ブルアカ転生記譚 作:背教者
今話の視点は先生→終盤にニヤです
独自設定の他、かなり倫理的にアレな話もあるので注意です
ごくりと唾を飲み込み、レイトに意識を向ける。
それを感じ取ったのだろう彼は7年前、花鳥風月部がどう関わったのかを話し始めた。
「ニャテ・マサムニェが言っていた『7年前の惨劇』―――これの通称は『
"そんなに……それは、惨劇って言われるのも納得だね……"
その大量の犠牲が出た一件は確かに惨劇と呼ばれるのも納得の規模だった。死が希薄とされるキヴォトスに於いては、ショックの度合いも"外"よりはるかに大きいだろう。
ただ気になるのは、彼や花鳥風月部がそれにどう関わっているかという点。
隣に座る彼を見ながら先を待った。
「変死の現場に立ち会った俺や、調査した当時の陰陽部、百花繚乱、ヴァルキューレも手段は不明と結論付けた」
"……でも花鳥風月部が関わってるんだよね?"
「花鳥風月部とやり取りした手紙が残っていたからな。内容は…………気分のいいものではないから要約するが……」
この場で唯一、現場を知っている青年が憤りの息を吐く。
それをコーヒーを呷って飲み下した彼は、やや荒んだ眼で虚空を睨みながら話を続けた。
「事の始まりは、狐坂家の主家に娘が一人生まれた時だ。その娘には、代々連綿と受け継いできた血の証―――狐の耳と尾が無かったそうだ」
"……そういうのって確率的な遺伝なんじゃないの? 顕性遺伝とか"
キヴォトスの遺伝学はまだよく知らないけど、今は顕性遺伝と潜性遺伝と呼ばれる遺伝形式は同じなんじゃないだろうか、と思いながら質問する。
すると彼は、こくりと頷いた。
「その認識で間違いない。それに父母がどちらとも狐耳と尾を持っていても、生まれてくる子が必ずしもそれらを持って生まれるとは限らない。キヴォトスの遺伝子学において獣人や悪魔、天使の特徴がどういう遺伝形式によるものかは今も盛んに研究されている」
"おー。私もちょっと興味あるかも……"
「なら今度その議論をしている所も紹介しよう」
ある程度親しい所なのか、ほんの少し表情を柔らかくしながらそう言ってくれた。
だが、彼の顔はすぐに厳めしいものに戻ってしまった。
「話を戻すが……狐坂家は、狐の耳と尾を持たないからと一人娘を公的に記さなかった。娘には監禁生活を強いて、その存在を秘匿するよう緘口令も敷いていたそうだ」
"お腹を痛めて産んだ子供なのに、そんな扱いなんて……"
「エコー検査で胎内の子が男児か女児かは分かる。その時に、耳と尾が無い事も。だがその家の主は、堕胎を許さなかった」
"……なんで、そんな……"
こんなこと思いたくも口にしたくも無いが―――耳と尾が無いだけでそんな事をするくらいなら、なぜ産んだんだ、と疑問が浮かんだ。
ただ子供を苦しめるだけだ。
ただ自分達を貶めるだけだ。
耳と尾が無いことが産む前に分かったのに、どうしてそんな誰にも幸せにならない選択をしたんだ。
「狐坂家の者が正式に婚姻し宿した子を堕胎する事は、
―――その疑問への答えは、即座に齎された。
家の、決定。
それに反するから。
ただそれだけで、子を産んで。
耳と尾が無いからと、公的には知らさない―――自分の家の子と認めないと。
"狂ってる……"
あまりにも自分の常識からかけ離れすぎた感性と価値観にぐらりと視界が揺れた。
一瞬で極度のストレスに晒されたからだなと、自己分析しながらソファに凭れかかる。
「―――だから、花鳥風月部に付け入られた」
その言葉で、はっとした。
今までのは犠牲になった狐坂家の概要でしかない。7年前の惨劇―――狐坂事変の詳細は、まだこれからなのだ。
「端的に言えば。狐坂家は、狐の耳と尾のある娘を得ようとし、そのための儀式で滅んだ」
"儀式……?"
「件の手紙曰く、『神降ろし』と」
"な……っ"
字面だけでとんでもない事だと分かり、何度目かも分からない驚愕に見舞われた。
神降ろし。
それは色んな創作物でよく聞く話だ。成功すれば途轍もない力を行使できるけど、そのための代償や代価が途轍もないものと相場が決まっている。
当然だ。神なんて存在が本当にいるとすれば、そんな存在を軽いコストで扱える筈も無い。
そして―――そんな人側の事情で呼び出された神が、唯々諾々と従う筈もない。
荒ぶる神として顕現するなんて想像するに難くないのだ。
つまり、狐坂家は―――
"狐坂家は、神降ろしで降ろした神に殺された……?"
「結果的にはそうなる。表現するなら『呪い殺された』になるのか……穴という穴から血を噴き出し、悶え苦しみ、絶命した様は凄絶の一言に尽きた。一見すれば毒を盛られたかのようでも検死結果で中毒と判定できる成分は出なかった。これが『手段は不明』とした理由だ」
"まあ……信じられないよね、普通……"
捜査というのは科学的な根拠を求めてされるものだ。原因があって結果が確定する。検死はその結果から手段という経緯を辿り、原因や犯人へと辿り着くためのプロセスの一つだ。捜査だって同じ。
でもその結果得られたものがオカルト的なものだとされれば、それを堂々と発表するよりも、『原因は不明』とお茶を濁した方がまだマシだ。
「ふぅむ……記録で知ってはいましたが、現場を見た方からも言われると流石に信じざるを得ない話ですね……」
神妙な面持ちで呟くニヤ。
陰陽部という名前に反してそういう類のものは扱っていないのか半信半疑だったようだ。
「私も詳しく聞くのは初めて……そもそも百花繚乱の方には記録が残ってないし」
"そうなの? レイトの口ぶりだと、一緒に調査した感じだったけど"
報告書や調査記録って取って置いてる筈では、と疑問を抱く。
「事が事だからな。報告書や記録の類は封印指定にし、陰陽部の幹部以上でないと閲覧出来ないようにしたと当時の陰陽部部長が言っていた」
それには、やはり当時を知るレイトが答えを出してくれた。
「おそらく天地が見た記録がそれだ」
「ええ、確かに封印指定の書架に入れられていました。まあわざわざ掘り返す必要も無い事ですから。花鳥風月部の名前が出たから見返さざるを得なくなったわけですが」
そう言ってずず、とインスタントの緑茶を啜るニヤ。
飲み込んでから吐き出された息はとても重いものだった。
まあ……凄惨な事件を唆しただろう集団の暗躍を考えれば、ため息も重くなるというものだろう。
「それってヴァルキューレはどうなの? あそこも調査したんでしょ?」
「あちらも当時の公安局長の指示で閲覧制限が掛かっていた筈だな」
「……なんで
「あのー、アヤメさん? そこで私を見られましても当時小学生の私が知るわけ無いですよ?」
むっ、としながらアヤメが問いを投げた。
視線を向けられたニヤはと言えば、当時の事なんて知る筈もないので苦笑を浮かべるばかり。
ならばと続けて視線を向けられたレイトは、ふむ、と顎に手を当てた。
「……理由は三つある。閲覧制限を掛けていると言っても、見ようとする者は忍び込むだろう。そうして過去の惨劇を知りショックを受け、心を病むかもしれん。一か所に集めたのはその可能性を低くするため。これが一つ目だ」
そう言って指を一本立てた彼は、すかさず二本目を立てた。
「次に、現場を発見した者は俺の他には百花繚乱だけ。つまり『大量の死体がある』という前情報があった陰陽部、ヴァルキューレと違い、心の準備もなしにいきなり見る事になったのは百花繚乱だ……その分、心に傷を負った者も多かった」
「あ……そっか。レイトさんと一緒に動くのって基本百花繚乱だから……」
はっとしたアヤメが呟いた事に、彼はこくりと神妙に頷いた。
彼は、しかも、と更に言葉を続ける。
「7年前は俺がちょうど各自治区に許可を得るようになり、信用を築く初期段階。『丁度いいから全員で評価しよう』と当時の百花繚乱の幹部はほぼ全員が出揃っていた」
"……それは……何とも、間が悪い……"
当時の連邦生徒会長にも――真実はともかくとして――声を掛けられる程の人物を見定めようと、治安を乱す者を捕える仕事に少し上乗せするくらいの気持ちだったろう。
そんな時に非日常の凄惨な現場を見る事になった少女達のショックは測り知れない。
しかも穴という穴から血を噴き出して絶命した遺体が何十人分もとなれば……
「じゃあ百花繚乱に調査記録が保管されていなかった二つ目の理由って……」
「トラウマを刺激しないためだ」
やはり少女たちは精神を病んだらしい。
それを思い起こさせるものを遠ざけるため、そして思い出さないために、記録はしても保管場所を陰陽部の封印書架へと移したわけだ。
それはされて当然の処置だと思った。
アヤメが知らないのは、誰もこの話を掘り返さないで時が過ぎて風化したからだろう。
「……少し話が逸れますが、レイトさんはトラウマにはならなかったんです? 当時12歳ですよね? 15~17歳の百花繚乱部員が心を病んだ現場を見ても大丈夫だったんですか?」
そこで、ニヤが訝しげな顔で問いを投げた。
実のところそこは私も気になっていた。
かつて路頭に迷って死に瀕した壮絶な経験を持っていても、そんな凄惨な現場を見たならショックを受ける筈だ。百花繚乱同様に事前情報も無かったのだから条件は同じの筈。
当時はどうだったのだろうと、ニヤとアヤメと揃って疑問の目を向ける。
すると彼は、なんとも複雑そうな面持ちになった。
「ショックはあった。だがその現場以上に強烈に印象に残った事があるから、トラウマにはなっていない」
"現場以上の強烈な印象……?"
「死体よりも、生き残った者の……例の娘の憎悪の方が自分には鮮烈だった」
"え、襲い掛かってきた!? というかてっきり巻き込まれて亡くなったとばかり思ってたけどその子って生きてたの!?"
望まれずに産まれて、誕生してからも軟禁されて、最期は大人達のエゴで行った儀式に巻き込まれただろう少女は、儚む世すらろくに知れずに巻き込まれて亡くなっただろうと思っていた。
しかしその少女は、少なくとも事件直後は生きていたらしい。
「ああ、生きていた。厄介な事にもなったが」
"厄介な事?"
「家全体の変死の中で唯一の生き残り。しかも、生まれてから虐げられていた経歴持ち。動機としては疑うのに十分だった」
そこまで聞けば、私も察した。
大人達が行った『神降ろし』の儀式の結果、少女を残して皆は死んだ。その少女に責は無い。
でも唯一の生き残りだからと、疑いが向いてしまったのだという。
"それは……確かに、憎しみを持っててもおかしくないけど……"
「実際憎しみは持っていたのだろうな。俺や百花繚乱の者を狐坂家の者と判断し、襲い掛かってきたから。それに完成度はともかく神降ろしも成功自体はしていたらしい、狐の尾と耳が生えていた。つまりその娘はその身に"人ならざる力"を宿した事になる」
次々とレイトが情報を明かす。
それは科学的には不明なオカルト的殺害手段に線として繋がり得る情報。
「捜査の後も動機になり得る過去があるから、呪いなど信じられないから、あるいは狐の耳と尾が生えたからと、娘に嫌疑を掛ける話は絶えなかった……思い返すだけでも憂鬱になるぐらい地獄だったな、あの様相は」
頭を振って俯いて、片手で額を押さえながら彼は言う。
うんざりだと言わんばかりの様子に、よっぽどだったんだな
"唆した花鳥風月部は行方知れず、儀式をした人達は全滅。手段はオカルト的なもので科学的には理論付けられない。泥沼だね……"
「実際に泥沼だった。気付けば捜査と議論の話題は『なぜ狐坂家の者達が死んだのか』から『生き残った危険な少女をどうするべきか』に移っていた」
その辺はなんとなく予想が出来た。
よくある話だ。いつのまにか話がすり替わっているという事は。
そういう時は大抵冷静ではない。感情的に結論を急ごうとして、それを止める者に激しく攻撃するのだ。
「ああ……議事録を見ましたけど、凄まじかったですね。『公的な記録に無いのなら災禍となる前に消すべきでは』という発言も記録されていましたよ」
「なっ……」
"そんなの……酷すぎる……"
「それが百花繚乱に記録を残さなかった理由の三つ目だ。その発言をはじめ、泥沼の様相を会議に出ていた者以外に知られれば不必要な不信が生まれる。『狐坂事変』の調査室長だった当時の陰陽部部長は、それは何の益にもならないと判断した」
そして記録を百花繚乱に残さなかった最後の理由がそれらしかった。
当時その発言をした子がどういう思いだったのかは分からない。
幹部との事だから、きっと現場を見てトラウマになった子だったのだろう。少女のことを思い出すたびに恐怖に駆られて、冷静ではいられなかったのかもしれない。
それでも―――その発言は、許容されてはならないものだったと思う。
だから当時の陰陽部部長は、誰かがその発言の記録を見た時の不信とそれが齎す混乱を危惧し、封印指定にしたようだった。
「最終的に調査室長は、世間には原因不明の変死と伝え、生き残りはいないと娘の存在を隠し、調査で関わった者には緘口令を敷き、時の流れと共に風化する事を選んだ。俺がニャテ・マサムニェの発言を訂正しなかったのはそのためだ」
"なるほど……だからあの時、話すんじゃなくて黙らせる事を選んだんだね"
あの時、ニャテ・マサムニェが彼の事を語る中で仇名の由来と共に、7年前の惨劇を話そうとした。
しかし彼はそれを一発の銃撃音で止めた。
それはただ多くの人が死んだ事を軽々に語ることを良しとしないだけでなく、語る事そのものが禁じられていたからなのだ。
訂正するためには全てを話さなければならない。
でもそれは、当時の陰陽部が危惧した混乱を招く結果になる。また存在を知られていない生き残った子の存在を知らせる事になる。
―――と、そこまで考えたところで、ふと疑問が浮かんだ。
惨劇の被害者にして唯一の生き残りである狐坂家の娘。
その子の処遇は、結局どうなったのか。
"例の女の子は、どうなったの?"
ゆっくりとコーヒーを飲んだレイトに問いを投げる。
彼は厳めしい面持ちのまま答えた。
「紆余曲折あったが、最終的に俺の保護者である恩人が引き取った。公的な記録には載ってなかった存在だから扱いとしては元浮浪児だな。そして俺と同じ養子になる」
「たしかアビドス高等学校を丁度卒業されたあの方ですよね?」
"という事は……いま18歳になるのかな?"
「ああ。俺の一つ下、天地や七稜の一つ上だ。卒業すると同時に起業し、忙しく働いている」
"起業!? 社長ってこと!? すごいねそれ!?"
「ああ。凄い奴だよ、あいつは」
ふ、と彼はいつか見た時と同じ誇らしげな笑みを浮かべた。義兄妹という関係になった少女のことを彼は受け入れているらしい。
ほうほうと頷きながらコーヒーを飲む。
彼も少し温くなってきたコーヒーを飲んで喉を潤した。
「話を総括するが、7年前の一件で俺は狐坂家の娘を引き取り、花鳥風月部が干渉してこないよう警戒していた。要するに俺は七稜や御稜が『百鬼夜行絵巻』を管理している状態に近い」
「とどのつまり、レイトさんには花鳥風月部側の人間ではないと信頼できる過去がある訳ですね」
レイトの総括にニヤが続いた。
そういえば、今はアヤメをシャーレに置く理由や例の怪書に関しての話を聞いていたところだったと思い出す。
少し前の会話内容*1*2*3を思い返し、そして今のニヤの発言を聞いて、改めて思考を回す。
"つまりニヤが警戒しているのは、ナグサとアヤメ以外の警備担当にした子が花鳥風月部と繋ってしまう可能性という事?"
「にゃはっ、その通りです」
ピッ、と畳んだ扇子で空を切ったニヤが笑う。
ただその笑みからは軽薄さが消えていた。
「何やらナグサさんは卑下されていたそうですが、彼女の能力は本物です。正直なところアヤメさんをシャーレの守りに、ナグサさんを百鬼夜行と百鬼夜行絵巻の守りに割いたとしても、問題はまず無いとは思います。絵巻の管理をアヤメさんから託されたという事実一つで彼女は不屈でしょうから」
ですが、と。ニヤは糸目を開いた。
「精神的に弱い部分があるのも確か。花鳥風月部との相性は、決して良くありません……ですので―――」
そう言ったニヤは、書類を入れていた袋から更に何かを取り出した。
取り出されたのは、一本の巻物。
―――百鬼夜行絵巻だった。
「百鬼夜行絵巻を、先生に預かって頂きたいのです」
"えっ!? これを、私に!?"
「はい、先生に。時系列的に先生が花鳥風月部の人とは思えませんし……今の『狐坂事変』を聞いた反応からしても、信じられると思いましたので」
テーブル上に物々しい雰囲気を放つ巻物を置いたニヤは、顔は私に向けたまま、糸目から見える瞳をレイトに向けた。
「実はですね、今日シャーレに来る事はレイトさんにはお伝えしていたんです。箝口令を敷かれている『狐坂事変』に関して話していただく事もお願いしていました」
"えっ……じゃあなんで私には何も……?"
「事情が事情故、失礼ながら試させていただきました。申し訳ありません」
「俺からも謝罪する。過去に多くの死者を出した所が関わっているから慎重を期したとはいえ、失礼な事をした」
「私からも……頼る立場なのに、ごめんなさい」
"い、いや、事情は分かるからいいよ! 頭を上げてよみんな!"
3人とも揃って頭を下げて謝罪してくるから、私は慌てた。
それぞれ各組織のトップ――アヤメはNo.2だけど――なのに思ってたより腰が低くて逆に驚きである。
"私はキヴォトスに来たばかりだから疑われて当然だから、気にしないで! 最終的に信じてくれたんだし嬉しいよ私は!"
そう三人の判断をフォローする。
頭を上げてくれた3人の顔は、しかし微妙そうなものだった。
「……うーん。先生、お人好しとか人たらしとかよく言われたりしませんか?」
"えぇ!? いや、別に無い……訳でもない、けど……でも普通の事でしょ?"
ニヤからのあまりにもあんまりな言われように、脳裏でちょっとユキノやミヤコ達の顔が過ぎったけど、でもそんなに言われてないからと言い返す。
でもキヴォトス生まれキヴォトス育ちの三人からは同意を得られていない様子だった。
「いやー……『疑われて当然』を言う大人は、普通じゃないと思うかなー……」
「私が見てきた大人達は基本的に『なぜ私の言う事を信じてくれないんだ!』のスタンスですしねぇ」
「俺が見てきた殆どの大人も『警戒するという事は後ろ暗い何かがあるんだろう!』と言ってばかりだったな……」
"キヴォトスの普通に異を唱えたい……その大人達に説教をしたいよ私は……そして三人はよくまっすぐに育ったね……"
顔を覆いながら私は心底からの思いを口にした。
いや本当に……そんな大人達を相手にして、よくグレなかったね……
「いえいえ、私はそんなにまっすぐじゃないですよ? よく色々とサボったり企てたりしておりますし?」
「私も……本当に真っ直ぐな性根だったら百蓮の資格はあっただろうし……」
「まっすぐな人間は傭兵稼業だのブラックマーケットで活動だのしないだろう」
"いっそ清々しいくらいまっすぐなひねくれ者だねぇあなた達! 逆にびっくりだよ!?"
面白いくらい揃いも揃って捻くれた否定の仕方をするから逆に驚かされた。
"一人一人きちんと褒めて分からせてあげるのも先生の務めだよね……?"
「おっと形勢が悪いかもしれませんね。話を戻しましょうか」
「なんだっけ。私がシャーレ預かりになる理由だっけ?」
「それに関する事として『百鬼夜行絵巻を先生に預ける旨』を話したところだったな」
"本当に清々しいまでのひねくれ方でむしろ面白いよあなた達。実は敢えてやってたりしない?"
じろ、と三人を見るとにんまり顔をしたニヤだけ顔を逸らした。
アヤメとレイトは真面目な顔でそのまま私を見返してくる。
……どうやら二人は本気の反応だったらしい。
ウソでしょ……と思いたいところだけど、二人にとっては否定したくない事なんだろうと思うと軽々しく扱えない。
百蓮の資格に関してはよくわからないし、レイトの借金返済関係も理由は分かったけど賞金稼ぎ以外にも手を出した経緯とかは知らないから下手に口を出し辛い。ユウカやハスミ、カンナ達が承知した上で認めているならわざわざ否定する事でもないだろうし。
とはいえ、だからこそニヤはアヤメをシャーレに置こうとしてるんだろう。
精神的にまだ不安定なところがあるからこそ、一旦アヤメをこちらに置く。
そのための理由付けとして絵巻を利用しているところはある筈だ。勿論花鳥風月部が百鬼夜行の誰と繋がっているか分からないから、私を試して信頼できるなら、と考えたのも事実だろうけど。
"まあ今は話を戻そっか……でも、良いの? この百鬼夜行絵巻、もしかしたら対怪異に使えるかもって話だったけど"
仕切り直したところで、私は百鬼夜行絵巻の利用価値―――すなわち、対怪異に置ける利用価値について言及した。
元々すぐに燃やして処分せずに残しておいたのもその点を期待しての事なのだ。
仮にアヤメをシャーレ預かりにするための口実にするにしても、そこはどうなのかは気になる事だった。
「実は、それにも問題がありましてねぇ」
するとニヤが、ハの字に眉を寄せながら畳んだ扇子を顎先に当てた。
「結論から言えば、絵巻は使えます。ですが使える者に制限がありました。
"……それは……"
その制限を聞いて、私は顔を顰めた。
肩書き、役職持ちには使えない。
それはつまり、社会的信用を保証された者には使えないということ。
でも―――それだと、ニャテ・マサムニェはどうなる?
"ニャテ・マサムニェが使えてたのって……"
「先生。キヴォトスの外で習う『歴史』に於いて、画期的な商売や革新的な発明をした訳でもない一商店街の会長の名を習いますか?」
"……習わないね……"
私の問いは、ニヤのある種残酷な問いの返しによって答えを出された。
キヴォトスの外における国の概念が、キヴォトスに於ける学校のそれに準ずると考えれば、ニャテ・マサムニェの名は後世に残らないだろう。
ニャテ・マサムニェは、大犯罪者になったかもしれない。
でもそれは道半ばで防がれた。連綿と続く日々の中に現れた単なる小悪党の一人として処理されたのだ。
「それにあの男の会長としての名は『ニャン天丸』でした。小悪党としてのニャテ・マサムニェとは別人として判定されていたでしょう」
仮に同一人物と見られていたとしても結果は同じでしょうが、と彼女は言い捨てた。
まあ……どちらにせよ、歴史に名を残すかどうかで言えば否ではあるだろうなとは私も思った。
「ともあれ、
少し険しい面持ちで、糸目を開いたニヤが絵巻を見据える。
「現実としてそこにいる。けれど長い歴史から見て、居たかどうかも分からない……そんな杳として知れぬ者にのみ、これは扱えるようなのです。理想としてはナグサさんとアヤメさんのどちらか、次点で作戦参謀のキキョウさんが使えたらよかったのですがねぇ……」
そう言ってから、ニヤは視線をこちらに向けてきた。
「先生がこれを扱えるかは、私にも分かりません。百鬼夜行外の方ですので多分使えるとは思いますが……」
"えーと……とりあえず試してみようか"
「では万が一に備えて、アヤメさんとレイトさんも備えて下さい」
「わかったよ」
「了解した」
ニヤに促され、二人はガンラックに立てかけている銃を取りに行った。
手早く準備を終えてこちらに戻ってきたのを見て、私も絵巻を手に取る。
結い紐を解いて巻物を開くと、おぞましい感触が総身を走り抜けた。昏いなにかが胸の奥に入り込んでくるのを感じる。
同時に、頭の中に浮かんで消える情報の山を自覚する。
どれもが妖怪と呼ばれる存在か、私の知らない百鬼夜行の歴史や人物達ばかり―――
"これ、は……"
「……先生? どうです?」
"多分……いけると思う"
ニヤにそう返しながら、私は流れてくる情報の中で特に無害そうな存在を呼び起こすことにした。
"おいで―――猫又"
その声を発すると同時、くるくると巻物がひとりでに開き始め―――達筆な筆文字で綴られた書面からズルリと蠢いた黒が飛び出した。
一抱え程の黒がテーブルの上に落ちるや否や、その体積を縮め、一つの形を取る。
尻尾が二股に分かれた子猫の姿に。
『ニャア』
そんなかわいらしい鳴声を上げると、作り出した私の方に顔を向け、飛びついてきた。
感触は本物の猫そのもの。人懐こさで言えば、猫カフェのそれくらいだろうか。
百鬼夜行絵巻に記された存在とは思えないくらいかわいらしい子だ。
「……にゃはは。いやまさか……まさかとは思ってましたが……扱えちゃいましたねぇ……」
「可愛い……」
"アヤメも抱いてみる? もう本物の猫と遜色ないよこの子"
「い、いいの!? じゃあちょっと……わぁ……!」
怪異とはいえ、かわいらしい見た目をしているとやはり見る目も変わるのか、さっきまで凄い警戒の体勢で金色の魔眼をギラつかせていたアヤメはアッサリと猫又怪異の虜になってしまっていた。
抱き渡すと、子猫を抱き寄せてきゃあきゃあと明るい笑顔を浮かべた。
"アニマルセラピーって偉大だなぁ……"
「……怪異が記されているという話だからもっと禍々しいものを想像していたが……もしや物騒な怪異以外も普通に記されているのか?」
"あーうん、妖怪なら何でも載ってるっぽい? 猫系だと火車とか五徳猫とかもいるよ。多分姿は私のイメージに近付くんだろうけどね……仕事中も出してようかなぁ。多分当番の子達にも人気出るし"
「怪異ですから餌代も掛からないでしょうしねぇ」
驚きから復帰したらしいニヤもアヤメに抱かれている猫又の子猫を撫でに行った。
猫又は本当に人懐っこいようで、ニヤの手もすんなりと受け入れ、撫でられていた。それを見て二人の少女が綻ぶ。
それを見て私の顔も満面の笑顔だ。
人間やはり笑っている顔が一番である。
「とりあえず、先生が百鬼夜行絵巻を使える事は分かった。管理に関してだが、基本はシッテムの箱と同様でいいだろう。普段から持ち歩くという事だな」
"あれ、てっきり金庫に入れておくとかだと思ったんだけど"
「絵巻で怪異を操ってる間、ニャテ・マサムニェは物理干渉を受け付けなかった。おそらく先生も同じの筈だ。つまりシッテムの箱で生徒の指揮を、百鬼夜行絵巻で怪異を指揮し、二重の守りを得ることが出来る。七稜がシャーレ預かりになるなら猶更先生が持ち歩いていた方がいい」
"あーなるほど"
ほうほう、とレイトの話に頷く。
バッテリーの限りバリアは展開されるけど、バッテリーが切れれば守りを喪う事を考えれば、一先ず怪異を出しておけば無敵になる怪書は持っておいた方が確かにいいのだ。
"とはいえあからさまな怪異を出すと騒動になるかもだし、猫又とか問題になりにくいのを出しておくのが妥協点かなぁ。勿論万が一の時は鬼とか歴代百花繚乱委員長とかを呼ぶかもだけど"
「怪異にどの程度まで通じるかは不明だが……ニャテ・マサムニェがある程度出来ていた事から、先生の強みである指揮も活きる筈だ」
「にゃははっ。人知れずシャーレの戦力がぐんっと増えましたねぇ」
「しかも百蓮か私かじゃないと倒せない不滅の軍団がね……うっわ、考えるだけでもヤバいよねこれ」
「周囲にバレた時の対応や陰謀論の封じ込めなぞ考えただけでも面倒過ぎる……怪異軍団を使う必要に迫られないよう全力を尽くそう……」
愉快そうに笑うニヤと、うげぇと憂鬱そうな面持ちのアヤメとレイト。
この表情を見て取るだけでも各々の性格が分かるものだ。後者二人はシャーレ所属として動く事を基本として考えているところも大きそうだけど。
"とりあえず……絵巻は私が持つ事にするね。それとアヤメもシャーレ預かりで優先的に処理するとして……常駐という扱いでいいのかな? 寝泊まりどうしよう"
「まあ先生には急な話でしたからねぇ……シャーレの居住区って空いてたりしません?」
「私は別に近場のホテルに泊まったんでも大丈夫だけど……」
"ホテルはお金が掛かるでしょ。とりあえず今日は仮眠室で寝てもらおうかな。今日明日中にアヤメが居住区に泊まれるよう手配しておくよ"
「了解。お世話になります」
ぺこりと猫又を抱いたままアヤメが頭を下げた。
ざっくばらんな所はあるけど、こういうのをキッチリする辺り流石は百花繚乱委員長に満場一致で選ばれてた子だなぁと感心した。
"色々話が長くなっちゃったね……他に話しておく事ってある?"
時計をチラリと見れば、話し始めてから優に30分も経過していた。余裕はあるとはいえ今日の分の書類はまだ終わってないからそろそろ話を切り上げるか、話を聞きながらの作業をしなければならない。
そう思って他に何かあるかと問えば、ニヤとアヤメがレイトの方を見た。
私も顔を向けると、それを合図にしたようにレイトが口を開く。
「俺から一つある。先生、三日後にミレニアムと顔合わせする予定が入っていることは覚えているか?」
"覚えてるよ。三大校で最初に顔を合わせるって意味でもだし、ユウカがいる学校だからね"
シャーレとしての挨拶も兼ねている顔合わせの日程は彼が調整してくれている。
三大校ともなると流石に向こうも忙しく、しかも平時の何十倍の犯罪率が記録されるほど各地で犯罪者や不良が大暴れしていた事もあり、中々日程が合わなかった。ミレニアムの場合は発電所の停止による研究の中断や生産の滞りが痛手だったらしい。
それでも半月を掛けてようやく向こうも時間を取れるくらいには余裕を取り戻したらしいと彼が当番で来た時に教えてもらっていた。
その経緯を思い出しながら頷くと、それを見た彼が話を続けた。
「その際、七稜もミレニアムに同行する」
"ミレニアムにアヤメを? なんで?"
「七稜の右眼の検査だ。以前も眼科には掛かったが、その時は竜気の魔眼については知らなかった。今回はそちらの面も含めた検査をする予定だ」
"ミレニアムって科学なのにそういうオカルト的なものも網羅してるんだ?"
最先端科学の学園だという話だからてっきり無縁だと思っていただけに、意外な話だった。
それは予想済みだったらしいレイトは無表情のままこくりと首肯した。
「曰く、オカルトとは不可知の中に見出されし未知なるものであり、未知を探究する者はオカルトにも通ずるものである……とか」
"……つまり?"
「全てを知る過程において避けて通れないものらしい」
"なるほど"
要約されて言わんとする事は分かった。
"とりあえず分からない事があったらミレニアムの子に聞けばいいって事だね!"
「……そういう事だ」
「あ、いま訂正が面倒になって投げ出した」
「いや~まああながち間違いでもないですからねぇ。にゃはっ♪」
私の理解に、なんともな反応を返されたのはちょっと不満だったが。
とりあえず今日聞いておくべき事はもう無いとの事だったので、これでお開きになった。
その後、思った以上に長話になったお詫びにと、シャーレの当番について知っておく事も兼ねてニヤとアヤメが急遽手伝いに入り4人態勢になったのもあって時間内に今日の分の書類を片付けられた。
「ではでは、明日からアヤメさんの事をお願いします~。私も都合が付けば偶にお手伝いに来ますので」
"ありがとう。無理のない範囲で来てね"
「にゃは♪ それはもう、無理しない加減は私の得意分野ですのでお任せあれ~」
"……怒られないようにね"
そういえばサボりがどうとか言ってた覚えがあるし、転生者の皆も把握してたな……
彼女、実は案外サボり魔だったりするのだろうか……
まあでも陰陽部の運営が出来ているのなら問題ない範囲に留めてはいるのだろうと、私は生徒を信じる事にした。
「俺もこれで帰らせてもらう。先生、七稜、また三日後に」
"うん、お疲れー! またね!"
「またね、レイトさん」
「ああ」
レイトも当番を終えたので、これから弾薬諸々の補給を済ませ、それからアビドスへの帰路に就くべくニヤと共にシャーレを後にした。
"さて、と。じゃあとりあえず夕飯とシャワーを済ませちゃおう。その間に私は仮眠室の方の準備をするから"
「お世話になります」
『にゃぁ』
"ふふ、君も今日からよろしくね"
『にゃあ!』
転生者やSRTのシャーレ滞在組がいるだろう食堂に案内しつつ、私はアヤメと猫又怪異に施設の説明をしていった。
シャーレのオフィスを出て、エレベーターにレイトと一緒に乗る。
高階層から一階へと降りるまでの時間、彼も私も無言だった。
その時間も悪くはないが……
せっかくの時間を無為にしている気がした私は、話をする事にした。
「レイトさん、いま何を考えてます?」
これといって振る話題が無いと、そんな印象を持たせる声掛け。
実際のところは違う。
これは探りだ。
花鳥風月部については私よりもよく知っている彼は、それを知らない自分やアヤメとは異なる思考や受け取り方をするだろう。
それを少しでも知るための声掛けだった。
勿論、ただスルーされる可能性もある訳だが。
「……百鬼夜行絵巻の事を考えていた」
しかし彼は明確な答えを返してきた。
思うところがあったらしい。
「ふむ? と、言いますと?」
「アレは歴代の百花繚乱委員長を呼び出せる。先の一件で七稜を呼び出していたようにな」
「そうですね。それが気になるんですか?」
徐々に階層を下っていくことを示すモニターから、隣に立つ青年へと顔を向ける。
彼は茫洋とした面持ちで虚空を見つめていた。
何を考えているのかは……分からない。
「……お前達が絵巻を調べた時、歴代委員長や陰陽部の部長は呼び出したか?」
「ええまあ」
「―――それは、会話できたか?」
それは、やや食い気味の問いかけだった。
逸りを感じさせるような早さ。その上で、問いの真意は暈されているのが厄介だ。
幾つもの想定が脳裏に浮かびつつ、私は
「いいえ。少なくとも私達が検証した際、呼びだした歴代の……過去の生徒は会話は出来ませんでした。戦闘まではしてないのでそこは分かりませんが……」
「戦闘に際しては短い掛け声程度はあった」
「あーそういえば戦われてましたね」
「ああ……―――しかし、そうか。話さないか」
安堵するように彼は短く息を吐いた。
けれど私は、彼の目が安堵のそれではない事に気付いていた。
あれは求めていたものと違ったと知った者がする目だ。
想定していた一つ―――怪異が喋れる場合、誰かとすり替わられていたらという懸念を考慮していたのではないと、私は判断した。
懸念自体はしていたかもしれないが、それでも彼にとって、それは最重要ではなかっただろう。
「レイトさん? もしアビドスに同じようなモノがあったら……どうするのです?」
「燃やす」
ともすれば、不躾な問いだった。
それに彼は気分を害した風もなく、茫洋とした顔のまま、しかし意思の強さを感じる声音で即座に言い切った。
「即答ですか」
「ああ」
「……目の前に、現れてもですか?」
「無論だ」
「仮に話せるとしても?」
先の質問――『会話できたか?』――には、ただ言葉を発せるか以上の確認の意が込められていた。
喋れるかではなく、会話できるか。
意思疎通が出来るのか。
それには、悲痛な想いが込められている筈だった。
何百年も前の存在であるクズノハと言葉を交わし、会いまでした彼が、揺さぶられない筈がないのだ。
死者と言葉を交わせる可能性を見せつけられて。
「それで会えるのは影で、聞ける言葉は本人のものではない。あの二人の言葉は
それでも彼は、表情を変えずにそう言い切った。
「それに……仮に会えるのが本物で、話せるとしても。それでもやはり燃やすに限る」
「それは、どうしてです?」
彼のその言葉に、純粋に疑問に思った私は問いを投げた。
―――ぽーん、と軽快な音と共にエレベーターが止まる。
一階に着いた事を示すようにエレベーターの扉が開いた。
陰陽部の迎えが玄関の辺りにいるのを視認する。
「もう、終わった事だからだ」
そう言って、レイトはさっさとエレベーターを出て行った。
そのまま彼は手短に別れの挨拶を私や迎えの部員たちにしてから、駐車場に停めていた装甲車で去っていった。
「終わった事……ですか」
百鬼夜行への帰路の間、私は彼の返答についてずっと考えた。
その返答の意味。
その結論に至った経緯、理由。
喪った人の苦しみにはどう接するべきなのか。
ずっと――――
百鬼夜行絵巻を入手しました
七稜アヤメがシャーレに合流しました
猫又の怪異がシャーレに出現するようになりました
以下の情報が更新されました
・『狐坂事変』
・狐坂家の娘
・花鳥風月部
・『彼岸の獣』
・猫又の怪異
・百鬼夜行絵巻
百鬼夜行陰陽部と百花繚乱連名でシャーレの先生に預けられた怪書
狐坂事変での反応を見て最終的に託すことが決定した
百鬼夜行で歴史に名を残す肩書き持ち、役職付き等のネームド生徒は呼び出される側なので扱えない制約がある。アヤメ達の場合は『歴史ある組織のトップ』に就いていたため引っ掛かって使えなかった
また呼び出したものには知能らしきものはあっても会話は出来ないため、影武者のように使う事は難しく、運用には指揮者が必要
普段から猫又怪異を呼び出しておくことで物理攻撃を無効化する第二のアロナバリアのような防御策として使われる
究極的な窮地に於いては最終手段として百鬼夜行軍団を呼び出し、指揮を執る事になる
・『狐坂事変』
7年前、狐耳と尾が無いため監禁されていた娘に『神降ろし』の儀式を行った結果、勃発した大量変死事件
合計65人の死者が出たが唯一主家の娘のみ生存。公的には存在しないものとして扱われていたため、公的にこの事件は『生存者無し』として扱われている
既に風化し始めている事件だが、今なお一部には記憶の摩耗と憶測と共に語られており、関係者になったレイトが原因ではと話が歪曲されている
あまりに凄惨な現場、事件だったため、この真相*1まで知る者は調査をした当事者の中でも一握りであり、その者達も心の傷や不快感を遠ざけたい、嫌疑を避けたいなど様々な理由から箝口令に従って口を閉ざしている
今回は当代の陰陽部部長の要請もあってレイトは語る事になった
・狐坂家の娘
狐坂事件を契機に公的記録にその存在が初めて記載された唯一の生き残り
狐坂家の記録によれば元々は血の証である狐の耳と尾を持たなかったが、『神降ろし』の儀式後に出会ったレイトによると狐の耳と尾は生えており、その身に"人ならざる力"を宿していると目されている
事件直後は狂乱し、現場に遭遇したレイトと百花繚乱に襲い掛かった
事件の捜査後は身柄の処遇に頭を悩ませていたが、紆余曲折の末、レイトを拾った『善良な大人』が身柄を引き取った事で一先ずの決着を見た
現在はアビドスを卒業し、起業して女社長として働いている
・花鳥風月部
ヘイローを持った大人の女性が属する危険な組織
桜花祭の破壊を目論むニャテ・マサムニェに蔵に百鬼夜行絵巻がある事とその使い方を教え込んだ存在にして、狐坂家に『神降ろし』を教え、唆した事が当時発見された手紙から分かっている間接的な大量殺戮犯
しかし怪異、怪書の扱いに長じたこの組織が教えた儀式が、果たして『神』を呼び出すものだったかは不明
レイトは手紙を介して当時から存在を把握しており、狐坂家の娘に接触してこないか警戒していた
・『彼岸の獣』
彼岸レイトにいつしか付けられた『狙われたら最後』という意味合いの仇名
意図せず狐坂事変の惨劇に立ち会った結果、一部からは惨劇の原因かのような意図で呼ばれるようになったが実際は何も関係が無い
箝口令によって訂正も難しいため由来についての話題は全て黙らせる方向で舵を切っている
・猫又の怪異
百鬼夜行絵巻をシャーレの先生が使って呼び出した子猫の見た目をした怪異
とても人懐こく、見た目の愛らしさもあって生徒達の癒しになっている
業務中に邪魔をしてくるため要警戒