尊い犠牲こそあれ、ともあれあの違法建築は吹き飛んだワケで。
「いや、勝手に殺さないで下さいよ。普通に生きてますから」
「マジで運良かったな……あの悪趣味な装飾が偶然盾になったと」
「下で受け止めてくれたお陰ですけどね、ありがとうございます」
やったのは俺だしそんくらいの責任は持つぜ……
近藤は大丈夫そうだが瀕死の土方を連れて帰還することに。
可哀想な土方……仇は取ってやったからな……
「今回ばかりは途中退場はナシです! 最後まで付き纏いますからね」
「頼もしい限りだぜ……」
「琴さんばっかり目立たれると私が当て馬みたいで腹立つので、ここらでポイントを稼ごうかと」
「それを口に出しちゃったら駄目なんじゃないかな……」
「出雲出雲、私もおんぶしてくれおんぶ。沖田ばっかりずるいぞ」
一応は怪我人を優先しろっての……
実際沖田は良くやってくれたと思う、土方はびっくりするくらい役に立たなかったし……
こんなのがまだ暫く続くのか……気が重いぜ……
「いや、そこまで酷いってのはあんまりないと思うけどね?」
「奴らはマジでハロウィンの外に出さないように徹底しろ、世界観がおかしい」
「本質は私らと同じだと思うけどねアレ……」
「同じと思いたくね〜……もうちょい真面目にやってるでしょ俺ら」
過去自体は滅茶苦茶重いし。
こうやって和気あいあいとワチャワチャしてるのは奇跡も奇跡よ?
俺もコイツも新撰組の仇敵。
普通の召喚じゃ揃いも揃って殺し合いでもおかしくねぇって。
……少なくとも琴に関しては、何故かあの特異点の記憶がある。
その上で、俺がバランサーとして四六時中傍に居るから辛うじて正気を保っちゃいるが……
最早衝動や思い付きで新撰組面子を殺してもおかしくない程に存在を歪められている。
元々持っていた鬼種としての破滅衝動に明確な理由が紐付けられちまったからな。
「おんぶーおんぶー」
「二児の母の姿ですか……これが?」
「この頃だとまだ産んでないし私……水着霊基ってのに期待してくれ」
「怖いんでやめて下さいよ、十尺はもう人型の域じゃないですからねフツーに」
「歳とった方の姿で脱ぐんだ……」
マスターちゃんの困惑が手に取るように伝わってくる。
いや俺も何でだよって思っちゃいるんだが。
「アレだろ? 経産婦って属性はそれはそれで需要あるんだろ、集金目的だよ」
「なんて事言うんですかこの人」
「誰に聞いたんだよ……後でブチ殺す」
「怖……」
俺も見たい気持ちはあるけどね、正直ね。
男はスケベな生き物なのでそこはもう仕方ないとして。
他の奴に見られんのオモロくないから絶対イヤ。
まぁそんなみっともない男の嫉妬は良いとして。
あの黄金の城は残念ながら入れなかった……結界っつーか、霊脈に強く紐付いてやがる。
つまり周りから切り崩して弱体化しろって事だな、なんのゲーム?
とりあえずいつものように山崎に張り込みを頼みつつ、俺たちは他へと向かう。
その先は勿論本能寺……だって、ねえ?
「ここまで誰がいるか分かりやすい事も中々ありませんよねホント」
「京都、本能寺、ぐだぐだアフター、何も起こらないハズもなく」
「みなまで言うのもアレだけどカルデアに居なかったのが答えだよなぁ……」
「織田信長に弟の信勝。森長可にこっちも弟の蘭丸……ありゃ?カルデアのは違うんだっけ」
「平行世界の同一人物というかなんというか……同じなようで違うみたいよ?」
ほーん……これ以上のトンチキとは関わりたくねえんだよなぁ……
ユニヴァース組と絡んでもロクなオチになりそうにないからさ。
アマゾネス・ドットコムのCEOとはビジネスパートナーとして良い仕事させて貰ってるけどね?
あくまで仕事上の付き合いくらいで何とかならねえものか。
「はははは、という事で悪ぃけど大殿でもここは通せねぇな。帰んな!」
「かの鬼武蔵が橋を塞いでやがる、立場が逆で嫌んなるな」
「何で僕がコイツらと……というか姉上がいないとほぼ意味無いのに……」
「主様に逆らうは本意に叛しますが、この世界の蘭丸の意志が為。蘭丸、初めての反抗期です!」
うーん予想通りっちゃあ予想通りって面子。
懐かしいなぁ……場所こそ違うけど昔力士共を蹴散らした大阪を思い出す。
俺たちも皆まだ若くて血気盛んだったからさ、ボコボコのボコにしたのよ。
……ちょっとヒートし過ぎて何人か撲殺したけどご愛嬌だよネ!
俺は止めたよそりゃ? 半殺しにして恐怖を流布させなきゃ意味無いからさ。
でも何かね……もう皆『殺!殺!殺!!!』って感じでね……
人間の面ってあんなに腫れ上がるんだな、俺は一発で木っ端微塵にしちまうから。
「……とりあえず、蘭丸ちゃんは任せるぞ。相性が悪ィから」
「そのつもりだよ……やっぱり問題は森君の方だよね」
「カッツは……一先ずほっといても良いでしょう、アレはノッブと並べないと力を発揮しません」
「ま、他二人は私らで適当に……可愛い子だから少しばかり心が痛むけどね」
「それがあの野郎の戦法だぞ……油断するなよ?」
まぁ消去法で俺が武蔵守……長可殿の相手だよな。
槍か……槍使いと戦り合うの苦手なんだよな……
単純に俺らの時代だとかなり少ないからって経験値の不足も大きいが。
しかも向こうはガチの戦国武将、俺たちにはついぞ縁のなかった本当の大戦……あっちでもこっちでもそっちでも、瞬き一つの間にぞろぞろと人が肉塊と化していくような戦いの経験者。
俺の対峙してきたチンピラ槍使いなんざ比較にもならねえだろうし。
とはいえやらないという選択肢もないんだが。
六騎のサーヴァント、相違する意見、思想、主義。
何も起きない筈もなく。
お互いに対峙すべき標的を捉え、正面から向かい合う。
森長可、名槍『人間無骨』を操る強力な
非常に高い耐久を持ち、
お互いがお互いに有効打有り得る攻撃力を有している事は明らか。
故に先手を取る。
長物が長物たる故の隙、技術や鍛錬でも縮めようがない長さ故の扱い辛さ。
対峙したその瞬間、一瞬だけ遅れが生じる。
森長可が戦闘態勢に入るまでの僅かな虚に射撃、無力化する____
それは剥き出し、生の感情。
理性をかなぐり捨て、狂奔に身を任せる狂戦士が故の純粋な殺意。
殺戮衝動と狂ウ熱に浮かされた瞳が、秋無出雲の心を蕩かす。
大上段からの振り下ろし、素手で無理やり鷲掴む。
威力もさることながら凄まじい切れ味の人間無骨、秋無の手から鮮血が舞う。
だが、切れない。表面を切り裂いただけで、当の骨肉にはまるで届かない。
肉体を裂き地を穿たんばかりの振り下ろしが止まった事に面食らった長可はしかし。
直後訪れた更なる驚きにてその衝撃は押し流されてしまう。
「俺が握った刃ってのはよ……」
刀のみに在らず。
その呪いは包丁、ささやかな鉛筆削りすらが例外でなく。
なればこそ、名だたる槍などは当然__
瞬間、大男らが空へ弾き飛ばされる。
数多の生命を啜った魔槍は商人の呪いから逃れんと身を捩り、その勢いは二人を天高く。
凡そ数十間ほども打ち上がった二名は為す術もなく今度は地へと急接近。
「ぐえっ!?」
「がほっ!?」
自由落下をそのままに、地へと叩き付けられ……
槍を喪った事に気付いた長可は即座に起き上がりつつ殴り掛かかってくる。
流石は乱世を生きた武将というか、立ち回りが上手い。
フツーはもう一、二瞬くらい隙が出来るモンなんだがなぁ。
そこで俺はこう、チャチャっと銃を抜くワケだ。
アンタの時代には、ここまで便利なのは無かったろ?
俺の時代のだって型落ちも良いとこだが……少なくとも得物の差は歴然。
「殴り合うつもりだったのか?」
「いんや、一方的にブチ殺す気だ」
「……良いね」
銃を懐にしまい込み、羽織の袖を捲る。
生憎とコイツは使わねぇ……俺にとっちゃ銃を使うってのは寧ろ相手を気遣うようなモンなのよ。
「何のつもりだ?」
「奇遇だ、おんなじ事考えてたらしいぜ」
サーヴァント二騎、裁定者と狂戦士、狂化を持つ者同士。
ならば答えは一つだろうよ。
ここまで言って此方の意図を察した森長可の口角が裂けんばかりに吊り上がる。
殺し合いならね、遊んでる場合じゃないんだけど……
これはあくまで喧嘩、言っちまえば戯れの一部。
だったらお互い後腐れなくやり合うってのもコミュニケーションじゃない?
少なくとも俺はそう思ってるよ。
「うはははは! なるほどなるほど、大殿が気に入るワケだ!」
「んぁ? 何か聞いてんの?」
「アンタァウチに居ないタイプだ、だけど間違いなくあの人が欲しがるだろうよ」
「全く光栄な事だぜ、かの時代を生きた先達にこうも褒められちゃ照れちまう」
「__ああ、ああ! 惜しいな、アンタとは同じ時代でやってみたかった!」
……それはそれで面白そうだな。
多分だけどストレスでキレ散らかす気はするけど、
「まぁ、その辺はまた今度。酒か茶でも飲りながら話そうぜ」
「……そりゃそうだ! スマねぇ、折角昂って来た所で水差しちまった」
「構わねえ……」
これ以上は無粋ってモンさ、お互いにもう堪えきれねえだろうし。
どちらからとも言わずひたすらに駆ける。
僅かな間合いを更に縮めて、その威力が最大となる位置まで。
「シャオラァァァァァッ!!!」
「ヌゥォラァァァァァッ!!!」
捉えた、お互いにとってのジャストポイント。
距離、角度、歩調、全てが揃った巧打の座標。
ドガギィンッッッッツ!!!!!
技も、心得も何もない単純な暴力。
二つの剛拳はお互いの頬を打ち抜いて怪音を響かせる。
逃げも隠れも避けも防ぎも。
一切の後退を許さぬ本能だけの闘争。
「ハハハハ!!!」
「ハハハハッ!!!」
近寄り、振り上げ、打ち抜く。
殴られ、仰け反り、反動で叩き付ける。
蹴り穿ち、繰り返して、貫く。
組み付き、投げて、踏み付ける。
殺し合いに在らず、これは喧嘩ならば。
そこで張り合うは生命ではなくお互いの意地。
どちらが秀でている__とか。
何のために__とか。
そのような些事などとうに頭から消え失せた。
やがて双方の激突は一切の理合を認めぬ領域に突入しだす。
足を止め、殴り合う。
お互いの血飛沫がベタリと張り付く近間、まるで意味の無い戦い。
まさに狂奔と呼ぶべき狂った凶暴性を剥き出しに、二騎の壊し合いは続く。
「何やってるんですかねあの二人」
「男の子だねぇ、青春だよ」
「血腥いどころじゃないんだけど……止めなくて良いの?」
「まぁもうちょっとほっときな……止まらないだろうし」
早々に蘭丸と信勝を無力化したマスターと二人は呆れたように狂戦士どもを見る。
片や元々戦闘要員でない小姓上がり、片や姉がおらねばただの貧弱な三流サーヴァント。
バリバリの武闘派である新撰組隊長二人とやり合うにはあまりに脆弱であり……
属性相性有利にも関わらず秒殺されたカッツ。
単純な膂力の差ですり潰された蘭丸。
指揮するマスター無くば輝かぬ二騎なのであった。
「■■■■ッッッ!!!」
「■■■■■ゥゥゥ!!!」
「……とはいえ頃合いだね、これ以上は不毛過ぎる」
「お願いします親分、やっちまって下せえ」
「だぁれが親分だい、全く……」
琴が巨剣を振り上げた時、二人は未だそれに気付いていなかった。
というよりも、気付く事など出来そうもない。
目の前の対象を破壊し、排除する。
その破壊衝動に思考リソースの全てを奪われていたから。
一拍の後に、巨星堕つ。
巨大な刀身を面にしての振り下ろし……
斬撃でこそないが為に殺傷力は抑えられているが、破壊力は寧ろ数倍増し。
べぎゃりと凡そ人体から鳴ってはならぬ音を響かせ、長可の身体がひしゃげる。
対峙する狂戦士を失えば、元より裁定者である秋無の正気は瞬く間に蘇り……
「…………ア、またか。しまったな……興が乗りすぎると良くないぜ……」
「アンタも、目ェ覚ましな!!!」
「え」
振り下ろしをそのまま引き抜いてのかち上げ。
容易く地を砕き海を割る剛力が、秋無出雲を襲う。
三俵強の巨体でさえその衝撃には耐えきれず。
凄まじい勢いで秋無は空に舞う。
「ヨシッ」
「ヨシじゃないんですが、今シラフに戻ってませんでしたか?」
「そうかい? まぁ、大丈夫だろ。頑丈だし」
沖田は思う。
__こういうとこ、ホント似てるよなぁこの人達。
結構肝要なところに限って大雑把などんぶり勘定だったりする。
それで上手くやるのが秋無であり、やはり駄目なのが琴である。
「……ありゃりゃ、降ってこないね」
「相当高くまで打ち上げたからなぁ……あ、見えた」
「あの高さは堪えるでしょうね…………琴さん、着地点とか考えてますか?」
「考えてるワケないだろ、お前はアタシの何を見てきたんだ?」
「しってた」
空高く高く、錐揉み回転しながら吹っ飛んだ秋無はまるで彗星の如く。
落下につれ、徐々に徐々に加速して一直線に地へ。
その着弾地点とは、即ち__
「あ、ヤバ。本能寺に突っ込むぞ!?」
「だから言ったんですよ!!! ああ無理だ、間に合わない……」
弾着、今。
巨大な質量弾は一息に本能寺の屋根を突き破り、地を揺るがす程の轟音と共に半壊させる。
それだけで済めば良かったが……一拍の後に閃光。
再び日輪が顕現したかのような煌めきと共に、本能寺は跡形もなく吹き飛んだのだった。
爆発オチなんてサイテー!
今週転職に伴う書類作成とかでガチ忙しいかったわよ……
明日までにもう一話書き終わったら投げられるけれど。
組長は殺し合いはともかく喧嘩は好き、めちゃくちゃ好き。
鉄下駄とか履いてるやつだから……京商人なのに中身は江戸っ子。
オマケ
組長→ノッブ
「……いやまぁ色々驚いたけどね、信長公が女性ってのは流石に。しかしま、時折見せる胆力なんかを見りゃ疑いようもない……苛烈に鮮烈に生きたかの大名からすりゃ、確かに俺たちは三流人切りサークルだろうし、何も言えねぇ。悲しいねマスター……」
ノッブ→組長
「いーなー! 儂も欲しかったんじゃが、こういう調整役! 裏切らないし経費ちょろまかさない……どころか増やして来るし内部の緩衝材から他所との調整までしてしかも裏切らない。本人も前線でやれるくらいには腕も立つのに裏切らないとかなんじゃこのスパダリは。沖田の男性観はもう駄目そうじゃなこりゃ……」