あんま期間空いて忘れられたらショックだから……
そして今回のは厳密にはジ・エンドですらないです、導入の導入。
______暗い。
あれだけ感じていた身体の寒さは、気付けばとうに無くなって。
ただ暗い闇の中を落ち続けている。
死んだ筈なのに、暗がりを感じるというのも変な話だが。
前も後ろも、上下すら分からぬように落ちて、落ちて、落ちて…………
____やり直してみるかい?
どこからか聞こえる、懐かしくて覚えのない声。
『誰だアンタは』
『アンタって君ねぇ……うーん……神?』
『大丈夫か? 人呼ぼうか? 頭おかしい感じ?』
自認神ってかなりヤバいやつなんじゃねぇのか。
『うっわ、マジ不敬これは天罰もの。仮にも自分が信奉してる神への対応?』
『信奉って……大国主か? アンタが?』
『あ、分かっても態度は変えないのね。流石僕の寵児肝が据わってる』
『ノリが軽過ぎるだろ……もうちょっと威厳とかねぇモンか』
『親しみ持ってもらいたくてさぁ……若者文化にも堪能なんだよ僕』
『神格のする事か……?』
なんというか、拍子抜けである。
これが自分についてまわった凶運の大元か……?
軽薄というか、軟派というか……
言葉にするのが難しいが、敢えて言うなら落胆が近い。
『まぁ、良いや。一先ず人生お疲れ様。どうだった? 一般的に酷い末路を辿ったように思うけど』
『……悔いはある、未練もある。ただまぁ……退屈はしない人生でしたよ、色々とね』
『うんうん。あの日に君を見つけて本当に良かった……と言っても、僕のした事といえば君を創り直した事と加護をぶち撒けただけなんだけどね、山盛り一杯全部ひっくり返すくらい』
『結果ロクでもない事も多かったですが、感謝します』
これもまた事実。
死ぬに死ねず死に損ない、最後にゃ愛した女に癒えない呪いを残してしまったが。
それでもこの短い生を謳歌出来たのはこの神のお陰なのだ。
『……話を戻して……やり直し、とは?』
『うーんと……まず、君に二つ選択肢を与えようと思うんだけどさ』
『はい』
『一つは、転生……神様的には微妙だけど、ほら僕大黒天だからさ。向こうの人たちともマブダチなワケよ』
転生、生まれ変わり。
仏教的には通るべく末路であって、本来その過程には様々な行程があるはずだが……
『地獄とか六道とか、その辺はまぁカットで。記憶も保持したままやり直して良いよ』
『都合良過ぎない?』
『そりゃ君、神子よ? 厳密には僕の子供ではないけどさ、外つ国なら処女から生まれて世界一の大宗教を作り出したりしちゃうんだから……転生先は折角だから未来に、君が生きた時代より百何年くらい先でどう? 未来は凄いよぉ〜?』
『……そんな先まで日本が残ってる事に安心したっていうか、なんというか』
『まぁ外つ国との大戦なんかもあったけど……何だかんだ跳ね除けて、今じゃ空すら飛ぶ時代だ』
『そりゃあ凄い、人間誰しも夢見るような……』
『ついでに君が考えてた鉄道。大体同じ道程を一刻と少しで着いちゃうし』
速すぎだろ。
思い立って祇園祭り行こうとしたら日帰りで行けるって事?
百年ちょっとで何があったの?
『どうする? やっちゃう?【~裏切られた元新撰組隊士の俺が現代無双、商売で世界征服~ 俺の財産がおかしいって……少な過ぎって事だよな?】とかどうだろ、多分四十年くらいで世界獲れるよ』
『クソみてぇな表題……随分と都合の良い未来らしいが……』
『ん?』
『もう一つの方を聞いてない』
『あちゃ〜バレちゃう?』
『自分で言ったろうに……商人が内容を吟味せずに契約すると? 通じんよ』
そもそも何でこんな胡散臭いんだこの神?
顔とか分かんないけど絶対糸目だろ、それで銀髪とか。
存在全てが胡散臭さで構成されてる。
『なんか失礼な事考えてない』
『考えてる』
『素直で宜しい……本当は、こっちが本命だったんだけどさぁ』
だったら何故言い渋るのだろうか。
外つ国の宗教なら神など人を破滅させるのが趣味の悪趣味な野郎ばかりであり。
ジャックに曰く、宗教家はゲイのサディストしかいないらしいのだが……
『いやね、ちょっと私の御子の死に方があんまりにもあんまりでね、僕は心が痛くて……』
『別に、同情される程酷い死に方でもないと思いはするんだけどな……』
『確かに最悪も最悪は回避したよネ! いやぁ焦ったよ。君、僕の干渉無く蘇ったろ? あの時実は結構ヤバくてさ……多分あのまま死んでたらタタリ神になってたかも。しかも凄いの』
『かも、じゃないが』
その場合どう考えても悪いのは無駄に注がれた神力である。
元凶コイツでは?
やっぱり悪神に違いない、荒神というヤツだ。
『……君が正気に戻って、その瞬間人として死んだから。こうして僕も君を拾えたワケさ』
『そうかい。沖田には、悪い事をしちまったなぁ……』
『そればかりは彼女らに感謝を……いや、そもそも殺しにかからなきゃ良いだけなのにねぇ?』
『分かった分かった、そりゃもう良いだろ……それで、もう一つは?』
『うん、人理と契約してサーヴァントになってよ!』
『は?』
鯖……サヴァ……何?
知らない単語を急に出されても困るだけなのだが……
『順繰り頼む、そのシヴァなんとかってのを』
『それはヒンドゥーの方の神様ね、しかも僕』
『文字通り受け取るなら使用人、御使いといった所だが……』
『まぁ、近いかな。サーヴァント、英霊。人の理に名を刻まれた者たち。あまりに短い人の生涯を綺羅星のように駆け抜けて、燃え尽きた彼らの僅かな未練。ソレが残す残滓のようなモノさ』
表現が抽象的すぎてよく分からないんだよなぁ……
とどのつまり、問題は俺の心残りにある。
思い残す事。
未練は、確かにある……が。
『人は死んだらそこで終わりだ。死人が生者の邪魔をして良いハズもない』
『うん、全く正論だね。一欠片の隙もない真理だ、しかしね』
『?』
『彼女は止まらないよ』
『! 琴に何かあったのか!?』
『誰とは言ってないのにこれか、愛されてるねぇ』
能書きは良い、どういう事だ。
……俺はアイツに後を託した。
野垂れ死にするくらいなら、血肉として共に……そして。
『ここに来た時に先々の記憶を渡してるからさ、その後の事は分かってるだろう?』
『…………ああ』
目覚めた時、頭蓋に流し込まれた
俺の守りたかったモノ、守りたかった人。
その全てが崩れ落ちていく様を、確かに記憶している。
ああホント、本っ当に馬鹿だよお前たち。
分かってた事じゃねえか、こんなのが長持ちするハズねえって。
なのに滅びを無視して、破綻から目を逸らし、あえなく崩壊した。
分かっていても止まれなかった。
俺は、お前らを助けてやりたかったけど……
それは俺のエゴだったのかもしれねぇ。
商人である俺じゃ、侍に焦がれたお前らを守れなかった。
ただそれが、惜しい。
『まぁ気に病むなって、これでも彼女は救われてるのさ』
『アレで、か?』
『君が与えたモノ、そして君の遺したモノ……それが、辛うじて彼女を人に繋ぎ止めた。残念ながら君の直接の仇……土方くんだったかな? を始末するまでは止まれなかったみたいだけどね』
『……そうか。そりゃ、良かった』
お前も馬鹿だなぁ。
俺の事なんか忘れちまって、戦いなんてやめて逃げちまえば良かったのに。
仇討ちなんて俺ァ望んで無えってのに。
ホント、本当に、バカなやつだぜ。
『でも、そうならなかった未来もある』
『……どういう事だ?』
『未来というのは本来無数に分岐していくモノだ、何処かの誰かの些細な行動一つで後の未来が激しく変化する事すら容易い……それが、英霊足りうる者なら尚更にね。そうだな、例えば……』
神がそう呟くと、視界がぱあっと開けた。
暗い闇の中のような世界が眩いばかりの日差しに包まれ、世界の輪郭が生まれ出ずる。
同時に、無いはずの瞳に見知らぬ光景がありありと映し出されて。
『これなんかどうだい? 君が彼女に壬生狼に誘われたあの日、君はあくまで商人として彼らと付き合うに留める事を選択した。商売に専念した秋無出雲は凄まじい勢いで豪商として大成し、明治政府が成立した時にはもう遅い。京都一帯は日ノ本一の大商人、秋無の城となっており政すら跳ね除ける自治区を……』
『話が壮大過ぎるだろ……マジの話なのか』
『全然あったよ。他にも……あ、これは音声付きだ。ポチッとな』
ポチット!
何も見えないが本当にポチッと音がする、そんな事ある?
今度は逆に暗転。
先程とは打って変わって真っ暗な中で、良く見えない。
暗順応が済んでたならもう少しはカタチも捉えようがあったのだろうが……
『ん……ッ………』
『…………』
『あの、もうちょっと優しく……!』
『何だ、緩いんじゃなかったのか』
『初めてなんですよ……! あっ………』
ストップゥ!!! スタアッップ!!!!!
『何だい良いとこだったのに』
『良いとこじゃねぇわ! 何見せてんの!?』
『そりゃ、ナニって……皆まで言わせないでよ恥ずかしい』
『ぶち殺すぞクソ神』
『やだ酷い……そういう可能性もあるって話なのに……正直ここで手を出さないのは主宰神どうかと思う。覚悟を決めてヤッちゃえば良かったのに。アレじゃ皆で盛り下がりだぜ?』
知らねぇよ……マジでとんでもないモン見せやがって。
そもそも俺にその気はないし、向こうも追い詰められてただけだろ。
そんな事したらこの世界のレーティングが上がっちまうのがオチなわけで。
のらりくらりと本筋から逸らして語る感じが妙に腹立つ。
『さっさと本題を話してくれ、そうならなかった未来ってのは?』
『君の未来で彼女はあくまで人として生きる事を選べた……けどね、最後に踏み留まれなかった可能性も存在するんだ。さてと、それじゃあもう一度問おうか。君はどうしたい? 全てを切り替えて遥か先を幸福に生きてみるか、それとも一人の女の子を救いに行くか』
『…………』
前者を選べばそれはきっと
俺の見れなかった日ノ本の未来。
語られた範囲だけでも想像もつかない発展。
鉄道に商売、銃なんかだって……
後者を選ぶ利が俺にまるで無いんだよなぁ。
『……サーヴァントになったとして、俺ァどうなるんだ?』
『英霊が集まる座って所に飛ばされて、後は存在が擦り切れるまで戦いっぱなし! サーヴァントとして召喚されるのはあくまで影法師、君の魂は二度とそこから離れられない。輪廻の輪からすら外れ、例え神として祀られてもね』
なるほど、なるほどね。
本気で全くってくらい選ぶ理由が無えな……
死んでまで戦い続けて、くたばったらまた次と。
馬鹿馬鹿しい、ふざけた契約にも程がある。
『乗った、さっさとやってくれ』
『……いや話聞いてた? 提示しといて何だけどホッントーにメリットないよ』
どうせ俺ァ死んでるし。
今更何をどうしようが人生の余剰でしかない。
『そもそも彼女は限りなくあの子と同じようでいて……それでも君の知るあの子とは別の存在だ。それでも……』
『二度は言わねぇ』
一度目の生は仲間とテメェの為に使い潰しちまって、惚れた女一人幸せに出来なかった。
二度目があるなら……そん時ゃ、俺の勝手に使って良いだろ?
『……うん、そうだね。そう言うと思った。君が自己幸福だけを望む人格じゃないのは良く知ってたからね』
『流石、分かってんじゃねぇの』
『そりゃ僕主宰神だしぃ? 万一断られたらずっと上のお爺に土下座して日ノ本を一から創り直す事になってたかも……いやぁ良かった良かった』
『主宰神とは……?』
『第二次産業の悲哀感じてくれる? ……さて、前置きが長くなったけど頑張って。サーヴァントになっちゃったら流石に今まで程の過干渉は難しくなっちゃうしね……寂しかったら僕を想って泣いて良いよ』
『アンタって戯言しか話せないのか……?』
『ハハハ、じゃ段取りを説明しとこうか。まず、君のすべき事は____』
短い言葉、返事も待たずに無いはずの身体、蹴り落とされ。
更に更に落ちていく。
『行ってらっしゃい! 悔いなき旅路を!』
唯一違うのは、見えない視野。
落ちていくのは真っ暗な闇でなく。
何もかもを丸呑みにするような眩い光に取り込まれて。
そして、俺は____
邪悪な善神。
尚、ムーブがあれだが実に善良な神である。
沖田がトドメを刺し損ねた場合、とんでもないタタリ神が生まれて政府軍も幕府軍も全滅してた可能性あり。常にフワフワした確率の元成り立つ未来……