せられてるんだい?」
「あっ、そうだ。私の【魔法】についてですよね。」
フル無視された。された……。
「私の魔法は……まぁ、教えるよりも見た方がわかりやすいですね!」
カイルはカメラを構えて、私を対象として、
「私の【念写】の魔法を使いながら、対象となる【人物】を撮ると……」
パシャ。
その音が鳴った数秒後、カメラから一枚の写真が印刷された。
それは、【私】と【友人】が公園で遊んでいる写真だった。
「これは……!」
「これが【念写】の魔法です。撮った【人物】の、一番の【思い出】を写真にする魔法です!」
えっへん!とカイルは胸を張り、
「この写真は貴方にあげます!大事にしてくださいね!」
もう見れないかもしれない【友人】の姿を眺める。やっぱり顔がいいな、こいつ。
この時は……確か、そうだ。去年の夏の……あいつ、この後熱中症になりかけて……
ふふっ……懐かしいな。
「ありがたく、受け取るよ。」
私は、その写真……いや、【思い出】をポケットの中に【大事に】仕舞い込んだ。
「さ、後はイアラさんだけです!どうぞ!」
あ、そうだった。私の魔法の説明か……。
「私の魔法は、【選択肢】だ。」
「【選択肢】?」
まぁ、わかりずらい事は確かだ。私も理解するのに半年以上かかった。
その疑問に答えるために、例え話をしようか。
「例えば、自動販売機で飲み物を買うとする。そんな時に、【選択肢】が出て来る。」
「『コーラ』『お茶』『ジュース』『スポーツ飲料』などの【選択】が自動的に提示される。しかし、『買わない』や『壊す』など、意識外ではあるが、【実行可能ではあるもの】も【選択肢】として出て来ることがある。」
「これが一番重要だが、決定した【選択肢】は取り消すことができない。例え、【私の意思に反していようとも】。」
「なるほどねぇ。毎回妙に行動が早いと思ってはいたんだが、そういうことだったのか。」
ライネは納得した様にうんうん頷いている。
「余談だが、選択肢を決めている最中は、周囲の時間が止まるんだ。直接的な干渉こそできないが、その時の周囲の状況を観察することができる。」
「……えっ?つまり……?」
「先ほどの【じゃんけん】だが、私は君たちの【手の動き】を見て、出す手を決めていた。まぁ、ちょっとした【ズル】だ。」
「せこい!凄そうな魔法を使ってすることなのか?これは……」
「えーっ!?なにそれ、正しくありませんよー!」
「フフフ。勝てばよかろうなのだ。」
ワーワーと騒いでいると、気付けば朝食の時間は過ぎ去っており、掃除に来たらしい看守に外に放り出された。
会話もひと段落し、ちょうど良く今は【自由時間】であるため、私たちはそれぞれ牢屋敷の探索へと向かった。