【完結】夢見る癒して   作:万歳!

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第26話 自己犠牲

 ビアンカを、必ず救う。

 

 その想いだけが、僕の身体を突き動かしていた。胸の奥で何かが軋むように痛む。息をするたび、肺が焼けるように苦しい。それでも足は止められなかった。立ち止まれば、ビアンカが、あの人が、どこか遠くへ連れ去られてしまう気がして。

 

 そのときだった。

 

 瓦礫の向こうから、小さな影が二つ、こちらへ駆けてくる。

 

「……スラリン? ドラきち?」

 

 次の瞬間、二人の姿をはっきり認識して、僕は思わず声を上げていた。

 

「スラリン! ドラきち! 無事だったのか!! 良かった……本当に、良かった……!」

 

 喉が詰まり、言葉が震える。失った仲間が多すぎて、もう戻ってくる存在なんていないと思っていたからだ。二人がそこに生きているという事実だけで、胸がいっぱいになった。

 

 だが、スラリンの表情は、どこか曇っていた。

 

「リュカ……ごめん。僕たち、赤ちゃんの振りをして誘拐されて……敵を撤退させたんだ。でも……」

 

 スラリンは俯き、言葉を続ける。

 

「ビアンカまで、ついてきちゃった……本当に、ごめん!!」

 

 一瞬、頭が真っ白になった。

 

 だが、すぐに首を横に振る。

 

「違う。そんなことはない」

 

 拳を強く握りしめる。

 

「あのままだったら、僕たち全員が殺されてた。君たちは正しいことをした。……行き先は分かるか?」

 

 ドラきちが、力強く頷いた。

 

「だいたいなら、分かるにゃっ!」

 

「なら、今すぐ向かおう」

 

 即座に言い切った。迷っている時間はない。

 

「お待ちください」

 

 低く、落ち着いた声が割って入る。ピエールだった。鎧に付いた血を拭いながら、静かにこちらを見据えている。

 

「この場の最高戦力、ホイミンをどうするのですか? 確実を期すなら、ホイミンを連れていくべきです」

 

 その言葉で、胸の奥に重たい現実が落ちてくる。

 

「……ホイミンは」

 

 喉がひりつく。

 

「今、敵の主力……十万以上のモンスターを、一人で相手にしてる」

 

 ピエールの目が大きく見開かれた。

 

「……なんと」

 

 一瞬の沈黙。

 

「では……我々だけで、ビアンカ様を救いに行くのですね?」

 

「ああ」

 

 強く、頷く。

 

「ロッキーとジュエルは、父さんと一緒に子どもたちを守ってくれている。僕たちは……ビアンカを救う。それだけを考えるんだ!」

 

 ピエールは剣を握り直し、深く頭を下げた。

 

「承知しました。では、急ぎましょう」

 

 こうして僕たちは、裏門から出陣した。

 

 門をくぐる直前、正門の方角から、凄まじい爆音が轟いた。地面が震え、夜空が赤く染まる。

 

(ホイミン……)

 

 胸が締め付けられる。

 

(今も、一人で……)

 

 思わず歯を食いしばる。

 

(何を考えてるんだ、僕は……!)

 

 頭を振る。

 

 泣き言を言う資格なんて、今の僕にはない。

 

 ――僕は、父親なんだ。

 

 生まれたばかりの命を守れなかったとしても、今、妻を守るために戦わなければならない。

 

「行くぞ……!」

 

 川を渡り、冷たい水が膝を打つ。塔が、闇の中に不気味な影を落としていた。

 

「スラリン、ドラきち……この塔で間違いないか?」

 

「間違いないにゃっ!」

 

「よし……急いで、上るぞ!」

 

「待ってください」

 

 ピエールが制止する。

 

「罠があるかもしれません。慎重に進みましょう」

 

 その言葉に、僕は大きく息を吸い込んだ。

 

(焦るな……)

 

「……分かった。慎重に行こう」

 

 ドラきちを見る。

 

「先頭はドラきち、頼む。罠があれば、すぐ知らせてくれ」

 

「任せるにゃっ!」

 

 階段を上るごとに、空気が重くなる。人間の泥棒の姿も見えたが、構っている暇はなかった。敵を斬り捨て、押しのけ、ただ上を目指す。

 

 やがて、最上階。

 

 そこにいたのは、異様な気配を纏ったオークだった。

 

(……違う)

 

 一目で分かる。普通の魔物じゃない。

 

「皆……行くぞ!!」

 

 剣を交えた瞬間、衝撃が腕を走る。

 

(強い……!)

 

 だが、絶望するほどじゃない。

 

 槍で体勢を崩され、視界が歪む。次の瞬間――。

 

「ラナルータ!!」

 

 闇が落ちた。

 

「な、何も見えん!」

 

 混乱の声。

 

 その中で、ドラきちの声が響いた。

 

「リュカ! おいらの咆哮に合わせて剣を振るにゃ!! 必ず、よけるにゃ!!」

 

 信じるしかなかった。

 

 僕は、声のする方向へ、全力で剣を振り下ろした。

 

 ――手応え。

 

 そして、静寂。

 

「……ドラきち?」

 

 闇が晴れ、視界が戻る。

 

 そこにあったのは、倒れたオークと……血に染まったドラきちの姿だった。

 

「……何で……」

 

 膝から崩れ落ちる。

 

「何で……よけなかったんだ……!!」

 

 ドラきちは、かすかに笑った。

 

「リュカ……必ず、ビアンカを……取り戻すにゃ……」

 

 震える声で、続ける。

 

「あと……ホイミンに……宿題の答えが……分かったって……伝えて……」

 

 その言葉を最後に、ドラきちの体から力が抜けた。

 

「……ドラきち……?」

 

 抱きしめても、もう動かない。

 

「ドラきち……ドラきち――!!」

 

 叫びは、塔の中に虚しく響くだけだった。涙が絶えず絶えず流れて来た。もう一人の幼少期、ボクが自分から最初に仲間にしたスラリンが何かを言い出した。

 

「リュカ。ドラきちが死んだのも……今なら分かる。ホイミンが言っていた。永遠じゃないからこそ素晴らしいこともあるという言葉が……一回きりの命だからこそなんだ。ボクはその命を最初の友達リュカとその最愛の人である、ビアンカのために使いたい……一度きりの人生だから」

 

「……何を言ってるんだ、スラリン」

 

「リュカ……僕を友達にしてくれてありがとう。楽しかった。もしもう一度人生が得られるとしたら、その時もリュカの友達に必ずなるよ」

 

「止めろ、止めろ! スラリン何をするつもりだ!!」

 

「プックル!! 後は任せるぞ!! 皆落とされないように姿勢を低くしてて!」

 

 そしてスラリンは門の先にいるモンスターに一人で挑んだ。灼熱の炎が爆風が飛んでくる。スラリンが事前に言ってくれていたから僕は無事だ。スミスも無事だ。プックルとピエールは下の階層に飛ばされたが、直に追いついてきてくれるはずだ。

 

「スラリン! スラリン!! ああ!!」

 

 泣き崩れたかった。だがそれはできない。なんとしてもビアンカを救い出さなければ……犠牲に見合うために。

 

「スミス! 進むぞ!!」

 

「わ、分かったリュカ! ビ、ビアンカを救い出そう」

 

☆ ☆ ☆

「しんくうは!!」

 

 空気が裂ける音とともに、ボクの前方に真空の刃が走った。巻き込まれた魔界の兵たちが悲鳴を上げる暇もなく吹き飛び、血と黒煙が戦場に散る。

 

 ――はぁ、はぁ……。

 

 さすがにきつい。

 

 十万を超えるモンスターの大群を相手にしながら、その中でも選りすぐりの精鋭部隊と正面から戦い続けるなんて、想定以上に骨が折れる。身体の芯がじんわりと熱を帯び、粘つく汗がボクの体表を覆っていた。

 

 それでも――。

 

(まだ、やれる)

 

 視界の端で次々と倒れていく魔界兵の数を、頭のどこかで冷静に数えている自分がいる。

 

 敵の精鋭は、もう三十にも満たない。雑兵モンスターも五万を切った。空を覆っていた黒い影は薄れ、地平線の向こうにようやく空の色が見え始めている。

 

 MPも、まだ半分以上残っている。限界は近いが、越えてはいない。

 

 戦場の中央、無傷のまま佇む一人のゲマが、鎌を鳴らしてゆっくりと拍手をした。

 

「まさか、これほどとは……」

 

 ゲマの声音には、隠しきれない困惑が滲んでいた。

 

「これほど準備してきたのに、まだ足りないとは……。驚きましたよ。なるほど、確かに――」

 

 彼は戦場を一望し、倒れ伏す魔物たちを一瞥する。

 

「勇者が、これ以上の力を持つのなら。大魔王と呼ばれた存在が倒されるのも、無理はありませんね」

 

 ボクは剣を構えたまま、ゲマを睨み返す。息は荒いが、視線だけは逸らさない。

 

「……勇者の仲間を、なめるな」

 

 その言葉に、ゲマは小さく笑った。

 

「ええ。理解しました。ですから――」

 

 彼は鎌を掲げ、淡々と告げる。

 

「私は、これで帰らせていただくとしましょう。あなたとは、真正面からぶつかり合うには時期が悪い。魔界で、こちらの最大戦力をすべて投入できる時でなければ……倒しきれませんから」

 

 次の瞬間、光が弾けた。ルーラの呪文だ。

 

「逃がすか!」

 

 一歩踏み出そうとしたが、すでに遅かった。光は収束し、そこにいたはずのゲマの姿は、完全に消え失せていた。

 

 ……逃げた、か。

 

 悔しさはある。だが、それ以上に――。

 

(時間を稼がれた。リュカたちは無事か?)

 

 残されたのは、魔界から来た兵と、統制を失った雑兵モンスターたちだけだ。ボクは胸いっぱいに空気を吸い込み、全身の魔力を解き放つ。

 

「――聞け!!」

 

 声を張り上げると、戦場が一瞬、静まり返った。

 

「勝敗は、ついた!! 今すぐこの場を去るなら追わない!! それとも――」

 

 剣を地面に突き立て、睨みつける。

 

「全滅するまで、戦いを続けるか!!」

 

 沈黙。そして、恐怖。

 

 最初に逃げ出したのは、最前列のモンスターだった。それを合図に、雪崩のように敵が背を向ける。羽音、足音、悲鳴。戦場は一転して混乱の逃走劇となった。

 

 ……行った。

 

 ボクは剣を引き抜き、すぐに踵を返す。向かう先は一つ。リュカたちがいるはずの塔だ。

 

 全力で駆ける。疲労が重くのしかかるが、止まるわけにはいかない。塔の麓にたどり着いたとき、見覚えのある大きな背中が目に入った。

 

「パパスさん!!」

 

 叫びながら駆け寄る。

 

「リュカは!? ビアンカは!? 赤ちゃんたちは無事!?」

 

 パパスさんは血に濡れながらも、しっかりと立っていた。

 

「ホイミン! よく来てくれた……まだ、間に合うか!?」

 

 彼は地面に倒れている二人を指差す。

 

「このメッキーとガントフを、蘇生できるか!!」

 

「分かった!」

 

 迷いはない。ボクは即座に呪文を紡ぐ。

 

「ザオリク!!」

 

 白い光が二人を包み……届かなかった。自分が救える時間を超えていたのだ。

 

「……ごめん」

 

 パパスさんが苦しそうに息をつく。

 

「敵の主力は、撃退してくれたのだな?」

 

「うん、何とかね」

 

「なら――」

 

 彼は剣を取り、立ち上がる。

 

「私はリュカたちを追う! 赤ちゃん……テンとソラを、頼めるか!?」

 

 ボクは強く頷いた。

 

「任せて!! 絶対に守るよ!!」

 

 二人はすぐに走り出していった。その背中を見送りながら、胸の奥に小さな棘のような違和感が残る。

 

(……嫌な予感)

 

 いや、気のせいだ。長時間の戦闘で、神経が過敏になっているだけだ。そのとき、息を切らせてサンチョさんが駆けてきた。

 

「ホイミン殿! よくご無事で!」

 

「何とかね……赤ちゃんたちの護衛は、ボクだけ?」

 

「はい。城の中に残ったモンスターを追い払うため、兵士たちは総出で……国王陛下の護衛すら、無い状況です」

 

 ボクは赤ちゃんたちの眠る方を見下ろす。小さな寝息。何も知らず、ただ生きている証。

 

「……リュカたちが、無事だといいけど」

 

 ボクは剣を握り直し、静かに空を仰いだ。戦いは、まだ終わっていない。赤ちゃんたちが急に泣きだした……。サンチョさんがあやすが泣き止まない。

 

 まさか、ね。

 

☆ ☆ ☆

 夜が明けた。

 

 戦場を覆っていた血と焦げの匂いは、朝露に少しだけ薄められていたが、完全には消えていない。城壁の影には折れた武器や黒く焦げた地面が残り、昨夜の激戦が夢ではなかったことを無言で訴えていた。

 

 ボクは城の中庭に立ち、赤ちゃんたち――テンとソラの寝顔を確認していた。二人は小さな胸を規則正しく上下させ、何も知らないまま眠っている。その無垢な寝息を聞くたびに、胸の奥が少しだけ締めつけられる。

 

 そこへ、足音が聞こえた。

 

 ゆっくりと、重い足取りで、パパスさんたちが帰ってきた。

 

 彼らの腕には――石像があった。

 

 朝日に照らされて鈍く光る石の肌。

 それが、リュカとビアンカだと理解するのに、ほんの一瞬の時間が必要だった。

 

 さらにその後ろ。担架の上に横たえられている三つの影。

 

 スラリンと、ドラきち。それにスミス……。

 

 ボクの喉が、ひくりと鳴った。

 

 パパスさんはボクを見るなり、縋るような目を向けてきた。その瞳には、疲労と絶望と、それでも消えきらない希望が混じっている。

 

「ホイミン……」

 

 声が震えている。

 

「リュカとビアンカは……石化の呪いを、受けてしまったらしい……」

 

 その言葉が空気に落ちる前に、感情を抑えきれなかった二人が前に出た。

 

「なんてことだい!!」

 

 マグダレーナさんが石像に縋りつく。

 

「ビアンカ! ビアンカ!! お願いだよ……目覚めておくれ!!」

 

 石の頬に涙が落ちても、ビアンカは瞬き一つしない。

 

「……こんなことが……」

 

 ダンカンさんは拳を握りしめ、唇を噛んだ。

 

 その場に重苦しい沈黙が広がる。

 

 だが、それを破ったのは、パパスさんだった。

 

「二人とも、あきらめるな!!」

 

 力強く言い切る。

 

「ホイミンは……きっと、治療できる!!」

 

 その瞬間、この場にいる全員の視線が、一斉にボクへと向けられた。期待、祈り、縋るような想い。

 

 胸の奥が、ずしりと重くなる。

 

「……まずは見せて……いやその前に、ベホマズン!!」

 

 ボクは一歩前に出た。そしてパパスさんプックル、ピエールを回復する。それにより傷ついていた三人が全快する。

 

 そうしてから二人の状態を確認する。

 

「パパスさん。二人の状態を、確認したい」

 

「そ、そうだな……頼む」

 

 パパスさんたちは、まるで壊れ物を扱うように、慎重に石像を地面へ下ろした。ボクはその前にしゃがみ込み、静かに魔力を巡らせる。

 

 石化は深い。

 

 だが――完全ではない。

 

(……いける)

 

 胸の中で、確かな手応えがあった。

 

「パパスさん」

 

 顔を上げて告げる。

 

「スラリンとドラきち、スミスの遺体も、横に置いて。上手くいけば……三人も、蘇生できる」

 

「本当か!?」

 

「よかった……!」

 

 涙を滲ませながら、ピエールが叫んだ。

 

「私とプックルが稼いだ時間は……無駄ではなかった!!」

 

 きっと、どこかで離れ離れになりながらも、必死で彼らを見つけ出し、三人で担いで帰ってきたのだろう。その姿を思い浮かべ、胸が熱くなる。

 

「……よく、守ってくれたね。ありがとう」

 

 ボクは小さく呟いた。

 

「じゃあ……呪文を、唱えるね」

 

 その瞬間、覚悟を決めた。

 

 ボクは自分の内側に眠るすべての魔力を、そして――命そのものを、解き放つ。

 

 空気が、震えた。風が渦を巻き、中庭の砂埃が舞い上がる。

 

「メ――」

 

「メっ、メっ! メガザルダメ!!」

 

 鋭い声が、ボクを止めた。

 

 爆弾岩のロッキーだった。リュカが友達にした、あのロッキー。

 

 メガンテの使い手だからこそ、メガザルの意味を理解したのだろう。

 

 周囲がどよめく。パパスさんたちの顔には困惑が浮かんでいた。

 

 そのとき、低く、重みのある声が響いた。

 

「メガザル……自身の命を捨て、亡くなった者を蘇生させ、状態異常をすべて回復する……最大の回復呪文ですね」

 

 マスタードラゴンだった。

 

「なっ……」

 

「パパスさん、止めないで!!」

 

 ボクは叫んだ。

 

「これならスラリンたちも蘇生できるはずだ! リュカの幸せのためには必要だ!!」

 

 パパスさんは、しばらく黙ってボクを見つめていた。そして、静かに口を開く。

 

「……ホイミン」

 

 その声は、驚くほど穏やかだった。

 

「息子たちのために命を懸けてくれることには、感謝する。だが……」

 

 真っ直ぐ、目を見て言う。

 

「ホイミンが死んだら、リュカたちが喜ぶと思うか?」

 

「年齢順だよ」

 

 ボクは震える声で答えた。

 

「ボクが一番年寄りなんだ。彼らの代わりに、ボクが死ぬ」

 

「ホイミン」

 

 パパスさんは首を振る。分かってる。

 

「それは……逃げではないのか? 私たちは、テンとソラを託された。二人を守らなくていいのか?」

 

 分かってる。そんなこと、分かってる。いつかの約束。リュカの子どもを守ると約束した。

 

「でも……!」

 

 感情が溢れた。

 

「テンやソラだって……両親と一緒に、暮らしたいはずだ!!」

 

「ホイミン」

 

 今度はピエールが、静かに言った。

 

「あなたは偉大です。ですが……今のあなたは、冷静に見えない」

 

「ピエール!!」

 

 思わず叫んでいた。

 

「冷静だって!? 友達が死んで、石にされて……冷静でいられるわけないじゃないか!!」

 

 胸が痛い。

 

 息が、苦しい。

 

「そして……ボクには、救う手段がある! 止めないでくれ!!」

 

 ボクは一度、目を閉じた。そして、再び呪文を紡ごうとする。そのとき――。

 

「ホイミン」

 

 パパスさんのの声が、深く響いた。

 

「お前は、きっと今の姿を……レック様や、ソロ様に誇れるだろう十万のモンスターを撃退して見せたのだから」

 

 何が、言いたいのだろう。

 

「私は息子が可愛い。助かるなら、使ってほしい。だが……それを、リュカは絶対に望まない。それに、お前は使った後のことを考えているか?」

 

「……何のこと?」

 

 パパスさんの手のひらから血が流れているのが見えた。怒りがある。自分に対しての怒りが。

 

「もしもう一度、十万のモンスターに襲撃されたとき、お前がいなくて、リュカやビアンカ、テンとソラは生き延びれると思うか?」

 

「……ッ」

 

「私は今最低なことを言っている。自分勝手にお前なら治療できると身勝手に信じて、それを実行しようとしてくれた恩人を最低な言葉で止めている」

 

 血がさらに流れ出していた。

 

「私一人なら、生き延びれるだろう。だが、リュカとビアンカたちは恐らく死ぬ。私は!! その最低な未来を避けるためなら!! 今の絶望を選択する!!」

 

 それは父親として最低な言葉であり、父親として最も子どもの命を大切にしている言葉だった。

 

「だからホイミン。メガザルは使わないでくれ」

 

 そして横からマグダレーナさんが言った。

 

「私も、ビアンカに今を生きて欲しい。でもそれ以上にビアンカが死ぬのは絶えられない!」

 

 静かな追撃。

 

「スラリンとドラきちたちには……悪いが」

 

 パパスさんが、目を伏せる。自分が最低なことを言ってると持っているのだろう。

 

「石化を解く方法を……別に、探そう」

 

「っ……」

 

 それでも。

 

 それでも、ボクは――。

 

(リュカを……助けてあげたいんだ……)

 

 触手を握りしめ、ボクはただ立ち尽くしていた。




今回と前回は小説版ドラゴンクエスト5のオマージュが多かった回です。ドラきちとかガントフとかスラリンとか……小説版を買うのだポッター!!

1月29日ちょこっと修正 良くなっていると信じて!

ルドマンさんはトルネコの

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