ブルアカ転生記譚   作:背教者

5 / 46
掲示板形式、先生視点の順で進みます
また後半に男子AI絵があります


Vol.4→1 正義求むる戦乙女編
【行動】数日経って【開始】


6:名無しの転生先生★

とりあえず軌道には乗り始めたねー

 

8:名無しの転生生徒

いやほんと、お世話になります

 

9:名無しの転生生徒

当初はどうなることかと……

 

10:名無しの転生生徒

犯罪に走りそうになったのは混乱し過ぎでした

 

13:名無しの転生生徒

にしても234人って案外少なかったね。もっと多いと思ってた

 

16:名無しの転生先生★

リンちゃんにめっちゃくちゃ睨まれたけどねぇ

「多過ぎです」って言われちゃった

 

18:名無しの転生生徒

多過ぎです、じゃねーんだよなぁ

 

19:名無しの転生生徒

まあ俺らはマジで異物だからしゃーないけど

俺らの人数以上のホームレスの子供いるんだよなぁ……

 

20:名無しの転生生徒

現実問題金は掛かる訳だしない袖は振れないんで全部救えるとは思わんし救えとも言わんけど、救える権限を持ってる立場の人間が吐いていいセリフではない

 

22:名無しの転生先生★

リンちゃんの考えとか予算の関係とかも分かるけど口に出しちゃうのはね

あの子に政治は向いてないよ

 

23:名無しの転生生徒

分かる~

 

24:名無しの転生生徒

根回しとか苦手そうだもんなぁリンちゃん……

 

26:名無しの転生生徒

その辺は失踪した会長ちゃんがやってたんやろなって

てか消去法で会長ちゃんがやれてないと政治回らないんよ今のポストだと

 

29:名無しの転生生徒

ああ……だから原作や前世先生が政治関係で立ち回ってたのね……

 

32:名無しの転生生徒

そらまあ、エデン条約は連邦生徒会側からの話なのに調印式に参加しないからな……

 

35:名無しの転生生徒

シャーレは連邦生徒会直轄の組織とはいえ、条約の話が出た頃は無かった訳だしな

書類上はともかく実情では参加してないと言わざるを得ない

 

37:名無しの転生先生★

エデン条約ってなに?

 

40:名無しの転生生徒

ゲヘナとトリニティの間で結ばれようとしてる平和条約っすね

発起人は失踪中の会長ちゃんです

 

42:名無しの転生生徒

先生が関わるのはまだ先の話と思いますが、メインストーリーにも関わる話ですな

 

44:名無しの転生生徒

一応一般には非公開だった筈なのでお気を付けを

 

45:名無しの転生生徒

こういう『秘匿情報』を知っちゃえるから色々と危ないんよな

鋭い奴だと「なんか反応が妙だな」で推理してくるし

 

46:名無しの転生生徒

まあさすがに脳内掲示板で知りました~なんて答えは出ないだろうけど、だからこそ現実的な予測で敵判定下されかねないリスクもあるんよね

 

48:名無しの転生生徒

エデン条約絡みは特にそういう感じで危険なんで注意してくださいっす

 

51:名無しの転生先生★

えぇ……

生徒からも敵認定されちゃうの、私……?

 

54:名無しの転生生徒

まだ実感無いかもですが

キヴォトスの生徒的に、大人って基本敵なんですわ。不信の象徴と言ってもいい

 

56:名無しの転生生徒

地元で長らく付き合いがあるとかならまだしも初対面相手なら不信や疑念から入るのがデフォです

 

59:名無しの転生生徒

大半がブラマで食い物にしてくる連中とかなんよね

スーパーの店員ロボや獣人とか良い人もいるにはいるけど

 

60:名無しの転生生徒

あとキヴォトスって倫理ゆるゆるなんで普通に犯罪行為する子供多いっすよ

何ならある意味大人より派手に犯罪行為します

 

62:名無しの転生生徒

しかも原作だと先生がその犯罪行為を後押しする場面すらあるし、フラグ的にそれが必須という

 

64:名無しの転生先生★

>>62

ウソでしょ……???

 

66:名無しの転生生徒

マジです

 

69:名無しの転生生徒

ガチなんだよなぁ……

 

70:名無しの転生生徒

アビドス行く事になったら覚悟しておいた方がいいですよ

最低でも2回*1は犯罪行為やらないとなんで

 

73:名無しの転生先生★

>>70

ウソでしょ……

それバレたら懲戒免職食らうんじゃ

 

74:名無しの転生生徒

バレなきゃ犯罪じゃないんです

 

77:名無しの転生生徒

てかやらないとアビドスの問題解決できない

 

80:名無しの転生生徒

まあ……時間を掛ければ何とかなるかもしれないけど

その間に悪事の証拠を揉み消されかねないのよね

 

82:名無しの転生先生★

だからと言って犯罪は……

 

85:名無しの転生生徒

まあそうなるよね

 

86:名無しの転生生徒

むしろ止めずにノリノリで後押しする原作・前世先生がおかしいからね

 

87:名無しの転生先生★

一応聞くけど、その2回の犯罪行為ってどういうこと?

 

88:名無しの転生生徒

1回目はブラックマーケットの闇銀行に銀行強盗。取引の書類が目的

2回目は砂漠にある闇銀行に噛んでた企業の施設を確認してたら不法侵入してて警備が出てきて戦闘

 

89:名無しの転生生徒

アビドスって何十年も前からの膨大な借金あるのね

その契約をしたのが上の闇銀行、もといカイザーローン

2回目の企業ってのがカイザーインダストリーの施設

 

90:名無しの転生生徒

カイザーって付くのはグループ企業で、大本はカイザーコーポレーション

悪の総本山よ

 

91:名無しの転生生徒

なおブラマにはカイザーと同等以上のやべぇ企業や集団やマフィアがうじゃうじゃいる模様

何なら木っ端にもやべぇのはいる

 

93:名無しの転生先生★

本当にどうして連邦生徒会はブラックマーケットに対処してないの??????

 

96:名無しの転生生徒

何でやろなぁ……

 

99:名無しの転生生徒

真面目な話をすると、悪事の証拠を掴ませない&突っつかれても蜥蜴のしっぽ切りで済ませる&企業を解体する事の悪影響を懸念して動けないの三重苦があるからっすね

 

100:名無しの転生生徒

動きが鈍いんだよなぁ

だからその間に逃げられちゃうし、他の問題事で判断が更に遅れて忘れ去られる

 

103:名無しの転生先生★

えぇ……(困惑)

 

106:名無しの転生生徒

一応連邦生徒会にもSRTっていう特殊部隊がいて、その子らを動員、潜入させて証拠を掴んで……ってのも出来なくはなかったんですが

今はそれもう出来ないんですよね

 

107:名無しの転生先生★

SRT……?

 

108:名無しの転生生徒

SRT特殊学園のことですね

「Special Response Team」(特別対応チーム)の名を冠した、キヴォトスの法執行機関における最高学府です

 

109:名無しの転生生徒

通常、学校毎に自治区があって、その自治区毎に治安維持組織があるんすね

トリニティなら正義実現委員会、ゲヘナなら風紀委員会って感じで

ちなみにヴァルキューレ警察学校は連邦生徒会の管轄で、基本はD.U.地区が治安維持の管轄です

ただそれらって対応した自治区内にしか権限が無いんで、例えばゲヘナで暴れてた奴がトリニティ自治区に入っちゃったら風紀委員は追えないんです。ヴァルキューレも基本は同じです

 

110:名無しの転生生徒

けどSRTは連邦生徒会長直属の学園組織なんで、あらゆる自治区への介入が可能なんですね

ここはシャーレ部員と似た感じの扱いと考えていただければ

 

111:名無しの転生先生★

政府直属組織ってなんか凄いね!

でも何でその子達を頼れないの?

 

112:名無しの転生生徒

SRTを動かせるのが連邦生徒会長だけだからっすね

今その人が失踪してて、かつリンちゃんが代行の座に留まってる&書類で忙殺されてて指揮を執る暇が無いからSRTを動かせないんですわ

 

113:名無しの転生生徒

ついでに言うとSRTの生徒側も連邦生徒会長の命令じゃないと動かないと主張する子がいたりする

いや全員じゃないんだろうけどね

原作だとそもそもロクにキャラ出てなかったし、そもそもそういう思想って入学・入隊時点の思想チェックで弾かれててもおかしくないし

 

114:名無しの転生生徒

まああの子ら結構追い詰められてたし色々揺れてた頃で、SRTに居た頃の環境や思い出にしがみついてただけだろうから……

今はまだマシなんじゃないかな?

 

115:名無しの転生生徒

連邦生徒会長というSRTの活動に対して責任を負う存在が不在になって、宙ぶらりんになった武力に危機感を持った連邦生徒会の役員が協議した結果、廃校になる予定なんよね確か

そろそろ議題に上がってきてるんじゃないか?

 

117:名無しの転生先生★

なんだかすごく詳しいね皆……

もしかしてSRT関連もメインの話だったりする?

 

120:名無しの転生生徒

そっすね

 

121:名無しの転生生徒

ええまあ、ガッツリと

 

122:名無しの転生生徒

さっき話題に挙がってたカイザーも絡んでくるし、何ならリンちゃんに向かない政治劇も展開されます

 

123:名無しの転生生徒

あと先生も拉致監禁されたような

 

124:名無しの転生先生★

本当にガッツリだね!?

え、SRTの子が敵になるの? 勝ち目ある?

 

126:名無しの転生生徒

勝ち目自体はまあ割と?

SRTの子は味方にもなるし敵にもなるっすね

 

128:名無しの転生生徒

ちなみに敵に回るSRTの子達に関しては俺らもあんまり知らないっす

なんせ原作で実装される前に転生してるんで

 

131:名無しの転生生徒

味方になる方のSRT生徒なら幾らか知ってるんだけどね……

 

132:名無しの転生生徒

特殊部隊なんで学園の場所は不明だしその実態も一般にはあんまり公開されてないんよね

敵になる方のSRT生徒はメディア取材に幾らか応じてたっぽいんだけど

 

133:名無しの転生生徒

敵になる方の4人は狐坂ワカモを捕まえた実力者なんよな

メインの時はメンタルデバフで実力下がってた疑惑があるがまあ強いのは確実

 

134:名無しの転生生徒

ちなみにワカモは黒い和服みたいな制服にライフル持った狐面の子

シャーレビル奪還戦の時に会ってるね

 

136:名無しの転生先生★

ワカモ? そんな子知らないよ?

 

138:名無しの転生生徒

ん?

 

140:名無しの転生生徒

おや……?

 

142:名無しの転生生徒

こーれはもしかして

 

143:名無しの転生生徒

そこも違うのか……?

 

146:名無しの転生生徒

奪還戦の途中とかシャーレビルの地下で会ってないっすか?

割と特徴的だからまず見逃さないと思うんだけど

 

147:名無しの転生生徒

シャーレビルを襲撃してた連中を指揮してたのがワカモって、リンちゃんから連絡とか受けてない?

 

148:名無しの転生生徒

俺ら原作で知ってるから隠したりはしなくていいよ?

 

151:名無しの転生先生★

いやごめんホントに知らない……

ワカモって誰ぇ……?

 

154:名無しの転生生徒

マジで……?

もしかしてこの世界、ショットガンの子だけじゃなくワカモまで居ないのか……?

 

155:名無しの転生生徒

先生、連邦生徒会かヴァルキューレから矯正局から脱獄した囚人の話来てない?

 

157:名無しの転生先生★

あー六囚人だっけ? 来てたよー

でもリストにワカモなんて名前無いよ?

【六囚人の名簿.png】

 

160:名無しの転生生徒

本来七囚人なのに一人減ってるゥ!!!

 

162:名無しの転生生徒

名簿からワカモ消えてて草

いや草じゃねぇわ何で居ないんだよ???

 

165:名無しの転生生徒

なんやこの世界……

 

166:名無しの転生生徒

俺らの原作知識どこまで通用するか割と不安になってきたな

 

168:名無しの転生生徒

原作どころか前世キヴォトスの知識・記憶・経験すら通用しなさそうだぞこれ

 

170:名無しの転生生徒

こっわぁ……

何が怖いって、何がどうしてそうなってるのか分からないのが怖い……

 

173:名無しの転生生徒

へへへ……面白くなってきたじゃねぇか……(冷や汗)

 

176:名無しの転生生徒

>>173

この状況で楽しめるの、お前おかしいよ……

 

177:名無しの転生先生★

一応聞くけど、ワカモっていう子もおじさんちゃんみたいに居ないと詰むタイプの原作キャラなの?

 

180:名無しの転生生徒

おじさんちゃんは草

居ないと困るかっていうと、然程……?

 

182:名無しの転生生徒

まぁ、チュートリアル以降のメインで絡むのは俺らが知る限り一回だけっすね

その一回もワカモ以外に味方居たし割といけそうだったから居なくても良さげではあるかも

 

184:名無しの転生生徒

原作だと奪還戦で顔見せ、シャーレ地下で出会って先生に一目惚れ

惚れた相手に何回かイベントで絡んで

最終編(最後ではない)と呼ばれるメインストーリーの総力戦に助っ人で参加

こんな感じっすね

 

187:名無しの転生生徒

ぶっちゃけ先生に惚れててもセコムする訳じゃないから居なくても弊害はない

マジで上に挙がってる最終編の一回がどう響くかって感じ

 

188:名無しの転生生徒

七囚人の筆頭だったからだろうけど表出歩けないからねワカモ

そら体制側の先生との絡み少なくて当然なんすわ

 

189:名無しの転生生徒

俺がいた前世キヴォトスだとまあ普通に大暴れしてましたね

先生に窘められて多少我慢できるようになってからはかなり収まってたけど

 

192:名無しの転生生徒

何やらかしたか知らないけど停学処分食らってたからな……

まあ同じ七囚人には一発退学処分を受けたヤベー奴がいるんだけど

 

193:名無しの転生生徒

ワカモはまだ賠償で済ませられる範疇だけどカイは済まない範疇だったからな……

 

194:名無しの転生先生★

出てきた情報見た感じだとあんまり良くない子だったのかな?

 

197:名無しの転生生徒

まあ悪い子ではある

 

199:名無しの転生生徒

好きな人の言う事を聞こうとする一途な部分はあるけど好きな人以外の事は結構雑な対応をする子だった。先生の近くにいる生徒を悪い虫扱いして一方的に狙撃したりとか

まあ子供と考えれば別におかしくはない感じ?

破壊衝動さえ無ければなぁ

 

202:名無しの転生生徒

まだ可愛いレベルではある

被害被った側からすれば堪ったもんじゃないが、あれでも対話自体は完全拒否する訳じゃないからまだマシ

 

204:名無しの転生生徒

やべー女ではあるが邪悪ではないからなワカモ

悪い大人どもよか全然マシ

 

207:名無しの転生生徒

前金を払ってれば傭兵としてキッチリ仕事をこなすしな

先生が敵にさえいなければ寝返る事もない

 

210:名無しの転生先生★

>>207

『先生が敵にさえいなければ』

なるほど……そういう感じの子なのか

可愛いね

 

212:名無しの転生生徒

うん、そうなんだよな

可愛いんだよワカモは

これで先生に対しての淑やかな態度を他にもできれば……! とも本当に思う

 

215:名無しの転生生徒

なんか事情はあるっぽかったんよな、原作を見た限りでは

 

217:名無しの転生生徒

まあそのワカモはこの世界に居ないっぽいんですがね

 

219:名無しの転生生徒

いやぁ……ホントに何でなんやろな

俺ら先生の近くにいるってか世話になってるから襲われないのは良いんだけど、それはそれで原作のキャラが居ないの不安過ぎる

 

220:名無しの転生生徒

襲ってほしくないだけで別に居なくなってほしい訳じゃないんよ

 

221:名無しの転生先生★

私も話してみたかったなぁ

 

 

 

 

 

 手元にあった六囚人の書類。

 そこに本来ならあったらしい名前の顔も知らぬ少女を思い浮かべていると、ポーン、と執務室の外から音が聞こえた。エレベーターの音だ。

 どうやら誰かが来たらしい。

 誰かな、生活指導枠の転生者の子達かなと思いながら入口に視線を向けると、ちょうどハイテクな扉がシュッっと音を立てて開いた。

 そこに居たのは青年だった。

 

”あれ、レイト?”

「こんにちは。数日ぶりだな、先生」

 

 尋ね人は数日前、シャーレビル争奪戦にて快勝を収めたMVPの男子、彼岸レイトだった。

 別れた時とほぼ変わらない出で立ちの彼は挨拶しながら入ってきた。ぎぃ、と椅子を回して彼の方に体を向ける。

 

”こんにちは。そうだね、数日ぶり。そっちはどう? あの時は学校が襲われてるって話だったけど”

「不良集団の拠点はいくつか潰したが……相も変わらずだ。襲撃は依然として続いている」

”えっ。大丈夫なの? それにここに来ても……”

 

 心配になって問いかけるが、彼は表情を変えないまま問題ないと返してきた。

 

「後輩達だけでも持たせられる実力はある。気力もまだ残っている。元々俺は外回りが多いからな、あいつらも慣れている」

”外回り? あーもしかしてユウカ達と知り合いなのって……”

「そういう事だ」

 

 予想を肯定するように彼は頷いた。

 しかし、それはそれで疑問が浮上する。

 掲示板の皆の話によると、自治区を超えての戦闘行為は通常認可されていないらしい。けれどレイトはハスミやユウカ達の戦闘手段を知っていたことから、多分だけど他自治区で戦闘をしているのだと思う。

 怒られたりしないのだろうか、と疑問になった。

 

”でも怒られたりしないの? 多分だけどレイトって、別の自治区でも戦闘行為してるよね?”

「都度許可を取っているからな」

”都度? 不良の子達との戦闘って、割と突発的だって聞いてるけど”

 

 予知夢とかで未来を知ってないと流石に先んじて許可を取り付けるのって無理では? と疑問が浮かんだ。

 いやそもそもそんな気軽に許可って出るようなものなんだろうか。

 キヴォトスにおける学校と自治区って、元の世界の国と国土みたいな概念だと思うのだけど。

 そう思っていると、彼は腕を組んで少しだけ眉根を寄せた。

 

「俺がわざわざ後輩達を放って外を回っているのは金のためだ。俺は傭兵兼賞金稼ぎだからな」

”そうらしいね。詳しくは知らないけど”

 

 そう返すと、レイトの眉根が更に寄って表情が険しくなった。

 

「…………先生。まさか何も知らない、というか指名手配や懸賞金システムについて聞かされていないのか……?」

”えーっと……単語としては分かるけど、制度とかはまだ……”

「……はぁ…………連邦生徒会め……」

 

 痛む頭を押さえるように目元を手で覆いながら嘆息した彼は、再度腕を組んだ。

 

「単語から分かるだろうが……懸賞金は、捕まえてヴァルキューレに引き渡す事で報酬を得られるシステムの事だ。基本的に犯罪者は各自治区によって裁かれるが、それが大規模、または複数の自治区を跨ぐレベルの犯罪で容疑者が未逮捕の場合、連邦生徒会とヴァルキューレ警察学校、また被害自治区の連名で懸賞金が掛かる。被害規模や罪の重さが大きくなるほどその額も比例して多くなる」

 

 例えば――、と。

 彼の目が私からデスク上の書類に向いた。

 

「六囚人。それが分かりやすい例だ」

”あーなるほど。じゃあこの子達を捕まえたら報酬が出るんだね”

「いや、先生の場合は出ないだろう」

”……えっ”

 

 いっぱい報酬が入ったら掲示板の皆にたくさん食べさせてあげようと皮算用していた私は、レイトの一言で凍り付くことになった。

 どうして? と目線で問うと、ほんの少し憐れむような色を目に滲ませながらレイトが言った。

 

「この懸賞金は連邦生徒会、ヴァルキューレ警察学校、SRT特殊学園の生徒が捕まえても出されない。また懸賞金を掛けた自治区の治安維持組織所属の者が捕まえた場合も同様だ。懸賞金自体が公的財源から出される税金だからな」

”……じゃあシャーレも……”

「連邦生徒会直轄組織であり、そこの予算から運営費が出ている以上まず出ないだろう。公的機関の者が捕まえれば懸かった懸賞金分の予算が浮くからな。直接の依頼ともなれば予算を多少融通されるかもしれないが、少なくとも手配書通りの額はまず出されないと考えておくべきだ」

”そんなぁ~……”

 

 ぐでっ、とデスクに突っ伏す。とてもはしたないが許してほしい。

 ちょっとやる気を無くなってしまった。

 少しして、顔を回してレイトを見る。

 

”……ちなみにだけど、当番の生徒にお願いして捕まえてもらった場合も……”

「実績にはなるだろうが、そもそも当番がシャーレの活動であり権限の範疇だから懸賞金を貰うことは無理だろうな。むしろそれをして欲しいから六囚人の詳細を送ってきたのだろう」

”ひぃん……”

 

 再度顔をデスクに押し付けた。

 公務員は副職禁止っていうけどそういう事なんだろうか。キヴォトスでもそうなのか、とより気落ちする。

 子供達を守る気ではいるけど、ちょっと今はやる気が出ない……

 

”う~……書類やりたくないよ~……”

「…………まぁ、俺も目を背けたくなる量ではあるな……」

 

 ほんの少し、声音に苦笑を滲ませながらの同意。

 またぐるんと顔をレイトに向けると、彼はデスクに近付いて積み重なった書類の束を表情を変えずに見ていた。

 若干目の色が死んでいるように見えるのは気のせいだろうか……?

 

「……そういえば先生。今日は当番を呼んでいないのか?」

”あーうん。ここ数日でユウカ達4人は来てくれてね。流石に短期間で連続は悪いかなと思って遠慮したの。彼女達も自分の仕事があるから”

「なるほど……」

 

 特にミレニアムの生徒会にあたるセミナー――国の政府にあたる組織――の会計だというユウカは、多忙さで言えば飛び抜けていると言えた。なにせ直近まで発電所が落ちて混乱の最中だったのだ。経済活動に大ダメージともなれば、会計としては色々大変だろう。

 けれどそれを縫ってでも当番に来て手伝ってくれた彼女達には感謝しかない。

 とはいえそれに頼り切りも悪いので、各一回ずつ当番をお願いし、雑談しながら関係性を深めた後は一旦時間を置いてもらう事にした。

 なので今日の当番は無かった。ちなみに向こう数日も当番は無しの予定である。

 

「俺を呼ばなかったのは、気遣っての事か」

”学校が襲われてるってのっぴきならない状況だったみたいだからね。流石にそこまではこっちも追い詰められてないから”

「そうか。その気遣いに感謝しよう」

 

 そうお礼を言った彼は、再度書類を見つめて数秒黙考を挟んだ。

 どうしたんだろう、と小首を傾げながら彼を見上げていると、徐に視線が向けられる。

 

「時に先生、あんたシャーレから外に出ているか?」

”そんなにかなぁ……”

 

 キヴォトスに来た私だが、その経緯はとても突拍子の無いものだ。クレジットカードとある程度のお金は用意されていたけど家とかは無かった。

 なので私はシャーレの居住区画に住み込みで働いていた。外出するとすれば何かの書類を直接持っていくか、シャーレビルのコンビニで買えないものを買いに行ったりする程度である。

 ちなみに転生者の皆も別室ではあるが居住区画に住んでいる。

 ここ数日の生活を思い返しながら答えると、そうか、と彼は短く頷いた。

 

「そうなるとあまり他の生徒に会っていなさそうだな」

”そうだねぇ……一応指導生徒の子達は居るんだけども”

「ああ……初日にいきなり200人超えの無学籍の子を抱えたとかでクロノススクールが報道していたな。超法規的組織なのも相俟って余計注目されているようだ。何か企んでいるのでは、と世論を煽り立てていたぞ」

”企んでなんかないんだけどなぁ……”

「ゴシップは視聴率を稼げるからな。確定した情報でないからと好き勝手に妄想を垂れ流す」

 

 そう吐き捨て、フン、と不快げに鼻を鳴らした。過去に何かあったのだろうか。

 気にはなったが、特段親しくもないのに踏み込むのもなぁと思った私は一旦スルーことにし、上体を起こした。

 

「話を戻すが」

”ん? 何だっけ?”

「シャーレの外に出ていなくて他の生徒とあまり会ってないという話だ」

”あーそうだったね”

「ユウカ達と知り合っていたから察しているだろうが、俺は複数の自治区の生徒と知り合っている。先生さえ良ければ顔繫ぎをしようと考えているんだが」

 

 もっと外回りしろ、と小言を言われるかと思ったら、なんかとんでもない提案をされた。

 ユウカやハスミ達でもそういう提案はしてこなかったのだけど。

 

”それは願ったり叶ったりだけど……どうしてそこまでしてくれるの?”

「そうだな……公私ともに理由があるが、どちらから聞きたい?」

”じゃあ公的な方から!”

「シャーレの協力を得られる機関、あるいはシャーレが協力を得られる相手が増えれば、それは結果的にキヴォトスにとって良い事だからだ」

 

 例えば、と。再度彼の目がデスク上にある六囚人の名簿に向く。

 

「正直な話、ヴァルキューレ単体では賞金を懸けられる程の犯罪者を捕まえるのは厳しいところがある。だからこその在野の強者に捕まえさせようとする懸賞金システムな訳だが……それにも限度はある」

”レイトでも無理なの?”

「知能犯や電子的な犯罪となると俺はあまり戦力にならん。その辺は後輩に任せているからな」

”へ~! 優秀なんだね!”

「ああ……俺にはもったいないくらい、出来た後輩だ」

 

 本心から称賛すると、ほんの少し誇らしげに彼の口元が緩んだ。

【挿絵表示】

 

 厳めしい顔つきだけどユウカ達と良好な関係を築いている点から予想していたが、思っていたより彼は人の事を大切にする気質(タチ)らしい。

 

「ともあれ、俺とその後輩のような協力関係をシャーレを基点に複数の自治区の組織で構築すれば、より確実に捕縛できるようになるだろう。有事の際の連携もスムーズになる。これが公的な理由だな」

”なるほど~”

 

 掲示板の皆の話を聞いた限り、アビドスは借金や土地の問題など多くの課題を抱えている大変な場所だとは知っている。

 それなのにキヴォトス全体の事を考えられるなんて視野が広いなぁと、素直に感心した。

 

「次に私的な理由だが……これは3つある」

”おお、3つも。どういう理由なの?”

「こうして親切にしていれば、困った時に助けてもらいやすいという打算が一つ目だ」

”ぶっちゃけ過ぎじゃない???”

「むしろ現状のシャーレに近付くとすれば打算ありきが普通だろう」

 

 いきなりぶっこんできたなと驚いて素の反応を返したが、これも正論で返された。

 まあ転生者の子達を除いて現状私と関係がある子達は仕事の関係性が基本だ。好感は持ってくれていると思うけど、私個人を優先する程ではないだろう。

 シャーレの権限はそれだけ大きく、そして異質、異常なものだ。

 未だ実感は無いけど、話に聞くだけでも常軌を逸している事くらいは理解していた。

 

”2つ目は?”

「来年以降もシャーレが存在するならここに就職するのもいい――」

”おお!”

 

 その発言に、ガタン、と立ち上がる。ガシッ! と彼の両肩に手を乗せる。

 

 

”内定出すから是非お願いします!!! 私人事権無いけど!!!”

 

 

 願ってもない事だ。即断即決、即採用決定である。

 私に人事権さえあれば……!

 

「――か、と…………判断が早いな」

”この書類の山を見ればどれだけ切実な願いかは悟って頂けるかと”

「ああ……」

 

 二人してデスク上に積み重なっている書類に視線を向ける。

 書類の数は対処すべき問題の数。対応したらその報告書も書かなければならない。一つの問題に対して二回、三回と書類を(したた)めていく事になるからそれはもう書類が山のように積み重なっていく。

 これを一人で捌くの割と心が折れそうになるのだ。

 かと言って、ユウカ達の協力ありきというのも問題である。

 

”当番制度を頼り過ぎるのも良くないし、生徒達には自分の学校生活を優先して欲しいんだよね”

 

 私生活を送っている最中に先生に呼ばれて、給料が出るとしても仕事をさせられるというのはとてもよろしくない。普通に考えて嫌悪される大人の振舞いだ。

 そうでなくとも子供の時分に仕事漬けなんて事を経験させたくないのが本音である。

 キヴォトスは子供が政治をしているけど、その点は思うところがある私だった。

 

「あんたならそう言うだろうと思った……ちなみに、事務員は雇わないのか?」

”住人からの雇用は打診したけど、機密性の観点から無しって言われちゃった。連邦生徒会からの派遣の話も今のところは無さげだねぇ”

 

 シャーレは超法規的組織。その権限は連邦生徒会長のものとほぼ同等レベルまであるらしいから、それを悪用する悪人が入り込む隙を可能な限り塞いでおきたいのだろうと思う。

 つまり当面の書類仕事は生徒の協力しか得られないという事だ。

 肩を落としながら答えると、なるほどな、と彼は応じた。

 

「となると、ここに就職するのは難しそうか」

”私がリンちゃんを説得すれば何とかなるかも? レイトはこのビル奪還作戦に参加してたし、最初期の所属な訳だし”

「なら足繁くここに通って実績と信用を積むとしよう」

 

 スン、と澄ました顔でそう言った彼は、最後に、と話を続けた。

 

「3つ目の理由だが……」

”……ん?”

 

 しかし、彼は続きを話さず、じっと私の顔を見つめてきた。

 ほんの少し目つきの厳めしさが緩んでいるような気がした。

 

”どうしたの?”

「――――いや。数え間違えた、3つ目は無い。忘れてくれ」

 

 そして、顔を少し背けてそう言ってきた。

 

”そう?”

「ああ……」

 

 なんとなく歯切れが悪く感じた。

 3つ目が無いというのはたぶん嘘だなと直感する。ただ触れられたくない理由があるのだろうと踏んで、触れない事にした。

 

「それで、顔繫ぎの件はどうする? 先生の都合に合わせてこちらも調整するが」

”是非お願いします。何なら今からでも行けるよ!”

「書類から逃げたいだけでは……?」

”そ、そんな事は、無いよ……?”

 

 鋭い……

 

”いや、期限はまだ先だから。余裕はあるから。これは気分転換だから”

 

 指をつんつんしながら言い訳を呟く私。

 その私に突き刺さるレイトの呆れた目。

 書類を貯めてた事をユウカに知られた時に向けられたものとはまた別種のそれは、心にもぐさりと刺さった気がした。

 

「……まあ、いい。今から行けるなら行くとしよう。早めに顔を合わせておいた方が良いからな」

”お、お願いします……ちなみにどこに?”

 

 そそくさとPCをシャットダウンし、外出の準備を整えながら問いかける。

 

「ヴァルキューレ公安局だ。まだ行った事ない筈だが」

”うん、無いね”

「なら今日はそこだ」

 

 そう言って、彼は執務室を出ていった。

*1
原作の銀行強盗、砂漠のカイザー施設侵入。なお土地的には校舎以外の立ち入り全部が一応不法侵入にはなる

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。