選定少女ノ救済裁判   作:野生の魔女

3 / 3
フフフ……人様の創作物が面白すぎて、気づけばこんなに時間が経ってしまっていました……。
誠に申し訳ありません。土下座しますので、見逃してください。

それはそれとして、評価入れていただいたお方、ありがとうございます。
お気に入りも感謝します。欲を言えば、感想なんかを書いて下さってもよろしいんですよ……?
この小説のここがダメとかでもいいので……。


ep.3 : 1日目:自由時間

カイルたちと別れた後、牢屋敷の地図を見てどこへ行こうか思案する。

娯楽室……中庭……シャワー室……あ。そういえば、昨日シャワーを浴びていなかったな。

気がつくと気になる性分のため、せっかくだしシャワーを浴びようと、シャワー室へと向かう。

 

地図を頼りに歩き出し、シャワー室へと辿り着いた。さっさと用事を済まそうと、ドアに手をかけた時、中から声が聞こえた。

 

「一………桜………………が…………で……だから…………」

 

この声は……シグレの声か。微かだが、なんとかわかった。ドアが完全には閉まっておらず、音が漏れ出ているからか。

勝手に開けたら失礼だろうか。しかし、何を話している?誰か話し相手がいるのか?シャワー室でわざわざ会話する意味が……?

耳を傾けても、シグレ以外の声は聞こえない。

……ええい!ままよ!

 

ギィィィィ

 

開いたドアの先には、やはり、シグレ以外は誰一人としていなかった。

 

「……イアラ。こんな時間に何の用だ?」

 

ぶっきらぼうにシグレは言い放つ。

そうだな……あぁ、そういえば【集合写真】の件、伝えるべきか。

 

「あぁ、君の声が聞こえてな。伝えることがあったから、丁度よかった。」

 

「手短に。」

 

「カイルが【集合写真】を撮りたいそうだ。だから、明日「あぁ、もう分かった。いいぞ。」……えっ?」

 

マヌケな声が、私の口から漏れ出た。

 

「なんだ?何か不都合でも?」

 

「いや、こんな素直に承諾されるとは思っていなかったから……。」

 

意外そうな顔をしている私に、シグレは少しだけ眉を吊り上げて答える。

 

「我はそこまで薄情者という訳でもない。幸い、時間はまだまだ空いているしな。」

 

「あ、ありがとう。」

 

考えていたよりも、シグレは協調性があったようだ。まぁ、これで【集合写真】も撮れるか。

 

「我はもう行く、また後で。」

 

そういうとシグレは急ぎ足で私の隣を通り過ぎて、ふと、立ち止まり

 

「あ、そうだった。」

 

シグレは一拍を置き、こういった。

 

 

「この時間、シャワーは冷水しか出ないぞ。」

 

 

そしてシグレはシャワー室から出て行った。

……冷水シャワーは、嫌だな。少し気持ちが悪いが、シャワーは後にしよう。

 

考え直して、また牢屋敷の地図を見る。行き先を考えながら、歩き出し、ふと、思った。

 

 

私は、【シャワーを浴びる】なんてシグレに言っていたか?

 


 

とりあえず、日の光を浴びたくなったから庭の方に出ることにした。

あっちには花畑があるのか。少し意外だ。湖もあるし、案外観光地の適正がありそうな場所だな。

さて、どちらに行こうか?

 

『花畑に行く。』

『湖に行く。』

 

そうだな……運動もしたいし、障害物の少ない花畑の方が良さそうか。

 

そうして花畑に行けば、そこにはメルルとアンネとレイナの3人がいた。

メルルとレイナは花に水を与えていて、アンネとは少し位置が離れている。

一方のアンネは、スケッチブックを使って何かを描いている。何を描いているのだろうか?

 

「やぁ、アンネ。」

 

アイサツは大事なので、背後から声をかけると、アンネがビクッと肩を振るわせた。

 

「!?!?……なんだ、イアラさんですか……。びっくりしましたよ、もう!」

 

驚かせてしまったらしい。申し訳ないな。

 

「すまない。それはそれと、何を描いているんだ?」

 

私がそう問うと、アンネは鉛筆をポケットにしまい、スケッチブックの中を見せてくれた。

その中には、まるで4コマ漫画が複数並んでいるようなコマが敷かれており、その一コマに、牢屋敷のラフスケッチが描かれていた。

 

「これは……牢屋敷か。だが、このコマは……?」

 

「これは【絵コンテ】です。」

 

【絵コンテ】?私の疑問が顔に漏れていたようで、アンネが嬉々として丁寧に解説を始めた。

 

「【絵コンテ】というのは、アニメとか、特撮とかでその場面場面の絵とか、セリフとか諸々を描いて、作品の流れを視覚的に共有するものです。

これを作成しておくことで、演者やカメラマンの人たちが立ち位置や画角などをイメージしやすくなるんです。」

 

少し早口めだが、その声は聞き取りやすかった。

それにしても、ふむ。創作物の制作の序段階に作るものを……つまり、

 

「なるほど。君は、この牢屋敷を舞台とした【作品】の制作をしていたのか?」

 

私の問いに、アンネは肯定も否定もせず、ただ俯く。

俯きながら、ボソッと彼女の夢と現(ゆめうつつ)を語りだす。

 

「僕、【映画】を作りたいんです。特撮もやってみたいし、ドラマとかも作ってみたいんです。脚本を書きたい。映像編集もしてみたい。造形とかもやってみたい!」

 

夢を語るほど、アンネの目に光が入っていくが、しかし現実は……

 

「ですけど、ここでは、難しいでしょうし……外に出られるのかも……わからない、ですし……。」

 

あまりにも、厳しい。この牢屋敷から出られるのかも不透明のままだ。

また、アンネの目には影が入る。自身のやりたいことをやれないというのは、とても辛いことだというのは知っている。

もしもここから一生出られないのなら、そうしたら、この子の夢は……

 

……

 

魔法を、発動させる。私の決心を固めるために。私の行動を定めるために。

 

『夢を肯定する。』

『現実を突きつける。』

 

私の【選択肢】は、もう決定していた。

 

「なら、一緒に作ろうじゃないか。【映画】を。」

 

「……え?」

 

「みんなにも協力を頼もう。そこにいるレイナはお人よしだ。嬉々として参加してくれるだろう。

メルルは押しに弱そうだし、そこを利用させてもらおう。

ユウはアイドルで、芸能人だ。きっとそういうのにも出演したこともあるだろうし、協力を得れたら心強いな。

小道具類はサクラが作れるだろうか?後で頼んでみよう。

シグレもあれで案外協調性があったからな。頼んだら受けてくれそうだ。

カイルあたりは思い出作りうんぬんでいけるだろう。」

 

困惑するアンネに、いたずらっぽい笑みを浮かべながら

 

「ほら、行こう。幸い、私たちには授業も宿題もない。時間だけなら、いくらでもあるんだ。」

「やりたいなら、やればいい。私は協力するよ。きっと、みんなも。」

 

手を差し伸べる。

 

「行動は早ければ早いだけいい。行こう。」

 

アンネは幸い、私の手をとってくれた。

だから私は、アンネの手を引っ張り出して、彼女の作品の制作を【決定】させた。

 


 

「とはいっても……何から着手すべきか……。」

 

私たちは、ラウンジにて頭を抱えていた。

なぜかって?映画を作ろうにも、アンネ以外は誰も、映画の作り方なんて知らないからである!

 

「ユウを探して、何からすればいいか聞いてみるかぁ……?」

 

「いや、私めもあまり詳しくはありませんが……大抵の場合、ある程度方向性を決めてから俳優を呼ぶはずですし、この段階で呼んでも……。」

 

「私……そういうのは、あまりよくわからないのですが……えっと、その……」

 

「まずそもそもどういう作品を創るかですね。この牢屋敷という舞台に似合うのはサスペンスとか、ミステリモノは王道路線で……恋愛モノもイケるでしょうか。せっかくならこの建物を活かした作品にしたいし……花畑綺麗だったなぁ。なんかしらの場面使えないですかね?ミステリなら事件現場として……とか。牢屋敷の地図によると裁判所もありますが、立ち入り禁止ですか……交渉次第でどうにか入れないかなぁ……。あ、天候とかわからないや。雨の日は屋外撮影できないし、スケジュール決め辛いな……。それと……」

 

「ひぅ……。」

 

アンネのあまりの熱意に、メルルが怯えてしまっている……。

 

いい感じの提案も出なければ、進行もしない。アンネは思考がぐるぐる回っているようで、決定しきれていない。

こういうタイプの停滞はまずい。ただ時間を浪費するだけだ。

 

ここは、そうだな。

 

「ここでこうして考えてばかりでも、制作は進まないだろう。

だから、一度牢屋敷内を探索してみないか?気分転換も重要だ。」

 

それに

 

「ミステリをやるにしても、何をやるにしても、舞台の把握は必要だろう?」

 

「……それも、そうですね。」

「行きましょう、レイナ、イアラさん、メルルさん。」

 

そうして、牢屋敷の探索を再度始める。

今度は多人数でだ。きっと、ひとりよりも楽しくなるだろうな。

 

そう思えて、少し頬が緩む。他のみんなも、同じことを思ってくれてればいいのだが。

 


 

しばし歩き続けて中庭へ出た私たちは、土に汚れたサクラと出会った。

 

「サクラお嬢様!?お顔失礼いたしますね!?」

 

レイナが自らのハンカチでサクラの顔を拭く。

 

「サ、サクラさん……どうして、そんなにお汚れに?」

 

メルルが心配そうに質問すると、サクラは元気いっぱいに返事をした。

 

「あ、悪い悪い!いや、ここの土の加減を調べててなぁ。」

 

「土の加減……?君は君で、農業でも始める気なのか?」

 

サクラは、私の質問に目を点とさせる。そして、豪快に笑い出した。

 

「ハッハッハ!百姓になる気なんざさらさらねぇよ。おれサマは生まれながらの【職人】だからな!」

 

職人?それが土いじりと何の関係が……?

 

「そうだな、丁度いい機会だ!おれサマの【魔法】、魅せてやんよ!」

 

そういいサクラは、あらかじめ用意してあった【水粘土】を取り出した。

 

「おれサマの【魔法】は、形作れば物を作れる【錬金】!たとえ土からでも、形と質量さえ合ってれば……!」

 

サクラは粘土をこねくり回す。よほど精錬された手つきで形成されるそれは、いつしかしわ一つない、ほぼ完全な球体になった瞬間……

 

 

それは、【ゴムボール】になった。

 

 

「いやおかしいでしょう!?えっ、何が起きました今これ!?」

 

すかさずアイネがツッコむ。そりゃそうだ。一瞬のうちに材質が変わったぞ。

 

「流石魔法だな。なんか……あまりにも無法じゃないか?」

 

あれ?ライネの【言霊】もなんか強そうだったし、もしかして私の魔法って、しょぼい?

 

『しょぼくない』

『すごい魔法だ』

 

なにこの選択肢……適当でいいか。

 

「ハッハッハ!これがおれサマの【魔法】だ。無機物であればなんでも作れっちまう。」

 

「すごいですね。そんな魔法があるとは……。」

 

ハッハッハと、勢いの良い笑いを繰り返した後に、サクラはニヤリと笑った。

 

「よくよく考えてみりゃ、おれサマだけが魔法を開示とか、不公平じゃねぇか?」

 

……まぁ、確かに。

 

「というわけで、お前らの【魔法】も聞かせて貰おうじゃねぇか!いいだろ?情報のギブアンドテイクだ。」

 

「もしかして、初めからこれが目的で……?」

 

「ハッハッハ!そうだな!まぁいいじゃねぇか減るもんでもねぇんだし!」

 

案外強かだぞこの子!?別に断るつもりもないが、相手が魔法の詳細を明かした手前、断り辛い状態に持っていったぞ。

 

「であれば、まずは私からでよろしいでしょうか?」

 

その提案に真っ先に乗ったのはレイナだった。

 

「いいぞ、レイナ。」

 

許可を得たレイナは、先ほどサクラの汚れを拭いたハンカチを再び取り出す。

 

「私の【魔法】は、【復元】。例えば、この様に先程汚れてしまったハンカチに使えば……。」

 

一瞬のうちにその土や湿気を含んだハンカチは、洗濯し乾燥やスチーム、アイロンがけまで済ませた後の様な、完全な清潔さを取り戻した。

 

「ほら、綺麗さっぱり汚れが消えてしまいましたね。」

 

「すす、すごいですね!これさえあれば、ここの掃除も楽にすみそうです!」

 

メルルが目を輝かせ、レイナに詰め寄った。そして、その距離の近さを認識したのか、顔をほんのり赤くさせ、一歩後退った。

 

「あっ、すみません……。つい……うぅ……。」

 

「いえ、大丈夫ですよ。私めは気にしていませんので。」

 

謝罪するメルルを励ますレイナ。ふたりの関係が面白く無いのか、アンネが頬を膨らませている。

思えば、アンネは初日からレイナにだけ呼び捨てだった。少ない時間の、牢に囚われているうちにずいぶんと懐いたらしい。

 

……少しおせっかいかもしれないが、魔法のことで話題を逸らしてやろう。

 

「次は、次は私の【魔法】を話そう。えーっと……」

 

とりあえず、この前と同じ様な説明をし、次はメルルの番となった。

 

「私の【魔法】は、【治癒】です……。怪我をした方を治したりすることができます。」

 

それは、なんというか、

 

「優しい魔法だな。立派だ。」

 

思えば、【魔法】というものはある程度、本人たちの性格に合っているものだ。

 

職人の様なサクラには【錬金】

掃除が好きらしいレイナには【復元】

思い出を求めるカイルには【念写】

 

ライネはどういう繋がりなのだろうか?わからないが、きっとこの考察は当たっているものと考える。

まぁ、つまり、メルルの【魔法】は、きっと、彼女の優しさによるものなのだろう。

 

……そういえば、シグレの魔法ってなんだ?聞くのを忘れてしまっていた。

また今度聞こう。『いつか、シグレに魔法のことを聞く』ことを決定した。

 

「さぁ、最後はアンネ。君の番だ。」

 

「僕、は……」

 

アンネが言葉に詰まる。そのことに首を傾げていると

 

「わからないんです。僕の、魔法。」

 

……なるほど。そういうこともあるのか。

 

「んー、なら仕方ねぇ。無いもんは出せねえからな。」

 

「申し訳ありません、サクラさん……。」

 

「気にすんな気にすんな!もとよりこんなに素直に説明するやつが多いなんて、思ってもなかったしな!」

 

えっ……?

 

「いや、だってよ?不公平うんぬんはおれサマが勝手に言い出したことだぜ?別に言わなきゃいけない責任もあるめぇし、別に無視してくれてもよかったんだ。」

 

な、なな、何だって!?いや、そういう空気だっただろ!

 

「ま、まぁ、ですけど……」

 

メルルが困惑しながらも話し出す。

 

「みなさんとお話しできて、良かったです。」

 

……それも、そうだな。

 

(ゴーン、ゴーン)

 

余韻に浸る間もなく、牢屋敷中に鐘の音が響き渡った。

 

「えっと、これは?」

 

「まずいですね。」

 

レイナが呟く。まずい、とは?

 

「えっと、今のは時間の移り変わりを知らせるチャイムみたいなものでして、これは……」

 

「自由時間が、終わるという合図……。」

 

「急いで戻らないとだな。早く戻ろう!」

 

私たちは急いで駆け出した。

 

「ま、待ってください!この服、歩きづらくて……あっ」

 

服の重さに引っ張られ、転びかけたアンネをレイナが抱える

 

「私めがお連れしましょう。アンネお嬢様。」

 

レイナはお姫様抱っこでアンネを抱き抱えた。

アンネも顔を赤くして、満更でも無い様子だ。

 

……ヒュウ!とでも言えば良いのだろうか。揶揄ってる時間もなさそうだし、やめておこう。

 

皆、門限までには間に合い、各自の牢へと入る。

 

この後は、夕食だ。それまで、少し休んでおこう。

 

そして、私は自身のベッドに横たわり、眠った。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。