浅葱の影   作:CATARINA

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タイトルがほのぼのしてるけどカスみたいなシロモノです。
でも基本的に組長と琴ちゃんがイチャイチャしてるだけです。


軍学者のわすれもの

「出雲……」

「そこ、正座崩すなよ」

「ごめんって……怒らないって言ったのに……」

「怒っちゃいねえよ、但し罰さないとも言ってねえ」

「うう……脚の感覚無くなってきた」

 

 半ば焼け落ち、見るも無惨な姿になった大阪城天守__

 その中心にて、巨躯の鬼女は項垂れていた。

 

 普段は何だかんだ甘い秋無とて、今回ばかりは例外ならば。

 にこやかに微笑み、座した同胞を見下ろす。 

 

「「「顔怖…………」」」

「言わんでも分かってるよ、傷付くぞ」

 

 揃いも揃ってわざわざ言わなくても宜しい。

 そんなことは俺自身一番よく分かってんだよな……

 迷子を見付ける、どうしたのかと声を掛ける。泣かれる。

 親を見付けてやる、人攫いか何かかと勘違いされる。

 呼ばれてきた奉行所の者さえもが恐れ戦く。

 

 悲しいかな、美男美女ばかりの新撰組に於いて俺はどうも浮いてしまうのだ。

 

「私は好きだぞ」

「ありがとよ……それはそうと、マジで何でこんな事したよ?」

「……言わなきゃ駄目か?」

「駄目だ、そん時はもっと怒るからな」

「……………………寂しかった」

「はい?」

「ずっと他の人となんかしてるじゃん!!!」

 

 何を言ってるんだこのバカは?

 

「最近構ってくれない! 夜も歯磨いてくれた後にどっか行っちゃう日もあるし!!!」

「生憎と、俺は俺でやる事あるんだわ、ここ(カルデア)で確かな勢力を築かにゃならんし」

「実際どうなの? 私から見たら二人は一緒なように見えるんだけど」

「そんな離れてた意識は無いぞ、そりゃ四六時中とはいかないが……」

「最近は三六時中くらいだし……私は四六時中一緒じゃないと嫌だ!」

 

 …………ガキか!!!

 呆れてモノも言えねえとはまさにこの事で。

 マジで……マジでこの女…………

 どうしようね、身内の恥過ぎるよ。

 マスターちゃんの手前バツが悪くて仕方ねえぞ俺。

 

「時々沖田も一緒だし! 別にそれは良いけど!!!」

「立場が逆なんですよ、私の日に貴女が来てるんでしょう」

「俺の発言権はないのか……あ、いや知ってたけどさ。『二人して何言ってんだコイツ』みたいな顔するのは止めようなマジで、終いにゃ二人とも殺したくなるから」

 

 人権とかないんか?

 たまには俺にも休日をくれ、月……二月にいっぺんくらいで良いから……

 嫌いというワケでは勿論ない。

 ()()()()のを求められるのも別に良い。良いんだが……

 疲れるんだよマジで……

 

 朝に残るは熊に襲われた惨殺体か使い古しの針山か。

 ともかくどちらにせよ、俺の犠牲ありきの関係だぜホント

 繰り返すようだが嫌なワケではない、それに応えてやるくらいは……

 好き勝手にやった俺の責任である、それは良いのだ。

 

「お主らどんだけ酷い搾り方しとるんじゃ、倒錯的過ぎるじゃろ」

「お前が言うな!」

 

 頻度が不定期でお互い割り切ってるだけでこのマゾも大概である。

 正直力加減を間違えたらそのままブチ殺しそうなんだよ。

 

「お前の趣味に付き合う方の身も考えたらどうだ」

「いやそこのサイコ二人よりマシじゃろ……」

「比較対象の問題でしかねえよ、生前あんだけ裏切られてまだ足りない感じ?」

 

 下克上(逆転)シチュに一々付き合わされるのも変わらん。

 どいつもこいつもアクが強過ぎる。

 

「……大変だね秋無さん」

「俺の味方はマスターちゃんだけだよ……マジで相手は考えた方が良いよ、という事で彦斎とか……」

「しれっととんでもない地雷をマスターに押し付けるのやめましょ組長」

「クソデカい欠点三、四個に目ェ瞑れば良い奴だぜ」

「欠点デカ過ぎて普通それしか見えなく無いッスか?」

「…………それはまぁ、そうだけどさ」

 

 山崎くんからもコレである、いや確かに彦斎はアレだけどさ。

 あんな人間らしい反応をしてるんだから、本人的にはとことん本気なんだろ。

 となりゃお節介焼きのボスとしちゃあ応援してやりたくもなるのよ……

 

 ……ヤバいな、話が色々外れすぎた。

 

「……しかし、何故アマテラスなんざここに降りてきたんだ?」

「それは……『変わろう、実の所器は何も分かってないだろうから』

「助かるよ」

『と言っても簡単な理屈で、この世界に残った我が残滓……それを媒体に呼んだ者がいる』

「呼んだって……何だってそんな事を?」

『……』

 

 天照は顎で俺たちの後方を差す。

 そこでスヤスヤと気絶しているのは茶々殿……敢えて淀君と言うべきだろうか。

 

「なるほど、日輪の寵姫ってか」

「コヤツ、サルめを呼ぼうとしたのか? 何で急に?」

「やれると思ったんだろ? そしたらやらねえ理由がねえ……気持ちはちと分かるぜ」

 

 余計な真似しやがってという感情と、ある程度の同情。

 好いた相手に会いたいなんて気持ちばかりは否定してやれねえから。

 参ったな、責任を押し付ける相手がいないとなると誰にキレたら良いんだ俺。

 

 しかしまぁ、お騒がせなこった……

 確かにここには神代の残滓が渦巻いてやがる。

 なればこそ、そんなのも出来るには出来るのだろうが。

 

『……それはそうと、少しで良いから彼に代わってはくれませんかね』

「オメーらと違って切り替え出来るわけじゃねえんだがコッチは」

『むぅ……残念です』

「少なくともこの腕を見て残念に思えんのはお前だけだよ、見ろこの真っ直ぐな中指」

 

 天高く貫くように凛々しく聳え立つ拒絶の塔。

 言葉はなくとも如何に建御名方が天照を嫌っているかよく分かるモノで。

 俺たちの主導権はどちらの情緒が上回るか、それだけで決まってるらしい。

 基本的に通常時は大人しく、不意に暴れ出すのも大抵天照関連。

 人の世を見守る派で過度に干渉する気がないが故だが、俺にはありがたい。

 

「こっちとしては別に親父殿を呼んでも良いんだが」

『本当にすいません、反省してるので勘弁して頂きたく』

「だったら最初からやるなっての……」

 

 さてどうしようか。問題ばかりのウチの相棒だが……

 かといってなぁ。ブチのめして何とかなるんだろうかこれ。

 

「選んで良いぜ、とりあえず琴を俺がボコるか……オメーを()()がボコるか……」

『どちらも変わらないではないですか!?』

「全然違えよ、どっちが割を食うかって話」

「コイツはどうなっても良いから私は助けてくれ!!!」

「よし来た、じゃあお前からだ」

 

 座り込む琴の顔を掴み、押し倒すように叩き付ける。

 大丈夫大丈夫、この程度じゃこの馬鹿の脳ミソはこそとも揺れない。

 大型の肉食獣以上に太い頸骨に、ミジンコくれぇの脳がくっ付いてるから。

 揺れようがないくらいにどうしようもない馬鹿である。

 

「なんで!?!?!?」

「共犯だろうが、ノータイムで売るなって……安心しろ、結局両方お仕置するのは変わらん」

「イヤダー!シニタクナイ!シニタクナーイ!!!」

 

 驚天動地、一騎当千、怪力乱神。

 腕の一薙ぎ一薙ぎが星の墜落が如く唸る剛腕とて、踵を踏まねばその力は幼子同然。

 冷静に俺をホールドして天地を返せばマウントを取り返せるんだろうが。

 その判断力を痛みで奪うのがやはり寝技の妙というか……

 

 パッと腕を取り身体を旋回して両足で挟み込んで倒れる。

 

「マスターちゃん、見学して良いぜ。京一の大商人と米国(ステイツ)軍人共同編纂のした寝技地獄。多分格闘訓練としては役に立つんじゃねえかと思う」

「使うかな……使うかも……」

 

 やらかしたサーヴァントのお仕置にでも是非。

 パワーの差、体重差があっても極技は極まると痛えのよ。こんな風に……

 少しだけ後ろへ反らす体重の負荷を増やす。

 白樺や桐材のように美しく、それでいて良く鍛えられた剛腕がぴぃんと伸びる。

 

「ぎゃあああああああ!!! ギブ! ギブアップ!!!」

「レフェリーは、ここには居ねえよ! あとリングアウトもねえぞ、諦めな……さて」

「えげつないの〜……うわ、人間の身体ってそこまで伸びるんか」

「因みに秋無さんの剛力でやると普通に身体が千切れますからねコレ」

「取り押さえた攘夷志士を無力化しようとして攘夷//志士にした時か?」

 

 懐かしいなァ……

 まだ沖田も尖ってたし、琴と俺も……いやまぁ、やる事はヤッてたけど。

 壬生狼としても初期も初期の頃だな、本当にあの頃は色々酷かった。

 

 とはいえ琴のヤツは大丈夫、コイツはこの程度じゃへこたれない。

 何せ馬鹿みたいに丈夫な身体の持ち主である。

 本人があまりに色々無頓着なのもあり、俺は琴自身よりもその身体を知り尽くしてるからな……

 

「ピャァァァァア!? …………チェンジッ!!!」 

『はァ____? ウゲェェェェェ!?!?!?』

「気が利くな、そっちから差し出してくるとは」

 

 手間が省けた、更に体勢を変えて足を絡め、再び思いっきり後ろへ倒す。

 コイツは腕ひしぎと違って安全なんだよな……ただめちゃんこ痛い。

 楽しんでくれ。

 

「『ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!?!?!?』」

 

 

 


 

「うう……」

「まァ、流石にこんなもんか」

 

 久しぶりにやったなぁ極技フルコース。

 強力だけど絵面がね、地味なんだよね。

 派手に投げるとか殴るみたいな分かりやすさがないからさ……

 結局観客(読者)に伝わりにくいとあんまり使えないんだわ。

 文章だけだと尚更ね……

 

『傷モノにされました、もうお嫁に行けません』

「黙ってろ色狂いババア、良い歳して何言ってんだ……」

『ひどい』

「あとソイツは元から俺のモンだ、さっさと返せ」

「………………」

「沖田さんの顔が夜叉みたいに!!!」

「儂、アレに真っ向から行けるお主のそういうとこは正直逞しいと思う」

 

 外野がうるせえな……

 俺自身、別に隠すつもりはねえし。

 正直今更真っ向から伝えるのが色々しんどいってだけで、それなりに重えぞ俺。

 自覚はあるが直そうとも思わんし、何もかも今更だ。

 

『まぁ待って欲しい』

「ふむ、まだ足りねえか」

『違う!!!』

 

 HAHAHA、欲しがりめ。

 そこまで言われちゃアンコールも吝かではないんだが。

 

『まず勘違いしているようだが、私たちとこの特異点は関係がない』

「…………何?」

『この特異点が未だに世界に残留しているのは未練よ。尽きぬ野心、不満足が世界を強く固定している』

「野心……他に誰が居るんだ?」

 

 カルデアからこっちに飛んできた面子は確認済。

 高杉のヤツもブチ殺してリスポーンしてるハズだし……

 他の面子といやぁ、綺麗な以蔵やらなんやらは居るかもだが。

 アレが騒動を起こすとも思えねえんだよな……

 

「!? 地震か……!? デカいぞ」

「……天守の上じゃ不味いのでは!? これじゃ相当……」

「ッ! 出雲!!!」

「うおッ!?」

 

 琴に大剣で殴り飛ばされ、数間程ぶっ飛ぶ。

 ほぼ同時に床を押し破り、俺たちの間に何かが生え……それは天高く天守を貫いた。

 

「危ね……助かった、悪い」

「礼は良い……とにかく離脱だ、出雲」

「……最悪だ、何考えてっか分かったぜ」

 

 登ってきた階段もブッ壊れ、今にも崩れ落ちそうな天守閣。

 

 となれば悲しいかな阿吽の呼吸。

 皆まで言わずとも俺の相棒が何を考えてるか分かっちまう。

 最良で最善だからな、別に異論はねえが……最悪の案だぜ……

 

「……っつー事でとにかく逃げるぞ。しっかり掴まれよ……」

「掴まれったって……それでどうするの?」

「我に策有りだ、まぁ策って言う程でもないんだが」

 

 中心にマスターちゃん、左右から沖田と信長……伸びてる茶々殿は悪い、積載オーバーだ。

 挟み込むように琴が抱き締めて、それを俺が丸ごと抱え上げる体勢。

 あー……嫌だなぁ。やるしかないけど。

 

 そのまま手近な壁に突進。

 激突する寸前に琴は四角くそれを切り刻み、タックルの勢いでブチ抜く……!

 脆くなった壁を突破した手応えのすぐ後にはもう空を切る感触。

 全員を抱えたまま一目散に落下していく。

 

 途中振り返ってみれば、蠢くは巨大な黒いナニか。

 その全身は夥しい程の骸や崩れた瓦礫で形成されており__半ばとはいえ、確かに見覚えがあった。

 本当にしつこい野郎だぜ、全くよ。

 

 さて、それはともかく着地……墜落というべきか。

 

「全員歯ァ食いしばれよ! 地面に着くぞ……!」

「ハズレくじを引かせてごめんね、出雲」

「お前は間違っちゃいねえ、合わせろよ」

 

 空中で、反転し……俺を下敷きに……

 無駄なほど分厚い身体を緩衝として着地の衝撃を受け止める。 

 当然景気よく身体ん中が粉々になっていく……のに合わせて琴は地を力いっぱい殴る。

 反作用により衝撃にブレーキを掛け、間に挟まれたマスターたちを保全し……

 確かな無事を確認すると同時に、俺は意識を手放した。

 ……悪いけど、五分十分くらいは休ませてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 京都と江戸と、更に大坂の城と。

 異国まで含めて様々が混ざりあったこの天外魔境。

 その異常こそが、かの妖の呼び水となってしまった。

 あらゆる時代に於いて多くの死を経験してきた都市……故に。

 それは呼び起こされてしまう。

 

 既に核となる主はなく、制御する術など持たずとも。

 今際の際に編まれた魔術の残滓は確かに発動し、その標的を飲み干さんと。

 

 妖の名を餓者髑髏

 幾千幾万もの屍が絡み合った大怪異は天に吠える。

 

 

 




寝技はね、画が持たないのよ……
派手なフィニッシュ・ホールドはやはり興行として必要だからさ。



餓者髑髏

観柳斎のわすれもの(仮)。
当人が不在なので制御不能、何万という死体と瓦礫で出来た巨人でしかない。
それはそれとして言わば巨人型の『死の河』であり、多少削ったとしてもすぐ補充される。
本編で発動されていたら結構洒落にならなかったヤツ。
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