浅葱の影   作:CATARINA

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クソみたいなタイトル

それはそうと、お気に入りが1000超えました、喜びより困惑が勝っております。
生前を書き終えたら鯖としての顔見せ回(FGOだとNPC扱いのやつ)2,3話を一、二週間空けてから投稿しつつ、ぐだぐだ本編を書く感じをイメージしております。
毎日投稿は生前までになりそうかな……
それに期待して登録してくれた人には申し訳ないですが、作者はものぐさです。

追記 1/12(早朝)の時点で1200超えてました、感謝を。


冥土喫茶ミブロー

「い、いらっしゃいませ……」

「声が小せぇぞ藤堂、お客様に聞こえないだろ」

「……いらっしゃいませ!」

 

 かの騒動から三ヶ月。

 見事に脱走隊士を捕縛した秋無の強行により無事(?)冥土喫茶・ミブローは開店。最初こそ異様な装いに人々は警戒していたが、開国して新しいモノが入るこの時代。

 物珍しい外つ国情緒の装飾と異国式のレシピを可能な限り再現したメニュー。

 何より、中々の美男子……一部はあまりに厳ついが__が異人の給仕服を着て配膳などをするという奇っ怪さが一部層に爆発的にウケた、ウケてしまった。

 当初は隊士らの勤務は二週間、その後は秋無が雇ってきた従業員が引き継ぐ筈であったが好評により続投。

 永倉や土方は期日の二週で逃げるように去っていったが、一部それが叶わず。

 沖田総司、中澤琴。新撰組の美人二人の男装は町娘、奥様の心を捉えて財布を緩ませ。

 歳若く美少年と呼べる藤堂平助はこれまた熱狂的少数の信者を生み出し。

 どちらかというと厳つい寄りの原田左之助は限界化した妻の為。

 そして今日こそいないが山南の女装姿は多くの者の人生を狂わせ……

 それぞれ三ヶ月という長期で勤務する事となってしまった。

 まぁ人気の山南さんはここ数週間見てないんだけどな、忙しいのかね?

 

「藤堂ちゃぁん……今日も可愛いね……」

「……ありがとうございます」

 

 こんな感じで藤堂の人気はヤバい、素質あると思ってたんだ。

 実質的に稼ぎの三割が藤堂の人気で持ってるまである、もうここでずっと働かねぇかなコイツ。

 

「とはいえ流石に稼いだからな……今日で終わりだ、お疲れさん二人とも」

「いやマジで……一生分の恥晒しましたよ、子供にどう顔向けすりゃ……」

「今更だろ……というか文句ならカミさんに言えよな、俺としちゃ本人の要望を無視してまで引っ張り出すつもりはなかったのに、お前の嫁が刃物で脅してくるから……」

「……いやほんと、すいません」

 

 原田のカミさんはおっかない。

 女装した旦那の姿があまりに刺さり過ぎたのか、稼働日には必ずといって良い程通い詰め……通常業務に戻そうとした所ででっかい出刃包丁片手に俺を脅迫しにきた。

 

「エキセントリックな嫁さんだ、大事にしろよ」

「えきせん……何です?」

「あー……あめりか語でとても良いって意味だ」

「流石に博識っすね組長は」

 

 まぁ普通に嘘なんだが。

 ウチの局員一人として英語をマトモに学んでないのマジ? 

 幕府が訓練に仏国式の軍学を取り入れ始めた都合、ぼんやりと仏語を理解する隊士も出てきたけど、今んとこ英語とかはからきしなんだよな……俺が思うにこれからの未来、世界の頭に立つのは米国なんじゃないかと。

 商人としてのカンでしかないけどな、

 

「なんとかしてくれよぉ……君のせいで俺は、俺は普通だったのに……」

「…………」

 

 言葉も出ねぇ、刺さり過ぎたらしい。

 遠巻きに見ても明らかな程股ぐらを猛り立たせ、藤堂にダル絡みする。

 素晴らしい集金力を見せたミブローだが、藤堂の固定客は大半がこんな感じで……

 

 見てられないので助け舟。

 用心棒として雇った男衆に合図して摘み出させる。

 明日からは普通に女の子だけの営業になるからな、自衛で事足りる隊士とは違うのだ。

 

「すみません、助かりました……」

「気にすんな……いやまぁ、俺のせいなんだけど、大変だなお前も……」

 

 最後の給金は色付けてやっから……本当にすまん。

 売上も上々、金欠もそれなりには補えた。

 新撰組の未来に辛うじて光明が見えてきたぜ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ____山南さんが腹を切った。

 …………はぁ。

 理由は脱走、士道不覚悟……

 局中法度という、新撰組の悪しき掟。

 自由に辞めることも許されなきゃ、局長副長に逆らう事も許されん。

 嫌になるよ、攘夷志士に殺された数と身内の粛清、どちらが多いか分からん。

 良い奴ばっかり死んでいく。嫌な時代だ。

 なんで逃げた、とは思わない。だが、何故帰ってきた。

 この組織に何を期待してアンタは自死を選んだんだよ。

 ああ、本当に……

 

「待たれよ。 貴殿、新撰組が秋無出雲殿とお見受けする」

「あぁ?」

「恨みはないが大義の為、ここでお命頂戴致す」

 

 増えたなぁ最近こういうの。

 いや、不意打ちとかじゃなくちゃんと口上を述べるだけずっと上等だけどな。

 

「そうかい……丁寧で悪かない。俺ァ今日機嫌が悪いんだ、生かしてやるからさっさと帰れ」

「そうと行かぬ身の上。同志の仇、そして未来の敵。新撰組を排除する上で貴殿を討つ事が拙者の役目ならば」

「……なら仕方ねぇか」

 

 雄叫びをあげて突撃してくる男に銃を構え……照準が合った瞬間、視界から消え失せる。

 やった事は単純、体格差を逆手に取り体勢をぐっと低くして照準を外したのだ。

 開国から数年、一介の浪士でさえ銃というモノの脅威を認識している。

 ならばその対策も凄まじい勢いで進化する。

 

 縮めた撥条のように絞った身体の弾みで一気に切り上げる!

 薩摩や長州、土佐から京や江戸に登ってきた剣士たちに、最早銃は必中必殺の兵器足りえない。

 ____そんな事は、銃士だって理解している。

 

 下段からの切り上げを鉄下駄でもって受け止め、歯で捻じ折る。

 一介の商人だった頃から幾度となく身を守ってくれたソレは何より身体に馴染む。

 空振りで大きな隙を晒した志士に力任せの蹴り……武を修めたモノとは違う、馬力だけの蹴り飛ばし。

 しかしてその威力は馬力さえ凌駕するほどに。

 

 咄嗟に庇った腕諸共身体のど真ん中が陥没し、志士は血の泡を吐いて吹っ飛んだ。

 肋は全損、その奥に守られた脆弱な心臓、肺さえ無事ではあるまい。

 瀕死の志士の元へ歩み寄り、無駄だと分かりつつ問う。

 

「一応聞く、仲間の情報を吐く気はねぇか。楽に始末してやるぜ」

「……ハ……戯れ言、を……」

「……だろうな。悪くない動きだったぜ」

 

 腰から銃を抜き打ち、額をぶち抜いてトドメを刺す。

 放っておいても死んだだろうが、理由もなく余計な苦しみを与える趣味はない。

 半ば八つ当たりに殴り殺した強き志士へ、俺なりに出来る最大限の敬意だ。

 

 少しはまぁ、気が紛れたよ。

 

 

 

 

 

 

 

「左衛門左衛門、最近どうだ?」

「うーん……何処も売上は十分、貸金や両替も好調ですが……」

「が?」

「いやですね、質屋への持ち込みがこの頃多いんですよ。世の不安といいますか……」

「となりゃ現金で持っていたくなるからなぁ……当然此方が下手に損をするのは御免だが、出来たら少しばかり色付けて渡してやってくれ、皆が飢えるようなら先細りしちまうからな」

「へい……それと旦那に一つ相談がありまして……」

「何だ今更畏まって、お前と俺の仲じゃねえか」

「……感謝します。一つ目なんですが、嫁が妊娠しまして」

「おお二人目か!? 良かったじゃねぇか、夫婦仲も順調そうで俺ァ嬉しいぜ」

 

 辛気臭い気持ちを吹き飛ばす実にめでたい話題である。

 誰であれ、生まれた時には祝福されるべきだ。

 左衛門もカミさんも働き者だからなぁ……ホント部下に恵まれてるよ俺は。

 俺がいない時に琴の面倒を丸投げしちまってるのは少し申し訳ないけどな。

 そのお陰かアイツは彼女の言う事は割と素直に聞く……俺より懐いてる気すらする。

 俺が幾ら頼んでも何もしないのに、最近じゃ率先して左衛門のガキの子守りなんかしてるらしい。あの琴が。

 大丈夫なんだろうか……この間、高い高い〜とかいって上空にぶん投げてたけど。

 剛力一振り、子供の姿が砂粒くらいの高さまで飛ばしてたぞ。

 泣いたりしない辺りあの子も随分な胆力だが……

 

「ありがとうございます、二つ目はそれとあってなんですが。近頃やはり治安も悪く」

「すまねぇ、新撰組(俺たち)の力不足だな。どうにも最近手口も酷くてよ……」

「待った待った、頭を下げないで! 旦那が謝る事じゃないんでさ。」

 

 話じゃ英国大使館に火を放ったのも攘夷志士どもだとか。

 斬殺に火付け、略奪強姦なんでもアリ。

 奴らの大望は理解しても、それを許せるかと言えばまた別なんだよな……

 

「俺が対処すんのにも限度がありますから……用心棒を雇おうと思いまして」

「ほう、良い考えじゃねえの。お前さんは尚更、身重の嫁さんを見てなきゃならねぇしな」

「はい。丁度嫁と医者に行った帰り、辻斬りに遭いまして」

「は?」

 

 マジかよ、俺聞いてないぞ。

 報連相はしっかりしろとあれほど……そんな危ない目にあってたのかよ。

 

「ああいえ、俺でも対処できはしたんです。しかし、通りすがりのお侍がその相手を打ち据えて追っ払ってくれましてね? 感謝を伝えようと話をした所、今は職もないってんでウチに来てもらおうと」

「やる気だなぁ……ま、士官先のない浪人なんざこの京にごまんといるか」

「旦那にもご挨拶をですね」

「なるほど。で、その用心棒先生ってのは? 俺からも感謝を伝えてぇ」

 

 左衛門は俺の弟分……というより、游雲同様本当の弟だと思ってるのだ。

 その左衛門と嫁さんを救ってくれた相手なんで俺からしたら神か仏か。

 とてもとても頭が上がらねぇよ……

 

「控えております……先生! 旦那様がお見えになりました!」

「……高田源兵衛と申します、以後よろしく」

「いや待て待て待て待て待て、誰かと思えばオメェかよ」

 

 彦斎じゃねえか。

 そんな偶然あるか?

 

「あれ、旦那とはお知り合いでしたか?」

「いやまぁ……知らん仲って訳でもないが……うーん」

 

 少し前にぶった切られた仲です、とは言い難い。

 左衛門らを救ったのは事実だろうし、そこに打算があるとは思えない。

 となりゃ、主人の俺としては礼を尽くさねばなるまいて。

 

「……思うとこはあるが、俺の弟分が世話になったらしい。感謝するぜ」

「礼には及ばない、目障りだから切っただけ」

「……ったく惜しいな、アンタが新撰組(ウチ)の仲間ならどれだけ心強かったか」

「冗談はよして」

「ハ、有り得ないから冗談ってモンだろ。アンタなら安心だぜ」

「……そちらこそ、簡単に私を信じるのね」

「そりゃお前さんは敵だ、それは覆らない事実だが……見境なく民を切り捨てるような侍じゃねぇのは分かる。少なくとも、俺を始末する為に奴らを手に掛ける……そんなのは好まない、違うか?」

「……知っての通り、今の私はただの流浪人。仕事があるならこなすだけ」

「ああそれで良い……よろしく頼むぜ、ヒラクチの」

 

 そっと手を差し出す……あ、分かってねぇなこれ。

 

「知らんのか、シェイクハンドという外つ国の文化だ。手を握り合い、信頼を伝えるんだ」

「異国の文化は嫌い」

「そうかい、しかしこれからはウチの従業員なんだ。長である俺には合わせて貰うぜ」

 

 郷に入っては郷に従え、というやつだ。

 彦斎は暫く嫌そうな顔をしていたモノの、俺が引かないと見るや渋々手を取った。

 ハハハ、少なくとも暫し休戦だ。仲良くしようぜ。

 

「出雲ー、アンタの部下から新調する装備の予算について聞かれたんだけど……」

「あ、姐さん」

「……あら、まだ生きてたのね」

「……殺「待て待て待て、既視感しかないぞこの展開!!!」

 

 剣を抜こうとする琴を必死に止める。

 お前が暴れたら店が壊れるわ!

 家の方ならともかく(良くはない)、こっちの問屋が壊されると辛い。

 

「飯! 飯行こう、な! とりあえず腹ァ満たせば冷静になんだろ!」

「……旦那、ホント姐さんに甘いですよね」

「馬鹿言うな、怪力乱神、酒呑童子もかくやの化け物に逆らえるかよ」

「出雲、聞こえてる。聞こえてるからね」

「近くにすげぇ美味い鰻屋が出来たらしいから行こうぜ、左衛門も来いよ」

「良いんで?」

「たりめぇよ、カミさんの為にも良いモン食って一層気張らないとな」

 

 混乱した状況を打開するのはいつだって飯なのだ。

 善も悪も、敵も味方もまずはそれだろ。

 

 

 

「私は松の特上で」

「あ、アタシもそれで」

「あー……俺は梅で構わないんで」

「女子二人がこのザマで遠慮する意味あるか? 大将、同じの四つな」

「……すいません」

 

 

 相も変わらず新撰組の財政難は酷いモノだが、実の所俺自身はかなり良い。

 始まりは四、五年前……長い目で見てた事業が漸く大当たりしてな。

 ミブローの初期費用も実はそこから出てたりする。

 

「事業ったって要は賭博でしょ? ちょっと黒いやつ」

「安心しろ、法には則った運営をしてる。西洋の競馬を元にした新時代の賭けだ」

「競馬……馬を走らせて競い、その着順を予想して賭ける。とは聞きましたが」

「ああ、英国人が持ち込んだ文化で、今は浦賀なんかの西洋文化が根付いた場所くらいでしか見れねぇが……ありゃ良いな。戦乱なきこの時代、強い馬を育てる理由が出来る。なによりアレは熱い、いつか日ノ本中であれに熱狂する時代が来るだろうさ」

 

 日本人は根底でどうしようもなく賭け事が好きだ。

 かの足利氏も賽の目にはほとほと困り果てたとされる。

 なら俺はそれを利用するだけよ。

 

「……一つ良い?」

「何だ?」

「確かに馬比べは昔から士族にとっては強い意味を持つ、大いに大衆には受け入れられるだろうけど……」

「ああ、言いたい事が分かったよ。つまり、場所だろう? 馬を全力で走らせるには相当な広さ……そうさね、大体半里くらいの場が必要になる。それだけの空き地、今日に京都には見つかりようがない」

「……癪だけど正解ね「ああ!?」」「揉めるな揉めるな……」

「……それに馬ってのは一財産、何度も賭博を成立させる程数を揃えるのは難しい……」

「旦那ほど皆が皆、新しいモンを受け入れられるとも思えないですがね」

 

 ふむ、どうやら皆疑ってるようだな。

 

「この俺がお前らの思いつくような事を考えてない筈がないだろう」

「……なんか腹立つ言い草だなー……大将、鰻白焼きで三つ追加」

「白焼きもあるのね……私も二本お願いするわ」

「図々しさの二乗かよオメーらは」

 

 やっぱり似てるよ二人とも。

 底なしの腹減り虫なとことまるで遠慮とかないとことか。

 

「……俺たちに馴染み深いモンを応用したのさ」

「馴染み深いモノ?」

「ガキの時分、一度くらいは見た事あって、場所も取らず、馬よりずっと手軽」

 

 まさに俺に都合の良過ぎる生き物。

 在り方こそ違えど、競い合う為だけに生み出された家禽。

 

 

 

「……お前ら、闘鶏って好き?」

 




タイトルに反して内容が急過ぎます!
組長のメンタルは既に限界ギリギリ。
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