基本的にボケ倒しになります。
シリアスは奇兵隊云々で十分よ……
「アマテラスとは、これまた大物が出たもんじゃ」
「そう軽々と降りてきて良い神格じゃないと思うんですが?」
『然り、故にその器を一時借り受けていました……やはり薄い』
日輪の寵姫。
陽の力を確かに宿す者ながら、その権限はあくまで配偶者たる秀吉に拠るモノ。
故にこそ、彼の者が発露する神秘は脆弱に過ぎない。
一方の琴は残滓とはいえその神格を喰らった化け物。
空亡としての側面が天照との繋がりを強めてしまっていた。
「今更何の用……クソ、どういう出力しとる。直視したら眼が灼けるぞ」
「こっちは普通の人間なんですが、その辺り気にかけてくれませんかね」
『赦しなさい、人の子ら。我が日輪の威容は存在するだけで邪を斥けるから』
「誰が邪ですか……」
ボチボチと話しつつ、無言のコミュニケーション。
信長の持つ神秘殺しの力は最高神たる天照には特攻めいている筈だ。
しかし答えは『NO』。
火縄銃の一丁すら展開すれば立所に融解せしめるくらいは容易い。
本人の態度の通り、最大限その権能を抑えてコレなのだ。
立香がかつて異聞の地にて対面したゼウスがそうであったように。
彼女もまた、異なる神話の頂に座すモノ。
仮初の姿とはいえその力は絶大である。
『とはいえ、そう警戒しないで貰いたく。私はただ彼に会いたいだけなのです』
「また一人……一柱増えるんですか」
『いえ、そういう訳ではありません。窮屈にも彼の者に封ぜられたあの子をです』
「……つまり、建御名方って事?」
『はい!』
粗暴な琴の姿から繰り出される
付き合いの長い沖田からすると拍子抜けというか……違和感が……
尊大だが何処となく所作も女性らしく、そうして見ると本当に美人だと思うのにな。
日頃の姿があまりにも要介護生物過ぎて可哀想になってくる。
『私としては貴方が懸想する方はどうでも良いのです』
「だとしても切って話せるモノじゃないでしょうに……」
「……全くだぜ!!!」
瞬間、地面をブチ抜き秋無が天照を殴り飛ばす。
余裕故に不意を付かれた彼女はその一撃を許し、天守を突き破ってブッ飛んでいった。
「あんま琴の身体は殴りたかねぇんだがな……!」
「秋無さん! ……今、どっち?」
「俺ァ俺だよ……建御名方サマはさっきの一撃でヘロヘロだ、頼りねぇ兄貴だぜ……」
相性差、というか。
かつて天照に膝を折ったという神話に定められた建御名方はとことん彼女に弱い。
単純な振り下ろしでさえ巨星の落下に等しい破壊力だったのだろう。
ある意味、そのダメージを肩代わりしてくれたから立ち上がれているのだが。
『……回復が早いですね、流石は彼の器』
「そういうのは良いんでさっさと帰ってくんな。正直俺は死ぬほど機嫌が悪いぞ」
『少なくともその腕は貰っていきます、それは本来私のモノとなるべき代物』
「おーおー、熱烈だね。どうよタケミカ、お偉い様から熱烈ラブコールだぜ?」
何がどうしてそんな執着すんのか分からんのだがね。
せっかくレディが勇気をだしてくれたんだし、一先ず答えを聞いてみよう。
俺の意志とは関係なく左腕がよろよろと持ち上がり……中指を天に突き立てる。
……だよなァ、なら俺も。
右腕と左腕、器と神性、満場一致の
何が悲しくてこんなキチガイ喪女の相手しなきゃならねえのだ。
俺の中に同一された建御名方の呆れが伝播してくる。
……というか、天照ってお前の大叔母だよな。
マジで見境なさ過ぎだろ、神話怖過ぎる。
「という事で今回はご縁がなかったということで、アマテラス様の益々のご活躍を……」
『待ちなさい』
「んだよもう! さっさと帰ぇれってんだろうが! 人の女に寄生しやがって!!!」
『人をベ〇ーみたいに言わないで下さい、傷つくので』
「GT視聴済みなのかよ、神界俗っぽ過ぎだろ」
『貴方のお父上が布教したんですよ、正直品位に関わるようなシロモノも……』
「……それは! ごめん!!!」
察した。
やるかやらないかで言ったら絶対やる、そういうタイプだもん。
そして品位に関わるシロモノも正直予想がついた。
マジであの軟派神……次会ったら四、五回くらい殴っても良いだろ。
「……話戻しませんか?」
『はい』「そうだね」
マスターちゃんは冷静だね、偉いね。
末はきっと優秀なマネージャーになれるよ、俺が保証しちゃう。
「えっと……結局、どのようにしたら帰って頂けるのでしょうか?」
『それは勿論、彼さえ手に入れば問題ありませんが』
「その
建御名方と秋無出雲。
歴史の敗北者同士が混合したのが今の俺の霊基だ。
だからこそ高い神性を宿し、記憶を持ち、かつての仲間を害するのに躊躇いもない。
自覚はないが……俺たちゃどちらでもあり、どちらでもないのさ。
それでもテメェに対する激しい怒りは伝わってくるけどな。
現在進行形で文字通り俺の
『それは困りましたね……周りは不要なのですが』
「尤もらしい意見だが言い方ってモンがあんだろ」
『顔も厳しいし身体つきもゴツゴツし過ぎです、俗っぽく言うならタイプじゃないです』
「確かに秋無さんは顔は怖いし上背もあるので子供に泣かれます、身体中傷跡だらけですし……そのくせ結構子供好きなので無理に構った結果近所一帯に不審者情報が回覧された事もありますが……」
「おお、しまいにゃ泣くぞ。強面の成人男性が号泣する所見せてやろうか」
「その脅し方本当に辞めんか、凄い嫌じゃぞ」
見た者全てをドン引きさせる男泣きを見せてやろうとしたのに……
いややらないけどね、人として流石に最後のラインだから。
『単純に貴女方は趣味が悪……世間一般的に言ったら美男子では無く……いや、味の話をされても困るんですよ。貴女の評価基準はどうなってるのです?』
「なんかバグってない?」
「……まぁ、だろうなと思ってたんだけどさ」
んー……そもそも論なんだけど。
あんな馬鹿みたいに我の強い女、簡単に乗っ取れるか?
人が何回言っても履物を脱ぎ散らすし飯は自分で食いたがらないような馬鹿だぞ。
とりあえず、好機。
「……今だ、撃てッ!!!」
「ハハハ! 待っとったぞ!」
『は……ッ!?』
完全に意識が逸れたところで信長に合図。
忘れてたろ? デカい手ってのはなるべく悟られないようにしとくのよ。
魔王の乱射が天照に突き刺さり……凌ぎつつも防戦一方。
さて、琴の身体を乗っ取った時に落としたのが……何処だろ……
「此方です組長」
「センキュー山崎くん……金剥ぎはどう?」
「分担して行っていますが、案外微妙というか。十二金といったところでして」
「うわ、案外ケチケチしてんだな……いや加工しにくいから分かるんだけど」
折角なら全部十八金とかであって欲しかった。
精錬して純度上げたいな……王族サーヴァント達に取引すんなら尚更。
「とりあえず帰ったらその辺り詳しそうな人に相談してみようか」
「了解しました、それでは」
「へーい、お疲れ」
「なぁお主ら儂を手伝うつもりとかないのか!? 少しづつ距離詰まって来とるんじゃが!!!」
「……本当だ、最高神って存在ならそりゃ良く効きそうなモンですが」
「あー……ボディが琴だからだったりすんのか?」
日ノ本最後の神秘。
内封する神秘そのものは絶大とはいえ、神秘の薄い時代の存在だ。
その外殻が天照本体へのダメージを軽減してる……有り得なくはないんじゃないか?
まぁ目的は達成した、仮説もある。
あとはやってみないと分からないが……
「沖田、マスターちゃん。悪いがちょいと離れてな」
「何する気なんです?」
「……あ、琴さんのでっかい剣」
「実験ってとこかな」
さて吉と出るか大吉と出るか……
ま、凶が出るとは思わない、なんせ俺ァこういう時はツイてるんで。
いつだって最善を求めて最悪には備えとけば大丈夫。
処刑剣の柄を強く握れば、手から滑り落ちた剣は射出される。
容易く音の壁を越え、空気との擦れから発光すらし始めた巨剣。
サーヴァントでも目で追えるかなんてそんな代物を、天照は容易く掴み取る。
並の力じゃ腕が千切れるだろうに……そもそも見えるか否かって速度だぞ。
馬鹿でかい琴の身体と同じ程に巨大な処刑剣を握り、二、三振る。
射出した此方を見ると蛇のようににんまりと口角を吊り上げ、此方を睨むように笑う。
うーん美人。ホンットいつ見てもツラは良いんだがなぁ……
『……驚きましたよ、まさかその様な手があるとは』
「アンタらのせいで俺たちゃ刃物に呪われててね、お陰で目利きも満足に出来ねえ」
『安心して下さい、私の元へ来た暁にはもう二度とその様な事はさせませんから』
「……一応、聞いてみようと思うんだが。もしタケミナを捕らえたらどうすんだ?」
『ええ、ええ! 一先ず四肢を切り落として暫く天岩戸に閉じ篭ろうかと』
「……そもそもその四肢しかここにゃねえんだよバカ女が!」
しかも四分の一だけ。
随分と熱烈じゃないの兄ちゃん。
どうする……?
アッハイ、『冗談だろ』とお告げが来ました。
言葉ではなく魂で理解したぜ。
『剣など久しぶりです。貴方方は私に扱えないと踏んで寄越したのでしょうが』
「…………」
『実は私、結構強いんですよ』
重量だけで人を薄焼きみてぇにペシャンコに出来る鉄塊を軽々と振り回す天照。
その振り回しには素体である琴の剛力に……確かにそれとは違う技の痕。
古式で優雅な剣舞を、優雅とは程遠い剣で以って行う異常。
……まぁ、最高神ってならそりゃ強いだろうさ。
権限だけで殴り合いは弱いです__なんて空想に期待するだけ無駄過ぎる。
とはいえほぼほぼ確定で良さそうかなこりゃ……後は方法だが……
とりあえず、さっきのを鑑みたら平常心を乱してやるのが効果的だろうか。
そうだな……多分沖田より効果的だろうから、うん。
「信長公、ちょっと来れるか?」
「何じゃ、カッコつけてポージングしてる今こそ好機じゃろうが」
「ああ見えてちゃんとこっちを警戒してるよ……特に俺らは」
有効打になりにくい沖田と直接の戦闘力がないマスターちゃんは後回し。
特攻持ちのノッブと主目的の俺に首ったけってのが奴の状態だ。
ある意味じゃツイてるんじゃないか?
……こういう時ガタイの差がすげぇと苦労するよな。
常に琴がくっ付いてるから普段そうは見られないんだが。
俺とて七尺越えの大男、強面と相まって子供には泣かれる。
俺は正直つらい、耐えられない。
世界は残酷だ、何であんなヴィジュアル集団で俺だけ……
恨むぜ鴨さん、アンタが居なくなったせいで俺だけすんごい浮いてるんだぞ。
二尺差って膝立ちで丁度良いくらいか……凄いなそう考えたら。
「何じゃ、何する気?」
「悪い、ちょっとだけ黙って付き合ってくれ」
「だから何を____んむッ……!?」
「ん……」
「「「!?!?!?」」」
膝立ちになり、顎を持ち上げて唇を奪う。
なるたけ見せ付けるように、長く深く……
「んふ!!! んんッ〜!!!」
「…………」
「ん……んァ…………」
「「______」」
ガシャンと音が聞こえる気がした。
脳が破壊された時の、体内から響く音。
効果は大なり、大なり。
ガシャン。
なんかこっちからも聞こえたな、まぁそれは良いとして。
完全に呆然としている、隙だらけだぜ……
惚けた信長を放り、一足に天照の眼前へと詰め寄る。
突然の蛮行を未だ脳で処理しきれていなかった彼女は、致死の距離で漸くソレを悟り……
逃げ出さんとするより早く、硬く柔らかい左腕でガッシリと面を掴まれてしまう。
慌てて引き剥がそうとするがもう遅え。
この体勢になっちまったらもうどうしようも無いのさ……
「…………ッ!!!」
『ミギッ!? グギャアアアアアア……!?!?!?』
じっくりと、渾身の力を万力のように込めて。
諏訪の地に名高き戦神と京に生まれ落ちた落し子の怪力は、とうとう天上神にさえ届く。
顔全体を巨大な手で覆うように圧迫すれば、余すところなく圧壊する。
『……ギバーッ!!! ギブアップッ!!!』
「なぁ天照よ……いや琴か。お前、結構自我残ってるだろ」
『!』
「あの馬鹿デカい剣はお前にしか操れん、あの魔剣が反応しないってならそういう事だ」
……マヌケは見つかったようだな?
アレはホントの本当に琴にしか従わないのだ。
強いて言うなら俺には懐いているが言わずもがな、俺は使えないし……
それが拒みもせずなすがままってのはそういう事だぜ。
『「……チガイマスヨ?』」
「言うに事欠いてしらばっくれるか……それも良いが……」
更に圧迫を強める。
まだ大丈夫、まだ押せる。
何十と頭蓋を握りつぶして掴んだ歴戦の感覚、まだ琴のフレームは耐えられる筈。
「『グゲェ……ウグェアァッ……!」』
「もっと強くしてくぞ、どうやら兄者は天照サマをブチ殺したくて仕方ないらしい」
「『…………!!!』」
「強情だな……どうしたモンか」
参ったな、思ったより意思が強え。
まだ大丈夫だろうが気を抜くと左腕が勝手にキャパ以上の馬力を出そうとしやがる。
別に殺す気はねえんだよ……そもそも身体は琴のだし。
傷付けるようなら例えテメェの半身だとしてもブチ殺すぞ、大人しく従ってな。
「……なぁ琴。今なら怒らないけどよ、これ以上は……俺も嫌いになるぜ」
『!!!」
「…………」
「…………』
沈黙、抵抗する力が弱まる。
「……………………ごめん」
「…………はァ……ホントお前……お前なぁ……」
好きだよそういうとこ、愛してるぜ。
具体的にはもういっぺん強く握っちまうくらいにはな。
戦闘シーンは一応次回ちゃんと書こうと思うのですが。
セクシーコマンドーってこういう時有効なんだなって。