具体的に言うと全部で五話です。
ぼんやりとNPC回だと思って読んでもらって……和解とかはほんへでやります。
今の近藤とか曇らせても『やはり新撰組は……』としかならんしね。
ちゃんと直ってからじゃないと壊せない。
ん…………
何処だこりゃ。
いや、見覚えはある。死ぬほど見慣れた京の街だ。
この辺りは……烏丸通りの近くか?
果てさて、よく分からんまま来ちまったワケだが……
指示が抽象的過ぎてさっぱり分からん!
『まぁ迷わず行きなよ、行けば分かる』じゃねぇんだよなぁ……
見て分かる、って事は多分、俺の知ってる時代って事になるんだが……
人が居ねぇなぁ。この辺りは四六時中視界に人がいてもおかしくないんだが。
代わりに見て分かるくらい血溜まりが点々と……Wow、どうなってんこりゃ。
いや別に、俺らん時もあったよ? ザラに死体転がってたけどさ……
「ん〜とりあえず屯所か、春夏冬亭にでも……」
『きゃああああああ!?』
人の反応、だいぶ穏やかじゃなさそうだ。
とりあえず行ってみるかね、強く当たって後は流れで。
「次に俺の神剣、辛怒墓流狗の錆になりてぇヤツはどこだァ!?」
「なんだあの絵に描いたみてーなヤカラは!?」
壬生狼ん時のウチ……よりも流石に酷いか、少しだけ。
余計な事する度にぶん殴ってたしな……
辻斬りとはよく言ったモノの、実際に辻の裏で無差別に人を殺し回る奴は多くない。
大体理由があって……要人暗殺や騒動自体が目的の時なんかに虐殺ってのはあるが。
コイツの場合は関係ないな、目がイッてる。完全に殺戮衝動に呑まれてやがるなぁ。
正直なとこ、関わりたくない感じの人種だが……
流石に見て見ぬふりは無理だろ、これでも俺ァ治安維持の側なんだ。
「おい、そこのチンピラ。今すぐお縄について平伏し、腹ァ切るなら晒し首で勘弁してやるが」
「あァ……? なんだァ、切りでのある野郎がいるじゃねえか」
「生憎もう散々ぶった切られてるんでね、これ以上は勘弁だ……そこな娘さん、さっさとお行き。近頃物騒だから気をつけてな帰りなよ」
慌てて逃げ出す娘っ子には目もくれず、よく分からん刀を振り上げて突撃してくる。
まだ距離があるから正確な事は言えないが、なるほど確かにかなりの業物……
どちらかというと刺突に向いてそうな刃だが、まぁ確かに良いモノとみた。
わりかしあった距離はみるみる詰まり、とうとう刃が俺を捉える射程……
無手と剣士との絶対的なリーチの差、初撃の有利。
素人丸出しの大振り、大上段。振り下ろされ。
つまりそれは、俺の
力任せ、強引極まりない蹴り飛ばし。
履きなれた鉄下駄が男の頭をぐじゃりと潰して、声もなく絶命させる。
幾ら武器が良くても、これじゃあな……
戦闘に於ける体格差は、生まれながらの絶対だ。
無情な程に、生来の格差で勝敗が容易く変動してしまう。
それを埋めるのが技であり、技術であり……
化け物みたいな大剣を振り回す馬鹿でかい琴と、刺突を主としたやや短めの打刀を得意とする沖田との射程差は三倍はくだるまい。しかし実戦で両者のキルゾーンに大差はない。
軽々しく才能などと沖田は嘯くが、それだけの差な訳がない。
身に付ける為にどれだけの犠牲を払い、どれだけの時間を捧げたのが、想像も出来そうにない。
「お前らみたいなのが簡単に強くなれっと思うなよ……さて」
良さげな剣である、手間賃に貰っておくか……
買取三両、売って六両少しってところか?
もうちょい詳しくみて……
手に取って調べようと転がる剣に触れたが最後、視界から消え去る勢いで吹き飛んでいく。
亜音速の加速を果たした鋭き刀剣は狂乱の音色を掻き鳴らし遥か彼方。
丁度その先で起ころうとしていた再びの凶行に割って入り、下郎の上半身を吹き飛ばして壁に刺さる。
ワァ〜……
ナニコレ、酷すぎるだろ。
俺の馬鹿みたいな幸運、身の隅々まで行き渡る、大国主の恩寵。
その裏返しかのような呪い、災禍。
生前から確かにまぁ酷かった、酷くはあったよ?
ここまで来るともうそういう異能だろ、なんだよこれ。
大丈夫なのか、包丁すら持てるか怪しいぞ……
……一先ず、検証は後にするとして。
大丈夫か? 割とすんごい勢いでカッ飛んだし、破片とか受けてもおかしくないと思うが。
腰が抜けて立てねぇってんなら、医者まで運んでやっても良いんだが。
「…………う、後ろ!」
「……!」
完全に油断していた、もう一人……
咄嗟に懐に手をやり、確かに存在するそれを感触だけで確かめる。
もうどれほど使い込んだか分からない、旧式の拳銃。
抜き撃つ、のではない。
抜く事と撃つ事とは同時かつ同義。
撃ちながら抜き、抜きながらに撃つ。
神速の早撃ちが、荒くれ者を捉える……
その、直前。
「ノブノブ流奥義! ノブの閃き!」
「ぐわあああああ!?」
「っおおおおお!?!?」
突如飛び出してきた小さなナニカを諸共撃ち抜きそうになり、慌てて銃口を逸らす。
辛うじて弾は誰にも当たる事なくあらぬ方向へ……振り上げた刀を撃ち抜いてべきりと折れる。
「大丈夫ニュブか!?」
「こっちのセリフ……いやなんだコレ」
人……? いやそもそも生き物か……?
にしてはやたら小さい、からくり人形……?
羽織は……背中に刻まれた誠の文字までそっくり同じだが……?
なんとも言えない造形だ。
うーん……
つついてみる、モチモチだ。
銃をしまい、持ち上げてみる。
意外と柔らかい……アレだ、うどん……?
ベタつかない麺の生地というか……
妙にクセになる感触だ、ずっとモチモチしていたい。
「ん〜! やめるニュブ〜!」
「おっと悪い、礼を失した行為だったな」
「本当に失礼ニュブ、ちびノブ隊長は誉れ高きニュー新撰組の隊長。つまりとても偉いニュブ」
「それはそれは……そうとは知らずとんだ御無礼を」
「分かれば良いニュブ! ……たまになら、良いニュブよ」
寛大なお心の持ち主だった。
よく分からんけどこのナマモノは現地の自警団みたいなモンかね?
俺たちも最初の頃はこんなだったかなぁ。
それはそうと、今なんか変な名前が聞こえた気がするな。
「ニュー新撰組……?」
「そうニュブ。皆を守る立派な仕事ニュブよ!」
「……そうか。そりゃ、良いな」
皆を守る、か。
……そうだな、そうだったよな。
「お前結構強そうニュブね、今なら特別にニュー新撰組に入れてやっても良いニュブよ!」
「そりゃ中々興味深い話だが……内勤の募集はあるか?」
「???」
「ん〜……一先ず、保留だな」
幸か不幸か屯所は死ぬほど見慣れた西本願寺にそっくりそのまま。
はてさて誰か居ると良いんだが……少なくとも話の通じるヤツ。
近藤か土方か……齋藤辺りでも良いんだがどうだろ。
一先ずこのナマモノを抱えて屯所へ移動……その道中。
「ボ、ボンバノブッ……!!!」
「ボンバノブ……」「ボンノブ………」
「あーっ、アレはボンバーノッブ! マズいニュブよ!!!」
この世界頭おかしくなりそう。
ナマモノがナマモノを警戒して刀を向けている。
一見珍妙な光景だが、このちびノブ隊長結構強い。
少なくとも本家本元の隊長らに引けを取らないくれぇにはやれるんだよね。
そのちびノブが警戒するボンバーノッブも、まぁ相応の強さはあると思われるのだが……
なんか挙動が変だな……
ボンバーノッブ三匹(?)の編成ではあるが、誰一人向こうから仕掛けてはこない。
やや大きめのボンバーノッブが前に立ち、此方を威嚇し……
その背後に小さめのボンバーノッブが二匹。
……ふーむ。
ちびノブの静止を無視し、ボンバーノッブに手を伸ばす。
起爆。
辺り一帯を眩い閃光が包み込む。
甘いな、俺はこの程度じゃ怯みもしないぞ。
決死の自爆が通用しなかったのを見て、明らかにボンバーノッブ達の様子が変わる。
半泣きになる二匹の小さめノッブを庇うように此方を睨む大きめノッブ。
いや、お前まで泣いてどうするよ……仕方ねぇな……
わあわあと泣き喚く三匹を抱え上げ、近場に転がしてやる。
幸い治安がアレなだけで見慣れた京のそれだ……さっき撲殺した浪人から金子も抜いてある。
「よく分からんが腹減ってるだろ、何か食うか?」
「ノブッ……!?」
「何してるニュブ!? というか今爆発しなかったニュブか!?!?!?」
「アレくらいじゃそよ風みたいなモンだ……で、どうする。来るか?」
「ノ、ノブッ……!!!」
「とまぁこんな経緯でな、コイツら共々ここの預かりとなってるワケだ」
「いやおかしいおかしい、何で普通に会話が成立してるの?」
「何でってもなぁ……分かるから分かるとしか……」
何でだろうね?
ボンバーノッブたちは気付いたら今の姿になっていた、どういう生態なんだ。
「秋無さん、もしかして
「アイツやっぱり狂戦士か……いや、俺は……クラスもよく分からんのよなぁ」
案の定ってやつか。
馬鹿野郎、死んでまで止まらねぇ奴がいるか。
仲間を失い、沖田を、近藤を失い……
それでも走り続けて、俺の相棒と殺し合ったクソボケ。
なるほど狂戦士だろうよ。狂ってなきゃ出来ようもねえし。
「自認は商人なんでな、一応キャスターってことにしてくれ」
「秋無さん剣も持てませんしね」
「キャスターって……そんな、その筋肉は見た目だけだと……!?」
「ハハハ、心は
悲しい事にある意味で事実なのである。
ガタイの良さが無手の喧嘩なら良く機能するんだがなぁ。
俺らのいた今みたいな幕末って、どいつもこいつも剣とか振り回すから。
カチコミ行く時は打撃仕様の戦篭手とかも付けてたけど殺傷力の差がね。
軽く切りつけるだけで人は死ぬが、撲殺するには一々力を込めて殴る蹴るの必要がある。
「それにしても秋無さんが局長ですか……」
「代わりだ代わり、俺ァこんな役職向かねぇよ……」
「良いんじゃないですか? 少なくとも土方さんより向いてると思いますよ」
「それは流石に俺も思う、二番手ならともかくアレが旗頭は終わりだぜ……」
「はい、親睦を深めるのも良いけど……一先ずお互いの情報を共有しようか、マスターくん」
そうして俺らはお互いの持つ知識を共有し……
結構な面子が世話になってる事も知る、大変だろうなぁカルデア。
マジで例外なくウチの隊士って皆個性強いし、我も強いし……
永倉はジジイの姿なんだと。アイツらしい、真面目なヤツだったからなぁ。
「……ま、とりあえず。少し休みな全員、今いないウチのボケ共……永倉やら齋藤なんかは俺の部下が探してっからよ。案外明日辺りには見つかったりして……」
「部下? 秋無さんの他にも誰が?」
「ん〜誰っつーか……見せた方が早ぇか」
右手に全身の力を集中……魔力ってやつなんだが、よく分からん。
サーヴァント自体が神秘そのものだからか、俺にも最低限知覚出来るようになっただけだし……
薄ぼんやりと、その輪郭を捉え、指を鳴らすと同時に具現化する。
無貌の影がぼんやりと指示を待つように立っている。
「……シャドウサーヴァント?」
「あんま期待すんなよ、戦闘能力は大したことねぇ。正直ちびノブにすら勝てるか怪しいくれぇだ……一応これが俺の宝具……らしい。らしいってのは、俺自身よく分かってねーからだな」
「貴方、宝具の情報を座から得てないの……?」
「俺ァちょいと特殊だからよ……戦闘力のほぼない、影みてぇな分身……幻霊を二、三体出せる。言っちまえばそれだけの能力になるな。惜しいぜ、折角なら俺もビームとか撃ちたかったのによぉ」
戦闘面だと多分目眩しくらいにしかならねぇだろうなぁ。
刀持った一般人程度の強さしかねぇから……
コスパはホント良いんだがな〜サーヴァントとしてはどうなんだこれ。
「とはいえ結構潰しは利くぜ? 調理に洗濯、経理に諜報……」
「サーヴァントらしい使い方が最後しかない……」
「皆まで言うな悲しくなるから。マスターちゃんは……その格好じゃちとアレだな。ノブギョー、頼めるか?」
「はいノブ! さあ、皆着いてくると良いノブよ!」
「ありゃ、何処に連れてくんです?」
「隊服余ってたからよ。お前さんもまさか無くしてねぇよな?」
「えっ、あっ……あー……大、丈夫、ですよ?」
これアレだな、ダメな時のパターン。
嘘つくのがヘタクソ過ぎるぜ……
質の良い羽織なんだけど、割と皆じゃぶじゃぶ汚すし血塗れだし。
沖田なんかはよく飯食いに行った時に置いてくるし……
土方が色街でツケ代わりに置いてった事もあったんだよな。
確かに本人確認としちゃ最高かもしれないけどよぉ……
「にしても何だ、妙に元気そうじゃねえの」
「サーヴァントになってから心做しか体調が良いんですよ」
「サーヴァントは基本的に全盛期の姿で召喚されっからそれか……? だとしたら俺は片腕のこの時期が全盛期になっちまうんだが、おかしくない?」
「ハハ、琴さんとイチャついてた時期だからじゃないですか?」
「普通に考えたらそんな理由で全盛期になんかなるモンかね……ほら、お前も行ってこい。現代っ子に着方を教えてやりな」
「ああそうだった……マスター! マスター! 先に行かないで下さいよ〜」
なるほどね。サーヴァントってのも悪くないのかもな、少なくとも沖田には。
病気に苦しんでへばってたあの頃より、仲間たちと肩を揃えて戦えんだ。嬉しいに決まってら……
沖田とマスターが去り、部屋に残ったのは彦斎と俺だけ。
「………………秋無、アレは」
「おっと言うなよ彦斎。お口チャック、わざわざ掘り返す事でもねえよ」
『……ホッント、都合の良い脳ミソしてますね。羨ましいくらいに』
「!?」
控えていたソレが悪態を吐く。
顔もないのに口が悪い、本当に不思議な事もあるよな。
無貌の幻霊の中で、唯一姿の違う個体。
右腕を失い、隻腕の。俺と鏡面のような、顔無き誰か。
「そう言うなって……人間誰しも、忘れてぇ事くらいある。土方や齋藤が一緒に居てもああだってんなら、そういう事だろ? 良いのさ、アイツが楽しくやってんなら水を差すのも馬鹿らしい」
『いつだって、忘れるのは加害者だけで』
「お前だって俺の言いつけも守らねぇで、こんなとこまで来ちまった。そうだろ? 人ってのは間違える、そしてそれを忘れるからこそ前に進めるのさ」
「貴方、一体何者……? 他のとは明らかに違う、自律して動いてるように見える」
『俺にゃ何も有りませんよ。貌も名も、志さえ。ただのがらんどうでさァ』
虚ろそのもの、辛うじてこの世に残ってこそいるが、擦り切れて摩耗した残滓だけの存在。
それでも俺はコイツを信用してるのさ。
嫌がるから、最早名前でさえ呼ばないけどな。
沖田についてはほんへでやります、一先ず流し読みして下さい。
病弱 B
天性の打たれ弱さ、虚弱体質を示すスキル。 彼女の場合、生前の病に加えて後世の民衆が抱いた心象を塗り込まれたことで「無辜の怪物」に近い呪いを受けている……
が、サーヴァントとして現界した彼女は本来よりもこのスキルを低いランクで保有する。
その理由を、彼女は覚えていない。