幕間の物語的に書こうと思ったけど丁度良いタイミングだったから……
「ホント馬鹿げてやがるぜ……」
色々……ホント色々あって無事に志士どもの蜂起を未然に防いだ。その筈だったんだが。
結果として長州やらの急進派どもは焦りに焦り、武器を取って幕府に逆らうを良しとした。
幾ら腐敗し弱体化したとはいえ幕府は幕府。
政を司る徳川様の配下となりゃ、それなりに戦う備えはしている。
だというのに戦局自体はまるきりの互角、一進一退の繰り返し。
向こうの装備更新ってのは実に著しい……こっちはまだ槍刀に弓矢まで使ってるってのに。
なるほど、長州は随分と入念に準備をしてきたらしい。
精々が百姓に毛が生えた程度と浅い認識をしていた幕府からしたら誤算も良いところだ。
一大藩が相手となりゃ、幕府も相応に警戒すべきだろうに。
何処と無く蔓延した慢心の空気は全軍に広がり。
それは新撰組とて例外ではない。
油断した所を強襲され、少なからずな被害を被っており……
最も驚くべきは志士どもの異様な士気の高さだろう。
例え戦いに傷付き、致命の傷を受けても挫けぬ。
腸が飛び出し、半ば頸が千切れたとしても持ち場を離れようとしない。
捕えられたとしても決して口は割らず、そのまま絶命していく。
一方の此方は砲火に晒されればそれだけで足が止まる。
銃の一撃で落命する戦場にて、かつてのような勇猛を期待するのも酷とはいえ……
勝利が近付いた兵ほど、死を恐れるモノ。
一方で敗軍というのは常に死兵、皆死に物狂いで戦う。
そんな差が明らかに出ている、ポツポツと負傷者が増え……やがて死人に……
多くの被害の礎となっているのが長州の遊撃隊でもある奇兵隊の者であると知るのに時は掛からなかった。
直ぐさま捜査を始めたが、この様な離脱戦を訓練してきた奴らを捉えるのは至難の業。
その上拮抗した前線からそう多くの人は引き抜けぬ。
今もまた、捉えた志士の一人を拷問に掛けた挙句にそのまま殺してしまった。
何せ何をどうやっても吐かない。
木鋸にかけて肉体を擦り切ろうとしてもだ、信じられん……
「…………」
「ん、琴か……そっちはどうだった?」
「……」
「そうか……まぁ仕方ねえやな」
身振り手振りで収穫無しと軽く伝えてくる相棒。
奴ァ池田屋ん時の一件以来口利いてくんなくてな……
……結果として生きてるから、別にそこは気にしねえんだけどよ?
コミュニケーションに弊害があるからさっさと和解したいとこ何だが、難しいね……
一応飯も三食取ってるし、髪洗ってやる時も大人しくはしてるから良いんだけどね。
冷静に考えたらもう色々おかしいんだけど俺は何も考えない事にしてる。
要介護生物がすぎるんだよな……大丈夫なのか、アレ。
俺がぶっ倒れてた時とかどうしてたんだろ。
左衛門のカミさんとかに頼んではあるんだけど……
マジで万一俺が死んだら生きてけないんじゃないか?
奴の兄貴には尊敬の念を禁じ得ないぜ。
そんなこんなで拮抗……所により押され気味の幕府軍が何とか保ってる理由。
それは何よりも俺や一部隊士……京都を地元とする者の利が大きい。
長州者なんざ所詮は余所者、本来排他的思想の強い京の民がそれに牙を剥く。
日常に潜む誰も彼もが全て俺たちの内通者、奴らの計画は筒抜けである。
「っーつワケで、何やら最近奴らの荷入れが加速してんだよ……」
「なるほどなぁ……締め上げても吐かねえから参るぜ。そういや吉、お袋さんは平気か?」
「おう、スケベジジイんとこで皆匿って貰ってるから大丈夫よ。こういう時は頼りになる」
京都一帯に幅を効かせる大親分、銀狼の爺さん。
幕府と志士どもがやたらめったら殺し合おうとした所に割って入り、不可侵地帯を創りやがった。
当然幕府からも志士からも反発が発生し……文句を言った馬鹿はちっさーくなって見つかった。
ビビり散らした両者は街の一部を隔離、今は銀狼組の者が相互不可侵として守ってやがる。
何が怖いって幕府の方は幕臣……しかも俺らじゃ顔も拝めないお偉いさん。
長州の方も向こうの副司令くれぇのが世にも恐ろしい神隠し。
……まぁ、地元の人間からしたらいつものやり口だから慣れっこだけどね。
身体の一部だけ残して影も形も無くなっちまうんだよ、おっかない話だが……
「多分、長州の方は猿兄ィだろ? 耳残すのはあの人の癖だから」
「幕府の方は? 幕臣があっさり殺られるなんて大事じゃないの」
「小指……紫鬼だろな、アイツの見た目なら何処までも入り込めるだろうし」
歯とか爪とか、どいつもこいつも拘りの部位を残してくからな。
誰がやったのかは一目瞭然、問題はそれを誰一人取り締まれないことなんだけども。
金猿の兄貴とか絶対取り締まった方が良いんだけどね……覆面を纏った全裸のマッチョだぞ。
基本的に高速移動してっから幸いヤバいとこは見えないけど良いワケもないのに。
「相互不可侵なのにお前が出入りしてんのは良いのか? よく考えたら……」
「地元の人間だぜ俺ァ、知った事じゃねえよ……」
游雲もお袋も避難してんだから、俺が出入りすんのは流石に許されるだろ。
幸いだったのは俺ン店は辛うじて幕府方の陣地内に入ってた事。
しれっと火事場泥棒しようとしてたお侍には何人か死んで貰ったけどさ。
宇治川の鯉と仲良くしててね。
「吉兵衛も気を付けろよ? 奴ら何してくっか分からねえから……嫁子なんか人質に取ってこっちの動向を探らせてるって話も良く聞く、無論用済みになったら__」
「……俺にはどっちもいねえが、嫌な話だぜ」
「全くだ、腹が立って仕方ねえよホント。新撰組でも幕府の下っ端でもねえ、ただの秋無出雲としちゃどっちもくたばって欲しいんだがなぁ……」
どっちもどっち、京都に大火を持ち込むクソボケ共。
マジで今すぐ両軍壊滅して撤退してくんないかな。
頭おかしいって……御所の前でまで撃ち合う奴があるかよ。
俺らともかくお前らは思想的に不味いんじゃないの? 勤王はどうしたんだよ勤王は。
流石の天子様もお怒りで自ら出陣めされようとしたらしいぜ。
精鋭の近衛が留めてくれたから良かったものの、その場合両軍どうするんだろな。
「あ、居た居た。そろそろ戻って下さいね秋無さん、貴方が居ないとウチの組織全く帳簿が回らないんで」
「思うんだけどさ、分業とか考えない? 万に一つ億に一つ俺が死んだらどうすんのよマジで」
「馬鹿な事言ってる暇があったら琴さんの事どうにかして下さい、貴方しか意思疎通出来ないんです」
「いや俺も正直勘よ? 雰囲気で察してるだけだからな?」
「へー……一緒に寝てるのにですか?」
「それとこれとは別の問題だよ……」
なんというか……結果として
不本意ってワケじゃねえぞ? うん、ただ何かそういうのじゃないというか……
「え、まさか私の事もそういう目で見てたんですか」
「何でそうなるんだよ……安心しろ、少なくともガキんちょは対象外だ」
「……いつも思うんですけど私もう二十なんですが? 子供扱いは心外ですが?」
「知るか、俺からしたらどいつもこいつもまだ首も据わってねえガキだよガキ」
五つも下ってなるともう子供にしか見えねえんだよな……
齋藤やら藤堂もつい最近までまだ童貞だったしよ。
土方やら近藤やらはちゃんと身内にも悪ぃ遊びも教えてやれよ。
……ま、俺が爺ども仕込みのクソみたいな夜遊びに引き摺り込んでやったんだが。
飲む打つ買うも程々なら寧ろ嗜みさ。
「下世話な会話ですねホント……」
「オメーはそんな風だからまだ処女なんだろうが」
「ホントに失礼なんですが!? 別に良いじゃないですか!!!」
「責めちゃいねえよ責めちゃ……しかしなぁ、もうちょい淑女らしさってのを身に付けりゃ、
相手に困る事も無いだろうのが惜しいぜお前さんは……ツラは良いんだがなぁ……」
ツラは良くてもね、実態は人切り社不女である。
これには琴も当て嵌る上、向こうの方が酷い始末なのだが。
「女隊士もそこそこ居るしな、任意で花嫁修業でもさせてみっか……?」
「……いいんじゃないですか?男っ気無さすぎますし皆さん」
「一人一両で」
「有料なんですか!?」
「そらそうよ……
なんだ鳩が豆機関銃食らったみたいな顔して。
何か言いたい事あんなら言えよ、俺らの仲だろうが。
「……もげろ!」
「何でだよ!?」
「ウルセー! テメェさっさと嫁でも見つけろクソッタレ! 迷惑なんだよ!!!」
「んなモン俺の勝手だろうが!!!」
どういう事なんだよ……
そもそもそんな簡単に見付かるモンならこんな歳でチンピラ一味になんざ入っちゃいねえ。
当然死ぬ気はねえが、責任の無え身だからこそこうして荒事を是と出来るモンさ。
「結婚を期に辞めた奴、居たっちゃ居たしなァ……」
「あるんですか秋無さん、そういう願望」
「全く無えって程じゃねーが……どうせ俺ァ秋無家の後継でもねえしな……店は左衛門らにでもくれてやりゃ良いし」
「へー……」
「まぁそんな事になったらまぁた土方が壊れた絡繰人形みたいに『ハラキレハラキレ』ってなるだろうが」
毎度思うのよ、歳上に言うのもなんだけどさ。
人命をなんだと思ってんだよ奴ァ。
良いじゃん、護りてえモノが出来て死ぬのが惜しくなった。
祝福してやろうって気にはならねえモンなのかね。
「はァ……じゃ、気ィ付けろよ吉。お前んとこの野菜じゃないと琴の奴は食わねぇから」
「嬢ちゃんはちと偏食過ぎるぜ……」
「違えねぇや」
さて、行くか……
沖田を伴い、出口へと振り返った瞬間に感じた違和感。
喉に何やらイガグリなぞ放り込まれたような不快さが、俺の脚を止めた。
「秋無さん?」
「いや…………大変そうだな奥さん。何ヶ月だい?」
「……あぁすいません、もう八ヶ月になりまして」
「そりゃ大変だ、こんな出来た嫁さんをほっとくなんざ酷い輩も居たモンだ……」
「はは……」
僅かな会話、違和感は半ば確信に代わり……後はそれを事実にするだけ。
懐に差した銃が、確かに発砲出来る事を感触で確かめながら。
「……所で一つ聞いて良いかい、俺ァ
「…………えぇ、つい最近____
朗らかな表情で笑う女はその微笑みのまま、衣の下から銃を抜く……
だが、あまりに遅い。あまりに緩慢が過ぎる。
向こうが構えたのを視認してから抜いても欠伸が出らァ。
こっちはこれだけの技術を延々と磨いてんだよ……舐めんな。
頭蓋を撃ち抜かれ、脳漿を撒き散らした女がびっくり返って倒れる。
脱力して零れ落ちた銃口は宙を踊り、俺の方を向いた瞬間地に衝突。
反動で狂った撃鉄は最後の一撃を放ち__ヤベ、これは避けられねえ。
「ッ!!!」
「うおッ!?」
すんでの所で沖田に切り落とされる。
危ねぇ……マジでよくやったぞ沖田、流石に早えな。
「秋無さん! 怪我は!?」
「おかげ様でな……助かったぜ沖田、俺が女なら惚れてた」
「……馬鹿な事言ってる場合ですか! これは……!?」
「よく訓練したんだろうが発音ってのは中々難しいよな……長州だ。こういう小汚い真似が得意なのは奇兵隊のゴミムシ共だろ……女子供まで利用するってか?」
パァン!
思考を遮るように響く一発の乾いた音。
死ぬほど聞き慣れた火薬の炸裂音から、飛び出した弾丸が屍に命中した事で外れたのだと悟る。
一体何人入り込んでやがるんだ……不可侵とかそういった言葉は通用しないらしい。
所詮は獣同然の田舎侍共だな……ホント嫌になる。
だから、それはあくまで勘。
二度目となる直感が背筋を凍らせたから、間に合った。
「……伏せろ! 沖田!!!」
「えっ」
そもそも、何故わざわざ妊婦になど擬態して入り込んだ?
弱者だから……同情から、油断させられるから……
それ自体もまた、事実なのだろうが。
つまるところは、だ。
あの瓜のような腹の中に、何かを隠し持っているとしたら____
弾丸が衝突して、屍から凄まじい爆発が生じる。
あまりに咄嗟で、沖田との間に割って入るのがやっとで……
二人纏めて吹っ飛ばされて、意識は暗転する。
少しして、眩む視界の中でようやく目を覚まし……抱えた沖田の無事にまずは安堵する。
意識が戻るのにまだ少し……クソ、他の奴らは無事か……?
背中が酷く焼けている、明滅する視界は無音のままで、耳をやられたらしい。
不意に振り向けば、後ろから迫ってくる攘夷の志士ども。
……ハ! 手負いなら……テメェらでも、仕留められると思ったかよ!?
振り下ろす拳で五体を粉々にし、蹴り脚で首を刈り落とす。
組みついてきた馬鹿野郎の脳天を頭突きで抉り、或いは握り潰す。
銃口を押し付けるように放ち二人ほど始末しつつ、虫の息のボケを踏み殺す。
邪魔だ、邪魔くせえ……!
被害は……どれほどだ……吉……他の、皆は……クソ、失血で頭が眩む……
雑兵共を蹴散らしながらも身体に刻まれていく幾重もの疵。
切られ、撃たれ、突かれ……真黒の羽織が赤茶ける程の血を失い、息が切れる。
「……好機! 同胞の仇、討たせて貰うッ!」
「チッ……! やらせっかよ……!」
炎の中から飛び出して来た一人を返す手で撃ち抜こうとして……その凶刃が沖田へと向かうのに気付く。恨まれてるよなぁ、俺たち。当然か、何人殺したやらもう分からねえしなぁ……
刺突を掌で受け止めれば、流石に刃は貫通する。
しかしすんでのところで沖田の白磁のような顔に傷が付く事はなく。
そのまま手を貫かせて接近、揉み合いの体勢から頸動脈を食い千切る。
びゅーっと勢い良く血を吹き出した馬鹿は驚いたような顔をして絶命した。
ハァ、ハァ……痛ってぇ、ああほんと…………早く起きろ馬鹿野郎……
クソ……息つく間もねえか。
背後に迫る志士に銃口を向け……その頭が横殴りに吹っ飛ぶのを見た。
「秋無! 沖田ちゃん! 無事かよ!?」
「吉……! お前、怪我は……」
「舐めんな、このくらい大した事ねえよ……それよりお前の方だろ!」
「問題ねえ……沖田を頼む、どっか安全なとこに寝かせてくれ」
「……任された! 今、峰のヤツが助けを呼びに行った、すぐにお前らの仲間も来っからな! 無理はするんじゃねえぞ!」
沖田をおぶい、此方を振り返りながら叫ぶ吉兵衛。
いいからさっさと行けって……
そう言おうとして、奴の顔が驚愕に歪むのを鮮鋭に捉えた。
「伏せろ、秋無!!!」
「なッ____」
渾身の力を込めて俺をぶっ倒した吉の首から鮮血が舞う。
銃弾が貫いたのだと、夥しい経験が理解する。理解しちまう。
吉兵衛は最初一瞬呆然としていたが、吹き出す血を見て薄く笑うとその場に倒れた。
馬鹿! 馬鹿野郎!!!
俺が銃弾如きで死ぬかよ……!!!
「……ダメだ、外したか」
「テメェら……!!!」
紅白の小汚ぇ髪をした優男が銃口から煙を吐く。
それを見て、俺は完全に爆発した。
狂奔のままに駆け込み、力任せに拳を叩き付ける。
振られた拳を一刀で受け止められ……しかし威力を殺し切れず、男は水平に吹っ飛ぶ。
更にそれを追い、地を転がる最中、脊椎を踏み砕こうとすれば取り巻き共の邪魔が入る。
蹴散らし、引き千切り、粉砕して。
僅かだが、意識が逸れてしまった。
気がつけば男の姿は懐に、今や半ば抜刀した状態で。
居合の格好で逆袈裟に切り裂かれ……畜生、まだ傷が全部塞がって無いんだぞそりゃあ!
だが幸か不幸か、あの女剣士程大した腕じゃあない。
純然たる達人、剣豪なれど……ナニカに至るようなシロモノじゃあない。
「そんなんで俺を、秋無出雲を殺せると思うなよ! 攘夷のゴミ共が!!!」
「なッ……!?」
掴んだ。
致命の間合い、絶対の距離。
剣士でない秋無に取って問題なのは、掴むまでの過程であり。
その後の事は全て些事に過ぎない。
柔術の心得なぞまるで無い荒業ながら、柔術師範さえ振り解けぬ剛力。
当然それは、高杉でも例外ではなく。
大の男でも、両脚が宙に浮いてしまえばもう駄目。
如何なる抵抗も許されずに地へと堕とされる。
怒りのままに暴を振るう怪力を込めたひと振り。
高杉晋作の頭蓋がカチ割れ、血反吐を吐く。
「がほっ……!?」
「しぶてぇな、そこは死んどけよ。人として……」
「高杉さんを離せッ……!!!」
やかましい、順番に皆殺しにしてやるから大人しく寝てやがれ。
縋り付くボケを踏み殺そうとした時に、轟音。
閃光と共に爆発が起き、吹っ飛ばされて意識が何処かへ吹っ飛んでいく。
……後で知った事だが、幕府の味方として参戦した薩摩の奴らがやらかしたらしい。
長州の主力が固まってるから……そんな理由で、市街を巻き込んで躊躇いなく砲撃。
後に大敵となる頭薩摩の馬鹿らしく、クソみたいな理由で高杉を取り逃しちまった。
明滅する視界の中、俺は冷たくなった吉の身体と、起きない沖田を担いで身体を引き摺り……
砲撃音が聞こえなくなる辺りで意識を手放した。
畜生が……逃げるな、馬鹿共。
落とし前つけなきゃ、奴らが浮かばれねぇだろうが……
チクショウ……すまねぇ、皆……
「…………!!! 出雲……! 沖田……!」
俺が攘夷志士共を嫌う理由はそんなモンさ。
大志に目が眩み、足元が見えてない愚か者。
日々を必死に生きる大衆の事など、まるで考えない狼藉者。
……どうやっても、俺は好きになれそうにないんだ。
「________」
ん。
目が覚める。
そうだ、高杉は……沖田は……
いや……夢か。
そうだった、そうだった。
今の俺はサーヴァントで……そうだ、高杉の奴をぶち殺したんだ。
そんで、その後嫌に疲れちまって……気付いたらひっくり返ってた。
…………暗いな?
何処だここ?
物凄え圧力で頭を……というか胸部辺りまで押し潰されてる。
だが不思議と嫌な感じはしない、寧ろ滅茶苦茶落ち着く。
深く息を吸えば多幸感と酸欠でくらくらする。
すげぇ気分が良いし、ずっとこうしてたいんだが……
流石にな、いつまでもこのままとはいかないだろ。
経験上、なんとなくアタリはついてる。
この圧迫感というか……幾度となく知ってるんだよな。
仮説を証明すべく、手で頭を圧し潰しているモノに触れる。
もにゅん。
ああ、なるほど。やっぱり間違いないわ。
「……ん? 起きた?」
「……酸欠で死にそうだけどな、本望かもしれん」
「そりゃ困る、アンタが死んだら私カルデア中を巻き込んで心中するからね」
「災害の類いかオメーは……」
つまりはアレだ、膝枕。
全方位を
俺は割と開き直ってるから、自分がスケベなのを隠すつもりはないんだよね。
つまりどういう事かってーと、正直ホントずっとこうしてたい。
「高杉は?」
「アンタが頭潰しただろ? ……本当に大丈夫?」
「……そうか」
「どうしたの出雲、元気ない? スる?」
「尚更元気無くなるだろうが…………ブチ殺したら、ちっとは気が晴れるかと思ったんだがなぁ」
虚しい気分だぜ。
カルデアのサーヴァントなら結局スポーンするし、マスターちゃんの所に居るならそのうち嫌でも再び顔を合わせる事もあるだろうから。
「それでも、しないよりはマシさ。少なくとも自分の気持ちに区切りはつくから」
「……お前も、そうだったか?」
「……同じだよ、虚しくなったかな。でも、大切な事を思い出せたから、私は」
「そうか……なら、良いか」
どういう形であれ、仇は取ったぜオメーら。
精々極楽浄土で楽しくやってろよ、俺らは地獄の底でソイツを見物してっから……
「……そういや、禁門の時。俺らを拾って来たのお前だったんだな」
「あの頃はさ、ね? ちょっと気まずくて……」
「結果杞憂だったワケだがな……ホント、お前には助けられてるよ……」
「それを言ったらどうするの私、出雲に助けられてばっかりだけど」
「ハ、ハ、ハ」
違いない。
ハァ、暫く寝ただろうにまだ疲れてる。歳かな……
「まだ三十だろ……今なら二十八?」
「精神的にはどーもジジイっぽいと思うぜ俺……悪い、もうちょいこのままで良いか」
「勿論。私としては断る理由すらない」
助かるよ。
多分待たせてるだろう沖田やらマスターには悪いんだけども……
もう少しだけ、休ませて欲しい。
俺ん中の追憶が収まって落ち着くまで、あと少し。
尚、生前組長はかなりモテてた模様。
顔が怖いのと口が悪い以外に欠点が何も無い……実家も太いし……
収入とか立場考えたら近藤土方より上だと思う。
惜しむらくはクソボケなのと琴ちゃんが圧を放ってたから誰も寄れなかった。
オマケ
猿兄……銀狼親分の長子長男。全裸に覆面のマッチョという奇抜な格好をしている。
かといって持久戦になるとクリティカル連打で壊滅させてくる、コワイ!
特に意味の無い数式
(170)
(95)頭
(130)