浅葱の影   作:CATARINA

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前半はここで終わりっ!
何かとおかしい組長の性質はやっぱ先んじて分かった方が良いかなって。
皆も日本神話をすこってくれ、天照がクソコテ過ぎてビビるぞ!


神造ノ生命

 

 …………起きねぇなぁ。沖田のやつ。

 随分と深いところを抉られちまったか……

 こうなる前に、カルデアに居ただろう奴らが真実を教えてりゃ……などと、ボヤいてしまう。

 尤もそんなことをすれば使いものにならなくなるだろうことは間違いないのだが。

 サーヴァントとしての働きの為に、その事実を秘した奴らを責める気にはならない。

 俺だって、伝えなかった訳だからな。

 

 沖田には伝えていた、お前はアレと戦うなって……

 相性が悪いとか、そもそも見つからないからとか。

 適当な言葉で誤魔化した結果がこれである。

 少し考えたら分かることじゃあねえか、沖田みたいなガキはそう言われたらムキになるって。

 誰しもそうだろう、無理とか駄目とか言われたら意地になるのだ。

 俺はそれを失念していて……クソ。

 

『アンタの数少ない欠点ですよ、他人に自分と同じくらいの能力を期待するとこ』

「今回ばかりは完全に俺が悪い。せめて目ェ離すんじゃなかった」

『今更なんでそんなに気を使ってるのか自分にゃ分からないっスけどね』

「……仲間じゃなくても、ダチだろ」

『テメェを殺した相手でもですか、ホンット甘えんですよ組長』 

「なんか今日当たり強くない? 凹むよ俺」

 

 そういうとこ評価してるけどさぁ。

 イエスマンとか俺の部下には要らないんだよね。

 俺が雰囲気でやってる事を形に出来る優秀な奴だけ欲しいから。

 

『仕方ないでしょ、アンタの手前ヘラヘラしてますけど……』

 

 無いハズの貌が、沖田を睨んだ気がした。

 

『今すぐにでも俺ァこの女を叩っ殺したいぐらいなんですよ』

「お前らの恨みってのはそんなに深えモンか……俺には、分からねえ」

『ま、そうでしょうね。京一……いんや、日ノ本一のお人好しなアンタはそうだろうさ』

「……ホントの本当に分からねえのさ。どうも俺は人を恨んだりするのにとことん向かないらしい」

『だから馬鹿を見るんでさぁ。正直者、善良な者だけが貧乏クジ引かされるから……』

 

 ハハ、馬鹿なのはお互い様だろ。

 殺されても人を恨めねぇバカタレに、死人に魂引かれて名も貌も捨ててしまった大馬鹿野郎。

 かつての新撰組に馬鹿じゃねえヤツがいた試しがあるか? なぁ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「呼ばれてとび出てっと……秋無出雲、参上だぜ。待たせて悪ぃねマスターちゃん」

「いえ……沖田さんの事、ありがとうございます」

「良いのよ、寧ろ俺たちの問題に巻き込んじまった……頭下げんならこっちの方だ」

 

 信長公にわざわざ口止めして貰ったばっかりなのにもうボロが出るとは。

 ツイてない時って大体悪い事が立て続けに起こるよな……

 

「秋無、答えて頂戴。あの化け物……確か、夜叉とか言った。何故アレが沖田の剣を使う?」

「うん、まぁ、そうだよな。まずはそっから……話すか」

 

 一度深く息を吐いて、努めて平常を装う。

 こうなると分かってりゃ先に話しといたんだが……

 秘密裏に何とかなるって俺の楽観に嫌気がさすぜ。

 

「とはいえ、察しはついたろ? 俺らが百鬼と呼んでるバケモノが、元々何だったのか」

「まぁ、流石にね」

 

 ……ハァ。

 

「間合い測れぬは無敵の剣、破砕招く斬撃が最強の剣、折れず止まらぬ不滅の剣に、知と光明失いし無明の剣。俺の知る限り最強の剣士揃いだ、ホント嫌になるよな? ……あれが新撰組の末路。なんてカタチのねえ代物に拘って自壊した組織の成れの果て……つまりは、齋藤、永倉に土方と、沖田も……奴らの屍を実に丁寧に再利用した化け物さ」

「…………!」

『自業自得の末路ですけどね、良い気味です』

「マスターちゃんの手前そうも言えんだろ……たまに勝手に出てくるよなお前……」

 

 ハァ、悪趣味極まりねえよな。

 ただでさえ生前も未来でも好き勝手扱われてるってのに死体まで……

 ホント俺たちゃ呪われてる、幸せになるなって天命でも受けてんのかしら。

 

「ま、土方と山南さん、それから原田はもう居ねえけどな。俺が消し飛ばしたから」

「消し飛ばしたって……復活するから殺せないと言ったのは貴方でしょうに」

「何事にも例外はあるのよ……多用は出来ないから、もう期待すんなよ」

 

 千人力の剛力で跡形もなく破壊した後に、大国主から賜った創世の力で上書きする。

 世界の歪み、痛み、哀しみを無かったことにする為に。

 その悔いも怒りも何もかもを忘れられるように。

 

 俺にとって都合の悪い現実を上書きする、それが大国主の端末としての宝具。

 

 たった一度きりの隠し玉を、俺ァここに来てから乱用してるからなぁ。

 実の所、未だに俺の自意識が連続してるのは奇跡としか言いようがない。

 神の創りたもうた器と魂が思ったよりも丈夫だったってコトかね?

 

「……何でこんな事に?」

「未練、後悔、慚愧、或いは怨嗟や憤怒……そればっかりは個々人の差こそあれ、俺たちは皆志半ばで折れちまったから。敗走の後に処刑され、北の果てで惨殺、病に倒れ、仲間を棄てて苦痛の生を生き……」

 

 それが新撰組の、彼らが英霊となった理由。

 世に残した未練、抗い難い後悔の数々だと立香は理解していた。

 言葉がつかえるように押し黙った秋無は僅かに視線を泳がせ、吐き捨てるように言う。

 

「或いは最期まで馬鹿のまんま、愛した女とガキを遺してくたばったり。そんな事もあるからよ」

『…………』

「…………」

「それって……」

 

 ホンット、くだらねぇ話だよな。

 何よりも大切にしたかった筈なのに、テメェの感情を優先して。

 いずれ来る終わりを理解してても見ないフリして。

 一人で足掻いて、藻掻いて、何も出来なくて。

 

 そこまでして俺が招いたのはただの破滅だ。

 

 結果だけ見りゃ確かに俺は新撰組を滅ぼした男だろうさ。

 新撰組の敵、不倶戴天の仇…………

 

「この世界に来てすぐ、奴らに出会ったよ。真名看破……裁定者のクラスは最悪な事に、その事実を俺に叩き込んできやがった……俺からしたら過去の話、だとしても振り切れない咎だからか」

「じゃあ、沖田さんは……」

「昔な、()()()()()()()俺。アイツに……いや、アイツらにか」

 

 心無い人斬りマシーン。新撰組が絶対のひと振り。

 

 

 

 ……そんな訳ないだろうが。

 沖田は、沖田総司は俺の知る限りただの娘っ子だった。

 必要とあらばどんな相手でも殺せる。

 どんなに親しい友人でも躊躇いなく。

 

 だとしても、それでも奴は人間なんだ。

 何度も何度もそんな事をさせて、心が保つ筈がねえ。

 心はヒビ割れ、軋み、歪んじまったら最後、もう治らねえのに。

 奴は自分でそれに気付かず剣を握り続けた。

 

 ……止めてやれる機会はあったハズなのに、俺はそれを見落とした。

 恨みはない。

 寧ろ、化け物に堕ちる俺にトドメを刺した事には感謝すらがある。

 

 何よりも俺は……俺を殺させた事を申し訳なく思っちまう。

 

 記憶を失ったアイツが、妙に明るい態度でいるのを見て……

 忘れなければ、こうなれなかっただろう事が心苦しかった。

 ただの小娘だった沖田を利用(つか)った土方と近藤。

 そして利用(つか)わせた俺。

 あの子を狂わせたのは、俺たちの勝手が原因だから。

 

 だから忘れるを良しとした。

 このまま思い出さない方が幸せなら、俺はそれで良かったのに。

 

 

 

「マスターちゃん達には知られたくなかったぜ、俺は」

「この期に及んでそれなの、貴方」

「新撰組は悲劇の英雄、皆がそう思ってる。実態はともかく、そう信じてるから英霊足り得た……そうだろ? 真実がいつだって正しいとは限らない。都合の良い脚本こそを尊ぶ事もある…………あとは」

「…………?」

「……アイツらが酷く言われるの嫌なんだ、俺。確かに殺されたけどさ……全身切り刻まれて路上に打ち捨てられ、そのせいで色んな人を悲しませた、色んな奴を狂わせた……それでも、ダチだと思ってるから」

 

 どんなに辛い記憶があっても。

 どんなに悲しい離別だとしても。

 楽しかったあの日々には、嘘はなかった筈だから。

 だから、俺はアイツらを恨めない。どうやっても。

 

 どうしようもねえ男だと自分にうんざりする。

 死んでも直らねぇ俺の生き方は、どうやっても歪められねぇみてえで。

 

 

 

 

 それと……こっちも、話しとくのが筋か。

 

 俺は無くなった左腕を再度発現させ、マスターらに掲げる。

 ブチ割れた霊核は幸か不幸か、コイツを稼働させる上じゃプラスに働く。

 秋無出雲という存在を擦り潰しちまう程の神性を、確かに宿しているから。

 既に壊れた俺の炉心(霊核)は、これ以上砕けようもねえモンで。

 

「性は秋無。名は出雲。京都一の大商人、秋無大吾郎が長子にして元新撰組内勤取締。かつては京を根城に日ノ本中の商いを牛耳らんと駆けた男」

 

 秋無出雲とは造られた命である。

 たった一つの目的の為、捨て子を核に主宰神自ら創り直したオーダーメイド。

 出来損ないの人造生命(ホムンクルス)などとは格の違う神造生命。

 大国主と彼を取り巻く人々の寵愛によりその名と姿を得ただけの。

 

「馬鹿に生きて馬鹿に死んだ京一番のお人好し。俺はその記憶と人格を与えられた残滓……いや、残骸と言うべきか 、そんな格好の良いモンでもないからな」

「待って、その言い方だと貴方は秋無じゃないと?」

「……さぁ、分からん。左腕に、ぶっ潰れた内臓……そしてついさっき消し飛んだ心臓(霊核)まで創り変えちまったモンでな。俺は秋無出雲なのか、それとも別のモンなのか、俺自身も既に判別出来ないから」

 

 スワンプマン、テセウスの船……よく言うよな?

 確かに俺は秋無出雲という男の過去を持ち合わせているが、俺の中身はどうだ。

 自分でさえ最早どれ程……どのくらいソレが残っているのか、分からねえんだよ。

 

 

「かつて諏訪の地に祀られ、人と交わった一柱。大国主が実の子、戦いと開拓を司る神格」

 

 日輪の威光に屈し、出雲の地を追われた子。

 文献によっては時に存在さえ認められなかったまつろわぬ神。

 

「天上ノ国に座する神々を焼き滅ぼす程の怨嗟、その憤怒尽きること無く」

 

 ソレは雷と刃の神に敗れるその日まで、遍く神々を殺し尽くし。

 切り刻まれ、討たれ封じられても尚、尽きぬ怒りはかの地を侵す。

 果ては土着の神性と合一し、呪詛さえを力として取り込んだ祟り神。

 

 

 

 

『祝! 強化イベント〜! 幾ら僕の御子でも多分今の彼女に対抗するのは厳しそうだからね!』

『はいこれ、家出した僕の息子……つまりは君の義兄ちゃんが置いていったお下がりって事だけどさ、隻腕の君には丁度良いだろ?』

『ま、使う度にちょっと身体がしんどいかもだけど。何とかなるなる! 頑張って!!!』

 

 

 ……無責任な野郎だ。

 それでも、残念ながらこれ無しでは俺は英雄足り得ない。

 身体に刻まれた怪物としての醜聞が理性を削ぎ落とすから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真名を建御名方(タケミナカタ)。幕末を生きた商人とソレの混ざり物が、今の俺さ」

 

 

 

 全く、笑えるよなぁ?

 歴史の負け犬同士、慰め合うように混ざりあった存在だなんて。

 ホント、あの軟派神は気が利いてやがるぜ。

 

 

 

 

 

 




史実タケミナカタと違い、建御雷に瞬殺されてないし、大人しく封じられもしていない。
どころか土着神と合一して祟り神としての属性まで得てるヤベー奴に。
刃物に嫌われた組長の性質そのものがタケミナがベースです。
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