「――――
「アイツあれから学校も休んでんだけど、仁羽クンなんか知らねーの?」
「……すみません、ボクはなにも ――――じゃ、ちょっと急ぐんで」
「オイオイ待てって いいじゃんよー少しくらい」
――――前後をふさがれている。
ちょっとした
「え? もしかしてビビってる? 先パイ悲しいな~」
「やましいのはむしろそっちじゃなんじゃねーの?」
「これ単なるウワサなんだけどさぁ
アイツ絶ッ対
知っている。
アンコールの猪之塚先輩がとんでもなく疲弊してたせいで、ネット上のごく限られた一部界隈はその疑惑で持ち切り。
匿名掲示板も巡回済みですとも。
「いやー惨めだろうね~ ぽっと出の後輩にライブ乗っ取られてさぁ
そいつがN.I.Aでも調子こいてて!」
……なんだコイツら、N.I.A要員すら選外ってわけか。
どーりで顔が脳内検索にヒットしないと――――
「キッッショ、何笑ってんだよ」
おっと失敗。
「キミさぁ、猪之塚の気持ちになって考えてみたら?
ちょっと
「そーそー
「
ジワジワと壁際に追い詰められる。
――――それでいい。
非常ベルに当てた左ひじにグッと力を――――
「――――
素っ頓狂な声に一同が振り向くと、いつからいたのか一人の青年がたたずんでいた。
人形めいた美形ばかりの極月ではちょっと見ないタイプの男前だ。
そこまで背は高くないがガッシリと均整のとれた体付き、半袖のシャツごしでもわかる筋肉には見かけ倒しでなさそうな凄みがある。
「――――どしまシタ? 続ケてくだサイ」
赤銅に灼けた肌に真っ白な歯がまぶしい―――― でも今は爽やかな笑顔というよりホオジロザメが牙をむいた風情だ。
「……べ、別にそんなんじゃねーし!」
「ちょっとフザけただけだって! ジョークジョーク! なー仁羽クン?」
三バカのリーダー格らしい一人がわざとらしく肩を組んでくる。
安くさい制汗剤とメンズ香水のカクテルが鼻を撲った。
そして、腕時計の秒針音が聞こえるくらいの沈黙。
「…………そーデスか
「オ、オーウイェース、イッツァパーフェクトコミュニケーション!
……帰るぞ」
「…………
大ジョーブでしたカ、
ドヤドヤと去っていく三バカからあっさり興味をなくして振り向いた
「アイツらカフェからつけてまシタ
ブロンクスならシんでたネ」
「ありがとうございます、本当に助かり―――― どうしてボクの名前を?」
「アナタ有名デス! ワタシも動画見まシタ
……とユーか、カフェでのお話、全部聞こえちゃいマした」
人のよさそうな顔をして、しれっとそんなことを言う。
「…………そうですか」
「なンでプロデュース断ル? あンな必死に誘てまシタ
あなたアイドルなるチャンスでス」
「いやボクは服飾―――― あ~……アイドルの
アイドルには、なりません 絶対に」
億が一アイドルになるとしても、961プロでだけは絶対にごめんだ。
「¿Por qué? ヒトに従うイヤですか?
そンなのフツーでス! 初星だッてプロデューサーいまス!」
……いや初星のアレは学生同士の実習でしょ。
絶対自分には合わないし調べたら特典が豪勢すぎてちょっと引いたけど、少なくとも他人のライブ乗っ取りなんてさせないはず。
それと違って
「――――アイツは先輩も、ファンのこともなんとも思ってないんです!」
それにボクの気持ちだって。
「半年ぶりのライブだったんですよ? あんなの絶対間違ってる
961プロなんてあんなヤツばっかりなんだ!
……他の誰かを踏み台にしたステージなんて、おかしいですよ…………」
「…………
――――もしプロデュース受ケる言っテたら、コロしてまシタ」