浅葱の影   作:CATARINA

73 / 73
不定期更新を良いことにサボりまくりの作者。
番号を見れば分かるように続きが全然ある予定、三話綴りくらいかな?


エピローグのエピローグ、その後
幕間『人外はやめとけ、ホントにやめとけ』其ノ一


 

 カルデアのマスターの朝は早い。

 

 

 

「おはようございます、ますたぁ♡」

 

 起床と同時に寝台に潜り込んでいた不届き者をつまみ出し、いつの間にか入れられていたコーヒーを啜る。

 うーん、美味い。猛毒……なるほど。

 侵入者を追い出す。

 朝はやはりシャワー、幾らカルデアが南極にあるとはいえ寝汗などは仕方ない。

 

「お背中お流ししますね♪」

 

 意気揚々と突撃してくる益獣を蹴り出し、出たところで柔らかなタオルで全身を拭われ……

 

「ありがとねモルガン、ところでどうやって入ってきたの?」

「これは異な事を、妻たる者が夫婦の寝室に居るのは当然ではないですか」

「そっかー」

 

 二人を纏めて部屋の外へと押しやり、ようやく一息……

 この間僅か十分と少し。

 そんなのが四六時中である……嫌ではない、誓って嫌ではないのだが……

 

「それでわざわざ俺ん店に逃げ込んで来たと、大変だなぁマスター」

「冷やかしでごめんね……あとありがと、気疲れしちゃってさ……」

「気にすんな、折角だし茶でも飲んでけよ」

「ノッブ!」

「勘定ノッブもありがとね」

 

 礼には及ばないとばかりに寸胴のような胸を張る勘定ノブ。

 普段店番をしているノブギョーは有給を使って遊びにいっている。

 やいのやいのとやってはいるが何だかんだちびノブ隊長とは仲が良いらしい。

 

「器用に頭に乗せてるけどどうやってんのコレ?」

「妙なとこで器用にこなすんだよなコイツら……」

「しっかしモテるねえマスターちゃん、ツラも性格も良けりゃ当然か」

「別にそんな言うほどじゃあ……ここにはもっと凄い人ばかりだし」

「俺の前で言うかい? こんな厳つい顔してっから子供にゃ泣かれんだぞオメー……」

「アハハ、まぁ俺も正直初対面の時はびっくりしたし」

 

 男でも女でも、マスターちゃんは随分とツラが良い。

 誰もが好きになる、愛してやまない清廉さとこの顔面偏差値。

 しかも数多の旅路で仕上がった身体……うーんこれは持つ者の側。

 

 

 

 などと独りごちる男はしかし。

 一見凶暴そうなその人相故に、確かに皆その第一印象こそ良からぬモノであるが……

 少し彼を理解すればその実、商いへの誠実さと善良さに気が付く。

 加えて鉄火場で大立ち回りする剛体にひどく名の通った新撰組の古参幹部。

 そして何より彼はかの豪商、秋無大吾郎の息子である。

 彼自身もまた、京一帯に知れ渡る顔役であり……

 

 つまるところ、実家が太い

 なので普通にモテる……近藤や土方と違い、打算アリではあるのだが。

 残念なほど致命的なところで変に勘が悪く、自分に無頓智であるが故に。

 何よりそれらが近寄らないよう鬼気迫る威を放つ者がいた事を、秋無出雲はまだ知らない。

 

 

 

 ……しかしまぁ……俺から言わせて貰うならやっぱアレよ。

 

「人外だけは止めとけなマスターちゃん」

「そこはブレないんだね……」

「うむ」

 

 少なくともマスターちゃんの幸せはそこにはないと思うぜ……

 エゴの押し付けをしてるだけだからな奴ら。

 

「俺の知る限り人外とヨロシクやって楽しそうな奴ァどいつもこいつもネジ外れてるキチガイばっかりだぞ」

「ちょっと待った! その話、当方も入らせて貰うぞ!!!」

「うわネジの外れたキチガイだ」

 

 うわネジの外れたキチガイだ。

 横開きの扉を勢い良く開き、ズカズカと入り込んでくる北欧の竜狩り。

 

「……定刻通り、八時二十七分四十一秒。討論が開始され、参加する」

「おわーっ!? 普通に入ってこいボケッ!!!」

 

 更にその後ろ、人馬の姿を取る中華の覇王。

 いとも容易く邪魔な壁をぶち抜き突入してくる。

 確かにお前にゃその扉は狭いかもしんないけどさァ!!!

 

「くそう、こういう時に限って過激派ばっかりきやがる。俺の味方はいっつも居ないのに!」

「商人よ、汝も妻を愛しておらぬというではなかろうに。なにゆえそのように思う?」

「まずお前らと違って俺ァ籍入れたりしてねぇ、ってのはどうでも良いとして……」

 

 それはそれ! これはこれ!

 思う事はあるんだよそりゃ、その上でマスターちゃんには無理だと理性的に判断してんの!

 クソ、不公平だ。誰でも良いから人外の嫁に不満がありそうな奴ァ居ねえのか!?

 

「居るぜ! ここに一人な!」

「! あの珍妙なSilhouetteは……!?」

「とぉーう……!」

「……商人よ、水を汲んでおく事を推奨する」

「ん、そりゃどういう……」

 

 改築に次ぐ改築で部屋のど真ん中に置かれた囲炉裏。

 その真上に設置された風情もへったくれも無い換気ダクト……から影が降り立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 焼け付く炭火の真上へ。

 

 

 

「ぎゃああああああああああああああ!?!?!?」

「うわーッ何やってんだこの馬鹿!?」

「消してェー! 消してくれぇぇぇ!!!」

 

 文字通りシリに火が付いたオリオンを追い掛け……追い……追う……

 クソ、無駄にすばしっこい野郎だなボケが!

 湯呑みの茶をぶっ掛けた時には見事に尻尾は焼け落ち、ぷすぷすと煙の残滓を残しながら倒れるオリオン。

 ……何やってんだかホント。

 

「あのさー、こんな危なっかしいモン置いとくべきじゃないと思うワケ」

「お前が十悪いよ……あと基本的にガキ共はこっちまで入ってこねえし」 

「昔古民家見学に行った時ビビったのを思い出すなぁ」

 

 安全装置もクソもないのは確かによく考えたらヤバいけどね。

 乳幼児が突っ込んだり……千円札の顔になったりすっから。

 

「という事で話は聞いたぜ、同志秋無!」

「おお!」

「おおじゃないと思うけど?」

「いや実際これはおおだろ」

 

 がしりと……焦げ臭いふにふにの拳を付き合わせる。

 間違いなく人外嫁に苦労している側の男である、これでイーブンか?

 

「しかしオメェ、アルテミス様はどうしたんだ」

「ああ……人間の方の俺が上手いこと止めてくれてっからさ……」

「なるほど……安らかな眠りを祈るとするか」

 

 RIP……レストインピースだっけ? なんまんだぶなんまんだぶ。

 

「テメェが二人居るってのはどういう気分なんだ? 俺らは霊基は一つなモンで」

「結構潰しが効くから便利……たまに自分に嫉妬して嫌になるが」

「多分向こうもそうなんだろな……俺は……俺が三人も居たら仕事楽なんだがなぁ……っつー事でマスターちゃん頼むわ、何とかして商人(キャスター)の俺か新撰組(バーサーカー)の俺を呼んでくれ」

「んな無茶な……霊基がめちゃめちゃだから今はルーラーの秋無さんしか呼べないんでしょ?」

「アヴェンジャーになったアイツのカウンターとしての召喚だからなぁ」

 

 多分だが、アイツが本来の霊基で……

 それこそ狂戦士とかな、で呼ばれない限りはないだろう。

 商人としての仕事、新撰組……カルデアのサーヴァントとしての仕事、琴のお世話。

 日替わりでシフト制にしたいぞ、一日が二十四時間しかないのは怠慢では?

 

「まぁ……そうだな、話戻そう。こんな言い方もアレだが普通にマシュ嬢が良いんじゃないのか?」

「そりゃ鉄板だわな、王道過ぎて言うことねえし」

「……正直そればかりは当方らにも否定しかねるのだが」

「肯定、間違いなく善き未来が訪れるだろうと推察する」

 

 シグルドが渋い顔をする。

 __初手で王手を出す奴が居るか! という表情だなこれは。

 

 いやねぇ、だってもう最強じゃん?

 出会いから色々聞いたけど無敵のボーイミーツガールよ?

 どう考えても運命(Fate)でしょ、タイトル回収だよこんなん。

 

「マシュか……うーん……」

「あらやだマスターちゃん、まさかマシュちゃんでも満足しない感じ?」

「いや、そういうワケじゃないよ!? そういうんじゃないけど……」

「ん?」

「なんか、その……外をあんまり知らない子を乗せてるだけ、みたいなっていうか……」

「「あぁ…………」」

 

 理解把握納得。

 オリオンと俺は深ァく唸る。

 

 それは確かに……その気持ちは分からんでもない。

 首を傾げる覇王と竜狩りの二人と違って俺らはその、結構経験ある人だから……

 

「しかし、今更外を見知った所で盾の英霊が気移りする可能性は皆無であろう」

「個人的な事言うなら正直マスターちゃんは責任取るべきだと思うけどね……」

「そうかな……別に俺、そんな大したアレじゃ……」

 

 世界救っといてそりゃないと思うぜマスター。

 過度な謙遜は傲慢に勝るモンよ。

 マスターちゃんは確かにすげぇ事をやったんだからそりゃ誇らないと……

 そいつが()()()()()()()()()への責任だと、オジちゃん思うわけ。

 

「ま、自認はともかく責任云々ってのは同意するけどなぁ俺」

「おお、無責任の極みみたいなギリシア一のプレイボーイのお墨付きだぞ」

「ブン殴って良いか?」

「今のお前に脅されても大した脅威に感じねぇがなぁ!!!」

 

 狩人オリオンの方ならともかくぬいぐるみならね。

 

 気まぐれに開かれたカルデアの大相撲大会。

 何を思ったか晴れある日本鯖の皆さんの代表はこの俺……

 せっかく英霊呼べんだから雷電爲右エ門とか野見宿禰とか呼ぼうよ、居ないから仕方ない?

 運営(ラセング〇)がひよったのが良くない、〇末のワルキューレとか刃〇と被るのがそんなに怖いか?

 〇ィライト〇ークスなら絶対実装してたぞ、天井無しのガチャで。

 

 オリオンには流石にガタイで負けてっからしんどかった……

 琴以外に技に追い込まれるとは正直想定外だったし。

 まぁその次で普通に負けたんだけどね、ヘラの威光(大英雄)は無理だろ。

 

「土方歳三症候群のケがあるからマジで目ェ離すなよマスターちゃん……」

「何度聞いても酷い呼称だ」

「そのうち聖杯を悪用なんかして特異点作ったりしかねんぞ、セキリュティ大丈夫そ?」

「そこまで警戒する程なのか……? その……まるで外敵のように……」

 

 どっちかっつーと内敵って感じかな、俺何度も見てきたけど。

 所長やダ・ヴィンチ女史がマシュちゃんのセキリュティクリアランスを厳しくしたのを俺は知っている。

 聖杯とかマスターがバレンタインで貰った呪物とかね、大事なモノをしまってるところには入れないようになって

るっぽいんだよね……残念でもないし当然。

 一番悪いのはぐだぐだ粒子を食らった状態だから気にしすぎかもだが……

 

「まぁ大丈夫大丈夫、良い女なんてちょっと欠点あるくらいのが可愛いくらいだから……なぁ項羽殿?」

「……? 何故私に振るのだ」

「な? 本気で惚れてっと何も見えなくなる……男ってのは馬鹿な生き物だよなぁ」

 

 尚、この場にいる四人全員に当て嵌る事である。

 どいつもこいつもネジが二、三本……二、三十本くらい外れてやがるからな。

 盲目である、惚れた弱みである。

 そのくらいの馬鹿じゃないと英霊になるようなイカレ女の相手は無理って事よ。

 聞こえてるか金時……

 

「まぁ、それ踏まえた上で……仮にマスターちゃんが普通の子……男でも女でも外で捕まえたとしたら」

「世界が滅ぶだろ」「ああ」「然り」

「残念ながら詰みセーブだなマスター」

「ひどい」

 

 オートセーブに頼りきった現代っ子はこういう所が良くない。

 ふっかつのじゅもんは三つくらいメモっとくべきよ。

 俺もやり直してえなぁ……とりあえず死にかけの沖田んとこ行った辺りで良いから。

 カンだけど分岐あった気がする、俺が主人公なら選択肢見えてたろ。

 

「まぁ……相談くらいならいつでも乗るぜ? 人外はやめとけ、あと英霊の男もな」

「そんな目の敵にする程駄目かな……」

「だって野郎どもって大体悲劇的な末路だぞ、惚れた女とか置き去りにして死ぬぞ」

 

 ソースは俺ら……言うまでも無えけど!

 残念ながらこの場にいる全員が全く同じような末路を辿っちまってるワケで……

 何なら俺、オリオン、シグルドはその惚れた女に殺されてっからな、笑えるだろ。

 

 正直んとこ、俺が人外の娘っ子を勧めらんないのはこの辺もなのよね。

 マスターちゃんは今を生きる人間であって……人間と人外の末路ってのは大抵悲劇で終わる。

 もう十分頑張ったマスターは穏やかな暮らしに帰ってしかるべき……そう思うのは俺のエゴか?

 

 なんせ俺らにゃ出来なかった事だからさ、是非とも頑張って欲しいんだよね。

 

 

 




単純な筋力だと組長<オリオン。
相撲って文化への深度の差でギリギリ勝った模様、尚その後。
技量もパワーもカンストした大英雄には勝てなかったよ……

新撰組の筋力で言うと

藤堂<沖田≒齋藤≒山南≦原田≒近藤<永倉≒土方<<<組長<<<<<<<琴ちゃん

伊東さんは沖田らと同ライン、鴨さんは組長と土方の間くらいのイメージ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら(作者:名無しのマネモブ)(原作:Fate/)

ただし強いだけのバカである。▼2026/06/28 本編完結しました。


総合評価:4885/評価:8.68/完結:54話/更新日時:2026年07月11日(土) 16:30 小説情報

Metalnova(作者:アグナ)(原作:Fate/Zero)

もう何番煎じか分からないFate/Zeroのハッピーエンドを目指すオリ主の話。なお何を以てハッピーエンドとするかは人による模様。


総合評価:3500/評価:8.5/連載:24話/更新日時:2026年07月04日(土) 16:47 小説情報

ネロ帝が女のわけないだろ!いい加減にしてくださいお願いしますから!!(作者:オールドファッション)(原作:Fate/)

これは明らかに転生する時代を間違えた男が風呂を作る物語である。▼主人公には型月知識はない(死刑宣告)▼pixivにて同時掲載開始。▼


総合評価:28992/評価:8.27/連載:36話/更新日時:2026年04月14日(火) 12:52 小説情報

アーサー王(史実)がしたこと(作者:妄想壁の崩壊)(原作:Fate/)

▼アイデアが浮かんだので供給します。▼型月アーサー王伝説とブリタニア列王史、史実歴史なんかを足して割ったような世界線です。プーサーではありません。▼さて質問。我々の生きる世界に神秘は全く存在しない。それはなぜか?▼※本編は完結しました。▼


総合評価:13738/評価:8.85/連載:79話/更新日時:2026年07月14日(火) 22:22 小説情報

越後の軍神、その兄でございます。(作者:元ジャミトフの狗)(原作:Fate/)

現代日本人が戦国時代の越後長尾家嫡男に転生して、化け物みたいな妹と一緒に切り盛りする話。


総合評価:7124/評価:8.85/連載:9話/更新日時:2026年07月17日(金) 18:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>