浅葱の影   作:CATARINA

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めちゃくちゃストーリーとちびノブが関わっています、可愛いからね。


春夏冬亭江戸分店(仮)

「マスター! そっち行きましたよ!」

「待って……無理……速すぎ……」

「頑張れよマスターちゃん、ちびノブ達くれえはどうにかな」

 

 うーん、流石に厳しいか?

 俺の見立てじゃマスターちゃんの馬力は常人以上。

 根性も体力も十二分、駄目なのは魔力くらいだと思うんだ。

 魔術回路ばかりはな、世代を超えて血を濃くする魔術師の咎だし。

 元々カタギのご家系だろうマスターちゃんにはまぁ期待するのが良くない。

 

 ……現代っ子とはいえその気になれば無理ではない気がすんだけどなぁ。

 人の身体をあんましまじまじと見るのは良くないのかもしんないが……

 びっくりするくらい良く鍛えられてる、相当険しい旅路をしてきたんだろう。

 いやホント、その気になればアメリカ大陸を再び繋いだり出来そうだね。

 

「……そうだ、何も別に追い掛けて捕まえなくても……」

「ん?」

 

 マスターは目を瞑り、胸に手を当てる。

 黙祷でもしてるんだろうか……やっぱ難しいかね?

 実の所やることは幾らでもあるんで、態々ここまで来させる必要も無いのだが……

 

「……〇着!」

「……おお」

「おお、じゃないですが」

 

 沖田に後ろからシバかれる、これはおおだろ。

 マスターちゃんが呟いた瞬間その装いが変わり、黒い制服からピッタリスーツに。

 結構すげぇ格好だよね、若い娘にさせる服装か……?

 

「ガンド!」

「コゲッッ!?!?!?」

「おお」

 

 人差し指を銃の形に、そこから正確に放たれた魔力弾が正確に化け鶏を貫く、

 魔術はからきしかと思ったがなるほど、それを補う装備があるのか。

 すげぇなあカルデア、これ複製出来ねえかな……

 自衛手段を持たない市民たちに飛ぶように売れるだろう、マジで羨ましい、。

 

「捕まえたよ組長さん!」

「よーくやった! 食料供給は生命線だからよ……ま、ほぼ俺らが握ってるんだけどね」

「うわぁ悪い顔……いや、元からか」

「シバくぞ……幕府も志士もどっちの命綱も俺らが握っている。俺らが気まぐれに商いを放棄しただけでぶっ潰れちまう。顧客の生殺与奪を握る事以上に商人として嬉しい事もそうないぜ」

 

 ちびノブらに金平糖を与えてる事から分かるように、この世界の貨幣価値はゴミだ。

 金があっても物が買えないんじゃ仕方ねえからな。

 そこに目を付けた俺は外へ遠征に出て物資を補給、安全圏にいる民に売り捌く商売を始めた。

 持ってるだけただのゴミだった金属が食い物なんかに化けるんだ、当然飛ぶように売れ……

 

 同じような事を江戸城や他の集落でも行い、この特異点の経済を独占。

 向こうの銭が尽きた頃に此方から拠点建築等の仕事を出して循環、再度搾取へ……

 ハハ、やはり全てが首尾よく行くと気分が良い。

 商いの悦びそのものだな。

 

「それにしてもこのでっかい鶏はどこから?」

「……この世界、とんでもなく不安定らしくてな。色んな平行世界……それこそマスターちゃんが今まで旅してきた様々な世界なんかとも瞬間的に接続し、途切れてる。その拍子にその世界の生物やらも流れ着いてくるんだよな」

「よく考えたらこの鶏、何度か見たことある……」

「鶏は食いでがあるし、ハニワ型のちびノブをシバくと米が出る。この辺は特に良く売れるな」

 

 元手0で売ったら売っただけ純益である、本当に楽しい。

 問屋の利益率、そんな高くないからね本来。

 春夏冬亭とか古今東西、琉球に蝦夷地、果ては南蛮の品まで揃えてたからさ……

 仕入れコストが甚大で、一方でギリギリ買える額にすると儲からんとこあるのよね。

 裏でほうぼうに色々流してたから通算なら大儲けだったとはいえ世知辛いよ。

 

「そろそろ戻るか……一応この辺も奴らの通るルートの一つだ。宿儺……あのクサレ蝙蝠野郎を一旦は仕留めたのは大きい、次に雨が降るまではかなり探索範囲を広げても良いだろうな」

「……そういえば、他にも居るんでしたっけ」

「出る前に説明しただろ沖田ァ……全部で五体。それぞれ大嶽、獄卒、夜叉、羅刹、宿儺。現地民に倣って総称として百鬼とかなんとか呼んじゃいるが……」

「一体でも相当な強さでした、アレがあと四体ですか」

「しかも雨の度に復活しやがる、どこの復活怪人だよってな……」

 

 とはいえ一番巡回範囲が広いのは空を飛ぶアイツだ

 他の奴らも基本的にゃ俺らが苦労して調べた巡回ルートの通りに動くんだが……

 

「特にこの夜叉ってのが厄介でな、一切無秩序に歩き回ってやがる。俺らの探索が始まってから一部の勇敢な民なんかも拠点外の活動を始めたが、そこでの被害は大体コイツだ……」

「人相書きとか無いんですか?」

「んー……多分、女だ。他より若干小柄な鬼女……っても話すでもないんだけどな」

「確かにあの怪物は男性っぽかったけど……なんで分かったの?」

「いや、外見からしてな……なんというべきか……」

「?」

「……乳がある」

「最低だ!!!」

 

 仕方ねえだろ、名付けたのも俺らじゃないんだよそもそも。

 生存者の間で見た目やらその強さやらの噂が強まって恐怖を更に煽り。

 何時しかそれぞれ既存の妖怪らしい名前をつけて呼称するようになったと。

 いや、特徴鑑みたら微妙だと思うけどね?

 例えば宿儺といえば背中にも面がある化け物だが、野郎は蝙蝠みたいな姿だし……

 四本腕は確かにそう見えなくも無いかもしれんがどうだろうな。

 

 話が逸れたな……女だからヤシャ、というよりはヤクシャと呼ぶべきか。

 一通り戦ったけどアレが一番脅威度高えんだよなぁ。

 

 明確な欠点もなく、法則も分からずフラフラと歩き回る。

 戦闘力も他の個体相当或いは寧ろ高えくらいでよ……

 ウチのちびノブ達にもそこそこの被害が出ている、今でこそ増えるペースが上回ったが。

 この世界に来て暫くは幾度となく壊滅しかけたのも記憶に新しい。

 

「そんなですか」

「そんな、だ。とりあえず出会ったら即逃げ安定、信長公なら相性で有利かもだが……」

「余計な戦いは避けるに越したことないよ」

「流石マスターちゃん賢い、商いには戦う必要もねえのさ」

 

 倒して安全になるならまだしも、すぐ復活しちまうしなぁ。

 奴らはこの世に物凄く強い後悔と未練で縛り付けられてやがる。

 それが消えない限り何度でも、何度でも立ち上がり、視界に映る全てを巻き込んで殺しにかかる。

 迷惑な野郎だぜ全く……

 

「何でそんな事が分かったの?」

「俺、裁定者(ルーラー)だもん。どういう訳か見ただけで色々分かんのよ、奴らがどんな感情で今在るのかとか」

「……だいぶ集まりましたね、一度戻りますか」

「おう、こっちも埴輪を叩き割って上手いこと米をたっぷり仕入れられた」

「ああ、邪馬台国の……よく考えたら意味わかんないけどね」

「気にすんな、貰えるものは貰っときゃ良いのよ」

 

 

 


 

 

 

 

「さあ選り取りみどり! 今日は米も肉もいつもより多いから大特価! 問屋泣かせの原価ギリギリ、大出血セールで皆様に御奉仕させて頂いてるぜー!!!」

「ありがてぇありがてぇ……これで倅に飯を食わせてやれる」

「おいおい父ちゃん、それだけかい? 食い物は命の源、食が細くちゃ力も出ねえよ」

 

 米をちょびっとばかし買っていく痩せぎすの爺さん。

 見た目が年寄なだけで実際はそこまでの歳じゃないんだろうに……

 みんなこの地獄で苦労してっからなぁ、辛気臭くって敵わねえや。

 ほらオマケ、焼いた鳥……ただの塩味で申し訳ないくらいだが。

 だーっ、良いんだって遠慮なんか。もう取り分けちまったんだから。

 

「家も職も失っちまって……秋無さんが居なけりゃとっくに飢え死にでしたな」

「商人冥利に尽きるぜ、仕事の話なんだが新しく外に拠点を作りたくてな……」

「おおそれは……ウチの若いのも暇してるでしょう」

「ちびノブに加えて戦えるのが増えたからな、誰か護衛につけよう」

「願ってもない事です、期間の程は……」

「早い方がそりゃ良いが、何より大事は安全だ。無理せず確実な仕事を頼みたい。後で発注書を届ける」

 

 信長公と彦斎、沖田の三人がいれば百鬼夜行の化け物共でも撃退は可能。

 今まではちびノブらが足止めしてる間に逃げるのがやっとだったしな……

 職人にもちびノブにも少なからず被害が出ちまってたが、サーヴァントという戦力は効果的に使いたい。

 

「秋無殿、設営作業の方は……」

「浮いたちびノブ戦車らを土木工事に回せたからな、ペースが随分早くなった。半ば野宿みてーな状態で過ごしてる民がまだいるのが問題だが……マジでよく冬を越せたもんだと思う」

「……不甲斐ない、本来なら全てこの時を生きる我々の仕事だというのに」

「気にすんな、困った時はお互い様だろ? アンタらはアンタらで良くやってるよ。こんな状況でも腐らずに状況を良くするための努力を怠らない。立派な事さ、ちゃんと誇れ!」

 

 悔しそうに目を細める若い志士の背を叩いてやる。

 まだ二十そこそこだろ? それでそんなに考えられるんじゃ大したモンだよ。

 もう数十もいねぇ志士の残党だけで千人弱の治安を守ってんだ……簡単な事じゃねえ。

 

「うーん大盛況……あ、マスターちゃんに信長公もお疲れ様。飯は食ってるっけ?」

「おう、サーヴァントには必要ないのにわざわざ悪いの」

「心には必要だろ? 飯を食って、酒を呑み、ダチと笑って、寝る。どれも確かにサーヴァントにゃ必要のないことかもしれねえけどよ、それが人の営みってモンだ。どこまで行っても俺たちゃ人より出でて人として死に、それでも諦め切れなかったロクデナシ……尚更、人としてのの(よすが)は捨てちゃならんよ」

「……なるほどの」

「とはいえ現代っ子には悪いねマスターちゃん、お風呂くらいはあるから……」

「別に入らないくらいは……言っちゃなんですが慣れっこなんで」

 

 なんという事だ、世界の損失だ。

 風呂キャンに慣れた若い娘っ子とか許されないぞ。

 カルデアの保護者たちはどんな教育してやがるんだ。

 ウチの隊士とかだとその辺ガバガバだったしなぁ、琴とか一人じゃ風呂入れないし。

 沖田もザルなとこあるから血塗れのまま普通に帰ろうとしたりしてたし……

 見た目もそうだが感染症になるわバカタレ、何度か浴槽に叩き込んだ思い出がある。

 

「なんか余計なこと考えてません?」

「お前よりずっと良い子で涙が出そうだよ俺ァ」

 

 だって今みたいに後ろから鞘でどついたりしてこないし。

 

「とりあえず全員行ってこい……ウチのちびノブらが真っ先に施行した自慢の大浴場だ」

「優先順位それなんです?」

「精神ってのは大事なんだよ……汚れたままじゃ病気にもなるしな。だいたい今くらいの時間は女湯だ、但し一刻弱で切り替わるから注意しろよ」

 

 寝床も満足にないというのは尤もなんだがな、ここまで密な集団生活じゃ病のが怖い。

 流行病なんざ来たら全滅しかねん……衛生管理はしっかりと。

 

 時代的に混浴だから間違えないようにね。

 わたわたと浴場へ駆ける姿を見送り、右手を打ち鳴らす。

 どろりと溶けたような影が起き上がり、三体の無貌が人の形を取る。

 

「よし、お前ら見張り。皆一人残らずめちゃんこ強いけど抜けてるとこあるからな」

『過保護過ぎません?』

「言うて女日照り……全員とんでもない美人だしな、邪な事考える奴がいないとも限らんだろ」

 

 緊急事態発生! みんなで助け合い、協力して頑張ろう!……とはならねえモンなんだよなぁ。

 この期に及んで幕府と志士がお互い牽制し合ってるのがその証拠。

 気の迷いでアホな事する奴がいたらそりゃ事だ、対策しとくに越したことはないだろ。

 

 さて、俺は奴らが離れてる間にちびノブ達とのmtgを……

 

『組長〜! 組長〜!!!』

「ん、ノブギョーか。どうした?」

『江戸城の方に詰めてた仲間から連絡ノブ! 向こうの人がマスターとコンタクト取りたいみたいノブね』

「確かに早めに顔合わせしとくべきではあるか……あいわかった、明日にでも赴こう」

 

 ……まるまる一年。ずっと現状をほんの少し良くするのがやっとだった。

 俺だけの力で何もかもをやるのはあまりに無力だったが……なるほど、やはりアンタか。

 あの時感じたのと同じ、灯火のような熱。台風の目足りえるのだろう。

 

 このクソみてぇな世界の全部全部を叩っ壊して、何もかもを吹き飛ばし。

 鬼みたえなの化け物共も皆殺しにして俺は必ず……

 必ずお前を……

 道を違えたならぶん殴ってでも正してやるから。

 




組長が主として商売してる所書いてないな……と思って。
大体こんなノリで市場を牛耳った過去がある。



各地を巡り、素材を集めて江戸の流通を取り戻そう!
大枠で食料、武器、嗜好品に分かれている(つまり、いつもの交換アイテム)
また、同時に集まったお金は組長が箱ガチャの引き換え券として引き取ってくれるぞ。

組長が絡むなら箱イベであれ。
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