ブルアカ転生記譚   作:背教者

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今話の視点はヒナだけです




【総力戦】対"真・砂漠の鉄蛇" 後編

 

 

 アビドスの校舎防衛が成功し、砂漠の鉄蛇との戦いに参加してからおよそ30分。

 

 従来であれば小一時間を掛けてシールドを剥がし、集中砲火を加える事を幾度も繰り返す長時間の修羅場になる筈の作戦は、短時間で二度もシールドを剥がして鉄蛇に大打撃を与える結果を出すほどに高速化していた。

 専用兵装で一発でシールドを消せたのも大きいが、先生の指揮の影響か全体の素の火力自体が上がっていたのも起因している。

 シールドを剥がした二回の内の一回は、私の愛銃による掃射(終幕:イシュ・ボシェテ)と戦車部隊による砲撃で8割削っていた。それを30分足らずで出来た事を考えると、火力は従来の倍以上の計算となる。

 報告で聞いて知ってはいたが、予想以上だ。

 

 ―――だが、それも通用しなくなった。

 

 どうやらこれまでの砂漠の鉄蛇は全力ではなかったらしい。戦力を集めた白銀条約も、鉄蛇にとっては真の脅威ではなかったのだろう。

 だがオーバードレールキャノンによる攻撃はそうではなかったようだ。

 条約の名前にもついている特徴的な白銀色の装甲は、過剰に出力されたエネルギーが漏れ出ているのか、頭上に浮かぶヘイローが装甲を守っているかのように橙色の色を帯びるようになった。

 それを契機に単独でシールド残量を削れていた私の攻撃も効果を発揮しなくなった。

 

『ダメです、削れはしますがさっきより少ないです! それに手が出せない潜ってる間に全回復してます!』

「私の攻撃だけじゃイタチごっこね……」

 

 激しく動き回るその巨体へ愛銃の紫弾を雨のように浴びせるが、それが意味を為さなくなった事を観測しているアコの言葉で事実として把握する。

 シールドの出力が上がった事もそうだが、削れた分の充填回復速度も速くなった。

 これでもゲヘナ随一の火力だと自負はしていたが、これは―――

 

「いよいよ以てメタルキラーだけが頼りね」

 

 嫌な事実を再認識する。

 思わず眉を寄せてしまったが、それがどれだけ難しい事か理解しているが故のものだ。

 元々、鉄蛇の主砲チャージは8秒だった。それが一度レールキャノンを受けて警戒し始めてから3秒に縮んだ。

 出力が5倍になった今、それは更に縮んでいるだろう。

 単純計算ではチャージ完了はコンマ6秒に縮む。エネルギーの集束や狙いを付けるにあたって実際の発射まではもう少し時間を要する筈だが、反動が強いらしい銃の3連射は厳しいだろう。

 無論、なにも主砲へチャージされている時だけが狙い目ではない。

 弱点であればどこでも良いわけで、いつでも狙える眼もある意味では狙いどころだ。

 まあ頻繁に砂の下に潜るようになった今はその眼も狙い辛い訳だが。

 

『キキッ、これは発見だ! 化け物も追い詰められれば守りを固めるらしい! これを超えれば白銀の鋼鉄機械共なぞ恐るるに足らぬという事だ! さあ、出し惜しみなぞせずさっさとやってしまえ、彼岸レイト! 空崎ヒナももっと弾幕を張れ! 奴が5倍強くなったならお前も5倍強くやれ!』

 

 攻めあぐねている私達を見てか、マコトが嘲笑を上げた。

 しっかり士気を保つための発言もしているからタチが悪い。

 

「加減してる訳じゃないのだけどね」

 

 そうボヤきを入れた私は一度着地し、一息入れてから再度地を蹴って飛翔する。

 その間に、アコが『そうですよ!』と怒鳴り声を上げていた。

 

『ヒナ委員長はとっくに全力を出されてますよ! あの男の方がさぼってるんですからそっちにだけ発破を掛けてください!』

『天雨は本当に無茶ばかり言ってくれるな……!』

『無茶だと言うならヒナ委員長にメタルキラーを渡してください! 委員長なら的確に撃って下さいます!』

「いや無理よ、私の手じゃ引き金に指が掛からないわ」

 

 アコの無茶ぶりに素で声を返す。

 自分の体の成長が随分前に止まっている*1ため、反動が強い銃など成熟した人が使う事が前提の構造の銃は基本使えなかった。自分の愛銃もその辺はカスタマイズして使っているくらいである。

 彼岸レイトに渡す際にメタルキラーのゴツさは把握している。グリップを握り込んで撃つとなると、私の手が小さすぎて引き金に指が掛からない。

 その上での言葉には、再度マコトの嘲笑が返ってきた。

 

『キキキッ! 空崎ヒナは一際小柄だからなァ!』

『ヒナ委員長を見くびらないでいただけますか!?』

「アコ、やめて。恥ずかしい」

 

 私を敵視するマコトの言葉に私を慕っているアコが反応する。

 最早いつもの事だけど、だからこそ学んでスルーしてほしいと思う。どれだけマコトに言ったところで彼女の私に対する言い草が変わる事は無いのだから。

 

『"今はとにかく主砲が来るまで待つしかない。みんな、落ち着いて"』

 

 ぎゃあぎゃあと喧噪に満ちた通信に、慌てたように制止を掛ける先生の声が響いた。

 

『"レイト、一応聞くけど眼を狙うのって無理そうかな"』

『無理だな、俺の射撃の腕はSRTのそれには及ばない。眼を狙うくらいなら主砲を浴びる覚悟で口を撃ちに行く方が―――』

『"―――待った。レイト、下から来るよ!"』

 

 男の言葉が、先生の鋭い指摘で遮られる。

 一拍の後、彼女が言ったように男が駆るバイクの真下から鉄蛇が現れた。上に乗った彼は鉄蛇が鎌首を擡げた勢いで宙へ跳ね飛ばされる。

 通信越しに、彼の名を呼ぶ声が幾つも重なる。

 

『直接狩りに来たか……!』

『エネルギー反応増大―――このパターンは、アイビーム!』

 

 彼岸レイトの声に重なるように、冷静に解析を済ませた調月リオの指摘が入る。

 彼女の言葉通り、4つある鉄蛇の眼球はそれぞれが真紅の光を灯し、今にも彼目掛けて放たれようとしていた。

 横合いから鉄蛇に銃撃を浴びせるが、びくともしない。

 チッ、と舌を打つ。確かに明確に彼を狩りに動いているようだった。

 

『狙い撃ちにする気か……!』

 

 その言葉と共に、彼は乗っているバイクから跳んだ。一瞬の後に真紅の光が着弾し、二時間ほども彼を乗せていたバイクが爆発と共に木っ端微塵になる。

 残る3つの赤い閃光も彼を狙ったが跳ぶ最中に展開された盾で全て弾かれる。

 衝撃を受けた彼はクルクルと吹っ飛んでいき、地面に落下してもその勢いのまま転がって衝撃を殺したようだった。幾らかの回転の後にすぐさま立ち上がり、盾とメタルキラーを構える。

 

 ―――Iron Horus。

 

 表面にそう刻まれた、ただの折り畳み式ではあり得ない硬度と頑丈さを持つアビドスの誇るその盾が、今回の作戦で初めて使われた。

 同時に移動の足も喪われたが……

 考えてみればある意味それは自明の理だ。

 右手のハンドルを手放せない以上必然的に左手しか空かない。傭兵がいる間は左手で機構銃を使い、今はメタルキラーを持っている以上、盾は使えなかった。

 メタルキラーを吊るすためのホルスターも今は無い。

 防ぐためには盾を使わなければならず、かつ鉄蛇に唯一有効打を与えられるメタルキラーを手放せない以上、バイクを乗り捨てる以外に方法は無かったと言える。

 バイクから跳ばなければ、盾を展開する間にアイビームの一射目を受けていただろうし。

 

 問題は機動面も厳しくなり、いよいよ追い込まれ始めた事か。

 

 それを鉄蛇も理解しているのだろう。追い詰めるように彼岸レイトの下へと高速で砂を泳いでいく。

 私やアビドスの子達、風紀委員会、万魔殿の戦車、SRTのヘリからの攻撃を浴びせて動きを鈍らせようとするが、やはり効果は乏しい。痛痒にも感じていないか、あるいは効いてはいるがとにかく脅威を排除する事を最優先にして動いているだけか。

 どちらにせよ彼が追い込まれているのは明らかだった。

 

『先輩! 逃げて!』

 

 黒見セリカの悲鳴。意味は無いと分かっていて、それでも上がるのを抑えきれなかった声だった。

 気持ちは、痛いほど分かった。

 

『狼狽えるな! アビドスの盾はちょっとやそっとでは壊れん、使い手たるあの男も同様だ! 我々が何度この作戦を成功させてきたと思っている! この程度は想定内だ!』

 

 そこで、マコトの激が飛ぶ。

 初めて参加する者達に向けた言葉は、通信の向こうから聞こえてきた数多の動揺を収め、ピンと空気を張り詰めさせた。

 士気の低下は下がり、混乱も抑えられた。

 

 まったく―――万事これなら、文句は無いのだけれど。

 

 私は苦笑を禁じえなかった。

 

『"エネルギー、アイビームのパターン! 防御してレイト!"』

『ミサイルも射出されたわ! 走りなさい、その場に居たら吹っ飛ばされるわよ!』

『空崎ヒナ、ミサイルを撃ち落とせッ! イロハは射出口目掛けて砲撃!』

「了解……!」

『難しい注文ですね……! 各員、主砲用意!』

 

 先生、リオ、マコトの指示が立て続けに飛んだ。

 私は空を飛びながら愛銃を乱れ撃ちし、連続で放たれるミサイルの幾らかを空中で迎撃していく。幾らか撃ち漏らしたが、盾を構えながら走る彼はその爆風も利用してアイビームを回避していた。

 長年相手しているだけありやはり馴れたものだ。

 

『"ユキノ達もミサイルを狙って! セリカ達とイオリ達は一瞬でも鉄蛇の注意を逸らすために弾幕を! 出来れば眼を狙って!"』

『了解した!』

『効けばいいんだけど……!』

『当たっても意味があるかなこれ!』

 

 先生は更に指示を飛ばした。ミサイルをSRTに、鉄蛇の眼にアビドスと風紀委員会をあてがっていた。

 下手な鉄砲も数撃てば当たる。弾幕で眼を狙って、一か八かを考えているのだろう。

 

「私も加勢するわ。ミサイルの処理が無い間だけになるけど」

 

 今も断続的に射出されているが、それでもSRTの処理能力も高いためか間がある。その間に私の掃射で眼を狙うのは無駄ではないと判断した。

 装甲に弾かれるならもうそこを狙うしかない。

 そうして眼窩を狙って紫弾を撃ち続けていくと、眼窩に集束していた赤い光が弾け、小規模の爆発が発生した。

 同時、鉄蛇が軽く仰け反る。

 

『"シールド残量、10%減少!"』

『エネルギーの散逸も確認……なるほど、あのアイビームの集束は防げるようね』

 

 その分析は、初めての情報だった。

 赤い光自体は今まで何度も放たれていた。それは防ごうにも、予兆から射出までが非常に速く、成功した試しは無かった。

 それが今回偶発的に成功したようだった。

 

『ほう? キシシッ、これは朗報だ! 亀のように固くなっても付け入る隙はあるようだな! イロハ、虎丸の狙いだけ眼に変えろ! 戦車の砲撃でも同じ結果を得られるか確認する!』

『えぇ、責任重大じゃないですかそれ。まあやるだけやってみますけど……』

 

 機嫌良さそうなマコトの声。気怠そうなイロハの声。

 少しずつだが、鉄蛇が全力を出す前の雰囲気―――安定した士気に戻り始めているのを感じた。

 このまま何事も無ければいいのだが。

 

 

『"―――待って、エネルギー充填確認! 主砲に集まってるよ!"』

 

 

 そう思った直後、その思いは破られた。

 鉄蛇が全力を出してから初めての主砲準備。メタルキラーを撃ち込む絶好の機会であり―――チャージが高速化している今、仕損じる危険も高くなっている機会でもある。

 鉄蛇は彼岸レイトの下へ向かっている。

 だがそれは妨害と、メタルキラーを警戒してから殆ど地中を潜っての状態だ。

 おそらく顔を出してすぐに打ち込む計算なのだろう。

 その間にさっき偶然削れたシールド残量も回復してしまったが……

 

「彼岸レイト、いけるの?」

『盾を使えるなら問題ない』

「……そう」

 

 短い答え。

 それに込められた言外の意味を読み取り、短く頷く。

 

 たしかに―――問題は、無いだろう。

 

 チャージから発射までの猶予は極めて短い。その間に残り3発を撃ち込むのは、反動を考えると厳しいだろう。2発目か3発目の時点で主砲を食らう可能性が極めて高い。

 だが、盾で隠れながらならいけるかもしれない。

 主砲のレーザーに弾丸がかき消されてシールドを破れない恐れはあるが、それはそれでいい。アレが帰るまでの耐久戦に移行するだけだ。

 誰も死ななければいい話なのだから。

 これまでの5倍の出力は確かに恐ろしいが、やる事は今までと変わらないならマコトの激通り想定内である。

 

 気がかりなのは、鉄蛇が脅威と見ているのがメタルキラーとレールキャノンだけ―――逆に言えば、彼を脅威と見ていないのかだが。

 

 もし個人を脅威と見ている場合、血戦となるだろう。文字通り。

 

『―――来るわよ、警戒して!』

 

 嫌な予想を抱いていると、調月リオの鋭い声が耳朶を打った。

 数拍の後、地響きと共に鉄蛇が顔を出す。

 

 

 

 瞬間、閃光が大地を奔った。

 

 

 

 横一線に放たれたそれは大地を抉り、標的を―――

 彼岸レイトを容赦なく飲み込んだ。

 

『『『『『先輩っ!!!』』』』』

 

 アビドスの子達の悲鳴が耳を(つんざ)く。

 これまでを知らない一年も。通信で知っている二年も。声を揃えて叫びを上げていた。

 息を呑む声が複数重なる。

 固唾を飲む気配が幾つも発せられる。

 

 信じている私も、同様だった。

 

 アビドスの盾、Iron Horus。

 アレの堅牢さ、アレを使う者の技術を知っていても尚、初めて全力を出した鉄蛇の主砲を前にすれば不安に駆られた。

 同じ盾を使っていた人が過去に死んでいる事を知っているからだ。

 

 

『"シールド残量、残り20%! メタルキラー残弾、残り1発!"』

 

 

 その不安で張り詰めた空気の中で、先生が一報を齎した

 シールドが削られている。1発で40%削れている。

 残りはあと1発。

 いける。

 

「生体反応は?」

『"まだある!"』

 

 無線機に付けられたバイタル測定機能を俗に言ったそれは、まだあるらしい。

 彼はまだ生きている。

 いける―――

 

『撃て! 撃って撃って撃ちまくれ! 削れなくても構わん、回復を許すな!!! 何が何でも40%以下を維持させろ!!!』

『風紀委員全隊、アビドスの方々も総攻撃を! 全力を出し尽くしてください!』

『戦車部隊、聞きましたね! 全速力で主砲を連射してください!』

 

 勝機と見たか、マコトがここぞとばかりに発破を掛けた。呼応するようにアコとイロハも指示を出し始める。

 一瞬砂漠に訪れた静寂を切り裂く銃撃、砲撃の音に、私の愛銃の掃射も加わった。

 主砲を撃ち終えた鉄蛇は、それを意に介さずまた動き始める。

 

「アコ、シールド残量を3秒刻みで読み上げ続けて」

『それでしたら私が。アコ行政官は各隊の指示がありますが、いま私は手が空いてます』

「チナツ……わかった。お願い」

『はい。パーセントは省いて、小数点以下繰り上げで読み上げます。22……22……23』

 

 私の頼みにそう答えたのは、医療班としてアビドス校舎に残している火宮チナツだった。

 数字さえ読み上げてくれれば誰でもいいし、彼女が言うようにアコは咄嗟の風紀委員への指示出しもある。そのため彼女の名乗りには特に反対せず任せる事にした。

 それにしても、シールドの回復速度がやはり速い。

 およそ6秒につき1%の回復。

 40%まで、残り100秒ほど……!

 

「あと100秒でもう一発メタルキラーを撃ち込まないといけない訳だけど……彼岸レイト、いけるかしら? …………彼岸レイト?」

 

 鉄蛇に銃撃を浴びせながら通信を掛けるが、(いら)えが無い。

 訝しんで再度呼びかけるが結果は同じ。

 

『"バイタルに乱れがあるけど……レイト、聞こえる?"』

『レイト、応答してちょうだい。レイト?』

『レイト先輩? 応答して下さい、先輩!』

『ちょっと、大丈夫なの!?』

 

『26……26……27……』

 

『先輩……?』

『レイト先輩、大丈夫ですか? 動けますか?』

『ちょっと、行動不能になったならそう言って! せめて呻き声だけでも上げてよ! ねえちょっと!』

 

『30……30……31……』

 

 不審に思ったらしい先生と調月リオも呼びかけ始め、その様子に奥空アヤネ、黒見セリカが続く。アビドスの2年生達も不安に駆られた声で訴えかける。

 

『おい、彼岸レイト、聞こえているなら返事をしろ! まさか死んでいないだろうな!?』

『縁起でもないこと言わないで下さいよ! ちょっと、あなたいい加減に応答くらいしたらどうなんですか!?』

 

『33……33……34……』

 

 業を煮やしたようにマコトとアコも詰問の勢いで声を投げ始める。

 

 その間も、鉄蛇は動きを止めない。

 

 未だ主砲の影響で砂塵が立ち込める地点を中心にグルリと体を這わせ、蛇が巻くとぐろのような態勢を取った。

 頑強な巨体を使った物理的な封鎖だ。

 これでは助けに行けない。

 囲われた彼は、逃げられない。

 

 そして、とぐろの中央に顔部を向けた鉄蛇はグパリと大きく口を開けた。

 

 私の掃射、戦車の砲撃、風紀委員やアビドス、SRTの面々の精一杯の射撃を浴びせて尚、鉄蛇は微動だにしない。

 

『チッ……! レールキャノンを使え! 行動不能に出来るかは分からんが、シールド上から無理矢理ぶち込むしかない!』

『そうするしかなさそうね……! ワカモ、出力を上げるわ!』

『―――出力100、110、115……』

『"主砲、充填―――"』

 

『38……38……39……!』

 

 

 口腔から除く巨大な砲身に、絶大なエネルギーが瞬時に集束する。

 

 

『レールキャノン最大出力』

 

 

 地平の彼方で、金色の電光が収束する。

 

 

 

 ―――瞬間、鉄蛇が爆発した。

 

 

 

「――――」

 

 空を飛んでいた私は、目の前で起きた事に瞠目した。

 既に二度見た爆発だった。鉄蛇の主砲に集束していたエネルギー、それの暴発。それを誘発するためだけに開発された弾丸でのみ引き起こされる現象。

 

『"シールド消失! ワカモさん!"』

 

 先生の声が耳朶を叩く。

 

 時間が止まった錯覚を覚える中で、眼下を見る。

 

 白銀のとぐろのその中心―――砂塵に隠れたそこに、確かに立つ人影を視認する。

 

 

『……やれ、ワカモ』

 

 

認識した瞬間、男の通信が耳朶を震わせ。

 

 

『お任せを―――』

 

 

 

『これで、終わりです』

 

 

 

強い意志と共に女性が静かに応えた。

 

 

 一瞬の後、全力が込められた絶大な一撃が鉄蛇を襲い―――その巨大な装甲に大穴を穿った。

 大きく仰け反った鉄蛇は蛇腹構造から悲鳴のような軋みを上げながら砂漠に倒れ伏し、沈黙。

 

 

『"……対象、沈黙―――作戦完了だよ! 撃退どころか撃破まで! みんな、お疲れ様!"』

 

 

 誰もが沈黙を保つ中で、先生のその声はよく響いた。

 わっ、と通信が一気に喧噪に満ち溢れた。

 初めて参加する者達は無事に終えた事に安堵し、経験者たちはようやく鉄蛇を倒せた事に喜びの言葉を吐いて、互いの健闘を称え合っていた。

 

 その様子に思わず苦笑しながら、私は残骸となったとぐろの中心で倒れている彼の下へと向かった。

 

 

*1
小学5年生時代の水着を着れる





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