浅葱の影   作:CATARINA

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藤堂と組長、単純に相反する男過ぎる。




真面目な復讐者、能天気な裁定者

 

「おお、似合うじゃないのマスターちゃん。馬子にも衣装ってやつ」

「秋無さんそれ多分褒めてませんよ」

「こーんな見るからに平和そうな時代から来た人間に着せる服じゃねぇからさ……とはいえ一応こいつは最低限の防刃性能もあるし、何より洋服よりも浮かない。暫く我慢してくれよ」

「……一先ず見回りって事で宜しいんで?」

「足で稼いでこそだろ……さーて、死番は誰が行く?」

「あ、当然ですがマスターは無しですからね」……

 

 当たり前だ。一番守るべき民を矢面に出してどうする……

 

「公平にじゃんけんで行きましょうや」

「死番ね……下の者を使い潰す、野蛮なやり方だわ」

「んな事ねぇさ、俺や沖田だって順繰りくるモンだし……それはそうと、お前さんはやらんのか」

「勝手に決めて頂戴」

「怖いのか?」

「何?」

「死ぬのが怖いなら別に芋引いても良いんだぜ」

「……野郎、ぶっ殺してやる!!!」

 

 はいじゃんけんぽん。

 負けたのは沖田……まぁその面子なら妥当か。

 

「分かってると思うが死番は死んで良い順番じゃねえぞ、用心しろよ」

「分かってますって……秋無さんは心配性なんですから」

「マスターちゃんもだぜ、最悪ヤバかったら俺ら全員置いてでも逃げて生き延びろ。アンタは生者なんだ、俺らみてぇな死ぬに死ねない亡霊とは違うんだからな……」

「…………」

「ん、どしたよマスター」

「なんか、秋無さんって思ったのと違うんだって」

「ほーん?」

 

 そういや、マスターは未来の人間だから……

 俺がどういう扱いを受けてんのか知ってたりするんだろうか。

 個人的にはパッとしないしそんな知名度も無い気がすんだけどなぁ。

 何よりあんないい男といい女の集まりん中で、俺だけ場違いに強面だからよ……

 

「……一応聞いてみて良い? 未来の俺ってどういう扱い?」

「んーっと……空飛んだり火吹いたり……悪魔と契約して人間辞めたり……」

「贅沢な使い方だなオイ、俺なんかにそんなコスト掛けて語るのか……」

「貴方は新撰組を裏切って……そういう風に伝わってるから」

「なるほどなぁ…………確かに、あながち間違いでもないかね」

 

 まぁ、だろうな。

 未来に新撰組(ヤツら)がヒーローとして伝わっているというなら。

 俺はきっと()()でしかない。

 脚色された新撰組を夢想した作家たちの判断は正しい。

 その方がずっと分かりやすく、ヒロイックで、悲劇的だから。

 実際俺が最後の引金引いちまったようなモンだからなぁ……

 

「……ま、それはそれ。これはこれ、少なくとも俺ァダチだと思ってるのさ。なぁ原田?」

「…………そっすね」

 

 おお、思ったより良い反応。

 これが土方辺りだったらキレて切り付けて来てもおかしくないだろうし。

 

「……! 皆さん用心を、誰か……」

「血の香りだ……相当…………ッ!? 山南さんか!?」

「ッ……! まさか、秋無くんまで居たのか……」

「後だ後……無駄に喋らないで良い。何があった?」

「私は良い……先の辻で、土方くんが……」

 

 言葉と同時に沖田が走り出す。

 くそ、状況も考えねえであの野郎は……

 

「一先ず原田さん、ここ頼めるかな」

「確かに山南先生をこのまま置いてく訳にはいかないか……」

「マスター、彦斎。沖田を追ってくれ、原田は山南さんを……とにかく屯所だ、ここは不味い」

「……分かった!」

 

 指を鳴らし、影二人を呼び出して山南さんを担がせる。

 とはいえコイツらは本当に弱いのでこの殺伐とした世界に放り出すワケにもいかない。

 戦力分散は痛いが、原田に頼むしかないか……

 

「……分かりました、組長は?」

「嫌な予感がする……琴じゃねぇが、カンを当てにしちまうくらい嫌な気配が」

 

 琴と俺の違いはカンの冴え方。

 俺のはいつも、悪い時にしか当たらねぇんだよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とまぁ、急いで追ってきたらあら不思議、懐かしい顔ぶれが勢揃いかァ?」

「秋無組長……!」「秋無か……!?」

「たりめーだろ、この風貌俺以外に誰がいるよ……久しぶりだな全員。藤堂は髪切った? 齋藤は……あ、お前も髪切ったのね、短髪のが似合ってるぜ」

 

 いや考えりゃ鴨さんとかも人相は悪いか、流石に体格は俺のがずっと上だが。

 ホントマジで懐かしいメンバー揃いだね、飲み行く?

 俺ってばこの世界疎いから良いとこ知ってたら嬉しかったり。

 齋藤と新八は結構長生きしたって聞くし俺その辺も教えて欲しいや。

 

「ッ……! アンタは……何でアンタがそっちに居るんだよ!?」

「話が掴めねぇな……あっちもこっちもあるかい」

「僕らは……新撰組を滅ぼす、全てが誤りだったその道程を無かった事にする為に……」

 

 ほーん。

 俺の登場に全員に僅かに隙が生じる、よいしょ。

 銃を抜いて三発、それぞれにぶち込んで……ありゃ、やっぱ弾かれるか。

 自信無くすぜ俺……剣豪ってのは当たり前みたいに弾丸弾くから嫌なんだよね。

 相手してて不毛極まりないのよ、弾だって作るの面倒なのに。

 

「うおおお!? 何考えてんだ!? 話を聞けよ!?」

「いや、どう見てもお前ら悪いヤツだろ。だったら隙ありゃ殺すよ当たり前じゃん」

「……狂気と合理的な思想が共存してる、これだから狂戦士ってのは」

「いきなり人を狂人呼ばわりすんなよ。ん〜……なるほど、齋藤が剣士(セイバー)……新八は狂戦士(バーサーカー)……すげぇ解釈一致。お前ら分かりやすっ、んで藤堂は復讐者(アヴェンジャー)……うわ藤堂の幸運値低過ぎ……!? 大丈夫? お祓いとか行った方が良いんじゃない?」

「!?」

 

 そして突如発覚した全員のクラスとステータス。

 本人すら知覚しているかあやふやなそれを開示され、三人の時が再度止まる。

 残念ながら銃は旧式なんで再装填は手間だ、残り三発。

 ちょっと取っておきたいから使わないで良いや。

 

 むんずとそこら辺の箱を掴んで投擲……したのを空中で蹴り飛ばして更に加速。

 狙うはとりあえず藤堂、齋藤も新八も本気じゃねぇだろ。

 彦斎は強い、強いが……隊長三人で歯が立たないという程でもない。

 それが押されてるってんなら答えは一つ。何らかの理由でやる気がねえんだ。

 唯一憎悪と殺意を滾らせてやがる藤堂を無力化するのが一番割が良い……

 

 木箱と俺が一直線に重なった瞬間、殺気。

 咄嗟に身を捩って辛うじて回避する……凄まじい砲撃で木箱が消し炭に。

 ヒュー! 大砲付きの腕かよ! すげぇ、羨ましい……

 でもそれって爆煙で視界塞がるよな、誰よりもお前が理解してるハズだけど。

 やっぱ怒りに身を任せるって良くないぜ……視野が狭くなっちまう。

 

「チッ……!」

「流石に反応が早ぇ……だがもう遅い」

 

 最接近、零距離の俺に対し藤堂は咄嗟に防御を……

 身を固めちゃ寧ろカモだぜ、俺とお前らは違うんだから。

 よく分からん砲撃義肢、頑丈なカラダ?

 結構結構、お前さんが硬けりゃ硬いほど好都合なんだわ。

 それにお前の腕や脚を見てくれだけ揃えたのも俺だぜ。

 攻撃のリーチや踏み込みに不可欠なそのサイズだって、忘れようがねえよ。

 

 サーヴァントになった事でぶち込まれた知識、未来の記録。

 その中にあった俺の知らない、未知の技……

 

 右腕を掲げて藤堂に飛びつき、その首を刈り取るように巻き付ける。

 小柄な体躯は当然、200kg近い俺の体重に抗えず宙を舞い……

 勢いそのままに、背中から大地に叩き付けられた!

 瞬間だが二人の合計、四半トンもの大質量が藤堂の身体を圧し潰し、ダメージに血を吐く。

 

「がっはァ!?!?!?」

「食が細えんだよ、軽過ぎるぜお前」

「クソッ……!」

「おっと、動くなよ。お前さんも色々あったらしいが……大筒の腕? 機械の脚? なるほどなるほど、随分とすげぇ事になってんな。アタマん中まで何か仕込んでるか試してみるか?」

「ッ…………!!!」

「彦斎〜、一人ずつ無力化しろ。殺さなきゃ切っても構わん。どうせ簡単に死なんから」

「なんで、何でだよ!!!」

 

 何だ何だうるせぇな。

 状況分かってんだろうか、こっちはその気になりゃテメェの脳漿ブチ撒けるんだぜ。

 

「アンタだって……アンタも、殺されたろうが!!! あんなに全身切り刻まれて、その上ゴミみたいに打ち棄てられて……それなのに、何でだ! 何でソイツらの味方するんだよ!!!」

「……ハァ……真面目だなぁお前、真面目過ぎるんだよ」

 

 あの時代を生きたとは思えないほど()()()な頭と生真面目さ。そりゃ生き難かったろうよ。

 殺したから、恨まれる。

 殺されたから、恨む。

 一々そんな事を気にしてたらキリがねぇだろうが。

 

「俺と皆の道は交わらなかった、だから死んだ。俺は商人だったから、侍になれねぇ俺だけが、人を捨てられなかったから……話はそれで終わりだ、それ以上それ以下何にも無ぇ。走り抜けたあの日々を、懐かしむ事こそあれ恨みはしねぇんだよ俺ァ……」

「なんで、どいつもこいつも皆……」

 

 こっちは一応制圧……さてと、向こうの首尾はどうだろうか。

 瀕死の土方にキレキレの沖田、それとよく分からん厨二臭い剣士。

 すげぇとっ散らかった見た目だ。ファッションにまるで統一感がない!

 よく考えたらここ剣士しかいないし分かりにくいな……仮に†黒の剣士†と呼ぼう。

 

 野郎見た所かなり強い……下手したらこの場で一番なんじゃねえか。

 まずアレと斬り合いが成立する剣士なんざそう多くないってのに。

 永倉や齋藤でも真っ向からなら本気の沖田は止められん……

 ……否、強さ以上に慣れてる……?

 沖田の剣さばきを捉えるというより、知ってるような……

 

 刹那、俺の中で何かがハマる。

 疑念は仮説に変わり、間もなくして確信に。

 沖田は三段突きの構え、だがそれは……

 

「……止まれ沖田!!!」

「……えっ、素手で……!?」

「…………」

 

 必殺の三段突き、無手一つで止められ__

 呆然とした沖田は致命的な隙を晒してしまう。

 無慈悲な刃、空を裂くように軽く振り下ろされて朱が舞う。

 

「あ…………」

「クソッタレ……!」 

 

 選択の余地はない。

 押さえ付けていた藤堂、思いっきり地面に叩き付けて意識を刈り取り。

 残った三発を剣士に向かって発砲、当然防がれる、が……

 それでも一瞬は稼げる。

 

 その一瞬、その間が欲しかった。

 転がってる土方を安地に蹴り飛ばし、鮮血に塗れた沖田と剣士に割って入る。

 振り下ろされた刃をその身で受け止める。

 滅茶苦茶痛えが痛いだけだ、俺を仕留めるにゃ半歩ばかり足りない。

 

「浅えな、近藤よォ……! 沖田相手だと、踏み込みが鈍っちまうか!?」

「……秋無組長、俺は……」

「厨二病にはちょいと遅過ぎるんじゃあねえの……! 何が俺はだボケ!!!」

 

 呆然とした隙に思いっきり殴り飛ばす。

 ホントどいつもこいつも俺を見たら気が抜けちまうようで助かるよ。

 何だってんだ、死人でも見たようなツラしやがって。

 

 一先ず沖田にこれ以上のダメージを与える訳には行かねぇ……が……

 拮抗が崩れたのは不味い、非ッ常に不味い。

 

「……ッ!!! 秋ッ無ィ!!!」

「おお、ゾンビかよ藤堂。俺ァお前の頭をカチ割るつもりでやったんだが」

「もう良い! 例えアンタでも邪魔するなら関係ない!!!」

「こっちは元からそのつもりなんだぜ、敵なら敵で仕方ないよなァ!?」

 

 煽りこそするが、状況は最悪、かなり不利。

 マスターと彦斎の心配は要らないだろうが……俺一人で近藤と藤堂を相手取るのは無理だ。

 ソイツは天地がひっくり返っても不可能ってモンだぜ。

 向こうには藤堂が率いる神剣組なるコンパチヒーローズ。

 一体一体はそれなりだが、数がとんでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一応、策はあるんだ。だがここで使っちゃどうなる事やら……

 影法師でしかないこの身がどこまで耐え得るのか分からねぇから。

 

 四面楚歌といって差し支えないこの状況、俺のすべき事は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミツケタ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 襲来する『外』からの異物。

 殺しに殺し続け、浅葱の血肉を貪り、屍を挫くナニカ。

 真っ先に反応したのは、ソレと元を同一とする者ただ一人だけで。

 

「____全ッ員!!! 逃げろ!!!」

「は……?」

 

 次の瞬間、秋無の身体が抉れる。

 鈍く惨い爪に削ぎ落とされたように身体を削られ、血溜まりに倒れる。

 

 そこで漸く、一同はソレに気付く。

 そしてその気付きはあまりに遅過ぎて……

 瞬き一つの後に齋藤と永倉が頭から血を吹いて吹き飛んでいった。

 藤堂と近藤が敵と認識した時には既に二人は獲物の側。

 

 ……滅茶苦茶痛え、けど寧ろ好機だ。

 指を鳴らし、影をマスターの真横に呼び出す。

 

「連れてけ……! 屯所まで、振り返るな……!」

「えっ、あっ……秋無さん!」

「護衛を頼む! アレは戦うには向かねぇ……!」

「言われなくとも……!」

 

 マスターは多分大丈夫だ。

 俺の推測が正しければ、今の格好をしてるマスターはヤバい。

 出てきたのが俺らの側だったのは、幸いだが……

 

 ……クソ、ヤバいな。近藤の一太刀に加えてこの傷は……

 辛うじて急所は避けているが、直に動けなくなる。

 何より、今の俺じゃ沖田と土方、両方を連れてくことは出来ない。

 せめて、山南さんの方を一人にしときゃ……いや、結果論だな……

 

 選ぶしかないのか。

 どっちかを連れて、どちらかを置いてく。

 土方と沖田、かつての仲間のどちらかを。

 

「ッオオオオオオオオオオ!!!!!」

「土方!?」

 

 血に塗れ、今にも消滅しそうな程であった土方が再起する。

 如何なる傷、如何なる障害、それらを踏み越えて走り続ける。

 運命も、未来も、その全てを跳ね除けて進む狂気こそその男の本質。

 

 雄叫びをあげながら異界の化け物に食らいついていく。

 

「秋無ィ!!!」

「土方……お前…………分かった、確かに任されたぞ!」

 

 絶叫しながら一瞬コチラと目が合う。

 狂気と闘争心に呑まれた瞳にたった一度、正気の光が宿る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サーヴァントには意味の無い腸と血を吹き出しながら沖田を抱え、俺は走る。

 託された、そういう事だ。

 

 覚悟を決めた男の前に、何もかも無駄でしかない……

 自らの身体が砕けんばかりに踏み締めて、屯所までの道を振り返らずに走るのだった。

 

 ……悪い、許せよ。

 




真名看破 D

直接遭遇した全てのサーヴァントの真名及びステータス情報が自動的に明かされる……が。
本来裁定者足りえない彼はこのスキルを低レベルで保有する。
成功には厳しい幸運判定が必要……なのだが規格外の吉兆によりこのデメリットは機能していない。

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