とりあえず七話、前半って事で今週まるまる投稿します。
ふぅ…………
いやまぁ、流石にね?
流石にね、召喚には慣れるよ。慣れたけどさ……
頭から落ちてくのは聞いてない____
ズガゴォギガンッ!!!!!
凡そこの世のモノが鳴らすとは思えぬ轟音。
どれほどの剛体が墜落したのか、音からでさえ察することが出来るほどに。
痛ってえなマジであのクソ神…………
さてここはどの辺だろうか。
ん〜分からん。
だって一面焼け野原だもん、ナニコレ?
いやマジで何があったの……?
あの軟派神の野郎が言ってたな、外つ国との戦争があったとか何とか……
しかし、この空気感に……建物の残骸はそこまで未来とは思えないっていうか。
いや寧ろ、ほぼ変わってなくね?
何なら俺らの居た時代そのまんまというか…………
…………禁門の時だって酷かったちゃ酷かったが比較にならねえぞ。
右に左、上に下まで見る限り焼け落ちて崩れて見るに堪えない有様だ……
曲がりなりにもアレで徳川様の治世は上手くやってたと思う。
島原天草以降、日ノ本じゃそう大きな戦火は起きてない……が。
ここまで酷いとなると、それさえ超えちゃいねえか。
それこそ勝海舟の危惧した江戸の大火みてぇな……
見渡す。見渡して、少しでも見覚えのある光景を求める。
右を見て、左を見て……そうしてやっと、ずっと遠くにそれを見つけた。
焼け落ちて崩れそうな半壊の城塞。
京住まいの俺だって、見た事くらいはある江戸の象徴。
将軍サマの住まう社だったモノが、曇天に頼りなく立ち尽くしていた。
………………………マジ?
「という事で立香くん、申し訳ないけど今回もまた
「ぐだぐだの季節がやってきた……」
「うんざりしてるようだけど付き合わされる儂らの身にもなって欲しいヨネ!」
カルデアの一角。
最早何度目か分からないぐだぐだイベントの時期である。
うんざりしている織田信長だが、大抵の元凶は彼女か新撰組である……
「今回の時代は1870年頃……つまり明治初期の頃になるね」
「あ、ウチが滅んだ頃って事ですか」
「沖田くん、そういうとこ改めた方が良いと思うけど……」
「そういう配慮が出来るようならここに居ねぇだろ……」
一同ドン引きである。こういう時の沖田の空気の読めなさは圧倒的であった……
「あ、今回儂お留守番? ぐだぐだのメインヒロイン枠なのに?」
「どうせちびノブがわらわら出てくるだろうし、行けなくはないと思う」
「もーだったら素直に言ってよね、儂がいないと駄目なんだから」
「あ、ノッブは来なくて良いですよ。多分時代が時代なのであんまり役に立たないでしょうし」
「辛辣〜でも行く、前なんか五稜郭に今川が居たり幕末に弾正の奴居ったし。儂が特攻取れる相手が一人二人いないとも限らんしの」
「あはは……ありがとうねノッブ……」
場所は彼らの領域である京でこそないようであるが、何せその時代を実際に生きた集団である。
余程酷く様変わりしてなければ大きな問題はないだろう。
メンバーは新撰組一同、そして信長と……
「時代が時代だし、僕らも行こうか」
「何が悲しくて儂も付き合わなきゃならんのじゃ、儂は行かんぞ」
「イゾーは弱いからな、安置を出たくないらしい」
「あ"あ"!? ほざけ! 行っちゃるわ!!!」
「そういう所が駄目なんだと思うけど……」
攘夷志士側から、坂本龍馬、岡田以蔵、河上彦斎……
戦力面で言うとかなり過剰というか……
「大丈夫じゃ大丈夫じゃ、どうせ全員は召喚されん」
「……いや確かに、毎度の事ではあるけどさぁ」
「戦力調整ってヤツじゃ、
「メタい!!!」
なんて事を言うのだこの魔王は。
誰もが言ってはならない暗黙の了解を平然と……
いや、寧ろそれを破って放火したのが織田信長という英霊であった。
「まぁこれだけ居れば何人かは上手く行けるだろう、それじゃあ頼むよ皆!」
「任された……新撰組!!!」
「「「「「応!!!!!」」」」」
「凄い熱気……こっちも何かやっとくかい?」
「必要ない、犬コロが騒いでるだけでしょ」
「儂だけ一人なのなんか気まずい……んじゃが! 誰ぞ織田家の旗とか掲げとらんの!?」
やかましいのもいつもの事である。
ぐだぐだ特異点は大抵とんでもない厄ネタを抱えてるモノだが……
まぁ、何とかなるか…………
ヤバい、ならなそう。
「何でよりにもよって残ったのがアナタな訳?」
「はァーーー!? それはこっちのセリフなんですケド!?」
「マスターマスター、儂提案あるんじゃが二人とも置いてかない? 話にならないんじゃけど」
頭が割れそうだ……
案の定というかいつも通りというか……
レイシフトを終えて見渡せば残ったのは沖田、信長、彦斎の三人。
言わずもがな沖田と彦斎の相性は最悪であり……それを仲裁出来る者もいない。
彦斎の言う『よりにもよって』という発言は残念ながら実に正しい。
新撰組であれば近藤や山南……攘夷志士であれば龍馬のような常識人、それが弾かれ。
正しく
「妙案だわ。さっさとその野良犬は捨てて行きましょマスター」
「マスター薄汚い蛇が絡み付いてます、斬ってあげるので動かないで」
「……先が思いやられるなぁ」
「それで、ここ何処じゃ? このご時世の江戸って言ったらそりゃ栄えとる筈じゃろ」
「…………はて、不思議ですね。一面何処を見ても焼け野原というか……」
「……おかしい。私は一応江戸の街並みも知ってる、でもこれは……」
正面には燃え落ちた家屋。左右には黒焦げになった残骸。
どこをどう見渡したとて、マトモな形を保つ建築物は殆ど見当たらず。
時折何処かからか呻き声が聞こえたと思ったら止む、そのような有様。
「今まで散々……沢山の世界を見てきたけど……」
「……! 酷い、辺り一帯から死臭が……命の燃え尽きる香りがする」
「……本当に酷いの。儂が言うのもなんじゃが、こりゃ比叡山より余っ程……」
至る所から漂う死臭と、人肉の焦げる嫌な香り。
何処へ視界を動かしたとて、そこから炎の光が消える事はなく。
立ち込める暗雲は空を覆い、陽の光を殆ど地に届けない。
「あ、ああ……」
「! 誰か居る!」
「マスター! 危険かも……!」
静止を振り切り、藤丸は瓦礫のそばに駆け寄る。
その影に居たのは痩せ衰えた、枯れ木のような男。
全身は傷だらけで、身体は半ば炭化するほど焼け焦げており……
見ただけで最早、助からぬと理解してしまう。
しかし人の生命力というのは残酷な程に強靭で、助からぬとも苦悶に喘ぐのみの時を許されてしまう。
「……ああ、みんな。みんな燃えちまった、家も、嫁子もみんな……」
「……マスター、気持ちは分かるけどその人は」
「分かってる……ごめんなさい」
「なァ、アンタ……」
「!?」
突如どこからか声を掛けられる。
サーヴァント三騎をして感知出来なかった事に驚きながら咄嗟に臨戦態勢を敷き……
「そう、驚くなよ。オイラも永くは持たねえから気にしねぇで良い」
「うっ……!」
そこに居たのは燃え盛る家屋に半身を潰され、じわじわと焼けている最中の者。
先の者より更に酷い現状ながら、まるで路地端で談笑するような軽さの男……
それに違和感こそ感じつつも初めてまともに会話可能な現地民。
カルデア一行は交流を試みる。
「……あの、その身体、大丈夫ですか」
「いンや、多分遠からず死ぬ。そっちのと同じでな……幸い感覚はねえんだ、ツイてるよな」
「一体何があったんじゃ? この時分の江戸と言ったら相当栄えとるハズじゃろ」
「栄えてる、ね。余所者じゃ、とんでもねぇ時に来ちまったな」
カラカラと笑う男は一行の不幸を笑い、どこでもない遠くを見つめていた。
「…………
「……鬼?」
「……鬼が来て、何もかも壊し、喰らい、燃やし尽くしちまった」
「鬼って……待って下さい、この時代には神秘は殆ど残っていないハズでは?」
「……何言ってるか分からねえが、アンタら見たとこマトモな人間だろ……? だったら……」
ずたずたの指先をゆっくりと伸ばし、ある一方を指す。
この位置からでは当然、瓦礫の山しか見えはしないのだが……
「ずっと、ずっと真っ直ぐ行きゃ、生き残りがいる……少しでも長生きしたきゃ行ってみろ」
「……貴方は」
「……優しいなぁ嬢ちゃん。良いのさ、もう皆死んじまって、俺もようやく………………」
それきりバタリと落ちて二度と動く事はなく。
目の前で人が死ぬという、慣れるべきでないその瞬間。
信長はそっとマスターの目を隠し、間に沖田と彦斎が入る。
いずれ平和な日常に戻る筈のマスターに、これはあまりに酷すぎる。
三人の思考が合致し、一先ず先の言い残した生き残りとの合流を目指す事になった。
「まぁ居るよね、敵。地獄みたいな焼け野原にお似合いの半ゾンビみたいな奴ら」
「皆生気がない……燃え続ける骸のような」
「魔力を感じるけど凄く微量、自我があるのかも怪しいわね」
「無差別に生者を襲っとるんじゃろ、仲間に引き摺りこもうとしてるってとこか?」
幸い一体一体の強さは大したことなく、サーヴァント三騎が藤丸を守る以上障害にはならぬ。
暫く歩いて僅かに視界が晴れた頃、遠く遠景に何やら建物が見える。かなり大きい。
方向とも合致している……恐らく彼処が目的地なのだろう。
とはいえ先程の男が言ったように我々は余所者であり、異界の者。
下手に刺激して敵対するような事は避けたくもあるのだが……
「……待てマスター」
「? どうしたのノッブ?」
「正面に凄いのが居る、なんじゃありゃ……サーヴァント並じゃぞ」
「……サーヴァントには見えないけどね」
硬質さの中に妙に生物的な雰囲気を残した外殻。
ロングコートのような甲冑に長刀、一対の羽根。
鳥のように優雅な姿ではなく、膜張ったその姿は悪魔を想起するようで。
翼持つ人型の百足……と言ったところだろうか?
「言葉が通じる感じじゃあ、無さそうですね……」
「当たり前じゃろ……見るからに飛びそうじゃ、ここは儂が……」
「…………!!!」
語る言葉もそこそこに、翼持つ異形が襲いかかる。
跳躍と飛行を併用した飛び込みは、刀の間合いを遥かに超え、いきなりマスターへ。
抜いた姿すら分からぬ一刀がその喉元へ食らいつく刹那、神速の逆袈裟が弾き飛ばす。
藤丸の身を彦斎が護ったのを認識してから沖田も抜刀、弾かれて崩れた隙を見逃さず切り付ける。
……硬い!
全くもって切れない、というほどでは無いが浅い。
相当な出力を以て貫かねばまず外皮を突破出来まい。
「ッ…………!」
「あっ、クソ、速い……!」
近間を嫌ったのか、再度翼を羽ばたくと同時に離脱。
到底刀の届かない空へ逃げられる。
「お、離れるか? そこは儂の距離よォ!!!」
これ幸いと信長は火縄銃を乱射。神秘に極めて強い効果を持つ彼女の弾丸は威力は程々ながら確かな手傷を与えていた。そうして数発が翼を撃ち抜き、高度が落ちる。
「好機……!」
「……いや、待って下さい!」
自由落下の加速に、翼の羽ばたきを噛み合わせて。
これまでにないほどの速度を伴い、錐揉み回転しながら突進?
連射される弾丸を回転で弾き飛ばしながら一直線に向かってくる。
穿つには一点集中、一撃で決めねばならぬ。
「一歩音越え……二歩無間……三歩絶刀!!!」
「…………!!!」
放たれる魔剣、三度の突きを全く同時に放つ人外の剣。
同じ時、同じ場所に寸分違わず存在する三段突きは、命中したその先を消失させる。
防御無視の絶技、さしもの装甲とて絶対には敵わず。
深々と身体を貫かれ、怪物の動きが止まる。
宝具一発で屠れなかった事に沖田は困惑するが____
「……癪だけど、よくやったわ。伏せなさい」
「!」
咄嗟に刀を手放し、地に這うように伏せる。
その髪をかするようにして放たれる本気の抜刀。
認識した遍く全てを斬り捨てるもう一つの魔剣が怪物の首を断てば流石に、その身体もゆっくりと倒れた。
「……危ないじゃないですか!?」
「伏せろと言ったでしょう、教えただけ感謝したら?」
「ぬゥゥゥ!!!」
「やっとる場合か……マスター、怪我はないかの?」
「うん、大丈夫……それにしてもこれは……」
様々な時代、様々な世界。
数多の怪物や神代の生物を見てきたとはいえ、完全に初見の敵。
何より一個体の強さが相当ではない。
三人とも相当強力なサーヴァントだと言うのに、わざわざ宝具を使う事となった。
ともあれ撃破に成功した__先を急がねばならない。
もし他の個体がいたとして一々相手をしていたら魔力が持たない。
カルデアとの通信も途切れた今ではリカバーも効かないのだから……
「……ん、雨?」
「何ですかね、この雨。じっとりと重いというか……」
「…………雨粒が黒い、それに僅かだけど魔力を感じる。マスターは浴びない方が良いかも」
「ん、儂のを羽織っとれ……さて、奇妙じゃ。中々の本降りにも関わらず火が消えとらん」
特異点に来て間もなく、幾つもの疑問点が浮かび……それは何一つ解決しない。
傘無しでは不快な程度の降雨、にも関わらず一帯の火の手は収まるところ知らず。
雨の方に問題があるのか、炎の方に問題があるのか……
「或いは両方? 二つともがこの世界特有の仕組みだとしたなら……」
「……ホント嫌な雨ですね。少しばかり身体の動きが鈍い気すらします」
「我慢せい、サーヴァントなら歩くのに問題は……」
瞬間、閃光が煌めく。
背後から藤丸を狙った一撃、反応出来たのは丁度近くに居た信長のみ。
咄嗟に突き飛ばし事なきを得たモノの、代償として自らは切られ血を滲ませる。
「ノッブ!」
「掠り傷じゃ……! しかし、コヤツ不死身か……?」
翼持つ怪物、再び。
先程に比べて宝具を使用した二人は消耗、信長は負傷。
黒い雨によって動きも鈍っており状況は最悪。
「一か八か、誰か殿に残して先に行く、というのは」
「沖田さん、それって……」
「残るのは当然私が。単騎戦闘ならこの中なら一択でしょう」
「くだらない事を言わないで、私が斬る」
「儂はパス、やるならお主らのどっちかで行け」
非情な決断となり得る。何せ三騎でやっと制圧した相手なのだ。
単騎では時間稼ぎにはなっても或いは…………
「でもマスター、時間がない。こうしてる間にもいつまた飛びかかってくるか」
「分かってる、分かってるけど……!」
何か、何かないか?
誰も犠牲にならず、全員で離脱する方法は。
「令呪を__
『目標発見、対象は
『『『ノブッ!!!』』』
突如響く怒号、次の瞬間には彼方から飛来した何かがパァっと開き怪物を拘束した。
空中で展開される網のようなシロモノに絡め取られ、飛行能力を失った化け物が墜落する。
『次弾榴弾、装填急げ! 面だ、面。一帯ごと吹き飛ばす気で撃て!』
『組長! 対象の近くに民間人が居るノブ……!』
『分かってる……カルデア一行! とにかく走れ、あの拠点まで一直線にだ!』
「……! この声は……!」
「まさか、こんなとこで……」
「再会を喜びたいところだが、そうも行かねえよな……彦斎はマスターを。沖田は信長を担げ、行くぞ!!!」
かくして商人と侍たちは再会する。
この狂った世界がどうなるのかは、まだ誰にも分からない。
一話からぐだぐだフィルター貫通してる気がするけどとりあえず見なかったことに……