その日、彼は思い出す…。
・2015年 1月17日
変化がない、まるで時間が止まったような日々に誰もがうんざりしているのではないだろうか?
私もその一人だ、いやその一人だったというのが正解なのだろう…。
しかし私は(ソレ)に会って、(能力)をもらった。
人が思う超能力とかいうモノではないと私は思っているが、普通ではないのは確かである。
誰も持ち得ないその(能力)で私は幾度となく人生の困難という困難を払い除けてきた。
だけどその代償はあまりにも大きかった、いつしか私の周りには誰もいなくなっていた。
私を愛してくれる人、私を必要としてくれる人、私と一緒に笑ってくれる人、もう誰もいない。
(能力)があるのだから周りの人なんていらないと思えるほど、私は強くない。
昔は友達も先輩も恋人だって居た、しかしもう消えてしまった。
「消えてしまった?フフッ、違うよ。」
私は自分に語りかけるように呟いた、(能力)の代わりに私が失った大きなモノを…。
「私は目の前にあった愛を消してしまったんだ…、だから何もない…。」
失ってから気が付くことって本当にあるんだ…。
「私は優しさという壊してはいけない壁を壊して、その一線を越えた…。」
消えない罪を語る、聞いてくれる人なんていないのに…。
「フフッ…。」
失ってまず気が付いたこと、それは完璧とは存在しないということ…。
・2018年8月12日 朝
ひどく暑い日が続く、街の温度は37度を軽く超えているとかいないとか。
去年よりひどいじゃないかと心の中で言いながら僕、「蒼坂優人」は出勤する。
僕は大手リサイクルメーカーに勤務している、まだ半年しか経っていないけど。
3年もアルバイトをして、去年の12月に店長に声をかけてもらい社員になった。
周りから見れば僕は遅いスタートを切ったと見えるだろうけど、僕はよかったと思う。
「おはようございます!」
店に着いて、ますやることは店長への挨拶だ。当然店長も元気よく挨拶してくれる。
次に着替えて朝の掃除を行い、朝10時にはお店を開店させる。
時間が過ぎて、お昼休みになってから携帯に不在着信が入っていることに気付く。
高校の時の友人の「真壁隼人」君からだ、とりあえず掛け直したが出ない。
彼の場合、一回出ないと当分出ないからメールを送っておいた。
すると意外なことにすぐ電話が掛かってきた、珍しい。
「もしもし?ごめん仕事中で出られなかった。」
「あ、ホント?特に言う必要もないと思ったんだけどさ。」
おっと、同窓会かなんかのお誘いかな?そんな感じがする。
「都築が先週から連絡が取れないんだよ。」
「え?そうなの?」
都築とは「都築綾子」という僕らが通ってた高校の同級生だった人だ。
ここだけの話だけど、僕は彼女に告白してフラれている。
「最近、都築がちょっと変だったんだけど他の友達に聞いたらやっぱり連絡がつかないし関わりたくないってヤツまでいるから何かあったんじゃないかなって思って。」
隼人君は僕と都築さんの両方と交友があった、僕から彼女への告白も知っている。
「そう。」
僕は冷たくそう言ってしまった、特に何も思わなかったからだ。
「ただそれだけなんだけど、金原と別れてから疲れてヤケになってなければいいんだが。」
「ただ忙しいとかじゃないの?もうみんな働いているんだから連絡が取れなくてもおかしくないでしょ。」
なんという適当な考察かと自分でも思ったがどうでもいい。
「何か分かったら連絡するよ、それじゃあ。」
これ以上この話を聞きたくないと思い、電話を切った。
「もう、関係ないよ…。」
そう自分に言い聞かせて、僕は携帯を閉じた。
To be continued