浅葱の影   作:CATARINA

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作者はかなり飛ばして書いた、多分誤字がある。
一先ずほんへはここまで。
エピローグは書け次第投げます。


壊れた幻想

 

 ____まぁ、そんなとこだろうと思ってたけどよ。

 案の定……観柳斎の野郎を始末したところで空高く輝く空亡に陰りはなく。

 煌々と光と熱を放ちながらじっくりと地に堕ちてきている。

 さっきまでは夜空に浮かんでるようにすら見えたが、最早夜空など見当たらぬ程の距離。

 真昼のように__いや、昼間だってここまでにはならねえわな。

 

 既に俺らの創り出した仮想の京都は炎上し始め、江戸がそうだったように燃え盛る。

 直火焼きサウナってところか?

 気温はまぁ……七十から八十くれえ、既に生き物が生きてく温度じゃないやな。

 表面に貼っつけた上っ面のテクスチャが焼け落ち、世界は焼けた江戸の姿を取り戻す。

 維持にも魔力使うし……もうそんな余裕もないからな。

 

「河合くん、暗算得意だったよね。アレが落ちてくるまであとどんくらい?」

「…………召喚されてからの時間での落下速度を加味して、一刻足らず」

「だがどう見たって落下速度が上がってやがる、それなら半刻と持たねえだろうなこりゃ……」

 

 何よりその前に、熱風が大地を舐めただけで全滅だ。

 サーヴァントでさえ耐え切れない日輪の猛火、人間であるマスターちゃんやこの世界の住人たちには相当キツかろうよ。実際んとこ、あんまモタモタしてらんないみたいだな。

 

「よし! とりあえず幕臣と志士どもは急いで回れ右! 江戸城に集まってる避難民たちが焼けないようにお前らでどうにか匿ってくれ……水飲ませるなり建物に叩き込むなり……何もしないよりマシだろ」

「今からか!?」

「今からだよ今から!!! さあモタモタすんな、アレは俺たちがどうにかしてやっから! それまで誰も死なせないのがお前らの仕事だぜ!? さぁハリーハリー、一人でも死人が出たら俺がブチ殺すからな!」

「なんて強引なんじゃ……」

「私たちはいつもこんな感じに晒されてましたよ、少しは理解できましたか?」

 

 ぞろぞろと一目散に城へと帰っていく一同。

 あんなんだが確かな責任感を有した奴らだ、その時が来るまで一人でも多く生き残らせる為に何とかやるだろ。

 

「そんで次! 良くぞ集まってくれたオメーら! 早速だが帰れ!」

『『『えー』』』

「えーじゃねえんだよ、お前らの維持にも根っこんとこで俺の魔力使ってんの。少しでも浮かす為に、悪いが解散してくれ……代わりに打ち上げの店はお前らで決めて良いから」

 

 どうせお前らじゃアレはどうにもならんだろうし。

 そもそも俺以外にやらせる気もない。

 

「惜しいっすね、こうして皆で集まれるなんて何時ぶりだってのに」

「カルデアじゃあ割と揃ってんだろ……? 誰かが旗使って呼びゃ良いじゃねえか」

「秋無さんと一緒にしないで下さいよ……局長でさえ全員は呼べないんですよ」

「そマ? 人望ないなぁ近藤よォ……まぁ多分土方よりマシだろうけど」

「シバくぞテメェ」

 

 効いてて草。

 自覚あんなら行動改めろってお前……

 結局どうしようもない人斬りキチガイの集まりだから人望もクソもないんだけどね。

 上から下まで一人残らず学もなく人殺しの腕しかないバカの組織だからさ、

 

「ハハハ……悪ぃ、もうちょい話してたかったんだが……後は任してくんねえか」

「……まさか、秋無組長を信じられない者もいまい。そうだろう?」

「「「…………」」」

「おお、沈黙が眩しいね。愛してるぜお前ら」

「えー! 珍しく素直! もっかいやって下さいよもっかい!」

「調子に乗んなガキが、一回抱いたら彼女ヅラかよ」

「どわーっ!? 何で言っちゃうんですか!? ……うわ、皆の目が生温かい!!!」

 

 何でも生前からバレバレだったらしいよ、俺は全然気付かなかったけど……

 びっくりしたよね、鴨さんにも言われたんだけど。

 

「色々言いたい事はあるけどまぁ、そうだな……」

 

 じっくりと、ゆっくりと辺りを見回す。

 何とも懐かしい顔ぶれ、まるであの日に戻ったように。

 こんな俺の為に、来てくれた。

 身勝手で誠を放っちまった俺の旗に集まってくれた。

 

 ああ、十分だ。もう十分、報われた。

 

 押し黙っちまった俺を不安げに眺める沖田の面が、どうにもおかしくて。

 まだ動く右手で力いっぱい頭を撫でてやる。

 今度は血もついてないしな。  

 

 

 

()()()()()()、野郎ども。そん時ゃお前らの馬鹿な死に様を聞かせろよ」

 

 

 

 言葉はなく、皆去っていく。

 時に沈黙でこそ、伝わる心というのもあるから。

 ああ、ホント、ありがとよ。

 

 良かったぜ、お前らの前で何とかカッコつけられて____

 

 

 ピシッ……ビキビキッッッ!!! 

 

「ガフッ!? ああ……クソ……」

「秋無さん!?」

 

 身体が、砕けた。

 心臓を起点として右半身が崩れ落ち、伴って頭部さえが罅割れて砕ける。

 

 時間切れって事だ。

 元々、俺の身体は建御名方の力に耐え切れていなかった。

 そこを無理も無理を重ねて……今まで保っていたのが本当に奇跡であって。

 

「これは……! マスター! 急いで治療を」

「無駄だ無駄、治るようなモンじゃねえ」

「そうは言っても……」

 

 怪我したとか、欠損したとか、そういう話じゃねえ。

 秋無出雲という器、魂そのものが崩れ始めてんだ。

 既に魂は元の姿を忘却し、今なお崩れ続けている。

 

 だから、これが最後のチャンスなんだよ。

 俺がやらなきゃ、ならない。

 俺はやらなきゃ、ならない。

 

 自らに強く、そう命じたのだ。

 その咒いこそが、俺を人に留める縁だから。

 

「……マスターちゃん、分が悪いのを承知で俺に投資(賭け)てみない?」

「分かった、どうすれば良い?」

「ありゃりゃ……」

 

 話が早すぎるぞ。

 内容も聞かずに投資しちゃう馬鹿が居るかっての……全く。

 

「マスターはさぁ……人の善性だけを見て生きてる感じ?」

「貴方が言うの?」

「ハハハ、俺はこう見えて色々考えてるんだぜ」

 

 あれこれ考えた末に、何も考えずに信じる事にしてるだけ。

 その方がずっと気が楽だからな。

 

「あっこに刺さったままの旗……それからこの羽織に、俺自身(タケミナカタ)全部をブチ壊して、ちょっくら裏ワザを行使する。それでも足るかは分からんが」

「……正気か? 確かに本物よりは流石に小さいとはいえ、ありゃ日輪そのもの。太陽じゃぞ太陽」

「出来るとか出来ないじゃなくて、やるんだよ。やらなきゃどの道全滅だぜ……」

 

 とはいえ正直なとこかなーり分は悪い。

 だって恒星だぜウチの嫁さん、あと多分復讐者だから相性悪いし。

 でも駄目だったらどうせ終わりだからさ、考えない方が良い。

 俺思うんだよね、『もし失敗したら破滅だ……』みたいな思考って無駄じゃない?

 だって失敗した時にリカバリー効かないんでしょ? それなら考える意味ないよね。

 最初っから成功した時の利益だけ見据えてチャキチャキ動く方がずっと建設的。

 だから都合の悪い事は考えなくて良い時もあるんだわ。

 

「令呪を俺に全ツッパして、後は野となれ山となれ。まさに一世一代の大博打だけど、どうよ?」

「……乗った、というかやらない理由がないし」

「流石マスター! そのカンを持てるヤツァ商才あるぜ」

 

 話も纏まったし、動こうか。

 旗を引き抜き、再び掲げる。

 誠の文字が空に翻るように、ヤツに俺が分かるように。

 

「令呪を三画重ねて命ずる! ルーラーに、もう一度立ち上がる力を!」

「ん……なるほど、良い激励じゃないの。おうとも、頑張っちゃうぜ!!!」

 湧き上がる魔力の奔流、流れに任せて地を蹴り、飛び上がる。

 反動で崩れかけの身体が軋むが、今更些細なことだ……

 

 マスターちゃん、本当に良い子だ。

 未来への大望に満ちて、それでいながらどこまでも真っ直ぐ。

 それを善しと出来る時代に生まれたのだろう。

 それを好しとされる者に育てられたのだろう。

 

 俺たちの頃は、そんな些細なこと一つ貫くのにも命懸けだったから。

 その善性に、その無垢に、その純情さに俺たちゃ目が眩む。

 ガラでもなく格好付けて、助けてやりたくなる。

 

 彦斎の奴も、良いのに目ェ付けたじゃないの……

 中々ね、浮いた話とかなかったからさ元々。

 やっぱりお節介焼きのボスとしては気になるとこだったワケで。

 死後の恋とか愛とかまぁ色々障害ありそうだけどさ、良いんじゃないかと思うぜ?

 

 ……俺は、認めねえ。

 俺は俺の視界に映る全部が幸せじゃなきゃ、やっぱり納得出来ねえ。

 どんな些細な不幸も、悲しみも、世界にあって欲しくないから。

 

 みるみるうちに距離が詰まり、火焔放つ日輪へ真っ直ぐ突っ込んでいく。

 どの道俺はそれしか知らない、それしか出来ない。

 何よりお前に何かを伝えたいなら、回りくどいやり方なんてしたくない。

 

 当然、実に当たり前に燃え盛る風が俺を包み込んだ。

 

 一吹きで身が焦がれた。肺が焼けて息が詰まり、血潮が沸騰して蒸発していくのを感じる。

 肉も骨も、内々の魂に至るまでがどろりと溶けていくような凄まじい熱。

 ……足りねえなあ。全然、足りねぇよ。

 凍え死んじまうだろうが……せっかく数年ぶりにすっかり晴れたってのに。

 

 死にかけの俺を泣きながら運んでた時。

 心が挫けた俺を、必死に守ろうとしてくれた時。

 ……死に行く俺に、呪いを残してったあん時の方が、ずっと。

 ずっと俺ァ、寒くなかったんだ。

 

 帰ってこい、琴。

 

 

 

『御子は主宰神に願う。友の辛苦、其を認めず。歪み捻れた真実、其を拒絶する』

 

 眼球が吹き飛んだ、脳が揮発して、臓腑も殆どが焼失している。

 

『重ねて御子は主宰神に望む、歴史の編纂、世界の再構成。正しき未来の訪れを』

 

 それでも、男はただ笑った。

 纏った真っ黒な羽織に、左腕に誓いの旗。

 それだけは、どんな灼熱も侵す事叶わず。

 

 最早考える頭もなく、彼の正気は何処にもない。

 日に挑むイカロスが如き無謀など、狂人でなくばそもそも試みさえせぬ。

 それでも変わらぬ、想いだけがあった。

 

 

 

 

 

 さあご照覧あれ。

 天の神よ、地の神よ。大国主が寵児、秋無出雲の為す事を見よ。

 我が身に宿る建御名方よ、その力にて今一度日輪に抗せん。

 父に与えられた猛き身体。母に授けられた善き心。

 神より賜った恩寵に、友らと誓った誇りと志。

 その全てを我が半身、我が盟友に捧げる。

 

 

 全部だ、全部持ってけよ。

 正しい未来を取り戻す為に。

 愛した女が、笑って過ごせるように。

 俺の全身全霊を尽くして、この現実を拒絶する。

 

『御子が主宰神に捧ぐ。全てを流転し、あるべき姿へ還らんと』

 

 まぁつまりだ。

 アレコレと遠回しなことを色々言ってるけどよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「認めてたまるか、こんなクソみてぇな未来____!!!」

 

 即ちあらゆる事象の否定、あらゆる現実の拒絶、あらゆる可能性の具現化。

 大国主の力の一端、創世の力そのものが世界を上書きする。

 

 僅かに感じる、左腕を思いっきり振るって焔の巨星に叩き付けた。

 壊れた幻想。英霊の最終手段。

 旗に羽織、神そのものに侵された俺の身体に魂。

 その全部を賭けて、届くよう祈る。

 

 日輪の威光には、英霊の輝きなどまるで囀りに近しいモノだとして……

 ここにいるのは確かに、かつて誠に誓った同志なのだ。

 なればこそ、この旗に応えぬ筈がない__!

 

 

 

 

 

 

『出雲……』

 ハァ……馬鹿野郎、食い過ぎだぜ。

『ごめん、私……私…………!』

 あーそういうの良いって良いって、その下りは沖田でやってるから。

『?』

 先に言っときます、沖田と寝ました。浮気です、申し開きもありません。

『え" ちょっと待って、この流れってもっとこう良い感じのヤツじゃないの』

 お前にゃ勿体ねぇよ……ほら、頭スッキリしたろ?

『いや、脳が粉々になりそうなんだけど』

 ハハ……まぁ、そうだな。順を追って話そうぜ……お互いによ。

 

 話したい事も、聞きたい事も沢山あるから、な。

 

 

 

 

 

 そして民らは眩い光が、日輪すら呑み込むのを確かに目にした。

 激しく、それでいて柔らかい閃光。全てを呑み込んでいく。

 人も物も、影も闇も残さず、何もかもを平らげていく白き光。

 

 それは歪んだ未来を上書きし、彼の望む歴史を手繰り寄せる業。

 

 

 

 江戸の大火は、辛くも未然に防がれた。

 

 遍く衆生もまた、動乱の中日々を生きるを許された。

 

 

 

 そして__復讐鬼と化した中澤琴は、しかし。

 それを成した後、狂気と憤怒とに呑まれず。

 人として、()()の元へ帰った。

 

 

 

 大国主ノ寵児が、ここにそう定める。

 この事実こそ即ち、絶対であると。

 我が魂を以て、ここに楔を打つ。

 




壊れた幻想ってマジで赤アーチャー以外だと運用出来ないよな……

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