ブルアカ転生記譚   作:背教者

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前半掲示板形式、後半女先生視点です
原作ネームドが2人出ます
今話でメインとなる片方は現時点で未実装なので今後公式と解釈違いが起きるかもですが悪しからず



【突撃!】キヴォトスの治安維持!

 

300:名無しの転生先生★

そんなわけで

レイト引率でヴァルキューレ公安局へ挨拶に行くことになりました

 

301:名無しの転生生徒

挨拶は実際大事

業務で頻繁に会うから猶更ね

 

302:名無しの転生生徒

シャーレと一番近いしねヴァルキューレ

 

303:名無しの転生生徒

むしろ今まで顔合わせしてなかったんだって逆に驚いてる

 

306:名無しの転生先生★

シンプルに機会逃してたね

シャーレオフィス奪還戦の時の弾薬費の支払いとかそのほかの書類業務とか転生者の皆の保護申請とかでそれどころじゃなかった

 

307:名無しの転生生徒

その節は大変お世話になりました(平身低頭)

 

310:名無しの転生生徒

なんなら今もお世話になってる途中である

 

312:名無しの転生生徒

お礼はまあ今後返すとして

疑問なんだけどレイトってそんなに顔広いの?

 

315:名無しの転生先生★

>>312

行きしに聞いたけど、ヴァルキューレは賞金首を連れて行くから常連なんだって

あと賞金首と戦うにあたって自治区での戦闘許可を取れる程度には関係が深いっぽい。各生徒会と日程調整出来たら会わせてくれるって言ってた

 

318:名無しの転生生徒

まあチュートリアル組4人と顔見知りの時点でそれは分かる

 

321:名無しの転生生徒

セミナーのユウカと親しいから結構首脳陣と知り合ってそうよね

 

324:名無しの転生生徒

傭兵稼業ってアングラ側だから普通そんな信頼されない筈なんだけどな

 

325:名無しの転生生徒

トリニティ自警団みたいなもんって考えればまあ

 

326:名無しの転生生徒

>>325

それにしたって自治区を跨ぐレベルは異常よ

しかも律儀に毎回許可を求めて取れるって相当な信頼を得てるっぽいけど一体何をやったんだ?

 

329:名無しの転生生徒

聞いた限りだと個人レベルでSRTとかシャーレ染みた事をやってるようなもんだからな

 

331:名無しの転生先生★

本人の希望もあるし真面目に雇用したいんだよね彼

ユウカと並んで現状シャーレに欲しい人材だよ

 

333:名無しの転生生徒

まあ色んな自治区に融通を利かせられるって考えたら欲しい人材よね

 

335:名無しの転生生徒

前世の先生も最初は苦労してたっぽいしね

 

336:名無しの転生生徒

アビドスの問題に対処した事が報道されてからが本格始動って感じだからねぇ

現状だと実績も信用も無いからどこの学校も様子見なのよね

 

339:名無しの転生生徒

そんな中で既に信用を得てるらしいレイトが顔繫ぎしてくれるってなったらそら助かるわな

 

342:名無しの転生先生★

>>339

本当に助かる話だよ

 

ところでこの世界だと話に聞くアビドスの件って関わる事になるのかな?

シャーレに救援要請が届くレベルってなると彼もこっちを気にしてる暇無い気がするんだけど、こうして来てるからどうなんだろって気になってる

 

344:名無しの転生生徒

どうやろなぁ……

 

346:名無しの転生生徒

そもそもオフィスビル奪還時点でアビドス生徒はシャーレに本来来てないからな

 

347:名無しの転生生徒

連邦生徒会長が失踪して治安が悪くなった頃を契機にアビドス高校の襲撃が意図的に起こされてる筈だからまず離れられないんよね

レイトが物資補給のために出歩けてる方がおかしい

 

349:名無しの転生生徒

レイトが補給で動けてる辺り、ホシノがいない代わりに誰か入って人数は揃ってるのかもしれん

もしそうなら救援要請の手紙が届くのはまだ先だろうねぇ

 

350:名無しの転生生徒

あまり後ろにズレ込むとデスマーチスケジュールになりそうなんよな

 

351:名無しの転生生徒

てか下手するとシャーレと各生徒が関わるフラグ未構築で進んでしまいかねない

色々とヤバい

 

353:名無しの転生生徒

まああまり気を揉んだところでどうしようもないからね~

とりあえず今は先生が案内される自治区とか生徒の方に意識を向けましょう

 

354:名無しの転生生徒

せやね

 

357:名無しの転生先生★

だねぇ

そうこうしてたらヴァルキューレに到着~

【ヴァルキューレ警察学校前の図】

 

360:名無しの転生生徒

おーついたか

やっぱ車だと早いねぇ

 

362:名無しの転生生徒

カンナ元気にしてるかなぁ

前世キヴォトスだと割と仲良かったからちと心配

 

365:名無しの転生先生★

レイトが話を通してたからか女の子達が出迎えてくれたよ

犬耳の子が尾刃(おがた)カンナで、狐耳の方が七度(しちど)ユキノだって

【ピシッと敬礼しているカンナ、SRT装備のユキノの図】

 

368:名無しの転生生徒

ふぁっ!?!?!?

 

371:名無しの転生生徒

ユキノなんで!?

 

372:名無しの転生生徒

なんで君そこにいるの???

 

374:名無しの転生先生★

ん? SRTの子がヴァルキューレに居るとおかしいの?

所属が違うとはいえ同じ治安維持側の組織だし問題は無いよね?

 

376:名無しの転生生徒

そうなんだけども!

 

377:名無しの転生生徒

先生、先生

その子です

メインで敵になるSRTの子、その子です

 

378:名無しの転生生徒

なんなら敵SRT小隊のリーダーだぞ

 

380:名無しの転生先生★

えっ

 

 

 

 

「ヴァルキューレ警察学校所属、ヴァルキューレ公安局局長、尾刃カンナです。よろしくお願いします」

「SRT特殊学園所属、FOX小隊小隊長、七度ユキノです。初めまして、先生」

"わわっ、これはどうもご丁寧に……シャーレの先生です。よろしくね二人とも"

 

 私達を出迎えてくれた二人がピシッと敬礼を決めて挨拶をした。

 キッチリ訓練を積んでいる子の迫力というのだろうか、そういう圧のようなものを感じて一瞬ビックリした私は少し慌てつつ挨拶を返す。

 見ただけでどれくらい強いかなんて門外漢の私にはわからないが、それでも二人とも、相当鍛えているのを感じた。

 

「七度もいたとはな。非番か?」

 

 ユキノという子がここに居たとは知らなかったらしいレイトが装甲車の後部扉を閉めつつ、問いを投げる。

 問われたユキノがぴくっと黒い狐耳を揺らした。

 

「いや、非番ではない。とはいえ開店休業も同然だが……」

「……ああ。SRTを動かせる唯一の存在たる連邦生徒会長が失踪したからか」

 

 非番ではないが、似たようなもの。そのニュアンスから実情を悟ったらしい彼が得心がいったとばかりに言う。

 それを聞いて私も以前の掲示板でSRTについて教えてもらった事を思い出した。

 

「会長が失踪し、SRTの指揮権と作戦の責任を負える者が居なくなった。この状況に際してSRTの武力を危険視した上層部は、ヴァルキューレへの転校とSRT特殊学園の廃校案を出したんだ」

「まだ結論は出ていませんが……まあ、それぞれ部下を持つ身ですので。先んじて現場レベルでの擦り合わせをしていました」

 

 まだ本決まりではない。だけど二人は、きっとそう決まるのだろうと考えているらしい。

 それでも、掲示板の皆の話を信じるなら七度ユキノは心の底では諦めていない。

 作戦の指揮を執れる唯一の存在であり、作戦の責任を負う者が居なくなって、学校を廃校にしようとする動き。

 彼女は、それに抗おうとして―――

 

 ―――悪意の闇に絡め捕られた。

 

 細かくは聞いていない。

 人物や組織の関係くらいはともかく、メインとやらで細かく誰がどう動くかなどは知らない方が良いだろうと、敢えて教えられてないのだ。

 

 ―――大切なのは、経験ではなく選択。

 

 電車の子も、転生者の子達も、それは口を揃えて肯定していた。

 みんなの知識と色々と違うからもあるだろうけれど。

 それ以上に、私の目で見て、私の心で選択する事を望まれている。

 

"ねえ、ユキノ。SRTの件、私にも協力させてくれないかな"

「え……?」

 

 まっすぐユキノを見つめて問いかける。

 彼女は、最初は驚いて、今度は不信と怪訝の色を浮かべて見つめ返してきた。

 

「……なんのつもりです?」

"なんの、と言われても。生徒の助けになるのが先生の役目だからね"

 

 本音で答えると、彼女は潜めていた眉をハの字にして、困り顔になった。次いでそれを腕を組んで見守る体制に入っていたレイトの方に向ける。

 

「レイトさん……?」

「驚くことにこれが先生だ。つまり本心で言っている。そうでなければ見ず知らずの生徒をシャーレ発足初日に200人以上も指導対象として抱えないだろう」

"助けられる権限があって、それが必要な子達がいるなら使わないと何のための権限だってなるからね"

 

 もちろん無制限にという訳にはいかない。

 流石にしばらくは指導生徒としての保護はしないよう言い含められていた。それは予算の兼ね合いだけでなく、抱え込んだ生徒達をしっかり更生させなければ意味が無いからだ。

 幸い第一期生にあたる皆は前世のキヴォトスで勉強していた分があるから、無理に教鞭を取る必要は少ない。偶に真面目な補習を要する子もいるが、現地住人の家なき子達に必要な支援よりずっと楽なのは想像に難くない。

 そういうわけで暫くは新規の指導生徒を入れる事は難しい。

 事情があれば入れられなくもないだろうが、話の流れ的にヴァルキューレへの編入が薦められているからシャーレの支援は不要だろう。

 

 ―――けれど、だ。

 

 彼女には。

 ユキノには、心の支えが必要に見えた。

 一目で分かったのだ。

 その赤い瞳には光が無い。

 彼女は、いまの状況を本心からは受け入れられていない。

 きっとそれが、みんなが言う原作で敵役に回った根幹なんだと思った。

 

"間違ってたら言って欲しいんだけどね。ユキノは、SRTを諦めてないでしょう?"

「…………」

 

 答えは無い。

 けど、目は閉じられた口よりも明確に内心を物語っていた。

 不信と疑念に、警戒の色が加わる。

 

"例えば、なんだけどね。SRT学園の廃校を撤回させる手立てを考え付いたって言ったら信じる?"

 

 

「は?」

 

 

 苛立ち混じりの声。きゅっと瞳孔が縮み、目つきが鋭くなった。

 そんな彼女に、私は落ち着かせるように柔らかく語りかける。

 

"確認するけど、SRT特殊学園の廃校の話が出た理由は『責任を取る人が居ない』事と『指揮権の問題』の二つだよね?"

「……ええ、そうです。付け加えるなら、暴走しないかも懸念されてます」

"なら、私がその責任を負うよ"

「……は?」

 

 二度目に上がったそれは、困惑の色が強かった。

 何を言っているのか理解が追い付かないという顔。

 隣で話を聞いていたカンナも眉を寄せて困惑顔だ。

 

「……なるほど。そういう事か」

 

 しかしレイトは察したようだった。振り返って説明を求めるように視線を向ける二人に、彼が口を開く。

 

「まず『指揮権』についてだが、シャーレの先生は連邦生徒会が承認している学校の生徒をシャーレに無制限に所属させられる。つまりSRT特殊学園が学校として存在し、学籍を有している限り、ユキノや他のSRT生も所属可能。所属している間の戦闘での指揮権は先生が持つ。自治区間を超えての戦闘行為もシャーレの権限として付与されている。これで一つ解決だ」

「……確かに、法解釈としては問題ないですね……」

 

 ふむ、と顎に手を当て考え込むカンナ。

 『法解釈としては』と言っているのは、実情でそれが許されるのかという点が不透明だからだろう。周囲からも、指揮される側からも。

 

「次に『責任を取る者』について。これは指揮権と同様、シャーレに所属した上での作戦行動は必然的に先生が責任を持つ事になる。SRTかそうでないか、治安維持組織の者か否かに関係なく、シャーレの活動上における全ての生徒による責任を先生は負うからだ」

"みんなに手伝ってもらってる側だからね。それに、子供達の行動に責任を持つのは大人の務めだから"

 

 そう言うと、カンナとユキノはおかしなものを見るような目を向けてきた。レイトにもされた覚えがある。

 転生者の皆曰く、これが大人に対する不信という事なのだろう。

 それだけ子供達自身の力で頑張ろうとして、それだけ大人達が傍観しているという証左だ。

 

「……軽々しく『責任を負う』などと。そんな、初対面の大人を信じられる筈がないでしょう。どういうつもりなんです?」

"私は、私にとっての当たり前をしてるだけだよ"

「は……?」

 

 三度、困惑を露わにするユキノ。

 そんなにおかしなことを言ったつもりはないのだけど――でも、きっと、キヴォトスにおいて私の考えは異常側なんだろう。

 私は『大人』だ。

 彼女たちが警戒し、疑念を向ける『大人』の一人。

 

 正直、嫌われてたって構わない。

 

 苦痛ではある。

 でもそれは、伸ばせる手を伸ばすことなく傍観して、そのままその子が潰れていくのを見るよりずっとマシなものだ。

 知らないところで終わってしまった事を知るよりも、遥かにマシだ。

 

"私は別に、キヴォトスを変えたい訳じゃない。いい方向に変わればなとは思うけどそんな大それたことが出来るような人間じゃない。助けを求めてる人に手を伸ばして、力になれる事に協力するくらいしか出来ない。誰もかれも、何人もともいかない"

 

 どうして私が『先生』に選ばれ、キヴォトスに転生したのかは分からない。

 けどきっと意味があるのだろう。

 そして私は、その意味を探して生きる気は、そんなに無かった。

 

 目の前で苦しんでいる子供より優先すべき事なんてそんなに多くないのだから。

 

"ちっぽけな人間だよ、私は。大人だからってなにも変わらない。書類仕事で苦しんで、皆より体力が無くて情けない姿を晒して、そうして駆け回る平凡な人間だ。彼が居なかったら、シャーレビル奪還戦で命を落としてたかもしれないくらい脆い体なんだ"

 

 今でこそシッテムの箱のメインOSの少女アロナ*1により、バッテリーを使ったバリア*2で銃撃戦の近くにいても流れ弾を恐れる必要性は下がったし、ドローンも無しに指示を出して的確にサポートが出来る。

 しかしあの時は違った。レイトがいなければ、私は無防備で無策のまま戦場に出ていた。

 私は弱いのだ。みんなの協力なくしてシャーレは回らないし、私も誰の力にもなれない。

 

"だから、皆の協力があってシャーレは成り立ってるんだ。それを為せるのもシャーレに付与された権限あってこそ……その権限を使って私が責任を負えばユキノ達SRT生が母校を喪わないで済むなら、私はそうするよ"

 

 そこで、ユキノに微笑みかける。

 彼女は、困惑の面持ちのまま涙を浮かべていた。

 

"ユキノ。SRTの件、私にも協力させてくれないかな"

「っ……はい……よろしくお願いします……ッ!」

 

 涙を浮かべ、頬を伝わせながら、セーラー服の黒狐の少女は頷いた。

 その眼は、光を取り戻し始めていた。

 

 

 

 

「……それで、具体的にどう動かれるつもりですか?」

 

 ユキノが泣き止んだのを見計らって、見守り続けていたカンナがおずおずと問いかけてきた。

 そんな彼女に、私は胸を張って笑いかける。

 

"一先ずは直談判かな!"

「「えぇ……」」

 

 開き直りとですらある私の返答に、カンナだけでなく希望の光を目に取り戻したユキノも呆れたような―――というか呆れそのものの声を上げた。

 

"いや、待って。違うの。全くのノープランって訳じゃなくてね? 一先ず廃校が本決まりする前に差し込んで時間稼ぎを出来るようにしないと話にならないというか"

「……どういうことです?」

 

 いまいち要領が掴めない、と首を傾げるユキノ。

 そんな彼女に私が応えるようとした時、レイトが先に言葉を発していた。

 

「責任者に先生が着いて制度上の問題は解決できるが、暴走しないかの懸念の払拭は、その後の先生の指揮下で動く七度達の働き次第に掛かっている。撤回させられるのはお前達自身。その時間を用意するために直談判で異を唱えるという事だろう」

"そういう事! レイト、よくわかったね?"

 

 正にそう言おうとしていたので、ほぼ同じ内容を相談もしてないのに言い当てたレイトを誉めそやす。

 

「……延命には馴れているからな」

 

 しかし皮肉と受け取られたのか、少し遠い目で顔を背けられてしまう。

 

 ―――うーん……予想はしてたけど、中々根深そうだ。

 

 彼の様子に、内心で独り()ちる。

 学校が襲われてても来てくれてるから戦況としては余裕があるようだけど、彼の内心はそこまで余裕があるわけではないのかもしれない。

 とはいえ私はまだアビドスの事を何も知らないし、たった今SRTの事に関わると決めた今、あれもこれもと首を突っ込んで疎かにするわけにもいかない。

 当面はSRTの事に集中する事にした。

 

"レイト。この後だけど、連邦生徒会に直行してもらえる?"

「それはいいが、その前にSRT特殊学園の方に行くべきだな。今回の件を七度の口から聞いても先生を信用する者は居ないだろう。一時的にでも責任を負う上官となるのだから、顔を合わせて合意を得ておいた方が良い」

"あーそれは確かに。同意も無しじゃ反発されるだけだもんね"

 

 ただでさえ『大人』だからと不信の目を向けられがちなのだ。見ず知らずのキヴォトスに来たばかりの外様が責任を負うと言われても、信じられる筈がない。

 学校の責任者――外における国家元首相当――ともなれば猶更だろう。

 

"ユキノ、案内してもらえるかな?"

「えっと……制度上と守秘義務の観点から、外部の人間には秘匿されているのですが……」

 

 私のお願いに、ユキノが申し訳なさそうにそう言ってくる。どうやらSRT特殊学園の所在地はそれだけ秘匿された場所のようだ。

 

「制度上シャーレの先生は知れる立場にある。俺も知っているから移動の足は問題ない」

「は……?」

 

 しかしそこで、レイトがフォローを出してくれた。

 そんな彼の言葉にユキノが素っ頓狂な声を上げる。声こそ無いがカンナも瞠目している。

 

"なんでレイトが知ってるの?"

「連邦生徒会長にスカウトされて見学もした事があるからだ。最初はヴァルキューレ、3、4年前にSRTへな。アビドスを優先したから、編入や転入は結局断ったが」

"なるほどそういう……えっ、連邦生徒会長さんにヘッドハンティングされてたの!?"

 

 絶対凄い事なのに事もなげに言うから一瞬流しかけた。思わず二度見する。

 

「そこまで良いものではない。連邦生徒会の予算から捻出される懸賞金をほぼ単独でかっさらっていくから、SRT生、ひいては連邦生徒会所属にして予算を浮かそうとしていただけだろう」

"あ……あーなるほどそういう……"

 

 そういえば、ヴァルキューレやSRT生は賞金首を捕まえても懸賞金を報酬として受け取れないと話していた。

 それを知っていたから彼は入学しなかったわけだ。

 いや、そのスカウトの件を契機に知ったのか。

 この世界のアビドスの現状はまだよく知らないけど、転生者の皆から聞いた原作を考えれば、学校が廃校にならないよう借金返済のために賞金稼ぎをしているのだろう事は想像に難くない。それだけ彼にとってアビドスは大切なのだ。

 確かに受ける筈もない事だった。

 

「そしてそれを拒絶したから、俺が賞金首を一人で捕まえて懸賞金を全取りしにくくなるようにと治安維持組織やヴァルキューレ、SRTとの共闘前提なら各自治区での戦闘許可が5代前から下りるようになった」

「「え!?」」

"そんな経緯だったのそれ!?"

 

 ぎょっと、愕然の目を向ける。

 彼は温度差のある無表情でそうだ、と一つ頷くだけ。

 

「尾刃達が知らないのは一代でその意図が途絶えたからだ。予算繰りで連邦生徒会は苦しんでいたが、現場では賞金首になるほど凶悪な犯罪者達に苦しむ住民の声があり、賞金稼ぎの俺は戦力として喜ばれていた。だから5代前になった時点から普通に俺単独でも許可が下りるようになった。それが続いて今があり、こうして尾刃と七度とも知り合えた……という訳だ。今も続いていたなら俺は連邦生徒会もヴァルキューレもSRTも蛇蝎の如く嫌っていただろう」

 

 次々と語られる真実に女3人は驚くばかり。

 連邦生徒会側が実際どう考えていたのかは聞いてみないと分からないけど、彼が嘘を吐くとも思えないから本当の事なんじゃないかと思えてしまう。

 しかし、もしも本当だとしたら……

 

"統治者が一個人にそんな事をするなんて……なんで……"

 

 それはあまりに、不公平で、理不尽な話だ。

 数億の借金。

 億単位のそれは確かに莫大だけど、でもビルの建設や学校の運営などで動く額くらいなもの。全額負担こそせずとも援助くらいしてもおかしくはない。

 私はてっきり直接お金を支援するといった表立った動きは難しいから、彼が賞金稼ぎをしやすいよう各自治区にお触れが出ていると考えていたのだ。

 彼の話が本当なら、むしろ阻害するよう動いていた事になるが……

 

「当時の連邦生徒会は予算繰りで大変だったらしい。削れるところから削ろうとして、そこで俺に白羽の矢が立った。5代前の会長にとって……アビドスは、邪魔だったか、意識にすら上らない程度の存在だったのだろう」

 

 そうしてひそやかに出た言葉は、なぜ彼が賞金稼ぎをしているかの理由を、少なくとも5代前の会長は念頭に置いていなかった事を示していた。

 

「とは言え5代前以降の会長達もアビドスを気にした素振りがあった訳ではないがな」

"そんな事って……"

「キヴォトスの経済活動において、アビドスはロクに貢献できていない。砂漠化も過疎化も進んでいる。俺も転校を薦められた。見捨てられていてもおかしくはない……だが―――」

 

 そこで、彼の目がユキノに向けられた。

 

「SRTは違う。お前達がキヴォトスの治安改善に貢献していた事はよく知っている。今の連邦生徒会の役員達が今の立場に立つまでも、立ってからも貢献していた事もだ。そんなお前達が目立った不祥事もなく、お前達の責任でない事で廃校の憂き目に遭うなど……」

 

 ぐっ、と。食いしばる様子で言葉が止まり。

 

「到底、受け入れられない話だ。アビドスの長としても。戦友としても」

 

 少しだけ眉を顰め、厳めしい表情をより険しくしながら絞り出すようにそう言った。

 

 ……つまるところ、彼はこう言っているのだ。

 報われるべきだ、と。

 人のために戦ってきた者達に対する仕打ちではない、許してはならない、と。

 私とは違う理屈で、彼の立場だからこその心情で、彼もユキノらSRTの苦境に心を痛めているようだった。

 

"レイト……君は……"

「……話が逸れ過ぎたな。とにかく、俺もSRT特殊学園の位置は知っている。廃校を止めたいなら、さっさと行くぞ」

 

 顔を元の厳めしい無表情に戻した彼は、急かすように言って装甲車へと踵を返した。廃校と聞いて彼も内心穏やかではないのだろう。

 私とユキノは慌ただしくカンナに別れを告げ、装甲車の後部へと乗り込み、SRT特殊学園に向けて移動を開始した。

 

 

*1
タブレット内にいる少女。生徒には認識できない

*2
俗称アロナバリア。ゼロ距離射撃や肉弾戦以外は弾ける




カルバノグ編崩壊のお知らせ


・七度ユキノ
先生の子供達を助ける事は当たり前、誰かを助けるために動く姿勢が正義の心的に響いた。先生が浮浪児200人余りを一手に保護したのも地味に響いている
出会ってすぐ絆されたのは事を起こして擦れる前だったから
とはいえ正義云々を口にしてないので割と限界ではあった
レイトと共闘するSRT生の筆頭
アプリ実装はよ

・尾刃カンナ
ヴァルキューレ公安局局長
ストーリー的には癒着の只中にある
度々賞金首を捕まえてくるレイトとは顔馴染みであり実質レイト担当。共闘する際にはヴァルキューレ側からほぼ確定で出動しているので仲はそれなり

・先生
子供大好き人間で人助けは素でやる性格
一応自分の限界は弁えているが今回のユキノのように衝動的に抱えてしまう事はある
レイトの様子も気に掛かっている

・レイト
ヴァルキューレ、SRTとも繋がりを持つ
基本先生の補佐役であり移動の足
シャーレと先生が各組織、生徒と関係を構築する事はレイトも望んでいるので適宜サポート
『廃校』に関して特に真っ当な理由が無いのでSRT関連では全面協力する気でいる
7年前の時点で連邦生徒会長に目を付けられる程度には賞金稼ぎで荒稼ぎしていた

・5代前(7年前)の連邦生徒会長
レイトが中学一年生の時の連邦生徒会長
ヴァルキューレ編入にスカウトしていた
『レイトを公的組織所属にすれば懸賞金分の予算が浮く』、『断られたので苦肉の策で懸賞金を払わなくていい組織と共闘するようにする』という案はどちらも事実。ただし次の代になってからは現場の自治区長判断で撤廃されたので施行期間は1年も無かった。なんなら在任期間中もレイトが来なくなったら困るからと普通に許可は出ていた

・失踪中の連邦生徒会長
SRTを創設した超人会長
SRT一期生(FOX小隊同期)としてスカウトしていた
在任3年目は独自設定
せめて2年分の執政期間が無いと本編で『超人』と言われないだろうという判断
レイトはスカウト以外にもFOX小隊の指揮などで顔を合わせた事がありそこまで嫌っていない
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