結局作者は自分の見たいものしか書けない哀れな生き物よ……
暫くマスターちゃんらとは別行動。
各地を周って対象を探しつつ、避難所の御用聞きをお願いしている。
必要なら簪一つから戦艦まで……今のこの状態だと厳しいが、何だって揃えてやるつもりなのだ。
少しずつだが各地の治安も良くなり、拠点の活気も良くなってきている……
ちびノブを主体とした護衛有りきとはいえ拠点間の移動すら可能な程に。
今まで生き別れになっちまっていた家族が数年ぶりに再会……お涙頂戴の展開だよなぁ。
やっぱり仕事は好きだ、誰かに感謝される事をするのが一番楽しい。
商いを加速させ、人と人との繋がりを確と強固にする。
俺の理想はこんな地獄みてえな世界でも生きているというのが嬉しいぜ。
本願寺が滅んだ件は一同に大きな悲しみと衝撃を与えたが、皆大切なモノを喪うのは慣れっこ。
悲しい事に適応するしかなかった皆は、供養として小さな碑のみを建立し、自らの営みに戻った。
全部で四体の百鬼どもだが、相も変わらず夜叉やらの所在は掴めねえからなぁ。
同時に始末する事を考えりゃ……奴を見つけなきゃどうしようもな……
……俺? 俺は療養中。
流石に無理しすぎたからね。
腕をぶっぱなした反動に、霊核ぶち抜かれた刺突痕、ダメ押しに魔王様の弾丸。
マジで消滅してないだけめちゃんこ偉いと思うよ俺の身体……
創ってくれた軟派神と育ててくれた父母に感謝。
俺がいないと立ち行かない仕事が多過ぎるから、療養といっても内勤の必要はあるんだが。
ノブギョーは本当に頑張ってくれてんだがなぁ……
結局新撰組時代と変わらず、俺に纏まった休みなどはないのだった。悲しいね。
新撰組隊士の内勤勤務〜月月火水木金金〜!
ハハ。
つらい。
草木も眠るアシミツアワー。
なんだ今の?
……時刻はとうに深夜。雲に覆われ月も星も見えやしない空は真っ暗で。
土砂降りの雨ん中、燃え盛る火炎に包まれた江戸の街並みだけが爛々と輝いている。
全く奇妙な光景だと今更ながらに思う。
溜まった仕事を処理してたらこんな時間だ……
既に何時だかを思い出すような忙しさに目が回りそうだ。
どんなに忙しくてもホントのホントに要の仕事は自分でやるしかないとこも含めて。
最近はね、療養というテイで前線から一時的に退いたワケだが。
楽になったような感覚はない……
キャパを100として戦闘が50、仕事が250くらいの比率なのだ。
浅草寺と江戸城が主要な拠点でこそあれ、幾つかの拠点の管理を並行して行う以上仕事の総量は……
はァ、考えるのやめよ。
愛宕山の山頂にわざわざおったてた小さめの拠点。
恐らくは江戸において最も高い……小高い丘に見張りの為に設置した、という体裁だが。
実態はちびノブらの保養地である。
有給を取得したちびノブの七割がここで過ごしており、また負傷した個体……
「ノブノブ!」
「随分良くなったな……もうじき復帰か?」
「ノッブ!」
例えば、この間深手を負ったノブUFOもここで療養している。
湯治としてさんざっぱら湯に浸かってるワケだからな……
ウチの福利厚生の一環ってことで。
実際ちびノブ達は気付いたら増えるし、たまに姿も変わるので個体差が分からない。
「おう、邪魔するぞ……なんじゃ、ソレまで入れとるのか」
「傷が深かったモンでね……ほら見ろよ、ツルツルのモチモチだぞ」
「ノッブー!」
「何が悲しくて儂モドキのナマモノと触れ合わなきゃならんのじゃ、そして何故誇らしげなんじゃ」
まあ確かに、俺も自分に少し似たこんな生き物いたら驚くと思うわ。
しかもバリエーション豊富だし……
「ん……悪くない湯じゃな、ちと温いが」
「だろ? ここだけは天然泉なんだ、気付いたらちびノブ達が色々改築しててな」
「通りでこんな地獄みたいな世界に不釣り合いな外観なワケじゃ」
「一般には知られない……というより、あの中を一人歩き出来るような一般人もないから来ようかないって所なんだがな……伊豆や箱根とはいかないが、ここじゃ上等な宿だよ」
俺が来ることを前提に一人長屋くらいのスペースも作ってくれてたし。
仕事の合間にぶち抜かれた霊核を治すべく俺も湯治を……
ふぅ…………
「何で居るんだアンタ」
「気付くの遅くない?」
あまりにもサラッと入ってきたから見張りのちびノブかと……
「見張り番なのに入ってくるのは良いんか……」
「戦略的意義なんざほぼねえからなここ……高さだけならもっと高いとこはまだあるし」
「サボりを許容してる方が問題じゃろ……というか、少しは動じない? 超絶美少女の裸体よ?」
「……ハッ」
「やろうぶっころしてやる!」
やめてくれノッブ、その銃は俺に効く。やめてくれ。
遍く神秘を焼き滅ぼす魔王の御力は神性と神秘の塊みてーな今の俺に相性が最悪だ。
後ろから霊核ぶち抜かれたのと掠った弾のダメージがほぼイコールだったぞ。
確かに効果的かもしれないけどあのシチュで躊躇いなく撃ってくる辺りに魔王味を感じたよ。
「何しに来たんだ?」
「いや、暇じゃったし。マスターには人斬り共が付いてるから大丈夫だと思って」
「あの二人を抜いてマスターを殺るのは不可能だろうしな……まぁ良いか」
「そそ、とはいえ手ぶらではないぞ」
「ん……酒か、どっかからかっぱらって来たな?」
「飲みもしないのに置いとくばかりじゃコヤツも浮かばれんじゃろ……ホレ」
大きめの盃になみなみと注がれ、差し出される。
……天下人に注がせてしまった、人生何があるか分からんな。
「……
「案ずるな、ありゃ置いてきてるからの。ついでにかっぱらって来た極々普通の杯じゃよ」
「そりゃそうか……断る理由も無え、頂こう」
「ん」
…………ああ。
どんな時でも、酒は美味え。
仕事に狂う程多忙な時でも、仲間を喪った時でも。
いつだって一杯空けるまでの間なら、忘れていられる。
「……悪かねえ」
「月でも出てりゃ尚良かったんじゃがのう……どうもここは辛気臭くていかん」
「地獄に仏ってね。真ん丸の月ん代わりにこの杯で我慢しようや」
「…………意外じゃのう」
「何が?」
「あのアホアホ弱小人斬りサークルの民とは思えんなお主。あの集まりにそう言った風情を理解する心はまるでないし」
「そんな事は……うーん……そりゃな……」
『梅の花 一輪咲いても 梅は梅』
……多分あのバカのせいである。
いやね、皆上手い訳じゃないんだよ。鴨さんとか伊東さんは上手いんだけど。
試衛館組の田舎侍……特にその中でも土方のセンスはヤバい。
梅の三連単、季語季語季語である。バカか?
「ま、そもそも人斬りじゃないしな俺の場合。刀持てないし」
「刃物は全部駄目になっとるんじゃったか? どういう体質?」
「知らん……包丁すら持てないとは悲しいぜ俺ァ……」
刃のついた金物は殆ど駄目になってしまった。
サーヴァントは逸話ベースに誇張されがちとはいえこれはあんまりではないだろうか?
包丁も使えないので俺が使ってるのはなんと木製である。
避難民にいた大工の爺さんが包丁を弾き飛ばして凹む俺の為に磨いてくれた特殊な奴。
切れ味は良いとは言えずともちゃんと切れることにただ感謝するばかり……
「にしても、そうね。
「精々二百と少しじゃろ?」
「一番多いときで二百三十二……内勤やらなんやら込み込みだけどな」
「小勢も小勢じゃのう……最低でも五倍は連れてこんか」
ハハ、流石に言葉が重い。
たった二百人程度、五年ぽっちの活動期間だ。
最初は二十かそこらの組織だぜ?
良くやった方だと自分らで思ってたとしても、そりゃ本業からすりゃな。
「……で、世間話しにきたワケじゃねえだろ、本当の目的はなんだ」
「…………」
「かの信長公ともあろうお人がチンピラ一人と酒飲み交わす為だけにこんな所まで来るわけもないよな? アンタにゃアンタなりの狙いがある、そう考えるのが自然だぜ」
ちびノブを湯船から上がらせ、速やかに浴場を離れるよう伝える。
場合によっちゃ荒れるかもしれないからな。
「だってよ、物腰は柔らかだが明確な敵意が漏れ出してる」
「……分かるか?」
「分かるさ、俺ァ商人だぜ。お侍の顔色伺うのは得意中の得意……アンタに隠す気がないなら尚更な」
さて、なんの御用かな。
「……先にあがってな、見張りのちびノブ達も少し離れとくように言っといてくれ」
「ノブ……」
「心配するな、すぐ済むから」
万一に備えてちびノブ達を逃がす。
第六天魔王様の本気なら、この小さなナマモノ共は一溜りもなかろうから。
「悪い、気を使わせたか?」
「構わん……単刀直入に聞こう、お主何か隠しとるな?」
「ふむ……思ったよりストレートに来るな」
「まどろっこしいのは好かんからな」
「……商い人に話させるんならやり方ってのがあるだろ?」
どーしよっかな。
多分それなりに当たりは付けて来てるんだろうが……
「確かに、それもそうじゃな……」
「言っとくが、別に金ってワケじゃ……」
ざぶり。
不意に信長が湯船から立ち上がる。
白濁した湯に浸かって隠されていたその裸体が松明の火に照らされ、夜にありありと映し出された。
体躯はやや小柄と言っても過言ではないにせよ、女性的な、柔らかそうな身体。
翠色の黒髪が湯を吸って美しく黒光りし、煉獄が火のような深い朱の瞳は彼女の揺るぎない意思に燃え。
その肉体美を惜しげも無く晒しながら信長公は俺に迫る。
そしてどかりと俺を押し倒せば、此方の言葉もそこそこに馬乗りに騎乗される。
「……何のつもりだ」
「なんじゃ、まるで
「生憎、此方はアンタの素晴らしい裸体よりもテメーの生命を脅かされてる事で精一杯だよ」
背後に展開した数十の火縄銃、その全てが俺を狙ってやがるんだぜ。
反応もクソもあるかよ……
チビりそうという意味なら間違ってねえかもだが。
ゴリゴリと手に持った一丁も押し付けられて、下が先に来るほど肝は据わっちゃいない。
「此方の方が話が早いか?」
「……侍ってのはいつの世も、これだから……」
「士族って他の人間を虫ケラ同然と思ってるとこあるし、是非もないよネ!」
声色の軽さと裏腹に顔が全く笑ってねえ。
怖いなー戦国大名。
「それで? 何か話したくなったかの?」
「……さぁ? ちょっと脅しただけで商人が何でも言う事を聞くと思われちゃ困るぜ」
「そうか……これでも儂、沖田やマスターとは長い付き合いでの。奴らの甘さ、隙もよく分かっとるつもりじゃ。そしてお主の存在はあまりにも……あんまりにも、都合が良過ぎる。確かにお主は沖田にとって旧い友なのかもしれんが……秘した『何か』が奴らを傷付けるなら……」
「ハ、流石に情が深い。返り忠も一度は見逃すと有名なだけはある」
「……そうじゃな、まだ話す気にならんというなら」
カラカラと笑う信長の纏う雰囲気が変わる。
べちりと顔に先程まで肩に掛けていた手ぬぐいをぶつけられ。
外して視界を擦ればあら不思議。
美しい黒髪は瞳同様の赫く染まり。
小柄な体躯は六尺程……女人としてはかなりな大柄さ。
琴や俺のような人外と比較しなければ十二分な長身と呼べるだろう。
身体の成長に合わせて密着度も増し、のしかかる質量もまた比肩出来ぬ程に。
「……どうじゃ、我の姿は」
「おっかねえ、としか」
「フハハ、素直で結構」
凄まじい熱量を感じる。
お天道様みてえな、朗らかで柔らかな熱とは違う。
立ちはだかる一切合切を焼き滅ぼす苛烈さを有する炎。
人の姿をした火焔そのもの、触れた場所から魂諸共焼かれるような……
浸かっている湯も気付けば沸き立ち、せっかくのぬる湯は瞬く間に沸騰。
なるほど魔王。
地獄の溶岩に浸かり、神仏を焼き苦しめる悪鬼羅刹。第六天魔王……
いんや、そんな軽々しいモンじゃねえな。
三千世界の全てを戯れで焼き落とすような、圧倒的な焰。
主宰神の端末として……そして、この身に今や神の一部を宿す俺にはあまりに酷。
強まった神性が魔王の焔に晒され、今にも溶けんばかりに熱されている。
顎を持ち上げられ、憐れむように見つめられれば魂がざらつく。
次の瞬間にも辺り一帯の遍く生命を焼き殺さんという冷酷な瞳が。
「……わーった、降参だ、降参。実んとこ、別に隠す必要もねえんだわ」
「なんじゃ、それなら早く言わんか。我がここまでする必要も無かったというのに」
「但し、一個だけ条件がある。それを呑めなきゃこの話はナシだ」
「ほう……我相手に交渉か、言うてみい」
「マスターと……沖田には内緒で頼む」
「……何故?」
「マスターちゃんが知る必要はねえ、あの子からしたら新撰組は御伽噺の存在で……今まで沢山の旅路を共に駆けてきた仲間なんだろうから。だから、これから話すことは知らなくて良いことだ」
新撰組は幕末を生きた悲劇の英雄。
時代に恵まれなかった正義の組織。
そして俺ァソイツを滅ぼそうとして討たれた反英雄。
古今東西、英雄の物語には
「沖田は……そうだな……なんて言えば良いのか、分からんのだが」
「…………」
「
それは偽らざる本心。
新撰組の敵、不倶戴天の仇役として歪められた俺の存在、だとしても。
可愛い妹分が楽しく過ごせてる事が俺はただ嬉しい。
俺たちの道は交わらず、行き違いの末に殺された俺は。
それ自体を仕方ないと理解している。
だから、恨みなどなく。
唯一想うとすれば、大事な相棒を泣かせた事のみ。
……それさえ、成り行きで仕方ないのなら。
「…………なるほど」
「条件は以上だ、どうだ」
「ハ……ハハハハハハ……! ハハハハハハハ!!!」
地の彼方まで響くような高笑い。
しかしそこに一縷の悪感情すらない事は容易に理解出来た。
気付けば信長公の姿は元の小柄な体躯に戻り、髪なども素に逆戻り。
沸騰した湯も嘘のように冷め、やや熱め程度に勢いを緩めていった。
「……馬鹿じゃのう、お主」
「うつけ者殿に言われるんじゃ、褒め言葉だろうな」
「違いない……分かった、儂の名誉に掛けて誓おう。ここでの話は決して他言しないと」
「……毎度。さて何処から話したモンか……」
俺は信長に全てを打ち明けた。
この世界の歪み、百鬼と呼ばれる化け物の素性、記憶を喪った沖田と俺……そして、俺が今どういう状態なのか。
主宰神の寵愛受けてこそあれ、信長の一撃で致命足りうる程の神性を宿す事はおかしいから。
……案外俺も誰かに聞いて欲しかったのかもな。
俺たちの真実を、俺のクソみてぇな在り方を。
俺の中に残った、秋無出雲の残滓が擦り切れる前に。
「……馬っ鹿じゃのう、お主。人が良すぎて逆に怖いわ、ドン引き」
「なんとでも言え、生来の生き方ってのは変えらんねえのさ」
「死んだら少しは直さんか、そうやって自分を犠牲にするような真似……」
「アンタが言うかね、魔王様」
「何?」
ありゃ、もしや自覚ない?
「アンタも同じだろ、死んで尚その生き方を変えられてねえ。第二の生でも懲りずに天下という大望に手を伸ばしちまう……そんなタイプに見えるぜ」
「ほう……」
「無理もないさ。天下に指先がかかった所でおっちんだなんて、諦めつく筈がねえ……荒唐無稽とも言える戦国の世の平定、それを本気で目指した夢追い人……素直に尊敬するぜ、織田信長様」
「……ハハ、クハハハハ!」
お気に召したらしい……いやホント、俺としちゃかなり恐ろしいんだけどね。
今の俺には魔王様に抗う手段が無いもんで……神性がなまじ高いとこういう時困るんだな。
本来の霊基なら、もうちょいマシなのだが。
裁定者のクラスを与えられた俺は大国主の端末としての側面が強えからさ……
「……惜しいのう」
「何がだ?」
「お主にとって、不遇な時代に生まれた事がよ。更なる乱世ならばその才は光り輝いただろう、或いは後の泰平ならば商の才がその身を助けただろうに……お主はその半ばに生まれ落ちた、それがただ惜しい」
「買い被り過ぎだぜ、結果として俺ァ失敗してんだ……」
「ハ、お主で駄目なら誰でも失敗しとるわ」
「……ありがとよ」
未練がない、なんて言ったのは強がりでさ。
後悔してるんだ。
もしあの時、ああしてれば。そうしなければ。
もしかしたら誰も欠ける事なく終わりを迎えられたんじゃないか。
たられば話に縛られている。
「自惚れるなよ、人が短い生に成しえる事など少ない。全て夢幻のように儚く小さいモノよ……新撰組の敵として創られた存在のお主が、今尚その善性を損なわぬというのが全てよ」
「…………」
「お主の生き方、生き様、愚直さを確かに語り継いだ者が居た。その証左に他ならん、誇るが良い」
「そうかね……俺ァ死後の名誉なんざどうでも良かったんだが」
「……まぁそれはそれとして儂の部下だったらもっと面白かったじゃろうけどネ! こんなに優秀な調整役が居たのに一介の人斬りサークルで終わった奴らは本当に何? 組織運営の才能なさすぎるじゃろ」
「アンタがそれ言っちまうか……」
五十年の月日を戦いに明け暮れた魔王様が言うと重みが違うね。
生涯幾度となく裏切られ、背を付かれた方だろうと思いつつ……野暮は言わない。
「んん……長話してたら酒が切れたの……」
「甕にはまだあるだろ……俺も杯を空けるか」
なみなみ注がれた盃を一息に空けながら。
一気に口内に含んだ後の、鼻に抜ける酒気。
例え相手が大大名でもこればかりは譲らん。
「……なんじゃ、年長者を敬う心とかないのかお主は。寄越さんか」
「む……!? んぐっ……ぐぉ……」
俺が最後の酒を含んだ途端、急激に迫った信長に唇を奪われる。
そのままこじ開けられ、口内に溜まった酒の殆どを舐り取られ。
酒が無くなって尚、そのままの格好で蹂躙され続けた。
解放されたのは一、二分分も後だろうか。
急な凶行に頭がクラクラする。
量自体は大した事なかろうに、急激に酒が回ってきたように意識が澱んでいき……
「お……何じゃ今更反応しおって、お主変なとこで初心じゃの〜」
「……喧しい、生理現象だよ。こっちはいつ殺されるとも分からねえんだから……」
「厳つい見た目の割に案外愛い奴じゃの……ほれほれ、どうせ減るもんでも無かろう。せっかくじゃし、暫し付き合え」
「うおっ……クソ、相性差が……」
ざぶりと白濁した湯に押し倒されて、微かな明かりと緋の瞳だけが視界に映る。
華奢な身体とは裏腹に魔の王たる膂力は俺を御するには十分過ぎて……
……酒と湯の熱で鈍った頭はそれ以降をハッキリと記憶していない。
酒は飲んでも飲まれるなって、ホント大事な教訓だよな……
これはNTRではないかとオキタはわんわん泣いた。
寝てから言え……いや、一緒に寝てはいたな……と作者は一人芝居をしていたり。
多分どこかにいる琴ちゃんもNTRの気配を感じてわんわん泣いてる。