浅葱の影   作:CATARINA

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アフターストーリー完!
この後アフターのアフターが入ってようやくひと段落かなぁ……
長々とお付き合い頂きありがとうございました。

もうちょっと続くんじゃ。


光すら蝕む焔

 ああ分かってる。分かってるさ。

 皆が言いたい事ってアレだろ? 大丈夫大丈夫、俺も思ってるから。

 

「何度目だよテメェ!!!」

 

 発砲。

 音一つの間で三射、鍛えぬかれた神速の早撃ちは巨大な化け物を捉え……弱々しく呑み込まれる。

 やっぱり駄目か……城か山かってえクソでかい化け物、アレに効かせるには俺のは弱過ぎる。

 悲しいかな、特に補正のない拳銃と喧嘩殺法の俺には殲滅力ってのが皆無なんだ。

 起き上がって早々キチィ……! まだ治りきってないし。

 

「信長よ、アンタならどうだ?」

「効いてはいる……効いとるんじゃが……弾一発一発を屍一つで止められとる。アレだけの骸の巨躯、幾ら撃ち込んだ所で大した手傷にはならんな……」

「そうか……沖田、何とかビームとか出せない?」

「無茶言わないで下さいよ」

 

 何とかしてくれよ、セイバーだろ。

 最低でも対城宝具をブッパしないとこれは落とせんぞ。

 オルタの方はやってたしお前もやれるだろ!

 

「アレは厳密には私と関係ないんですって……それにアレだけの大きさ、並の宝具じゃ意味が無いでしょう」

「……補填が早え、削れた傍から他の死体で埋めてやがる」

「やはり一撃必殺しかないが……惜しいの、今回のメンツだと厳しそうじゃ」

「やっぱ沖田さんがエクスカリバー撃つしか……」

 

 ハァ〜……しっかたねぇなぁ……

 とりあえず、迷ったらやってみろだ。

 右腕で不可視のソレを掴み、地に叩き付ける。

 

「誓いは彼方に、誠は此処に! 出番だぜ馬鹿共!!!」

「嗚呼、折角早上がり出来ると思ったのに」

「今回のは我々のケジメ案件だから仕方ないね……」

「アレ? 副長?」

「歳はまだ()()()()()で回復中だ、残念だが……」

「そういやさっきも居なかったっすね」

 

 ゾロゾロと集まるかつての新撰組幹部達。

 うーん、士気が低いなぁ。

 無理もないか、招集は二回目だし……

 

「単刀直入に言うわ、助けてくれ」

「そうは言っても……」

「秋無組長の事なら全員の宝具くれぇ把握してるでしょ、正直難しいっすよ」

「だよなぁ」

 

 分かっちゃいた、分かっちゃいたんだけども。

 どうも俺らの宝具って対人に特化し過ぎてるからさ。

 こういう面の制圧にはやっぱ向いてねえのよ。

 

「どうだ藤堂? お前自慢の砲術義肢で何とかならねえ?」

「……流石にそこまでの出力は厳しいかと、宝具を切って多少なら」

「単体宝具だもんなァ……しまったな、土方のカードはここで切るべきだったか」

「秋無ィ……」

 

 あのクソバカ幕末オープンゲット共に無駄打ちしたのが痛い。

 間違いなく新撰組(俺たち)の最大打点はアレだし。

 んー…………そうだな、とにかくちびちびやるか……

 

「一先ず新撰組! いのちだいじにで時間を稼ぐぞ! マスターを最優先!!!」

「時間稼ぐって……」

「得意だろうがオメーら、俺が死んだ後もズルズル終わりを引き伸ばしやがって」

「サラッと酷い事言うの止めなよ秋無くん?」

「事実じゃん? よくまぁしぶとく生き延びたよな……」

 

 俺が死んだ後はそりゃもう酷いことになっただろうし。

 これでも京都の顔役の一人、どう低めに見積もっても荒れただろうことは想像に難くない。

 自分らの後援者すら切り捨てるような忘八の輩なんざ、京に置いとく筈がねえ。

 少なくとも左衛門や游雲はそんなに甘くない、俺と違ってな。

 

 それで散り散り粉々になって二年弱? てぇしたモンだと思うよ?

 

「いやマジで、正直驚いてんのよ。俺抜きで良く保ったな?」

「実際保ってないから滅びたんじゃ」

「だってあの頃の俺、三日に一度は感じてたよ。『何かの拍子に俺がくたばったらこの組織終わりだな……』って」

「そんな……いや……確かにそうかも……」

 

 給与の計算やら褒賞の管理はともかく、俺抜きじゃ職人の手配も出来ねえ。

 あんだけ言ったのに隊士全体の識字率が100%にならねえし、やる気もない。

 寺子屋のガキ以下の頭の奴なんてそこそこいたぜ。

 

「当たり強くないすか?」

「たまにゃ愚痴らせろ、お前ら一人一人捕まえて小一時間説教しても良いんだぜ俺ァ」

「面白そうだ、是非やろう。終わったら私が一人づつ始末してく」

「物騒すぎんだよ復讐者、そういう話じゃねえっての」

 

 すーぐそうやって血腥い話するんだから。

 常々言ってんだがなぁ、俺ァ別に自分の終わりに文句はねえワケで。

 悔いはあるし志も半ば、そりゃ満足した死に様じゃあなかったけど。

 俺みたいなチンピラにしちゃ上々なアガりじゃねえか?

 だってのにこの暴力女ときたら……

 

 復讐者として刻まれた在り方は拭いようがない。

 何だかんだと仲良くやってるように見えてるだけで、その腹ん中は今尚狂おしい程の殺意に苛まれてやがる。

 それは全て俺のせいであるのだと、俺の為だと分かっちゃいるから。

 あんまり責められねえんだよなぁ。

 

 まどろっこしい話になったね、要約すると惚れた弱みってやつ。

 男はつらい。

 

 

 

 寸劇も束の間、天高く街一つってえサイズの巨大な腕が降ってくる。

 正しく天変地異、空から地面が降ってきてら……

 

「ぼーっとしてる場合ですか!? どうするんです!?」

「どうもこうもなぁ…………仕方ねえ、頼むぜ相棒」

「よし来た!」

「燃費悪いんだよなぁコレ。マスター、令呪も頼む、あるだけ」

「……分かった! 令呪よ!」

 

 両肩を掴まれ、凄まじい力で抑えつけられる。

 はいはい、何処にも行きゃしねえよ。

 我ながらどうかしてるよなぁ……

 

 琴の上体が黒いモヤに包まれ、異形の姿へ変貌していく。

 牙を剥き出しにして天を仰ぐ、愛しい人喰い鬼を抱き締めてやる。

 誰が言うでもなくマスターの目と耳を塞ぐ出来た隊士たち。

 

 流石____

 

 

 

 がじゅり。

 

 肉と骨と、魂がごっそり喪われる鈍い音。

 遅れてやってくる鋭い痛みが意識を覚醒させなくばそのままくたばってただろう。

 

 

 

「……行けるか?」

「うん……残りは帰ってからにする」

「助かるよ、これ以上持ってかれっとリスポーン待ちになりそうだ」

 

 倒れ込むようにドカッと地に座り込めば、蒼白の沖田と近藤が飛んできて俺を引き摺る。

 

「重い……!」

「そりゃそうだ……悪いな、俺ずっとこんな役回りだぜ」

「……当人同士合意があるなら、何も言うまい」

「流石新撰組随二の遊び人、良く分かってんじゃねえの」

 

 一番が誰かは言うまでもないよな。

 

 

 

「__日輪よ、我が意に従え」

 瞬間、世界が真っ暗に照らされる。

 凄まじい熱量が間近に生じ、僅かに肌が焼けるような乾きが一帯を支配する。

 

 空亡。

 日輪の力宿す黒き太陽。

 世界を煌々と真っ暗な闇に飲み干す禍ツ日輪。

 

 後ろにいる第六天魔王サマのような紅蓮とは違う、全てを食らう漆黒。

 真っ黒な太陽そのものが今のアイツである。 

 

「降る雨は我が憐憫、焼き尽くす熱は我が憤怒」

 

 十数万はくだらない骸で出来たその巨躯さえ、空亡の光に照らされて最早見れず。

 誰も彼も、その視界を眩いばかりの闇に奪われれば、最早助からぬ。

 

「空は虚ろに、報いはとうに亡く」

 

 映らない視界。

 止まった時間。

 何一つ感じぬ宙の深淵。

 その中で確かに、ソレは獲物を捉えていた。

 

「全て唯、我が飢えを満たすモノ____『日蝕(あまのいわと)』」

 

 

 

 バグンッッッ!!!!!

 

 牙を打ち鳴らし、何かを食い千切ったような嫌な音。

 肉を裂き、骨を噛み砕く咀嚼の後にぱぁっと世界は光を取り戻す。

 開けた視界で見えたのは、無惨にも食い散らかされた餓者髑髏。

 全体の八割ほどを喪い、最早骸の巨人たる様相はない。

 

「…………ふゥ〜……マッズいな、やっぱり悪食なんかするもんじゃない」

「お疲れ、いつにも増してエグいな……」

「出雲、口直しさせて……」

「我慢しろ、これ以上食われたら治らんぞ俺」

 

 霊核(心臓)まで持ってきやがって。

 特殊(左腕が本体)な俺じゃなきゃ普通に消滅してるわ。

 タケミナカタ様に感謝感謝。

 

「さてお前ら、悪い知らせと良い知らせがあるんだけど聞きたい?」

「……とりあえず、良い方から」

「アレを食い千切った時に核っぽいのがあるのが分かった、外したけど」

「どうせ聖杯でしょお? あの時回収し忘れたらしいですし」

「ごめん皆……」

 

 マスターちゃんは悪くないよ、あの状況でそこまで頭回る子なんて早々いないから。

 

「悪い方、久しぶりにお腹いっぱい。これ以上は無理」

「傷口を舐るな、まだ全然治ってねえんだよ。あと普通に痛え」

「それともう一つ、こんな話をしてる間にも再生し始めてる」

「……先に言え! どんだけしぶといんだよアレ」

 

 物理的なダメージだけで完全に破壊するのはやはり難しいか……

 奴の核に癒着してるだろう聖杯を切り離して取り出す必要がある。

 しかしまぁ、俺たちって魔術とか詳しくないのよね。

 頼りのマスターは何年経っても魔術は素人同然。

 礼装無しじゃシングルアクションの魔術すら行使出来ないと来た。

 

 とりあえず、やるべき事はもう一発。

 クソデカい一撃を食らわせて完全に核を露出させる事。

 その上で……策はあるんだが上手く行くかどうか。

 

「俺に考えがある、苦肉の策だが」

「なんだい? こうなると、君の閃きが頼りだが」

「全員、俺に宝具をぶち込め。全力でな」

「……頭おかしくなりました?」

「狂化は元から持ってるが正気だ、ちゃんと理由あっての事だから……」

「普通に考えて何をトチ狂った事言い出したんだコイツ、ってなるだろそりゃ」

「その辺は生前からじゃないすか? ずっと頭んネジは何本か足りないですし」

 

 HAHAHA、言ってくれるじゃないの原田クン。

 来季のボーナス査定を楽しみにしておけよ、金庫番に逆らう愚か者め。

 

「とにかく、我に策有りって事よ。信じてくれ」

「……複雑な気持ちです、また貴方に刃を向けるとは」

「「「………………」」」

 

「…………神妙な顔してるとこ悪ぃけど、お前はそんな久しぶりでもないよな?」

「……確かに」

 

 沖田の妙に重苦しい発言に、全員の顔色が曇り……俺の一言でひっくり返る。

 だってお前一緒に寝る度に刺してくるじゃん。

 別に俺はお前を許してるけど少しくらい躊躇いとかない?

 いや、その未練は此処で断ち切ったのか。良い事なのかどうなのか……

 

「という事で遠慮は要らねえぞ、存分にぶん回してこい」

「……そこまで言うなら」

「加減は苦手だ、しねえ」

「要らねえよ、お前らのだらしねぇ攻撃なんざでくたばる程ヤワじゃねえ」

「だったら、存分に」

 

 近藤は決心したように旗を取り出し、天高く掲げる。

 新撰組全員にかかる絶大なバフ……やっぱこの辺りは局長らしいわけで。

 

 相対するは土方に沖田と齋藤、あの時の三人に永倉原田藤堂の三バカ。

 山南さんは……ああ、やらないのね。優しい人だよホント。

 

「あれ、土方さん大丈夫なんですか?」

「知らん、何か考えがあるンだろ……やってやるよ」

「良いんですね! 本気でやりますよ!?」

「来い!!!」

 

 最後の問答、当然俺の答えは変わらず。 

 

 そうして、弾かれたように六騎の英霊が突貫する。

 一つ一つが練り上げられた殺意の結晶、奴らにとって絶対の自信。

 常人なら、どころか並の英霊なら跡形もなくなりそうだな。

 多分受けきれんのは鴨さんくらい……ホントしぶといしあの人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「____誠の旗よ!」

「「「え」」」

「此処がッ!!! 新____!?」

 

 全ての攻撃が俺を捉え、ずたずたに引き裂く刹那。

 俺は旗をそっとひと振り、目の前に迫っていた土方を俺たちの間に割り込み召喚。

 さーて危ないから離れよーっと。

 

「ぐわあああああああああああ!?!?!?」

「歳ィ__!?」

 

 

 

 となりゃ当然結果は一つで。

 俺に向けられた全ての破滅を一斉に受けた土方は間抜けな声を出してぐわんと揺らぐ。

 

 よーし狙い通り、後は向こうまで飛ばすだけ。

 

「琴!」

「良いね、最高の位置だ……!」

「ぐおっぶえ!?」

 

 ボロボロに吹っ飛んだ土方を空中でトス、琴の目の前に上手く落とす。

 それを待っていたかのように腰だめに剣を引いた琴は、刃の腹で土方を強かにかっ飛ばす。

 

 二度目の登場、天丼みたいでごめんなさい。

 これが俺たちの真の絆、壬生狼流陳撰組____

 

「お主、人の心とかないんか?」

「まぁ、俺アイツに殺されてるし……たまには痛い目見た方が良いと思うんだよね」

 

 ぼんやりとボヤきながら旗を手に、琴の方へ跳ぶ。

 俺の意図を見事に察した人喰い社不女は脚を掴み、土方にそうしたように俺をブッ飛ばす!!!

 最も明確な害意を持って殴り飛ばした土方と違って俺は投げられただけどね。

 

 十数秒もすりゃ眼前に迫る治りかけの巨人。

 屍の集合体、餓者髑髏。

 うっわ、近くで見ると一層キモいな。どういうセンスしてやがるんだ。

 

 

 

「さあさあ! やっちまいなバーサーカー!!!」

『__新! 撰!!! 組だァッッッ!!!!!』

 

 過去イチの瀕死、過去イチの威力。

 死にかけ土方の砲弾は見事に巨人の上体を消し飛ばす。

 その中に俺は確かに見た、その核たる部分。

 聖杯の浸透した魔術の礎たる部位を。

 

 

 

 空中で身体を引き絞り、渾身の力を込める。

 外す事は考えちゃいない、投擲なんて何千とやってきてる。

 心配事があるとしたら、ついぞ既読スルーしかしねえ事。

 とはいえそこまで深く考える必要もないよな。

 最悪を想定し、最善に備える。

 それこそが商人としての俺のモットー、いつだって上手くいく事を考えてる。

 

 だから多分、何の問題もねえ。

 

 どうしようもねえ幕末弱小人斬りサークル、その本質を信じてる。

 どんなに離別が悲しくても。

 どんなに終わりが悲惨だったとしても。

 あの日々に嘘はなかった。

 誠を誓った想いと願いだけは、確かだったから。

 

「いい加減ッ__くたばりやがれッ!!!!!」

 

 剛腕ひと振り、放たれた旗は彗星のように真っ直ぐに飛翔し、化け物の核に刺さる。

 そして僅かな後に核がヒビ割れ……屍の巨人はどろりと溶けるように霧散。

 後に残る聖杯サンを空中でキャッチして……やべ、着地考えてなかった。

 くそう、二回目かよ……内容が天丼ばっかりだぜ。

 

 脚本家の実力不足を恨みつつ、俺は真っ逆さまに地面へ____

 

「取った!」

「ん」

 

 叩き付けられる瞬間、巨大なナニかに抱き留められる。

 __助かったぜ、相棒。

 それはそうと疲れたから流石に休ませてくれ。

 

「何を昼間っから盛り合ってるんですかこの二人は!」

「失敬な、別に盛り合ってないだろ! 私が一方的に盛ってるだけだが!!!」

「…………ハァ、やっぱこうなるか」

 

 どうやら俺に休みはないらしい。

 まァ、仕方ないよなぁ。

 選んだ在り方だ、後悔なんて無いさ。

 

 休みたきゃ、死んだ後たっぷり休めば良い。

 死んだ後も働いてっけど……

 

 我が衣は浅葱の影。

 幕末を苛烈に生きた馬鹿野郎共の後ろを歩む者。

 真っ黒な羽織はその誓いそのもの。 

 だから、これで良い。 

 

 救いようのない馬鹿共に揉まれて、気が狂う程の厄介事を押し付けられて。

 そんな最低の日々が、どうしようもなく楽しかったから。

 

 ____ああ、寒くねえな。

 

 そうやって、心から思えるんだ。

 

 

 




旗云々についてはアフターのアフターへ。
もう少し待ってね。

日蝕(あまのいわと)

ランク:A 種別:対軍/対城/対界宝具 レンジ:? 最大捕捉:?

空亡、そらなき。転じて日食の力。
かつて天照大神が天岩戸に閉じ篭り、世界が闇に包まれた事の再現。
空亡の灼光が世界を真っ黒に照らし、照らされた対象を無差別に貪り食らう事が可能。
概念的防御や質量すら無視して一方的な破壊が可能だが燃費が悪い。
令呪三画+アマテラス憑依状態+組長捕食の補正が入った今回が最大出力。
その気になれば特異点そのものを食い破る事が出来た。
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