浅葱の影   作:CATARINA

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タイトル通りです。
因みにこの一話しか仕上がってません、アフターストーリーマジ難しい……


良い感じに別れた後って気まずいよね

 

『Congratulation!!!』

 

 ……うるせぇな、いきなりかよ。

 

「いやぁ、ホント。良くやったね出雲くん、流石は僕の寵児。パパ感激」

「俺に親父は沢山いるが、テメェ様を父と呼んだ事ァねえよ」

「もう、素直じゃないなぁ……まぁ冗談はともかく、本当に良くやったよ。本当にね」

 

 そうかい。俺としちゃ、別にやるべき事をやっただけなんだが。

 その過程でかつての仲間に、遥か未来に生まれた善き後輩とも巡り会えた。

 我ながらホントツイてるよなぁ。

 

「あの日凍え死んでいた君を選んで良かったよ、他の誰でもなく」

「それこそツイてたんだろ? 同じようなのなんざごまんといたぜ」

 

 俺が生まれた天保十年は大飢饉の末の年。

 街にも村にも餓死者病人屍の山って具合なもんだ。

 ましてや裏路地でくたばったガキなんか幾らでも……

 

「そこはまぁ、僕の審美眼さ。まぁちょっとイレギュラーは多かったけどね、体格とか」

「……加護によるモノだと思ってたんだが?」

「いや、確かに与えたよ? 与えたけどさ、七尺超えって普通におかしいからね?」

 

 …………確かに。

 如何せん身近にね、もっとデカいのが居たもんだから……

 近藤や土方のような六尺でも集団で目につく巨漢であるので。

 更に一尺というのはなるほど、身体の才には恵まれているらしい。

 

「ともかく、君は見事にやり遂げた。彼女は確かに正しい歴史に戻ったよ……」

「……そりゃ、何より」

「ん? もしかして寂しい? 分かるよ、せっかく会えたのにすぐまた別れちゃうなんて」

 

 オオクニヌシはわざとらしくよよよと泣く素振りを見せる。

 神サマの涙ほど信用ならんモノもあるまい。

 例え本心だとしても、その裏に何が隠れてる事やら。

 

「これは紛れもなく本心だよ? 奥さんと離別する悲しみはね、僕もよく分かるよ……」

「ほーん………………」

 

 …………いや、違くね?

 

「アンタのはアレじゃん、テメェが浮気ばっかするから嫁がブチ切れた挙句に逆ギレして逃げようとしたんだったよな? 流石に同じじゃなくね?」

「少しくらい優しくしてくんないかな、傷付くよ」

 

 俺も大差ないのかもしれないが、不可抗力の部分がある訳で。

 コイツの場合、全て身から出た錆なんだよな。

 全然一緒にされたくないわ、腹立つ。

 

「スセリはね、ちょっと嫉妬深いんだ。そこが可愛いんだけどね」

「浮気男が言うと最悪だなマジで」

「好きな子には意地悪とかしたくなるでしょ?」

「寺子屋通いのガキかよ……分かんなくもねえけどさ」

 

 良い歳した神が何を言い出してんだろうな。

 しかもアレだろ? なんか雅な歌で有耶無耶にしただけでその後も普通にねんごろだし。

 反省した気が皆無なのすげぇと思う。

 神って基本的に引かず媚びず顧みないから。

 

「主宰神に逃走は無いことだよ」

「逃げようとしたよな?」

「……そもそも、僕の場合ちゃんと全員娶ってるし。身も固めずに不特定多数と寝てる君の方がアレじゃない?」

「うわこっちに放火して来やがった…………くそ、言い返せない」

「うん、今のは僕が悪かった。お互い傷付くしこの話やめよっか」

 

 軟派神のくせに正論で鬱になりそうだ。

 もしかして社会的に見たら俺ってクズなのでは。

 いや今更だな、新撰組を終わらせた男だった。

 

「いやぁホント凄いよね、大六天魔王に魔剣使いの剣士、日本最後の神秘……」

「沖田はともかく魔王サマは不本意なんだがな!」

「その割にノリノリだったじゃん。誘い受けヅラして結構鬼畜だよね」

「サラッと見てんじゃねえよ。しまいにゃ叩き殺すぞ」

「そりゃ見えるって、君は僕の()()だもの。分霊(わけみたま)って言った方が良いかな?」

「……なるほどね」

 

 どーりで特注品の身体なワケだ。

 神造生命、たった一つの目的の為にリデザインされた存在。

 何も子無しの商家に子供こさえてやろうなんて親切心だけじゃないってのは当然か。

 

「結構賭けだったけどね……目的は、言わずとも分かるだろ?」

「……琴か?」

「ご名答。時代に取り残された魔性、神代が遺した遺物そのもの……薄れいく神秘に抗おうとする日ノ本の意志とでも言おうか。それが形を成して、彼女の生命を変質させたのさ」

「あれで出涸らしとは、随分と凄まじいんだな……」

「まぁ多分最も近代まで神秘を残していた国だからね。とはいえ、出涸らしというよりは断末魔……残った全てを絞り出した結果がアレさ。それこそ神すら喰らう程に」

 

 遠くなれば遠くなる程血は薄まり、力は弱くなる。

 単純明快で分かりやすい思考、しかし。

 後にも先にもヤツで最後だと言うのなら……残った全てを注ぎ込まれた器は、どれだけの力を有する?

 その結果がアレ(空亡)か。最高神サマも詰めが甘い、甘過ぎるぜ……

 

「ホンット、良い迷惑だよねえ。僕が君を捕まえてなかったらどうなってたことやら」

「仮に、俺が()()()()()()()場合。或いは、俺が再起出来なかったらどうなってた」

「……どうなってたと思う?」

「…………いや、あんまり気分の良い話じゃなさそうだから良い。忘れてくれ」

「賢明だね」

 

 その瞬間、オオクニヌシの薄ら笑いが消えた。

 それだけで十分。十二分に伝わった。

 ロクでもない事になったんだろうさ、それだけ分かりゃ良い。

 実際、そうはならなかった。

 辛くも俺は間に合わせる事が出来て……奴は、正しい歴史を歩んだ。

 それで良いじゃねえの。それで良かったじゃねえか。

 

「本当はね。君が彼女と初めて出会ったあの時に、君の身体を乗っ取って彼女を消し去るつもりだったんだよ。ここまで薄れた神秘の中で、生きる事すら苦しいだろう彼女を……それが慈悲だと思っていたから」

「……何でやらなかった?」

「さぁ、何でだろうね……何となく、面白いと思ったからかもしれない」

「そんな理由で日ノ本を滅ぼすリスクを承知したのかよ……どんぶり勘定すぎるぜ」

「……熱意が薄れていた君の魂に、火が点いた気がしてね」

「…………」

 

 ……そうだな。

 実の所、琴のヤツを一目見た時から感じてたんだ。

 退屈の裏返る音、身を焦がす程の熱狂。

 浪士組の……新撰組を結成したその時に、それは確信に変わった。

 

 この際、包み隠さずに言うならば。

 多分だが、一目惚れってやつだろう。

 オオクニヌシの言葉を借りるならば、俺の魂は初めて見たその瞬間から惹かれていた。

 そういう事なんだろう。

 

「なるほど、よく出来てるぜ……探し人たる琴と惹かれ合う。そういう宿命か」

()()と言うべきじゃないかい? 原作の事を考えたら尚更」

「ハ、見事に誘導通り動いちまった自分が嫌になってきたくれぇよ」

 

 多少のイレギュラーはあれども、大抵はこの軟派神の思惑通りって事だ。

 その生き方に悔いはなく、寧ろ感謝すらがあるが……複雑だぜ。

 

「……いんや、殆ど想定外だったんだけどね」

「にしちゃ、上手くいってるじゃねえかよ」

「ずっとオリチャーだったよ? 君と琴ちゃんをそのままにしたし、彼……観柳斎くんの存在とか、君が隻腕になったり新撰組の仲間たちに殺されたり…………何より、まさかあの子を口説き落とすとは思わなかったよ!!!」

「……何?」

「君たちが出会うように仕向けた所までは、確かに僕らの干渉だ。でもね、その後の事は全て君自身の選択が招いた結果なんだよ出雲くん……まさか、子供まで拵えるとは」

「…………」

「繰り返すけど君の感情も選択も、君のモノだ。正しい歴史で、彼女が踏みとどまれたのもね」

 

 ……そうか。

 俺のクソみてぇな人生に、確かな意味があった。

 今際の際に想ったソレは、間違いじゃなかった。

 

 たったそれだけ。

 些細な事実を、確かめただけで。

 俺は心底、救われちまった。

 

「君は……秋無出雲は確かに、中澤琴の核足り得た。彼女を人に留める縁は……君が与えたのさ」

「……独りにしちまったのだけが、悔やまれるけどな」

「ハハ、何……きっと許してくれるさ。怨嗟の焔を振り切り、戦いから離れて親子三人静かに暮らしたよ」

「そりゃ何より、不憫なのは奴の飯を食わせられいやちょっと待て今なんて言った?」

「? いや、きっと許してくれるよ」

「どう考えてもその後だろスカタン、三人って」

「ああ、知らなかったっけ? 双子らしいよ、いきなり二児の父だね」

「…………」

 

 尚更気まずいじゃねえかよ。

 全てを押し付けて勝手に満足死した俺is何?

 ……あー、クソ……ホント今更後悔してきた……

 

「……会いたい?」

「……無理だろ、今更。俺だってそんくらい分かるさ」

 

 それが叶わないという事もよく分かってる。

 死ねずの咒いを自らに課した対価……魂が神性と呪いに侵されて粉々に吹き飛んでしまっていた。

 軋み、歪み、爛れて崩壊した自らが、白に溶けていく感覚。

 

 ここにあるのは僅かな残滓。

 秋無出雲という男が浮かび上がる最後の刹那に過ぎない。

 

「……この場合、俺ァどうなるんだ?」

「残念だけど輪廻転生……ともいかない、当然だが座に還る事もない。君の全ては既に砕け切ってしまったから」

「だよなぁ……となると」

「消滅さ、生も死もない、完全な零。無に帰すというヤツだね」

 

 当然の末路である。

 秋無出雲という男に許された領分を遥かに超えた事を成した。

 その代償がこの程度なら寧ろ随分お買い得だよな。

 

 使命を果たした俺の身体は、既に立ち上がる活力を失っている。

 

 ……楽しかったぜ、本当に。

 ただ死んで終わるだけの最後の最期に、もう一度やり直す事が出来た。

 俺の過ちを、他でもない俺自身が正してやる事が出来た。

 

 ハハハ、本当にツイてるよな俺。

 普通やり直したくたって、死んだら終わりなんだぜ?

 それを許されたんだ、こんなに運の良いヤツはそういねぇ。

 

「ん……そろそろ時間かな、君の輪郭が僕にも分からなくなってきてるや」

「そうかい……舐めた口をきいてたが、ありがとよ。大国主様」

「なんだ、随分素直じゃない……特別サービスだよ、何か言い残す事ある? 彼女らの行き着く先……カルデアにはね、大黒天としての僕の御使いを派遣してるんだ。伝言一つくらい許されるだろうよ」

 

 そうかい優しいね。

 だったら、そうだな。

 

「無い。俺の想いも、心も、確かに置いてきた。俺からは何もねえよ」

「……無欲だねぇ、商人らしくないんじゃない?」

「ハ、そいつを客に悟られちゃあおしめえよ」

 

 

 

 

 

 

 

 それだけ言ったところで、完全にボヤけた。

 身体が、魂が、何もかもが霧散して、無限に広がっていく。

 虚空に溶けていって、バラバラに崩れていく。

 

 恐れはナい。

 

 迷イもない.

 オレの遺 した

モノが、確かに時を刻んデいった

 

              こと。

 

 

 

 

 

 

 

 

                      それを 

                   知れタ.

 

 

 

 

 

 

 

もう

 

              

 

 

            ジュウ ブン だ

 

 

 

 

                            なにも   おも

 

 

 

 

 

 

    いのこ

 

 

 

 

            と

 

 

       すこ           は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『でもさぁ、僕思うんだよね』

 

 ____また会おうぜ。

 

『詰めが甘いというかなんというか……言霊の力を舐めちゃあいけないよ』

『それにさ、やっぱり嘘は良くないと思うんだよ僕』

『一流のバッドエンドより、三流のハッピーエンド! 素晴らしい言葉だよね』

 

 

 

『だからさぁ、そうだな……()()()()()()()()()()ってとこかな?』

 

 指をパチリと鳴らすと、霧散した塵芥はそっと何処かへ消えていった。

 何一つ残らぬ真白の空間に、仄かな光が差す。

 

「ん、君か。いやぁ、今回は酷かったねえ……何の御用?」

「彼は何処かって……? そりゃ、在るべき場所に帰ったのさ。少なくとも君の知るとこじゃない」 

「気になるよね、分かるよ? 初めてだったんだよね、自分に従わない存在に出会ったの。それどころか君の喉元まで迫った……」

 

 だって自慢の息子だもの。

 粗暴なようで心優しく、短気なようで思慮深い。

 良くも悪くも僕に似てしまった可愛い我が子。

 

 君が怒ってくれなきゃ僕が天津神を皆殺しにしてたかもね。

 多分、そういう気持ちも汲んでくれたんだろう?

 

 天津神に、建御雷くんに敗れ、諏訪の地に封じられ……

 それでも君は人と交わる事を選んだ。

 薄れいく神秘に、僕やこの女神……神々はその残滓だけを残し、さっさと引っ込んでしまった。

 常世の裏側、彼岸と此岸のような表裏の世界へと。

 でも君は神として人として、共にある事を望んだ。

 人中に神在り、神中に人在り。時に現人神という姿をとってね。

 

 とても立派だよ、誇らしく思う。

 やがて、それすら薄れ……人の中に散逸した君の欠片。

 僕があの子を見つけたのも、偶然じゃない。

 あの子が、君の力を受け入れられたのもね。

 

「生憎だけど、僕ァ君が嫌いだよ。君のせいで僕の子供たちが苦しむのは三度目だ」

『ナゼ、ワタシにサカラウか?』

「そりゃこれでも自分がビックダディの自覚くらいあってね……子供たちの自立を見守るのが父親(パパ)の仕事だろう? その障害を排除するのも、当然僕の務めなのさ……で、まだ分かってなさそうだからも一度言うね?」

 

 努めてにこやかに。極めて朗らかな表情を浮かべながら。

 大丈夫かな? 顔引きつってない? お化粧ノリは……いや、してないんだけど。

 伝わってないようだからね、ちゃんと説明しないと。

 対峙する天ツ神に感情を吐き捨てる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次、俺の息子に手ェ出してみろ。そん時ゃ本当にブチ殺すぞクソアマ」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 座礁した意識が、仄かに光を捉える。

 魂の輪郭が、形を成し身体の震えで音を拾っていた。

 

 

 

「「引けないってどういうこと(です)!?!?!?」」

「お慈悲を……お慈悲を……もう石がないんです……許して下さい……」

「どんなクズ運なんだマスター、もう何百は回したろ」

 

 

 __何やってんだアイツら。

 

 

「残弾ナシです、申し訳ないけど復刻待ちって事には……」

「良いワケないだろ、おい沖田。何とかならないのかい?」

「ふっふっふ……実はですね、マスターにはもう一つ最後の手段があるんですよ」「げえ!?」

「ほう?」

「さあマスター! その魔法のカードを寄越すのです!!!」

「今月は不味いんだって……! まだ先生の業務もビデオ屋さんも旅人としてもやる事があるの!」

「大丈夫ですって、パ〇モンには私の方から言っときますから」

「ウワーッ声帯が強い!!!」

 

 いやホントに何やってんだアイツら……

 マスターちゃんからカツアゲしてんじゃねえよ。

 ……原因、俺だろうなぁ。 

 気まずー……でも、出ないってのは駄目だよな……

 

「さあてマスター、動くんじゃないよ」

「失礼しますね」

「ヤメロー! シニタクナーイ! シニタクナーイィ!!!」

 

 マスターの懐をゴソゴソ。

 サラッと例のカードを取り出すと、暴れるマスターを尻目に沖田は此方にカードを翳す。

 琴にホールドされちゃあな……マトモな人類ならまず振りほどけないし。

 うん、流石にストップだ。マスターの独占は他の世界の方々に怒られちまうからな。

 

「とりあえず限度額叩きますか、足りなかったらもう一枚借りますからね」

「ストップ、マスターちゃんが破産しちまうだろ? 使い魔なら主人を労わってやれっての……」

「「「!!!!!」」」

 

 光の壁をこじ開け、その向こうで今にも酷使されんとするカードを留める。

 天井実装後で良かったね、因みに作者は七十連以上沼った事ないらしいよ。

 

「……ハァ。なんつーか、雰囲気とかさ、あるだろフツーよ……ったく」

 

 色々台無しである。

 何だかなぁ、今度こそ『問おう』ってヤツやろうと思ったのに。

 世の中ままならねえモンだよなぁ。

 

 はてさて、右から美人美人、一つも飛ばさず美人と。

 随分馴染み深いながら、結構なお出迎え。

 感謝感激雨霰、とはいえ雪が降ろうが槍が降ろうがおかまいなく。

 春夏秋冬朝昼晩、名前に反してだいたい年中無休。

 たまに臨時休業はご愛嬌、盆と正月ばかりはご勘弁。

 古今東西の珍品名品揃ってます、春夏冬亭が主人と申しまして。

 

「姓は秋無、名は出雲。サーヴァント、ルーラー……宜しく頼むぜ、マスターちゃん?」

 

 

 

 なんて格好つけてみたは良いものの。

 

「出雲ォ!!!」

「秋無さん!!!」

 

 首に衝撃(Resist)、腰に強打(Weak)

 

 Lv1の身体に響く星五(Lv90)サーヴァントの猛威。

 呼ばれて早々に、意識を刈り取られ__

 

 ……退屈しない日々になりそうだ。

 その確信めいた予感を噛み締めながら、視界は暗転していくのだった。

 

 




名乗り上げのところが一番力を入れてる。

大国主はアレでちゃんと組長のヤカラ部分の大元になっています。
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