探偵の俺に、異世界の依頼は重すぎる   作:リポストマン

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 歯切れが悪いので追加


四話 依頼受諾

 

 

 事務所に帰り、二人分のコーヒーを淹れる。

 

 エンリ自身にコーヒー自体に拘りは無いが、永利から貰ったお気に入りの豆だけはあった。

 

 浅煎りの甘めなもの。これだけを常に淹れていた。

 

 ソファーでコンビニのサンドイッチをハムスターの如く咀嚼する千景。コーヒーを出したエンリは依頼内容を確認し始めた。

 

 ソファーに腰掛け、メモ帳を取り出した。

 

「それで、依頼内容は物探しだったね」

 

「ほぅよ。ふぉのふぉふぉのふぉ。ふぉふぉうふんのふぉふぉふぉ」

 

「……せめて、飲み込んでからにしなさい」

 

 余程お腹が空いていたのか、ハムスター顔のままエンリに話しかけていた。

 

 手元にあるコーヒーでサンドイッチを流し込むと、ふぅと可愛らしい吐息。

 

「どう、依頼を受けてくれるかしら」

 

「いや、全くもって分からなかった」

 

「貴方……本当に探偵?」

 

「探偵が読唇術できる前提で話さないでくれ」

 

 彼女の偏った知識に頭を抱えながら、もう一度依頼内容について教えてくれとエンリは質問する。

 

「物探し。もし受けてくれるなら話すけれど、貴方の知らない二年間に関する四つの代物よ」

 

「四つ……カタチはどういったものだ?」

 

「短剣、古い拳銃、義眼、腕輪よ」

 

「中々個性的だな」

 

「ええ、カタチもそうだけれど、その全てにある紋章が描かれているの」

 

 エンリがペンと紙を渡すと、千景は描き始める。円の中、四方を指す文字と王冠を被った蛙。

 

 権威を示す上でまず描かれないであろう動物と、その頭部に王冠を乗せる異質な紋章は不気味さを醸し出していた。

 

「王冠と蛙……」

 

「四つの代物の持ち主の家紋。どれも銀飾に、この紋章が彫られているから、探し易くなると思うけれど」

 

「物の概要は分かった。けど、この依頼が命に関わるって話。そこも詳しく聞きたい」

 

「そうね。端的に、貴方に分かりやすく説明するなら、その物自体に“ 呪い ”があって、追いかけると他の人々と戦わなきゃいけない呪いにかかってしまうから、かしら」

 

「呪術を廻る戦い的な?」

 

「……どういうこと?」

 

 どこか有名な連載誌のことが頭に過ぎるエンリ。

 

 流石に十六年間も失踪していたのだからこの冗談も通じなかったことに、彼は目を逸らした。

 

 忘れてくれとコーヒーを啜り、命の危機という言葉に対し、要約をし始める。

 

「呪いというのは置いといて、つまりはその四つの代物を探してるのはアンタだけじゃないってことか。それこそ────ヤクザとか……マフィアとかの武力を持った連中に」

 

「その認識で間違いないわ」

 

「探偵やってて、インディー・ジョーンズみたいな依頼が飛んでくるなんて思わなんだ」

 

「遺跡の中に入ることはないから安心するといいわ」

 

 銃撃戦になることは間違いないと言わんばかりの返事に、果たして探偵が受ける案件であるのかとエンリは、おでこを押さえた。

 

「それで期限はどのくらいかな」

 

「無期限。探すのに絶対に1ヶ月じゃ足りないもの」

 

 彼は自身の手帳に調査内容をまとめた。

 

 条件から見れば、必ずリスクを取らなければならない。だが、リスクを賭けてまで彼は彼女の持っている失踪事件の真実を知りたいという欲があった。

 

 忘れようとしていた頃に来た証拠が目の前にあるのだ。それに比べたら、提示されたリスクは安いものだろう。

 

「……分かった。そっちが俺の条件を受けるなら、この依頼を引き受ける」

 

「その返事を待っていたわ。それで条件は?」

 

「条件は四つ。一つ目はこれが正式な依頼じゃないこと。二つ目は調査は明日から始める。三つ目は別の依頼が入ってきたらその依頼を優先。四つ目は調査情報は渡すが、見つけて確保するのはアンタ次第だ」

 

「ええ。それで構わないわ」

 

 エンリは手帳を閉じ、コーヒーを飲み干す。

 

「報酬金の額はそちらの提示で構わない。俺は二年間の空白について聞ければいいよ」

 

「なら、さっき提示した報酬にするわね」

 

「アンタがいいならそれで構わない。じゃあ、明日から調査するから今日は帰って────」

 

「え、帰らないけど」

 

「は?」

 

 さも当たり前のような顔でエンリを見る千景。ポケットから金貨を取り出し、彼の方へ弾き飛ばした。

 

 彼がそれをキャッチすると、千景はサムズアップする。

 

「前金と美少女探偵助手のセット」

 

「いや、待て。仕事は受けるけど助手になれとは」

 

「報酬金────私の采配で良いって聞いたけど」

 

「ちょ、待てよ……⁉︎」

 

「じゃあ、シャワー借りるから上着、よろしくー」

 

 勝手に部屋中を歩き始め、ささっとシャワー室の方へ歩いて行ってしまった。

 

 自分のプライベート空間に、訳のわからない女が住み着いた。

 しかも、自分を報酬だとニヤけ面で。

 

 自宅兼用であったことが仇となったと彼は激しく後悔した。

 

 それ以上に、貰ってしまったこの金貨をどこで換金すべきかどうか。

 ジュエリーという存在から程遠い自分の容量の悪さに、頭を抱えるしかなかった。

 

 

 

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