浅葱の影   作:CATARINA

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今回でこのくだりは終わりにしようと思ってたのだがきり悪くて更に一話増えそう。
テンポ悪くて申し訳ない……
ギスギス新撰組よりこうやってわちゃわちゃしてる方が嬉しいから……


巨星堕つ(130cm)

 

 とまぁ、そんな風に格好つけて出てきたものの。

 

「すいません、やっぱ無理です」

「……まぁ、だろうなァ」

 

 装備制限なし、時間と場所を問わず、部下良しとして漸くってところだろうしな……

 それくらい()()()()()という壁は凄まじい。

 組織自体は歴史に呑まれたちっぽけな人切り集団でありながら、その名を残したのは……

 やはりというか、圧倒的な戦闘力故だろう。

 人が人を斬る、という行いが或いは戦国の世よりも多かったかもしれない幕末(あの頃)

 

 殺すも殺したり何百か、何千か。

 その殺傷力故にこそ、俺らは英雄足り得る名乗りを許された。

 

「もう良い、休め……流石と言っとこうかな」

「お褒めに与り光栄ですよ、だったら降参と行きませんか」

「嫌なこった、確かに皆やられちまったがだいぶ消耗してるんじゃねえか? 特に近藤と土方、鴨さんは強かったからなぁ……」

「このくれぇ、数のうちに入らねえよ……!」

「…………」

「その割にゃ肩で息をしてるじゃねえかよ……とはいえ割と想定外っつーか」

 

 一人か二人くらい離脱してると踏んでたんだが。

 想像以上にタフ……後先考えないイノシシ侍らしかぬクレバーな戦法。

 消耗は最低限、しかし一人も欠ける事なく立ってやがる。

 

 ……なるほど、マスターちゃんだな?

 本人に自覚があるのかないのか、その程はともかくとして。

 マスターちゃんには相当な采配の才が眠ってるらしい。

 確かにあの旅路でも的確な魔術支援やら何やら。

 良いね、滅茶苦茶裏方向きだよマスター。

 この新撰組内勤取締、秋無出雲のお墨付きだぜ。

 

「……ま、痛みに耐えて良く頑張った。感動したよ」

「どうやら心にもなさそうですね?」

「感心したのはホントさ、ここまでやるとは思わなかったし」

「……それで? 次は組長もご参加で?」

「おう、喧嘩ってんならそりゃ混ぜてもらわなきゃな……そろそろ来ると思うんだが……」

 

 来る前に三回は起こしたんだけどなァ……結局本人がズボラ過ぎるし。

 ん、嫌な予感。急いで右に避ける。

 音を切り裂き、俺の身の丈すら超えるような分厚い鉄塊……

 鋭い切れ味と、ナマクラの重さを兼ね揃えた処刑剣が飛来する。

 

 ふいー、危ねぇ危ねぇ。

 つくづく俺ァ剣ってモンには祟られグェッ!?

 

 後頭部から衝撃、まるで宙からお天道様をぶっつけられたような勢い__

 厳しい頭は無惨にも地に叩き付けられ、地面深々と埋められてしまう。

 

「ハハハ! 祭りの会場はここかァ!?」

「! 琴さん!」

「ん、マスターかい。その格好……なるほど、そっちに付いたワケ」

「まぁ、予想はしてたけれど」

「普通に考えてアイツが一人で戦うワケも無し」

「消耗した状態で最後の最後に重たいのが来ますねホント……」

 

 どこからか落ちてきた巨星、中澤琴。

 秋無が最も信を置く強者であり、この大喧嘩のトリを務めるに相応しき浅葱の仇敵。

 かつて彼女と殺し合った者もそうでない者も、その強さは確と身体に刻まれている。

 

「出雲に聞いたぞ、今日は全員ブチ殺して良いんだろ!?」

「あの人、だいぶ都合よく話を歪曲して切り抜いてませんか?」

「沖田くん、彼女に道理を語るのはそれこそ無謀というモノだよ」

「馬鹿力だけで物理法則を捻じ曲げるような化け物相手じゃ、そりゃそっすよ」

「……それで、さっきから気になってたんだが」

「ん?」

「出雲は何処だ?」

 

 全員その場にひっくり返る、スタン1ターン。

 きょろきょろと辺りを見渡し、愛しい男を探す人喰い鬼は……

 少しの後、自らの下から生える見慣れた剛腕に気が付いた。

 

「出雲、昼間っからなんて……私は全然構わないけど」

「お前の南半球くらいデケェケツで潰されてんだよこっちは」

「……でも好きでしょ?」

「……………………」

「____ッ〜〜〜!!!」

「ああ! 沖田さんが凄い勢いで頭を壁にぶっつけてる!」

「お前ホント良く彼処に割って入ろうと思ったよな……」

 

 渾沌。

 

 圧倒的ケイオスが場を支配していた。

 

 

 

「ヨシ! やろう、やろうぜ! マジでこれ以上前置きを長くすると話が進まない……」

「正直今更真面目にやるってのも微妙な空気感になっちゃいましたが」

「それはそうと喧嘩だ喧嘩、今日ばかりは色々を忘れてやりたいのよ俺ァ」

 

 おちゃらけた雰囲気。しかし秋無が銃を抜き、琴が巨剣を構えればそんな空気は瞬く間に霧散。

 相対するは新撰組最強の生物と、最恐の金庫番。

 所作一つでその暴を感じ取った藤丸も、遅れて臨戦態勢を整える。

 

「うん、良いね。切り替え自体は早い……すぐ油断しちまうのは現代人故の甘さってとこだろが」

「そんな事言って、随分と気に入ってるよね……あ、流石にこれ以上は私怒るよ?」

「そういうんじゃねえよ、そもそもマスターはまだ子供だろうが」

 

 今の制度だと酒もタバコもやれないんでしょ?

 何を楽しみに生きてるの__ってのは言い過ぎかもしれないけど。

 俺そんな風に束縛されてたら江戸城を有血開城させてたかも分からん。

 TPO弁えるくらいの自制は効くけど結局どうしようもない依存者だから……

 

 処刑剣を掴み、ふわっと跳躍した琴に回し蹴り。

 その脚を起点に両脚で踏み切り、一直線に吹っ飛んでいく。

 狙いは一番近くに居た原田、眼前に迫って漸くその存在に気付いて防御を固めるが……

 槍ってのは刀剣を防ぐのには向いてない、なまじっか長い故に。

 俺と琴の脚力からなる速度、馬鹿みたいな剛腕、重過ぎる剣。

 

 そりゃあ防げない。受け止めた槍が撓り、諸共に原田を真っ二つにしようとして……

 ギリギリんとこで二つの刃が割って入り、辛うじて猛撃を地へと逸らす。

 藤堂に永倉……いつもの三馬鹿トリオ、良い動きだ。

 だがなぁ、初撃を防ぐのに全力を注ぎ過ぎじゃあないか?

 別にターン制RPGじゃないんだぜ。

 そんな必死に、体勢崩してまで防いじゃ……

 

「ッッツアアア!!!」

「しまっ……!!!」

 

 剣を腹にし、思いっきり振り抜くホームランスイング。

 一振りで三者三葉に全てを巻き込み、遥か彼方へとかっ飛ばしていく。

 普通に刃を立ててたら纏めて輪切りだっただろうな……

 万全ならともかく、今の奴らは全員バテバテだ。

 勝機とは今しかない。

 

 暴れ回る琴の方を見ながらノールックショット。

 銃声は二度、三発が一発に聞こえる程の速射。

 今となっちゃ古すぎる回転拳銃の弾が土方たちに降り注ぐ。

 しかしまぁ、折角の好機だったってのにマスターちゃんが見てたらしくて。

 反応さえされちまえばこの通り、あっさり弾かれちゃうんだけどね。

 

 マジでどういう腕前なんだよコイツら、剣豪ってのはこれだから……

 俺からしたらどいつもこいつも大概だが、一応更に上に剣聖ってのも居るらしい。

 ざっくり言うとビームを出せるか否かなんだって伊織くんが言ってた。

 正直近藤はその領域に片脚突っ込んでると思うんだがなぁ。

 パチモンの虎徹で十数人をあっという間に切り伏せる化け物だし。

 

「チッ……危ねぇな……!」

「ホント優秀ねマスターちゃん。惜しいなぁあの頃の俺たちに欲しかった……ああいや、でも何か何だかんだでアホみたいな内輪揉めに巻き込まれて死にそうだな。やっぱ今のなし」

「…………否定出来ないというのが悲しい話だね」

「でしょ?」

 

 多分だけど油小路辺りで限界んなって止めに入るでしょ。

 そんでそんな正論を言う立派な藤丸隊士を士道不覚悟って切っちまうオチ。

 容易に想像付くなぁ……そしたら俺も流石に見限ってたかもな。

 

「俺ん中でのお前らへの負の信頼を理解してくれて助かるよ、こっちもやるか?」

「! 来ます、マスター!」

「まぁあっちはほっといて良いでしょ……俺が用あんのはそこの三人だし?」

 

 幸い、近藤や山南さんはこっちよりも向こうを気にしてる。

 素直で宜しい、俺より琴の方がずっと強いしね……

 上手いことマスターと三人の馬鹿が孤立している。

 この位なら簡単に巻き込めんだろ……

 

 そこらにある籠や樽をポイポイと投げ付ける。

 と言っても特に何というシロモノでもない、ただの既製品。

 弾丸以上に簡単にずんばらり、足止めくらいにしかならん。

 だがデッケエ投擲物ってのは視界を制限するからな……

 ギリギリまで見えなかったろ? 俺の無駄にデカい図体すら。

 銃すらしまい込み、全力疾走で急接近。

 そんな動きを予見してなかった土方は面食らい、反射的に横薙ぎに振るう。

 

「おいおい、そのクソ握り直せって散々言われただろ……」

「チィッ……」

「威力は十二分だが軌道がバレバレ、並じゃあ分かろうが避けられないんだろうが」

 

 生憎と今の俺は並じゃないんでね。

 両脚の撥条で高く跳んで、頸辺りを狙った一閃を飛び越え、一気に貫く!

 大黒柱くらいに太い足を二つ揃えての飛び蹴り。

 何より重過ぎる俺の質量に押されて、土方は水平にぶっ飛ぶ。

 

 左右からの剣撃……右手に銃、左手に発現させた旗でそれぞれ受け止め、回転でもって振り払う。

 銃をしまい込み、旗を諸手で握って短く構える……

 と言っても俺に槍術なんかの心得はないんだが。

 

「珍しいですね、銃以外使うなんて」

「リーチの差をひしひしと感じてっからな……所詮路上仕込みの喧嘩殺法だがよッ!」

 

 縦振り、横薙ぎ、刺突……と見せ掛けての回し蹴り。

 旗をはためかせて目眩しにした蹴撃は齋藤の肋に命中し、確かな手傷を与える。

 反撃で二、三箇所切り付けられたが浅い。

 耐久力の差で此方の方が有利な交換だ。

 

 ここで漸く近藤が此方への加勢を考えたのか、視線が交錯する。 

 然し俺としちゃこの三人でも手一杯なモンで……

 悪いけど、隔離させて貰うぞ。

 

 迫る沖田に再度銃を放って遅延しつつ、左腕に魔力を集中する。

 そんでもって旗を地面に突き立てりゃそれでお終い。

 

 偽りの京都を模した世界に、更なる虚像を貼り付けて。

 マスターと土方齋藤沖田、それに秋無出雲の五名は姿を消した。

 

 目の前で消えてしまった仲間たちに驚く近藤だが……ならばとすぐさま反対の仲間を救うべく行動する。

 

 彼らにとっては幸いにも今の中澤は本気ではなかった。

 秋無からの強い言いつけによりかなりの手加減を……

 『全員骨の二、三十本くらいで抑えてやれ』との温情采配。

 渋々ながら愛しい男の頼みを無碍にも出来ず、とりあえず強く当たって後は流れで……

 

 人は多くを忘れる生き物だが、復讐者は決して忘れない。

 憎悪に陰りはなく。激情に終わりは訪れない。

 それはかつての仲間と笑い合うその瞬間ですら____

 

 日ノ本最後の神秘、消えゆく神代の断末魔。

 虐げられし衆生の怨嗟を募り、人ノ世を焼き滅ぼさんと創られた鬼は。

 奇しくも人の手により、人としての生を受け。

 そして人の手により再び修羅としての姿を取り戻した。

 

 人にも、鬼にも染まりきらぬ『半端』。

 それこそが今の中澤琴であり、それで良いと思っている。

 人としての自分を、鬼としての自分を、どちらも区別する事なく受け入れてくれる男がいるから。

 

 今だけは、この瞬間だけなら煮え滾る怨嗟を忘れられる。

 

 

 

 

 

「ハハハハハハハハ!!! 良いぞ、纏めて掛かって来い……! 全員いっぺんブチ殺したかったんだ、簡単に壊れてくれるなよ!!!」

 

 それはそうと、全員ボコボコにしたいのも事実であり。

 何だかんだ優しい秋無なら多分許してくれるだろう。

 二、三十本も百本も大差ない、誤差だから……

 

 琴は自らにそう言い聞かせ、意気揚々と仲間たちを叩きのめすのだった。

 




琴ちゃんは新撰組の事を全く許してない。今にも八つ裂きにしたいくらい。
それはそうと、組長が悲しむので自身の狂おしい復讐心を噛み殺している。
行動の幼稚さとは裏腹に良い女なんです、ホントに……

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