浅葱の影   作:CATARINA

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次回でジ・エンド編はおしまい。
ほんへ書き書きしてるから待ってね……


人間殺虫剤の炸裂だァ〜!

 あー、死ぬかと思った。

 サーヴァントってのは便利だな……死にかけの身体でも遜色なく走れる。

 お陰で何とか逃げ延びる事は出来た訳だが……

 

「う……ケホッ……」

「クソ、傷が深いな……近藤の野郎、躊躇いなく身内を切りやがって……」

「……すいません、秋無さん……」

「喋るな、謝るな。気持ちを前向きに持て……そして寝てろ」

 

 辛うじて二人ともくたばる前に屯所に辿り着いた。

 一先ず寝かしてはいるモノとはいえ寝かしとくことしか出来そうにない。

 正直なとこ俺もぶっ倒れて寝ちまいそうだが……

 頭ん中にあるのはやはりあの化け物。

 一瞬で双方を壊滅させた圧倒的な戦闘力と、新撰組への異様な執着。

 

 ……今回都合よく此方を狙わなかったのは多分。

 『新撰組』としての純度が高い近藤があちらに居たからだ。

 こっちは何せ死にかけの沖田、土方に最早を背負わぬ俺。

 あんな見た目でもそりゃ向こうを襲うよなぁ。

 

「悪いな……医者じゃないんで傷を適当に縛るのがやっとだ」

「おーう邪魔するぞ……うわ、本当に死にかけとる。人斬りサーの末路?」

「……アンタは」

「え、尾張の大大名たる儂を知らないとかモグリ? 本当に和鯖かおぬし?」

「尾張……なるほど、織田信長……ウチの部下(ちびノブ)の大元か」

「儂の認識が向こう主体なの納得いかないんじゃが」

 

 だって俺向こうしか知らないし……

 織田信長ってーとアレだろ、鉄砲使いの……

 はー女だったワケか……いや、ウチの沖田も大差ないんだけどな。

 よくよく考えたら世界の比率は1:1なワケだし、そんなのは案外多いんじゃねえか?

 謙信公が女って説くれぇ俺ん時からあったモンな、流石にないだろうけど……

 

「話しぶりから察するに沖田らが世話になってるらしいな、苦労をかけてる」

「お、ビックリするくらいの常識人。お主そのくらいマトモならアイツらを上手いこと矯正出来なかったもんかの? なんであんな幕末弱小人斬りサイコ集団が人理に刻まれとるか儂理解出来ないし」

 

 弱小って……

 ……否、そりゃそうか。向こうさんはホンモノの大名だもんなぁ。

 一番多くて二百と少し。しかも内勤を込みで、だ。

 軽く千、場合により万の軍勢を率いる戦国の大名からしたらそりゃショボいだろうさ。 

 

「……お先に名乗らせてしまったようで。手前生国は京の辻、京一の大商人、秋無大吾郎が不肖の長子。性は秋無、名は出雲。新撰組じゃケチな商売させて貰ってました」

「ほーん……お主、やっぱしヤクザ者じゃろ」

 

 派手にすっ転ぶ。傷が痛い……

 

「仁義切りとかきょうび本職でもやらんぞ」

「生憎と手癖みたいなモンでね……俺なりにこれでも礼を尽くしたつもりなんだが」

「まあ是非もなし、とりあえず侮りは感じなかったしヨシ!」

 

 慈悲深い侍さまには頭が上がらないなぁ。

 で、だ。

 何でわざわざ俺らんとこに来たのかって話なんだけど……

 

「お主、気付いとるじゃろ?」

「何に?」

「どうも都合が良い、飛ばされた先で見事に仲間と拠点を得て……此方は消耗甚大。向こうからしたら狙わない理由ない……しかもここお主らの拠点じゃし、向こうにとっても庭みたいなモンじゃ」

「どうだろ、案外俺の運が良過ぎるだけかもしれないぜ」

「ヘバってる風を装って部下三体に見張らせてる奴の言うことか?」

 

 バレテーラ。

 流石は桶狭間の織田信長というべきか。

 勝負どころのカンの良さが段違いだな。

 場数の差も大きいんだろうが……

 

「多分原田と勝さんはクロ、彦斎は信用出来る」

「アレもアレで不安要素たっぷりじゃが……」

「少なくともマスターに懐いてるし、ありゃ飼い主に噛み付くタイプじゃない。元飼い主として保証してやるよ……さて、どうするかな。少なくとも俺、沖田、山南さんの三人は逃がさないだろうが」

 

 向こうの被害も大きいだろうが……あの程度なら立て直してくるだろう。

 何より新撰組の隊長格はそんなヤワではない……

 あの化け物はおぞましい程強いが、長く現界する事は出来ない。

 恐らく土方も無事……かはともかく、生きてはいると思う……

 ……死因が死因だから難しいかもしれないが。

 近藤らは隊士を始末するでなく捕らえていた、その理由があるとしたら。

 

「とりあえずマスターらを頼む、もしもう一度襲撃があったら殿は俺らだ」

「……そう言おうと思っとったのじゃが、覚悟決めるのが早いの」

「一先ず即死って事は無えんだろ? だったら俺らで止めてマスターを逃がす、それが一番勝機が残るハズだ。出来たら沖田の事も連れてって欲しいが、厳しいだろ?」

「まぁ無理じゃな、向こうの最優先目標が新撰組そのものである以上逃がしはしないじゃろ」

「OK……とにかくまぁ、そん時までマスターを休ませといてくれ。俺も少し休むからよ」

「罠にかかっとると分かって横になるか……肝が据わっとるわ」

「商人ってのはそういうモンさ」 

 

 大胆かつ臆病に、実かつ貪欲に。

 清濁を併せ呑み、どちらにも傾向しない覚悟がなきゃ呑まれちまう。

 リスクは確かにある、とはいえ捕まったら捕まったで本拠地に入れるしな。

 中から叩っ壊す方が話が早いだろ。

 何より……

 

「ダチが道を違えたなら、今度こそはぶん殴って……ブチ殺したとしても止めてやると俺ァ決めてんだ」

「……狂っとるの」

「狂ってるさ」

「なるほど聞いてた通りの馬鹿じゃ、お人好しの化け物」

「寧ろどういう風に聞いてたのか気になるなそりゃ……」

 

 だってほら、正直なとこ今にも屯所をぶち壊しながら奴ら全員磨り潰しに行きそうだし?

 マスターや沖田の手前、極めて理性的な大人を演じはしたけどさ?

 

 沖田も、土方も馬鹿だ。救いようのねえ馬鹿野郎だった。

 だが、だけどよ。

 そらァ元を辿れば全部近藤(お前)の為だった筈だろ。

 暴走した、鴨さんや伊東さん、俺を殺して、新撰組を終わらせた。

 でも、そいつを糾弾する権利はお前にはねえよ。

 お前の望みが藤堂と同じく、新撰組そのものを無かったことにするってんなら……

 あの日々を、あの熱を、全て否定するってんなら……

 

 残念だが、結局俺はお前らの敵だよ。

 次会ったらどうなるか、分からんぜホント。

 …………寝るか、流石に疲れたし。

 

 

 

 

 

 

 

『敵襲〜! 敵襲ノブゥ〜!!!』

 

 勘定ノブギョーの耳障りな叫びで意識を取り戻す。

 撤退したその日に来たか……流石に慣れてるな。

 

 影の三人を呼び戻し、死ぬ気でマスターを逃がすよう指示。

 王将さえ取られなきゃ()()はない。とにかく今は逃げの一手だ。

 

『組長はどうなされるんで』

「盤面不利、飛車角落ちって感じか。しかも香車と桂馬が敵に回ってやがる」

『言ってる場合ですか……ヤバい状況なのは理解してますよね』

「まぁまぁ、良い事教えてやるよ。将棋とか囲碁で負けそうな時の裏技ってやつ」

 

 どんなに不利でも一度サラッと元に戻せる究極の秘技。

 それに習うなら盤面をひっくり返しちまえば良い。

 あのマスターちゃんにはそれが出来る素質がある……カンだけどな。

 

「待って下さい、私も……!」

「オメーは駄目だ、寝てろ。また血ィ吐いてくたばるのがオチだ」

「……それでも、私は!」

「よいしょっと」

「ッ……ァ…………」

「秋無君!? それは大丈夫な奴なのか!?」

 

 ちょっと頸動脈押さえただけだからヘーキヘーキ。

 真正面から見え見えの押さえ方したのに抵抗もしないんじゃもう無理だろ、戦えねえよこりゃ。

 ということで殿軍は俺と山南さんの二人、付き合わせて悪いね。

 

「そんなことは無いさ……寧ろ、君がここにいる理由の方がないだろうに」

「……仲間じゃなくても、ダチだからな。簡単にゃ切れねぇのさ」

「ハハ、君らしい」

 

 そうかね? まぁともかく、行くかァ……

 マスターらが出るまであのクソッタレ共を釘付けにしとかなきゃならん。

 不思議だな、何か辞めたはずなのに今の方がやってる事が侍っぽいや。

 

「よォ近藤、それから藤堂も……良く生きてたな、嬉しいぜ俺ァ」

「流石は商人というべきですか、心にもない事をずらずらと」

「口先から生まれて来たモンでね……齋藤と新八は流石にグロッキーか、そらそうだ。結構良いのが入ってたからなぁ……幾ら丈夫な奴らでも暫くは動きたくねぇだろ」

「……秋無、一つ聞いて良いだろうか」

「おお良いぜ、なんなら一晩中語り合うか? お互い()()あったからなぁ」 

「……アレは、何だ?」

「何って、酷えな……元は仲間だったじゃねぇか。それに俺よりお前らの方が詳しいだろ?」

 

 だって殆どアレに全滅させられてるんだろ。

 流石に自業自得というか……同情は出来ねぇとこもあるぜ。 

 

「……いやしかし、アレはあまりにも……」

「俺とて何もかも知ってるワケじゃないんでね……そろそろやるか?」

「ああ……ここで新撰組を終わらせる為に」

「土方とまるで逆だなぁお前……全く、その行動力があるならなーんで生前やらんのかねホント……」

 

 呆れたようなトーン、普段通りの表情、そのまま殴りつける。

 近藤のやつ、変なとこで常識あるからな。

 多分予測出来ないと踏んで……予測してなかったけど後出しで対応してきたか、早えなぁ。

 止められた拳から握りこんだ火薬玉を落とし、下駄を踏み鳴らして着火。

 威力はない、しかし爆風の効果は十分。

 密着の体勢から再度拳を顔面にめり込ませ……逆手で脇腹を切られる。

 小太刀の方か、まぁまぁ深えな。

 

 歯ァ食いしばって思いっきり殴り抜ける!!!

 こちとらそっちの襲撃は織り込み済みなんでね、鎖帷子くらい着とくよそりゃ。

 普通に切られはしたけど生身よりずっと浅い、それじゃ止まらん止まらん。

 

「近藤さん!?」

「ッ……無事だ、お前はカルデアのマスターを探せ……!」

「山南さん、行けそう?」

「……無論だ、こんな所で膝は折らないさ……!」

「痩せ我慢してるけど膝に来てるだろ。自慢じゃないが三発以内にノックアウト出来なかった事無いんだよね俺。こっちも重傷人二人だが、食らったら終わりってのは同じだろ?」

 

 滅茶苦茶に差がありそうなモンだけど意外と条件は対等なんじゃねえか?

 しかも都合良く藤堂が居なくなってくれた。

 足止めとしちゃ下の下だが、勝機も見えてくるってモンだ。

 

 言葉を切るように近藤の刺突……山南が刀身で辛うじて受け止める。

 横から蹴り飛ばせば篭手と鉄の下駄が擦れて嫌な音を鳴らす。

 

「秋無くん!」

「……止まれ」

「ッ……! またこれか……!」

 

 近藤が片手をかざすと金縛りにあったように山南さんの動きが止まる。

 何らかのそういう、拘束系の魔術……概念的な縛り付けのようなモノ。

 ……土方や沖田でも弾けない辺り、『新撰組隊士への絶対的支配』とでも言うべきか。

 そのまま鍔迫り合えば、決定的なのは武器と魔力出力の差。

 魔剣の如き虎徹により山南の刀は半ばで断ち切られ、そのまま袈裟懸けに切り裂かれる。 

 だが、俺から視線を逸らしたのは悪手だろ。

 弾かれた足でそのまま前蹴り、衝突点を起点に身体を捻り、空中で錐揉み回転して近藤の頭を蹴り飛ばす。

 胴回し回転蹴りって奴。左衛門が昔やっててさ、一度やってみたかったんだよね。

 

 

 

 側面からの痛打、近藤の意識が一瞬飛ぶ。

 無手で容易く人間を解体するほどの秋無の剛力、さしもの英霊とてダメージは避けられず。

 何より神格の力の一端、それを降ろした近藤に痛打が入る事そのものが問題なのだ。

 

 疑問に頭を悩ませる暇もなく、壁に突き刺さった近藤の頭を踏み砕かんと秋無の豪脚が眼前に。

 辛うじて躱すが、明らかに動きが悪い。

 サーヴァントといえど素体が人なら、造りが大きく掛け離れる事はない。

 頭部への二撃、頭蓋の中で崩れんばかりに脳を揺らしていた。

 

「流石に丈夫だが、もういっぱいいっぱいじゃねえの!? 10カウントは必要かァ!?」

「フゥーッ…………!」

 

 必要なのは時間。

 秋無の打撃はあくまで刃物などとは違う衝撃力と痛み。

 出血と違って中身のダメージは時間で和らぐ。

 

 大振りな拳と蹴りを回避し、流れるように切り付ける。

 深手を負わせる必要はない、軽くても確実に、そして攻撃は食らわず。

 確かな技術を基礎とした近藤に対し、路上仕込みの秋無は遥かに劣る。

 十数秒としないウチに全身を切り付けられ、衣が朱に染まっていく。

 それでも止まらない。秋無出雲は終わらない。

 

 幾ら技が伴っていても__失敗がないなどということは有り得ず。

 致命的な隙、ガラ空きの顎、拳が飛び……

 

「止まれ……!!!」

「……! チッ、なんだこりゃ……」

 

 ブラフに嵌め、その動きを止めることに成功する。

 秋無の強度を加味して加減無用、大上段から全霊の唐竹割り。

 天然理心流宗家の刃、鋭き事この上なく。

 秋無を一太刀に切り伏せる……事もなかった。

 

 振り被りの大きい大上段はその軌道も読みやすく。

 確と捉えてさえいれば、それを掴み取る事も不可能ではない。

 

「動けるのか……!? 何故……!」

「惜しいな、俺の霊基には新撰組としてのソレが刻まれてないんでね……!」

 

 切り刻まれ、沖田に心臓を破壊された今際の際。

 俺は自らが最後まで新撰組の仲間で居られなかったと理解してしまった。

 故に今の俺は羽織も纏わず、が刻まれた旗も持ち得ない。

 だからこそ成功した奇策。

 一度限り、あの場に居なかった近藤にこそ通る罠。

 

 慌てて引き抜こうたって無駄無駄、俺と刀の相性の悪さを忘れたか?

 俺の握った刀ってのは大抵____

 

 

 

 

 突如二人の手の内から虎徹が吹き飛ぶ。

 サーヴァントの動体視力すら凌駕する速度とエネルギー、捉えることは不可能。

 だが武器を失って尚近藤は冷静であった。

 天然理心流はあらゆる状況での戦闘術。

 

 

 

 

 近間、秋無の反応速度を遥かに超えた打撃を打ち込む。

 脳の揺れもある程度回復した、間合いを取りながら小刻みに……

 秋無に防御の技術はない、素早くコンパクトな攻撃を凌ぐ事が出来ない。

 

 出血の激しい秋無に止血の暇を与えない。

 永続的にこちらの手番のみで回し、ひたすら攻め続ける。 

 

 更に巨躯の秋無へ身を屈めて足取りを敢行。

 テイクダウンを取れれば体格差など関係はない。

 見事に重心を捉え、二人の身体が宙に浮く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………いや、おかしい。

 軽過ぎる、この体格でこれほど簡単に浮かぶというのは辻褄が合わない。

 そもそも俺は何故組み付いた?

 リスクを考えたら、遠間から当て身技を繰り出すべきでなかったか? 

 まるで、誘われたように……

 

 

 それは近藤という男への信頼。

 武器を失った程度で戦いを止めないだろうという確信こそが、秋無にその一手を選ばせた。

 相手のタックルの勢いを利用し、後方に跳ぶ。

 

 頭部を脇で抱え、頭頂部から地に突き刺さるように。

 後の世に人間殺虫剤(DDT)なる異名を付けられる豪快な妙技。

 三度の衝撃、さしもの近藤も衝撃に耐え切れず____

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーーーしんど、原田くん運んでくんない? そこの近藤共々」

「いや、一応自分裏切ってるんですけど……」

「時間稼ぎには十分だしそろそろ頃合いかなって……幕府のスパイなのも気付いてたぜ? 」

「……マジですか」

「少なくとも内勤取締の俺んとこには来てた……ウチの監察を舐めない方が良い」

 

 そもそも沖田を運んだ時、勝海舟にそれがバレてたのがおかしかったしね。

 だって幹部連中しか知らねぇんだもん。

 俺が長期でいないとかザラだったのにピンポイントで当ててくるとか、そりゃいるじゃんね内通者。

 別に実害無さそうだったから言ってないけどねぇ、余計な争いしたくなかったし。

 

「……すいません、組長。気ぃ遣って貰ったのに」

「気にすんな気にすんな、お前に比べたら俺のが……あ、出血で死にそう。医療箱持ってきてくれ」

 

 

 さて、マスターちゃんらのお手並み拝見……

 クセ強クソバカ人斬りサーを従えてる能力を測らせて貰おうかね。

 何せお付きはウチの穀潰しだもの、心配はしてないさ。




キャラクター性の関林要素がデカすぎる!



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